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自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準目次

(注)本内容は、平成14年2月21日企業会計基準委員会が公表した「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」から、「結論の背景」部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第1号

自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準

結論の背景)

平成14年2月21日

企業会計基準委員会

目次

結論の背景

資本の部の区分

自己株式の会計処理及び表示

自己株式の取得及び保有

自己株式の処分

自己株式の消却

自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定

自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用

連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い

資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示

資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金

資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

利益準備金の取崩によって生ずる剰余金

開示94

適用時期及び経過措置99

 


結論の背景

資本の部の区分

50. 従来、資本の部は資本金、資本準備金及びその他の剰余金に区分されてきた。これは、債権者保護の観点から資本金、法定準備金、剰余金に区分する商法の考え方と、払込資本と留保利益に区分する企業会計の考え方の調整によるものと考えられる。

51. もちろん、払込資本も留保利益も株主持分のストックの変動であることには変わりはなく、会計上はこの留保利益を含む株主持分の変動(増資や配当)と、その資本が生み出す利益との区分が本質的に重要である。しかし、同じ株主持分のストックでも株主が拠出した部分と利益の留保の部分を分けることは、配当制限を離れた情報開示の面でも従来から強い要請があった。

52. 従来、株主からの払込資本は原則的には資本金と資本準備金に計上されてきたが、改正商法により資本準備金の取崩によって生ずる剰余金が発生し、また資本金の取崩によって生ずる減資差益が資本準備金に計上されなくなったことから、株主からの払込資本でありながら資本金、資本準備金では処理されないものが生ずることになった。自己株式処分差益もそのケースに該当すると考えられる。

53. よって、これらに対応するために、資本性の剰余金を計上する資本剰余金の区分を設け、商法で定める資本準備金とそれ以外のその他資本剰余金に区分することとし、資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金(第88項参照)及び自己株式処分差益(第65項参照)はその他資本剰余金に計上することが適切であると考えた。なお、資本金の取崩によって生ずる剰余金と資本準備金の取崩によって生ずる剰余金は会計的には同様な性格であると考えられるため、合わせて資本金及び資本準備金減少差益と表記すれば足りると考えた。

54. また、資本剰余金の区分を設けるのに合わせ、利益性の剰余金を計上する利益剰余金の区分を設けることとし、利益準備金、任意積立金、当期未処分利益を含むものとした。公開草案では、利益剰余金を利益準備金とその他利益剰余金に区分することを提案したが、現状では任意積立金及び当期未処分利益を括るだけの区分を設ける実益に乏しいと判断されたことから、資本剰余金の区分との対称性にはこだわらないこととした。

55. なお、資本剰余金には、(1)株主からの払込資本を表す払込剰余金のほか、(2)贈与により発生する剰余金(資本的支出にあてた国庫補助金等)や、(3)資本修正により発生する剰余金(貨幣価値変動に伴う固定資産の評価替等)を含むとの考えがある。現状では、(2)については実際上ほとんど採用されていないと思われ、(3)は我が国の現行の制度上生ずる余地がない。これらの論点については、本会計基準では検討の対象とはしていない。

56. そのほか、土地再評価差額金、その他有価証券評価差額金をどのように表示することが適切かという論点もある。これらの論点についても、本会計基準では検討の対象とはしていない。

自己株式の会計処理及び表示

自己株式の取得及び保有

57. 改正商法では、定時株主総会の決議をもって、配当可能限度額並びに当該株主総会の決議により減少した資本金及び法定準備金の金額の範囲内で次の定時総会の終結の時までに取得できる自己株式の種類、総数及び取得価額の総額を定め、これに基づいて自己株式を取得することができることとされ、また、期間、数量等の制限なく保有することができるようになった。

58. 自己株式については、かねてより資産として扱う考えと資本の控除として扱う考えがあった。資産として扱う考えは、自己株式を取得したのみでは株式は失効しておらず、他の有価証券と同様に換金性のある会社財産とみられることを主な論拠とする。また、資本の控除として扱う考えは、自己株式の取得は株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しの性格を有することを主な論拠とする。

59. 従来、商法が「株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」により自己株式を貸借対照表の資産の部に記載すべきと定めていたため、実務的にはそれに従った処理が行われていたが、会計上は資本の控除とみる考えが多かった。かって「商法と企業会計原則との調整に関する意見書」(昭和二十六年九月二十八日 経済安定本部企業会計基準審議中間報告)においても資本の控除とする考えが述べられており、現状でも連結財務諸表においては、資本の控除とされている。また、国際会計基準、米国基準等の国際的な会計基準においても、一般的に資本の控除とされている。本会計基準では、これらを勘案し、資本の控除とみることが適切であると考えた。

60. 自己株式を資本の控除とする場合の会計処理は、本会計基準で採用した取得原価で一括して資本の部全体の控除項目とする方法以外に、資本の部の構成要素に配分して直接減額する方法などが考えられてきた。後者の方法は、自己株式の取得を自己株式の消却に類似する行為とする考えに基づくと思われる。本会計基準では、自己株式を取得したのみでは発行済株式総数が減少する訳ではなく取得後の処分もありうる点に着目し、自己株式の保有は処分又は消却までの暫定的な状態であると考え、取得原価で一括して資本の部の控除項目とする方法が適切であると考えた。

61. なお、自己株式は第57項に記載した方法以外に、以下の方法によっても取得されるが、取得の方法によって会計処理を区別する理由はないと考え、すべての自己株式の取得に同様の会計処理を適用することが適切であると考えた。

@ 株主からの買取請求に応じて取得する場合

A 譲渡制限会社において会社が譲渡を承認しないで自己を譲渡の相手方に指定した場合

B 子会社が保有する親会社の株式を当該親会社が買い受ける場合

C 端数、単元未満株式の買取請求に応じて取得する場合

D 他の会社の営業全部の譲受、合併、営業全部を承継させる吸収分割によって取得する場合

自己株式の処分

62. 改正商法においては、自己株式の処分の方法は、新株発行の手続を準用した処分、代用自己株式としての使用による処分、新株予約権の行使に伴う自己株式の交付による処分がある。本会計基準では、自己株式処分差額の基本的な会計処理と考えられる新株発行の手続を準用した処分を取り扱う。他の二つの処分方法については、企業会計基準適用指針第二号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」に取扱 いを定めている。

63. 自己株式処分差額の表示科目名については、従来自己株式売却損益が用いられてきた。しかし、処分差額が損益計算書に計上されないこと、改正商法では自己株式の処分が売却だけに限定されないことから適切ではないと考え、正の自己株式処分差額を自己株式処分差益とし、負の自己株式処分差額を自己株式処分差損とすることとした。

64. 自己株式を新株発行の手続を準用して処分する場合、自己株式の処分は株主との間の資本取引と考えられ、自己株式の処分に伴う処分差額は損益計算書には計上せず、資本の部の項目を直接増減することが適切であると考えた。また、自己株式の取得と処分については一連の取引とみて会計処理をすることが適切であると考えた。

65. まず、自己株式処分差益については、自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、その処分差額も株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられる。よって、それを資本剰余金として会計処理することが適切であると考えた。

66. 具体的な表示科目としては、資本剰余金の区分の内訳項目である資本準備金とその他資本剰余金が考えられる。そのうち資本準備金は新株発行時の払込剰余金が表示されている科目であり、自己株式処分差益と性格が近いと思われるが、商法上は資本準備金の積立要件が限定列挙であると解されるため計上できない。よって、その他資本剰余金に計上することが適切であると考えた

67. 他方、自己株式処分差損については、自己株式の取得と処分を一連の取引とみた場合、資本の部からの分配の性格を有すると考えられる。この分配については、払込資本の払戻と同様の性格を持つものとして資本剰余金の減少と考えるべきとの意見がある。また、株主に対する会社財産の分配という点で利益配当と同様の性格であると考え、利益剰余金の減少と考えるべきとの意見もある。

68. 本会計基準では自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、利益剰余金を増減させるべきではなく、処分差益と同じく処分差損についても資本剰余金を減少させることが適切であると考えた。資本剰余金を減少させる科目としては、資本準備金からの減額が商法上の制約を受けるため、その他資本剰余金からの減額が適切であると考えた。なお、その他資本剰余金の残高を超えた自己株式処分差損が発生した場合は残高がマイナスになるが、資本剰余金は株主からの払込資本のうち資本金に含まれないものを表すため、本来マイナスの資本剰余金という概念は想定されない。したがって、資本剰余金がマイナス残高になる場合は、利益剰余金で補てんするほかないと考えられる。

69. 公開草案に対するコメントの中には、その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損を未処分利益から減額するとの規定について、資本剰余金と利益剰余金の区別の観点から好ましくなく、特に資本剰余金全体の金額が正の場合は、その他資本剰余金のマイナス残高とすべきであるとの意見があった。しかし、その他資本剰余金のマイナス残高を認めた場合、マイナスした金額だけ法的に維持すべき資本金及び資本準備金の合計額に毀損を生じさせることになり、商法の資本制度の趣旨を損なうことになりかねない。よって、その他資本剰余金がマイナス残高になる場合は、利益剰余金で補てんするほかないと考えられ、それは資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと判断される。したがって、その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損については、当期未処分利益から減額することが適切であると考えた。

70. なお、自己株式処分差益と自己株式処分差損については、@処分差損が生じた都度に処分差益と相殺する方法と、A会計年度単位で処分差損を処分差益と相殺する方法が考えられる。これについては、処分差益と処分差損が同一会計年度内に反復的に起こりうること、@の方法を採用した場合、処分差益と処分差損の発生の順番が異なる場合に結果が異なることなどを理由に、Aの方法が適切と考えた。

71. 公開草案に対するコメントの中には、仮にその他資本剰余金のマイナス残高を認めないとしても、自己株式処分差損を当期未処分利益から減額した期の翌期以後に自己株式処分差益が生じた場合は、自己株式処分差損を当期未処分利益から減額した範囲で当期未処分利益を減額すべきであるとの意見があった。しかし、払込資本に生じた毀損を留保利益で埋め合わせるのは、その期に完結する処理であり、そこで充当した留保利益を翌期以後の資本取引に基づく剰余金と入れ替えて元に戻すのは適切ではないと考えられる。数期間を通算したときに結果が変わってしまうのは、自己株式処分差損だけに特有の問題ではないと思われる。

自己株式の消却

72. 改正商法により、取締役会決議をもって保有する自己株式を消却することができることとされた。改正商法では、取締役会決議による自己株式の消却の際に、消却する資本の部の項目を明示することを要求していないため、会計上は自己株式処分差損の場合と同様に、消却の対象となった自己株式の帳簿価額を、資本剰余金から減額するか、利益剰余金から減額するかが問題となる。すなわち、自己株式の消却が払込資本の払戻的性格を有すると考えた場合は資本剰余金の減少となり、株主に対する会社財産の分配と考えた場合は利益剰余金の減少になる。

73. 本会計基準では、改正商法が配当可能限度額を消却原資とし、配当可能限度額の中で特に資本剰余金と利益剰余金の使用に差を設けていないことに鑑み、資本剰余金、利益剰余金のいずれから減額するほかは、会社の意思決定に委ねることとし、消却した場合の減額する資本項目(その他資本剰余金、当期未処分利益)及びその他資本剰余金を減額する場合のその内訳(資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したときに会計処理することとした。なお、第68項に記載したとおり、その他資本剰余金のマイナス残高は適切ではないと考えられるため、その他資本剰余金を財源とする自己株式の消却はその他資本剰余金残高を限度とすることが適切と考えられる。

74. 商法では、消却の方法として取締役会の決議による消却のほか、いわゆる強制消却を定めている。強制消却の場合、株主から株式を取得することなく、株主が株式を保有する状態のまま消却を行い、資本減少の規定に従う場合又は定款の規定に基づいて株主に配当すべき利益をもってする場合にのみ行える。強制消却の場合も、資本の部の減額項目は会社の決議の内容に従うこととなる。

75. 公開草案に対するコメントの中には、取締役会決議による自己株式消却の会計処理は、消却手続が完了したときではなく、取締役会決議の段階で行うぺきとの意見があった。自己株式の消却を取締役会で決議しただけでは、法的に発行済株式 数が減少する訳ではないため、公開草案を特に修正しないこととしたが、取締役会決議後消却手続が完了していない自己株式に重要性がある場合は、注記を行うこととした(第38項及び第95項参照)。

自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定

76. 自己株式の取得は、第57項に記載した定時総会の決議による方法のほか、第61項に記載した方法によっても行える。

77. 従来は、取得目的ごとに譲渡時の帳簿価額の算定を行っていたが、改正商法では目的を明示せずに取得及び保有をできることになったため、取得目的ごとに譲渡時の帳簿価額の計算を行うのは適切ではなくなった。よって、自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定は、株式の種類単位で行うことが適切であると考えた。

78. また、移動平均法の計算方法については、特に限定する必要はないと考え、会社の定めた計算方法に従えばよいと考えた

自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用

79. 自己株式の取得、処分及び消却時の付随費用(取得のための手数料、消却のための手数料、処分時に新株発行に準じた手続を行うための費用等)は、損益計算書に計上する考え方と、取得に要した費用は取得価額に含め処分及び消却に要した費用は自己株式処分差額等の調整とする考えがある。

80. 損益計算書に計上する考えは、付随費用を財務費用と考え損益取引とする方法であり、従来から消却目的の自己株式の取得に要した付随費用に用いられていた方法である。この考えは、付随費用は株主との間の資本取引ではない点に着目し、会社の業績に関係する項目であるとの考えに基づく。

81. 一方、取得に要した費用は取得価額に含め処分及び消却時の費用は自己株式処分差額の調整とする考えは、付随費用を自己株式本体の取引と一体と考え資本取引とする方法である。この考えは、自己株式の処分時及び消却時の付随費用は、形式的には株主との取引ではないが、自己株式本体の取引と一体であるとの考えに基づいており、国際的な会計基準で採用されている方法である。

82. 現行の商法では、新株発行費用は資本から減額することはできないと解され、その処理との整合性からは、自己株式の取得、処分及び消却時の付随費用は費用計上する方法しか選択し得ない。よって、本会計基準では損益取引とすることとし、損益計算書の営業外費用に計上することとした。

83. なお、この問題は新株発行費の会計処理と合わせ資本会計の本質にかかわる問題であり、今後その本質について十分な議論をする必要があると考える。

連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式の取扱い

81. 連結子会社が保有する親会社株式(持分相当額)は、企業集団で考えた場合、親会社の保有する自己株式と同様の性格である。よって、連結財務諸表上では親会社が保有する自己株式と合算して表示することが適切であると考えた。

85. 連結子会社における親会社株式の処分差額(内部取引によるものを除いた親会社持分相当額)についても、連結財務諸表上では、その性格は親会社における自己株式処分差額と同様であるため、会計処理も親会社における自己株式処分差額と同様とすることが適切であると考えた。

86. 持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等については、その取得及び売却は、連結子会社の場合と同様に資本取引であると考えられる。したがって、親会社株式等の親会社等の持分相当額は自己株式として資本の部から控除し、投資勘定を同額減額することが適切であると考えた。また、親会社株式等の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社等の持分相当額)は、親会社における自己株式処分差額の会計処理と同様とし、投資勘定を同額加減することが適切であると考えた。

資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示

資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金

87. 改正商法では、株主総会の決議により債権者保護手続きを経て、法定準備金の総額から資本金の四分の一に相当する額を控除した額を上限として法定準備金の減少が可能となった。また、改正前の商法では、資本金の減少によって生じた減資差益は資本準備金として積み立てなければならないものとされていたが、改正商法ではこの規定が削除された。

88. 資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金は、いずれも取崩前の資本金及び資本準備金の持っていた会計上の性格が変わる訳ではなく、資本性の剰余金の性格を有すると考えられる。よって、それらは資本剰余金であることを明確にした科目に表示することが適切と思われ、取崩の法的手続きが完了したときに、資本剰余金の区分におけるその他資本剰余金に計上することが適切であると考えた。

資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

89. 従来、資本性の剰余金と利益性の剰余金は、払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分する考えから、原則的に混同されないようにされてきた。改正商法では資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金が配当可能限度額に含められることとなったが、この資本性の剰余金を利益性の剰余金へ振替えることの可否については、特に規定はない。資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金を利益性の剰余金へ振り返ることを無制限に認めると、払込資本と払込資本を利用して得られた 成果を区分することが困難になり、また、資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金をその他資本剰余金に区分する意味がなくなる。したがって、今回の商法配当規定の改正は、資本剰余金と利益剰余金の 混同を禁止する企業会計の原則を変えるものではないと考え、本会計基準では資本剰余金と利益剰余金を混同してはならない旨を定めることとした。

90. この考えに基づくと、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。ただし、利益剰余金がマイナスのときにその他資本剰余金で補てんするのは、資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられる。もともと払込資本と留保利益の区分が問題になったのは、同じ時点で両者が正の値であるとき、両者の間で残高の一部又は全部を振替えたり、一方にチャージすべき分を他方に負担させたりするケースであった。マイナスになった利益剰余金を、将来の利益を待たずにその他資本剰余金で補うのは、払込資本に生じている毀損を事実として認識するものであり、払込資本と留保利益の区分の問題にはあたらないと考えられる。

91. なお、資本剰余金と利益剰余金とを混同しないためには、利益処分の結果に従って、当期未処分利益の処分額とその他資本剰余金の処分額を区別して処理することになり、その旨を定めることとした。

92. また、その他資本剰余金の処分が行われた場合、減額する内訳(資本金及び資本準後金減少差益、自己株式処分差益)については、株主総会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い会計処理することとなる。

利益準備金の取崩によって生ずる剰余金

93. 改正商法では、第87項に記載したように利益準備金の取崩も可能になった。利益準備金はもともと留保利益を原資とするものであり利益性の剰余金の性格を有するため、利益準備金の取崩によって生ずる剰余金は、商法上の利益準備金による欠損てん補を除き、未処分利益の増額項目とすることが適切であると考えた。

開示

94. 改正商法により、期間、数量等の制限なく自己株式の保有が行えるこようになったことから、期末における自己株式の数が重要になることが想定され、一株あたり情報等にも影響を与えることになる。よって、期末における発行済株式の種類及び総数、期末に保有する自己株式の種類及び株式数を連結貸借対照表及び貸借対照表に注記することとした。

95. 取締役会の決議によって自己株式を消却する場合で、決議後消却手続を完了していない自己株式が、貸借対照表日にあり、当該自己株式の帳簿価額又は株式数に重要性があるときは、財務諸表に対する補足情報として重要な意味があると考えられる。よって、その場合は当該自己株式の帳簿価額、種類及び株式数を注記することとした。

96. 個別財務諸表においては、株主総会における利益処分(又は損失処理)の結果を受けて利益処分計算書(又は損失処理計算書)を開示する。株主総会における利益処分には、従来の当期未処分利益の処分(又は当期未処理損失の処理)のほかにその他資本剰余金の処分が生ずる場合がある。よって、利益処分計算書(又は損失処理計算書)には、当期未処分利益の処分(又は当期未処理損失の処理)に加え、その他資本剰余金の処分を設けることとした。

97. 連結財務諸表においては、資本剰余金の区分及び利益剰余金の区分を設けることとなったため、連結剰余金計算書の内訳として、資本剰余金の部及び利益剰余金の部を設けることとし、各々の変動を表すこととした。なお、当該変更により従来の連結損益及び剰余金計算書の形式は採用し得ないこととなる。

98. 審議の過程で連結剰余金計算書に代わって株主持分変動計算書を作成すべきであるとの意見があった。本会計基準では、開示については、この会計基準等における修正の範囲内のものを取扱っているが、株主持分変動計算書の作成については、当委員会で取り上げるべき今後の検討課題と考える。

適用時期及び経過措置

99. 公開草案においては、本会計基準は、平成十四年四月一日以後適用するものとし、特に経過措置は設けていなかった。公開草案に対するコメントの中には、システム対応等の理由で平成十四年四月一日からの一律の対応が、特に表示及び開示面で困難であるとの意見があった。又、適用日前後の取扱いを具体的に定めるべきであるとの意見があった。それらのコメントに対応し、第42項から第47項に経過措置及び具体的取扱いを定めた。

以上


INDEX

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