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自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成17年12月27日に公表した「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」から「結論の背景」を 抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第1号

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準

(結論の背景)

平成14年 2月21日

改正平成17年12月27日

企業会計基準委員会

目次

結論の背景

検討の経緯

自己株式の会計処理及び表示

自己株式の取得及び保有

自己株式の処分

自己株式の消却

自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定

自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用

連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い

資本金及び準備金の額の減少の会計処理

資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金

資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金

開 示


結論の背景

検討の経緯

26. 平成13年に、「商法等の一部を改正する等の法律」(平成13年法律第79号)、及び新株予約権の制度を定める「商法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第128号)(以下合わせて「平成13年改正商法」という。)が公布された。この平成13年改正商法には、自己株式の取得及び保有規制の見直し、並びに法定準備金の減少手続が含まれ、当該改正後は、自己株式の取引が増加し、会社の財政状態に与える影響が大きくなることが想定されたことなどから、自己株式に関する会計処理の全面的な見直し、並びに資本金及び法定準備金の減少により生じた剰余金及びそれらの処分の会計処理を定める必要が生じた。

そこで、当委員会は、平成14年2月21日に改正前基準を公表した。さらに、改正前基準では、これらの会計処理に関連する資本の部の区分についても定めた。

27. 当委員会は、自己株式の取得及び処分に関する手続の整備、株式の消却手続の整理、並びに剰余金の配当等における株主に対する会社財産の払戻行為に関する統一的な財源規制の創設を含む会社法が平成17年7月26日に公布されたことに伴い、改正前基準について所要の改正を行い、平成17年12月27日に改正基準を公表した。

28. 改正基準では、改正前基準に含まれていた資本の部の区分に関する定めを削除した。これは、平成17年12月9日公表の企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」において、純資産の部の表示についての包括的な見直しが行われたことによる。

また、改正基準では、改正前基準に含まれていた開示に関する定めの一部を削除した。これは、平成17年12月27日公表の企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」が適用され、株主資本等変動計算書を作成するときから、利益処分計算書(又は損失処理計算書)及び連結剰余金計算書が廃止されること、当期未処分利益(又は当期未処理損失)の計算が損益計算書の末尾に表示されなくなること、また、発行済株式及び自己株式に関する注記が株主資本等変動計算書において記載されることによる。

自己株式の会計処理及び表示

自己株式の取得及び保有

29. 会社法では、株主総会の決議によって以下の事項を定め(会社法第156条)、分配可能額(会社法第461条第2項)の範囲内で、株主との合意による自己株式の取得ができることとされた。

(1) 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

(2) 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。)の内容及びその総額

(3) 株式を取得することができる期間(ただし、1 年を超えることができない。)

30. 自己株式については、かねてより資産として扱う考えと資本の控除として扱う考えがあった。資産として扱う考えは、自己株式を取得したのみでは株式は失効しておらず、他の有価証券と同様に換金性のある会社財産とみられることを主な論拠とする。また、資本の控除として扱う考えは、自己株式の取得は株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しの性格を有することを主な論拠とする。

31. 以前は、商法が「株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」により自己株式を貸借対照表の資産の部に記載すべきと定めていたため、実務的にはそれに従った処理が行われていた。一方、会計上は資本の控除とする考えが多く、「商法と企業会計原則との調整に関する意見書」(昭和26年9月28日 経済安定本部企業会計基準審議会中間報告)においては資本の控除とする考えが述べられており、本会計基準公表以前においても連結財務諸表では資本の控除とされていた。また、国際的な会計基準においても、一般的に資本の控除とされている。改正前基準では、これらを勘案し、資本の控除とすることが適切であるとされ、改正基準においても同様の考えによることとした。

32. 自己株式を純資産の部の株主資本の控除とする場合の会計処理は、取得原価で一括して株主資本全体の控除項目とする方法以外に、株主資本の構成要素に配分して直接減額する方法などが考えられてきた。後者の方法は、自己株式の取得を自己株式の消却に類似する行為とする考えに基づくと思われるが、自己株式を取得したのみでは発行済株式総数が減少するわけではなく、取得後の処分もあり得る点に着目し、自己株式の保有は処分又は消却までの暫定的な状態であると考え、取得原価で一括して純資産の部の株主資本全体の控除項目とする方法が適切であると考えた。

33. 自己株式は第29項に示した方法以外に、例えば以下の方法によっても取得される(会社法第155条)が、取得の方法によって会計処理を区別する理由はないと考え、すべての自己株式の取得に同様の会計処理を適用することが適切であると考えた。

(1) 取得条項付株式において条件の達成により取得する場合

(2) 譲渡制限株式の譲渡を承認せずに会社が買い取る場合

(3) 取得請求権付株式の取得請求に応じる場合

(4) 全部取得条項付種類株式を総会決議に基づき取得する場合

(5) 譲渡制限株式の相続人等に売渡請求した場合

(6) 単元未満株式の買取請求に応じる場合

(7) 他の会社の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該会社の株式を取得する場合

(8) 合併後消滅する会社から当該会社の株式を承継する場合

(9) 吸収分割をする会社から当該会社の株式を承継する場合

なお、自己株式の取得の対価が金銭以外の場合の会計処理については、企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(最終改正平成17年12月27日)において定めている。

自己株式の処分

34. 改正基準では、自己株式処分差額の基本的な会計処理と考えられる募集株式の発行等の手続(会社法第199条)による処分に関する会計処理を取り扱う。

なお、単元未満株主からの売渡請求(会社法第194条第3項)に基づく自己株式の処分については、募集株式の発行等の手続による処分の場合と同様に会計処理することが適切と考えられる。また、企業再編時における自己株式の処分及び抱合せ株式の消滅については、平成17年12月27日公表の企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」、新株予約権の権利行使時における自己株式の処分については、平成17年12月27日公表の企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」において示されている。

35. 自己株式処分差額の表示科目名については、以前、自己株式売却損益が用いられていた。

しかし、平成13年改正商法施行後は、自己株式の処分が売却だけに限定されなくなったことから、正の自己株式処分差額を自己株式処分差益とし、負の自己株式処分差額を自己株式処分差損とした。

36. 自己株式を募集株式の発行等の手続で処分する場合、自己株式の処分は株主との間の資本取引と考えられ、自己株式の処分に伴う処分差額は損益計算書には計上せず、純資産の部の株主資本の項目を直接増減することが適切であると考えた。また、自己株式の取得と処分については一連の取引とみて会計処理することが適切であると考えた。

37. まず、自己株式処分差益については、自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、その処分差額も株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられる。よって、それを資本剰余金として会計処理することが適切であると考えた。

38. 自己株式処分差益については、資本剰余金の区分の内訳項目である資本準備金とその他資本剰余金に計上することが考えられる。会社法において、資本準備金は分配可能額からの控除項目とされているのに対し、自己株式処分差益についてはその他資本剰余金と同様に控除項目とされていない(会社法第446条)ことから、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上することが適切であると考えた。

39. 他方、自己株式処分差損については、自己株式の取得と処分を一連の取引とみた場合、純資産の部の株主資本からの分配の性格を有すると考えられる。この分配については、払込資本の払戻しと同様の性格を持つものとして、資本剰余金の額の減少と考えるべきとの意見がある。また、株主に対する会社財産の分配という点で利益配当と同様の性格であると考え、利益剰余金の額の減少と考えるべきとの意見もある。

40. 自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、利益剰余金の額を増減させるべきではなく、処分差益と同じく処分差損についても、資本剰余金の額の減少とすることが適切であると考えた。資本剰余金の額を減少させる科目としては、資本準備金からの減額が会社法上の制約を受けるため、その他資本剰余金からの減額が適切である。

なお、その他資本剰余金の残高を超えた自己株式処分差損が発生した場合は残高が負になるが、資本剰余金は株主からの払込資本のうち資本金に含まれないものを表すため、本来負の残高の資本剰余金という概念は想定されない。したがって、資本剰余金の残高が負になる場合は、利益剰余金で補てんするほかないと考えられる。

41. その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額するとの定めについて、資本剰余金と利益剰余金の区別の観点から好ましくなく、特に資本剰余金全体の金額が正の場合は、その他資本剰余金の負の残高とすべきであるとの意見がある。しかし、その他資本剰余金の負の残高を認めた場合、負の金額だけ法的に維持すべき資本金及び資本準備金の合計額に毀損を生じさせることになり、会社法の資本制度の趣旨を損なうことになりかねない。よって、その他資本剰余金が負の残高になる場合は、利益剰余金で補てんするほかないと考えられ、それは資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと判断される。したがって、その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損については、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額することが適切であると考えた。

42. なお、自己株式処分差益と自己株式処分差損の会計処理については以下の方法が考えられる。

(1) 処分差損が生じた都度、処分差益と相殺する方法

(2) 会計年度単位で処分差損を処分差益と相殺する方法

これについては、処分差益と処分差損が同一会計年度内に反復的に起こり得ること、(1)の方法を採用した場合、処分差益と処分差損の発生の順番が異なる場合に結果が異なることなどを理由に、(2)の方法が適切と考えた。

43. また、仮にその他資本剰余金の負の残高を認めないとしても、自己株式処分差損をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額した期の翌期以後に自己株式処分差益が生じた場合は、自己株式処分差損をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額した範囲でその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を増額すべきであるとの意見がある。しかし、払込資本に生じた毀損を留保利益で埋め合わせるのは、その期に完結する処理であり、そこで充当した留保利益を翌期以後の資本取引に基づく剰余金と入れ替えて元に戻すのは適切ではないと考えられる。数期間を通算したときに結果が変わってしまうのは、自己株式処分差損だけに特有の問題ではないと思われる。

自己株式の消却

44. 会社法では、取締役会等による会社の意思決定をもって、保有する自己株式を消却することができるとされているが、会計上は自己株式処分差損の場合と同様に、消却の対象となった自己株式の帳簿価額を、資本剰余金から減額するか、利益剰余金から減額するかが問題となる。すなわち、自己株式の消却が払込資本の払戻しと同様の性格を有すると考えた場合は資本剰余金の額の減少となり、株主に対する会社財産の分配と考えた場合は利益剰余金の額の減少になる。

45. そこで、資本剰余金又は利益剰余金のいずれから減額するかは、会社の意思決定に委ねることとし、消却した場合に減額するその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したときに会計処理することとした。なお、第40項に記載したとおり、その他資本剰余金の負の残高は適切ではないと考えられるため、その他資本剰余金を財源とする自己株式の消却はその他資本剰余金残高を限度とすることが適切と考えられる。

46. 自己株式の消却の会計処理は、消却手続が完了したときではなく、取締役会等による会社の意思決定の段階で行うべきとの意見があるが、自己株式の消却を取締役会等で意思決定しただけでは、法的に発行済株式数が減少するわけではないため、消却手続が完了したときに会計処理することとした(第12項参照)。なお、取締役会等による意思決定後消却手続が完了していない期末における自己株式に重要性がある場合は、注記することとした(第22項及び第64項参照)。

自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定

47. 自己株式の取得は、第29 項に記載した株主総会の決議による方法の他、第33項に記載した方法によっても行うことができる。

48. 以前は、取得目的ごとに譲渡時の帳簿価額の算定を行っていたが、平成13年改正商法により、取得目的を明示せずに取得及び保有ができることとなったため、取得目的ごとに譲渡時の帳簿価額の計算を行うことは適切ではなくなった。よって、自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定は、株式の種類単位で行うことが適切であると考えた。

49. また、移動平均法等の計算方法については、特に限定する必要はないと考え、会社の定めた計算方法に従えばよいと考えた。

自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用

50. 自己株式の取得、処分及び消却時の付随費用(取得のための手数料、消却のための手数料、処分時に募集株式の発行等の手続を行うための費用等)は、損益計算書に計上する考えと、取得に要した費用は取得価額に含め、処分及び消却に要した費用は自己株式処分差額等の調整とする考えがある。

51. 損益計算書に計上する考えは、付随費用を財務費用と考え、損益取引とする方法であり、本会計基準公表以前から消却目的の自己株式の取得に要した付随費用に用いられていた方法である。この考えは、付随費用は株主との間の資本取引ではない点に着目し、会社の業績に関係する項目であるとの見方に基づく。

52. 一方、取得に要した費用は取得価額に含め、処分及び消却時の費用は自己株式処分差額等の調整とする考えは、付随費用を自己株式本体の取引と一体と考え、資本取引とする方法である。この考えは、自己株式の処分時及び消却時の付随費用は、形式的には株主との取引ではないが、自己株式本体の取引と一体であるとの見方に基づいており、国際的な会計基準で採用されている方法である。

53. これまで新株発行費用は資本の部から減額しておらず、その処理との整合性から、自己株式の取得、処分及び消却時の付随費用は、損益取引とすることとし、損益計算書の営業外費用に計上することとした。

54. なお、この問題は新株発行費の会計処理と合わせ、資本会計の本質に関わる問題であり、今後その本質について十分な議論をする予定である。

連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い

55. 連結子会社が保有する親会社株式(持分相当額)は、企業集団で考えた場合、親会社の保有する自己株式と同様の性格である。よって、連結財務諸表上では親会社が保有する自己株式と合算して表示することが適切であると考えた。

56. 連結子会社における親会社株式の処分差額(内部取引によるものを除いた親会社持分相当額)についても、連結財務諸表上では、その性格は親会社における自己株式処分差額と同様であるため、会計処理も親会社における自己株式処分差額と同様とすることが適切であると考えた。

57. 持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等についても、その取得及び売却は、連結子会社の場合と同様に資本取引であると考えられる。したがって、親会社株式等の親会社等の持分相当額は自己株式として純資産の部の株主資本から控除し、投資勘定を同額減額することが適切であると考えた。また、親会社株式等の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社等の持分相当額)は、親会社における自己株式処分差額の会計処理と同様とし、投資勘定を同額加減することが適切であると考えた。

資本金及び準備金の額の減少の会計処理

資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金

58. 会社法では、株主総会の決議及び債権者保護手続を経て、減少の効力が生ずる日における資本金の額を上限とする資本金の額の減少が可能となった(会社法第447条)。また、準備金の額の減少についても同様の定めがある(会社法第448条)。

59. 資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金は、いずれも減額前の資本金及び資本準備金の持っていた会計上の性格が変わるわけではなく、資本性の剰余金の性格を有すると考えられる。よって、それらは資本剰余金であることを明確にした科目に表示することが適切と思われ、減少の法的手続が完了したときに、その他資本剰余金に計上することが適切であると考えた。

資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

60. 従来、資本性の剰余金と利益性の剰余金は、払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分する考えから、原則的に混同しないようにされてきた。平成13年改正商法において、資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金が配当可能限度額に含められることとなったが、この資本性の剰余金を利益性の剰余金へ振り替えることの可否についての定めはなかった。また、会社法においても、資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金は分配可能額に含まれることとなる。ここで、資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金を利益性の剰余金へ振り替えることを無制限に認めると、払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分することが困難になり、また、資本金及び資本準備金の額の減少によって生ずる剰余金をその他資本剰余金に区分する意味がなくなる。したがって、平成13年改正商法及び会社法における配当に関する定めは、資本剰余金と利益剰余金の混同を禁止する企業会計の原則を変えるものではないと考え、資本剰余金と利益剰余金を混同してはならない旨を定めることとした。

61. この考えに基づくと、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。ただし、利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる。もともと払込資本と留保利益の区分が問題になったのは、同じ時点で両者が正の値であるときに、両者の間で残高の一部又は全部を振り替えたり、一方に負担させるべき分を他方に負担させるようなケースであった。負の残高になった利益剰余金を、将来の利益を待たずにその他資本剰余金で補うのは、払込資本に生じている毀損を事実として認識するものであり、払込資本と留保利益の区分の問題にはあたらないと考えられる。

62. また、会社法では、剰余金の額を減少させて、準備金の額を増加させることができることとされた(会社法第451条)が、これも資本剰余金と利益剰余金の混同を禁止する企業会計の原則を変えるものではなく、減少させる剰余金と同一区分の準備金の額を増加させることが適切と考えられる。したがって、その他資本剰余金を原資として準備金の額を増加させる場合には、資本準備金の額を増加させることになる。

利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金

63. 会社法では、株主総会の決議及び債権者保護手続を経て、減少の効力が生ずる日における準備金の額を上限とする準備金の額の減少が可能となった(会社法第448条)。利益準備金はもともと留保利益を原資とするものであり、利益性の剰余金の性格を有するため、利益準備金の額の減少によって生ずる剰余金は、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)の増額項目とすることが適切であると考えた。

開 示

64. 取締役会等による会社の意思決定によって自己株式を消却する場合で、意思決定後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、当該自己株式の帳簿価額又は株式数に重要性があるときは、財務諸表に対する補足情報として重要な意味があると考えられる。

よって、その場合は当該自己株式の帳簿価額、種類及び株式数を注記することとした。

以上


INDEX

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