(注)本内容は、平成14年2月21日企業会計基準委員会が公表した「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」から、「目的・会計基準」部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。
企業会計基準第1号
自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準
(目的・会計基準 ) |
平成14年2月21日
企業会計基準委員会
目次
目的
会計基準
範囲
用語の定義
資本の部の区分
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び保有
自己株式の処分
自己株式の消却
自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
連結財務諸表における子会社および関連会社が保有する親会社株式株式等の取扱い
資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示
資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金
資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止
利益準備金の取崩によって生ずる剰余金
開示
適用時期及び経過措置
議決
目的
1.
本会計基準は、自己株式の取得、処分及び消却の会計処理を定めるとともに、資本金(商法上は資本)及び法定準備金の取崩の会計処理並びにそれらの取引等により生じた剰余金の処分の会計処理を定めることを目的とする。また、これらの会計処理に関連して資本の部の区分について定めることを目的とする。
2.
自己株式の取得及び保有規制の見直し、法定準備金の減少手続の創設を含む「商法等の一部を改正する等の法律」(平成十三年法律第七十九号)が平成十三年六月二十九日に公布され、新株予約権の制度を定める「商法等の一部を改正するの法律」(平成十三年法律第百二十八号)が平成十三年十一月二十八日に公布された(以下合わせて「改正商法」という。)。
3.
改正前の商法では、自己株式の取得は原則的に禁止され、取締役又は使用人に譲渡するための取得、消却のための取得など一定の目的による取得のみを例外的に認めていた。改正商法では、定時株主総会の決議をもって、配当可能限度額並びに当該株主総会の決議により減少した資本金及び法定準備金の金額の範囲で、次の定時総会の終結の時までに取得できる自己株式の種類、総数及び取得価額の総額を定め、これに基づいて自己株式を取得することができることとされた。また、改正前の商法では、取得した自己株式は、原則として相当の時期に処分すべきとされていたが、改正商法では期間、数量等の制限なく保有することができるようになった。これらの改正により自己株式の取引が増加し、会社の財政状態に与える影響も大きくなるとみられることから、自己株式に関する会計処理を全面的に見直すこととした。
4.
改正商法では、新株予約権が行使された場合、会社は新株予約権者に新株を発行するか自己株式を交付することとしており、新株予約権の行使に伴う自己株式の交付の取扱
いを定める必要が生じた。
5.
改正前の商法では、法定準備金に関しては減少手続はなく、欠損てん補又は資本組入の場合にしか取り崩すことができなかった。改正商法では、株主総会の決議により債権者保護手続を経て、法定準備金の総額から資本金の四分の一に相当する額を控除した額を上限として、法定準備金を減少できるようになった。また、改正前の商法では、資本金の減少によって生じた減資差益は資本準備金として積み立てなければならないものとされていたが、改正商法ではこの規定が削除され、配当可能限度額に含められることになった。これらの改正により、資本金及び法定準備金の取崩により生じた剰余金及びそれらの処分の会計処理を定める必要が生じた。
6.
上記の会計処理を定める上で、現行の資本の部の区分では処理することが適切でないものが生じたため、資本の部の区分に関しても本会計基準で取り扱っている。
7.
なお、本会計基準では、資本の部の区分等に関して、既存の会計基準と異なる取扱いを定めているが、本会計基準の取扱いが優先することとなる。
会計基準
範囲
8.
本会計基準は、自己株式の取得、処分及び消却の会計処理、資本金及び法定準備金の取崩の会計処理並びにそれらの取引等により生じた剰余金の処分の会計処理を定める。また、これらの会計処理に関連して資本の部の区分について定める。
9.
本会計基準は、すべての会社の連結財務諸表及び個別財務諸表に適用する。なお、本会計基準は、特に明示しない限り個別財務諸表における会計処理を想定して定めている。連結財務諸表における会計処理は、個別財務諸表における会計処理に準ずる。
10. 自己株式の処分には以下の方法があるが、本会計基準では自己株式処分差額の基本的な会計処理と考えられる@の新株発行の手続を準用した処分に関する会計処理を定める。
@ 新株発行の手続を準用した処分(商法第二百十一条の規定に基づく処分)
A 吸収合併、株式交換及び吸収分割に際して、合併会社、完全親会社となる会社又は承継会社が、新株の発行に代えて自己株式を交付することによる処分
B 新株予約権の行使に伴う自己株式の交付による処分
用語の定義
11. 「自己株式処分差額」とは、自己株式の処分の対価から自己株式の帳簿価額を控除した額をいう。
12.
「自己株式処分差益」とは、自己株式処分差額が正の値の場合における当該差額をいう。
13.
「自己株式処分差損」とは、自己株式処分差額が負の値の場合における当該差額をいう。
14.
「代用自己株式」とは、吸収合併、株式交換及び吸収分割に際して、合併会社、完全親会社となる会社又は承継会社が、新株の発行に代えて自己株式を交付する場合の当該自己株式をいう。
資本の部の区分
15.
資本の部は、資本金、資本剰余金、利益剰余金及びその他の項目に区分する。
16.
資本剰余金は、資本準備金と資本準備金以外の資本剰余金(以下「その他資本剰余金」という。)に区分する。
17.
その他資本剰余金は、資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益等その内容を示す科目に区分する。
18.
利益剰余金は、利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益(又は当期未処理損失)に区分する。
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び保有
19.
取得した自己株式は、取得原価をもって資本の部から控除する。
20.
期末に保有する自己株式は、資本の部の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示する。
自己株式の処分
21. 自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上する。
22.
自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額し、減額しきれない場合は、利益剰余金のうち当期未処分利益から減額(又は当期未処理損失を増額)する。その他資本剰余金を減額する場合、自己株式処分差益から構成される部分をまず減額し、減額しきれない場合は資本金及び資本準備金減少差益から構成される部分を減額する。
23.
第22項により当期未処分利益を減額する場合は、損益計算書において当期純利益等の次に自己株式処分差損等の科目をもって表示する。
24.
自己株式処分差益と自己株式処分差損は、会計年度単位で相殺した上、第21項から第23項に従って処理する。
自己株式の消却
25.
自己株式を消却した場合、減額する資本項目(その他資本剰余金、当期未処分利益)及びその他資本剰余金を減額するときの内訳(資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したしきに会計処理する。
26.
当期未処分利益により自己株式を消却する場合は、損益計算書において当期純利益等の次に自己株式消却額等の科目をもって表示し未処分利益の減額項目とする。
自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定
27.
自己株式の処分及び消却時の帳簿価額は、株式の種類ごとに、会社の定めた計算方法に従って算定する。
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用
28.
自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、損益計算書の営業外費用に計上する。
連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い
29.
連結子会社が保有する親会社株式は、親会社が保有している自己株式と合わせ、資本の部に対する控除項目として表示する。資本の部から控除する金額は、親会社株式の親会社持分相当額とし、少数株主持分相当額は少数株主持分より控除する。
30.
連結子会社における親会社株式の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社持分相当額)の会計処理は、親会社における自己株式処分差額の会計処理(第21項から第24項参照)と同様とする。少数株主持分相当額は少数株主利益(又は損失)に加減する。
31.
持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社が親会社株式等(子会社においては親会社株式、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社の株式)を保有する場合は、親会社等(子会社においては親会社、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社)の持分相当額を自己株式として資本の部から控除し、当該会社に対する投資勘定を同額減額する。
32.
持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社等の持分相当額)は、親会社における自己株式処分差額の会計処理(第21項から第24項参照)と同様とし、また、当該会社に対する投資勘定を同額加減する。
資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示
資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金
33.
資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金は、取崩の法的手続きが完了したときに、その他資本剰余金に計上する
資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止
34.
資本剰余金の各項目は、利益剰余金の各項目と混同してはならない。したがって、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。
35.
その他資本剰余金の処分額は、当期未処分利益の処分額と混同してはならない。
利益準備金の取崩によって生ずる剰余金
36.
利益準備金の取崩によって生ずる剰余金は、取崩の法的手続きが完了したときに、損益計算書において当期純利益等の次に利益準備金取崩額等の科目をもって表示し未処分利益の増額項目とする。
開示
37.
期末における発行済株式の種類及び総数、期末に保有する自己株式の種類及び株式数は、連結貸借対照表及び貸借対照表に注記する。
38.
取締役会の決議によって自己株式を消却する場合に、決議後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、当該自己株式の帳簿価額又は株式数に重要性があるときは、その自己株式の帳簿価額、種類及び株式数を連結貸借対照表及び貸借対照表に注記する。
39.
その他資本剰余金の処分を行った場合、個別財務諸表における利益処分計算書(又は損失処理計算書)には、当期未処分利益の処分(又は当期未処理損失の処理)に加えその他資本剰余金の処分を設ける。
40.
連結財務諸表においては、資本剰余金と利益剰余金を合わせて連結剰余金とすることとし、連結剰余金計算書の内訳として、資本剰余金の部及び利益剰余金の部を設け、各々の変動を表すものとする。
適用時期及び経過措置
41.
本会計基準は、平成十四年四月一日以後適用する。なお、具体的な取扱いは、第43項から第47項のとおりとする。
42.
自己株式処分差額(第21項及び第22項)については、平成十四年三月三十一日以前に発生した処分差額は損益計算書に計上し、平成十四年四月一日以後発生した処分差額は本会計基準に従って処理する。なお、第46項及び第47項により資本の部の区分を本会計基準適用前の区分によっている場合で、平成十四年四月一日以後に自己株式処分差額が発生したときは、従来資本金及び資本準備金の取崩に伴う剰余金を計上していた区分(以下「その他の資本剰余金」という。)に計上する。
43. 自己株式
の消却(第25項)については、平成十四年四月一日以後決議されたものから本会計基準を適用する。平成十四年三月三十一日以前に決議されたのについては、従前の会計処理に従う。
44.
資本金及び資本準後金の取崩によって生ずる剰余金の会計処理(第33項)については、平成十四年四月一日以後に開催される株主総会の決議による取崩から適用する。なお、第46項及び第47項により資本の部の区分を本会計基準適用前の区分による間に生じた資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金は、「その他の資本剰余金」に計上する。
45.
その他資本剰余金の処分に関連する取扱い(第35項)については、平成十四年四月一日以後に開催される株主総会の決議によるものから適用する。なお、第46項及び第47項により期末の資本の部の区分を本会計基準適用前の区部によっている場合で、資本金及び資本準備金の取崩に伴う剰余金の処分を行うときについても同様に第35項を適用する。このなお書きの処分が行われた場合、利益処分計算書には第46項の適用開始時期にかかわらず、第39項に従い「その他の資本剰余金」の処分を設けることとする。
46.
年度決算における資本の部の区分及び開示に関しては、平成十四年四月一日以後開始する連結会計年度及び事業年度(以下「会計年度等」という。)に係る連結財務諸表及び財務諸表について適用する。平成十四年三月三十一日以前に開始する会計年度等で平成十四年四月一日以後に終了する会計年度等においては、本会計基準を早期適用することが望ましい。
47.
中間決算における資本の部の区分及び開示に関しては、平成十四年四月一日以後開始する中間連結会計期間及び中間会計期間(以下「中間会計期間等」という。)に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表(以下「中間財務諸表等」という。)について適用する。なお、平成十四年四月一日から平成十四年九月三十日までに開始する中間会計期間等における中間財務諸表等については、システム対応等の理由で実務上適用が困難な場合は、適用しないことができる。また、平成十四年三月三十一日以前に開始する中間会計期間等で平成十四年四月一日以後に終了する中間会計期間等においては、本会計基準を早期に適用することが望ましい。
議決
48.
本会計基準は、第九回企業会計基準委員会に出席した委員十三名の賛成により承認された。
49.
企業会計基準委員会の委員の記述は省略してあります。