(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成18年8月11日に公表したものです。なお、実務への適用に当ってはオリジナルの当該適用指針等を確認してください。
企業会計基準適用指針第2号
自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針
(目的・適用指針・結論の背景・設例) |
平成14年 2月21日
改正平成17年12月27日
最終改正平成18年 8月11日
企業会計基準委員会
本適用指針は、平成20年12月26日「連結財務諸表に関する会計基準」の公表に伴う修正を反映してある。
本適用指針は、平成20年12月26日「企業結合に関する会計基準」の公表に伴う修正を反映してある。(第36項)
本適用指針は、平成21年03月27日「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」の公表に伴う修正を反映してある。(第36項)
目次
目的
適用指針
範囲
用語の定義
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び処分の認識時点
自己株式の取得原価の算定(対価が金銭以外の場合)
現物配当を行う会社の会計処理
自己株式の処分
自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定
自己株式の無償取得の会計処理
連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い
子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い
適用時期
議決
結論の背景
検討の経緯
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び処分の認識時点
自己株式の取得原価の算定(対価が金銭以外の場合)
金銭以外の財産をもって自己株式を取得した場合や現物配当を行う場合の会計処理
自己株式の無償取得の会計処理
子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い
設例
[設例1] 自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合の取扱い
[設例2] 連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い
[設例3] 子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い(連結子会社が保有する当該連結子会社の自己株式に関する取扱い)
目的
1. 企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(最終改正平成18年8月11日)(以下「自己株式等会計基準」という。)が平成14年2月21日に公表されている。本適用指針は、当該会計基準の実務上の指針を定めるものである。
2. 本適用指針は、平成14年2月21日に公表された企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」について所要の改正を行ったものである。また、本適用指針には、平成14年9月25日に公表された企業会計基準適用指針第5号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針(その2)」(以下「適用指針第5号」という。)に所要の改正を行ったものが含まれている。
適用指針
範囲
3. 本適用指針の適用範囲は、自己株式等会計基準における適用範囲と同様とする。ただし、本適用指針においては、自己株式の取得の対価が金銭以外の場合の会計処理及び配当財産が金銭以外の場合における分配側の会計処理についても取り扱う。
用語の定義
4. 本適用指針における用語の定義は、自己株式等会計基準における用語の定義と同様とする。
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び処分の認識時点
5. 自己株式の取得については、対価が金銭の場合は対価を支払うべき日に認識し、対価が金銭以外の場合は対価が引き渡された日に認識する。また、募集株式の発行等の手続による自己株式の処分については、対価の払込期日(払込期間を定めた場合には出資が履行された日をいう。以下同じ。)(会社法第209条)に認識する。
6. 払込期日前日までに受領した自己株式の処分の対価相当額については、第5項における処分の認識を行うまでは、純資産の部において株主資本の控除項目とされている自己株式の直後に、自己株式申込証拠金の科目をもって表示する。
自己株式の取得原価の算定(対価が金銭以外の場合)
(企業集団内の企業から自己株式を取得する場合)
7. 企業集団内の企業(同一の企業(又は個人)により最終的に支配され(取引当事者が最終的な支配企業である場合を含む。)、かつ、その支配が一時的でない企業)から、金銭以外の財産を対価として自己株式を取得する場合、当該自己株式の取得原価は、移転された資産及び負債の適正な帳簿価額により算定する。
(自社の他の種類の株式を交付する場合)
8. 自社の他の種類の株式を交付して自己株式を取得する場合の当該自己株式の取得原価は、以下のとおり算定する。
(1) 他の種類の新株を発行する場合
自己株式の取得原価は、零とする。
(2) 他の種類の自己株式を処分する場合
自己株式の取得原価は、処分した自己株式の帳簿価額とする。
(その他の場合)
9. 自己株式の取得原価は、取得の対価となる財(金銭以外の財産)の時価と取得した自己株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。なお、自己株式に市場価格(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第48項)がある場合には、一般的に当該価格を用いて自己株式の取得原価を算定することになる。また、取得の対価となる財及び取得した自己株式に市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、移転された資産及び負債の適正な帳簿価額により自己株式の取得原価を算定する。
取得の対価となる財又は取得した自己株式が市場価格のある株式の場合、原則として、時価は当該取引の合意日の時価により算定する。ただし、当該時価と株式の受渡日の時価が大きく異ならない場合には、受渡日の時価によることができる。なお、当該時価と株式の受渡日の時価が大きく異ならない場合とは、その価格の差異から生ずる取得原価の差額が、財務諸表に重要な影響を与えないと認められる場合をいう。
自己株式の取得原価と取得の対価となる財の帳簿価額との差額は、取得の対価となる財の種類等に応じた表示区分の損益に計上する。
現物配当を行う会社の会計処理
10. 配当財産が金銭以外の財産である場合、配当の効力発生日(会社法第454条第1項第3号)における配当財産の時価と適正な帳簿価額との差額は、配当の効力発生日の属する期の損益として、配当財産の種類等に応じた表示区分に計上し、配当財産の時価をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する。
ただし、以下の場合には、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する。
(1) 分割型の会社分割(按分型)
(2) 保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)する場合
(3) 企業集団内の企業へ配当する場合
(4) 市場価格がないことなどにより公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合
なお、減額するその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従うこととする。
自己株式の処分
(自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合の取扱い)[設例1]
11. 自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合の増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
(平成13年改正前商法により付与されたストック・オプションの行使に伴う譲渡差額)
12. 平成13年改正前商法第210条ノ2に基づき、特定の取締役又は使用人に対しあらかじめ定められた価額をもって会社よりその株式を自己に譲渡すべき旨を請求する権利(以下「平成13年改正前商法により付与されたストック・オプション」という。)の行使に備えるために取得した自己株式を、権利行使により譲渡した場合に生ずる譲渡差額(自己株式の帳簿価額と平成13年改正前商法により付与されたストック・オプションの行使価額との差額)は、募集株式の発行等の手続により自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理と同様に取り扱う。
自己株式の処分及び消却時の帳簿価額の算定
13. 自己株式の処分及び消却時の帳簿価額は、会社の定めた評価方法に従って、株式の種類ごとに算定する。ただし、平成13年改正前商法により付与されたストック・オプションの行使に備えるために取得した自己株式に関しては、帳簿価額の算定を区別して行うことができることとする。
自己株式の無償取得の会計処理
14. 自己株式を無償で取得した場合、自己株式の数のみの増加として処理する。
15. 無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合は、その旨及び株式数を連結財務諸表及び個別財務諸表に注記する。
連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い[設例2]
16. 自己株式等会計基準第16項及び第18項に会計処理を定めている連結子会社における親会社株式の売却損益及び持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等(子会社においては親会社株式、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社の株式)の売却損益は、関連する法人税、住民税及び事業税を控除後のものとする。
子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い
(連結子会社が保有する当該連結子会社の自己株式に関する取扱い)[設例3]
17. 連結子会社による当該連結子会社の自己株式の少数株主からの取得及び少数株主への処分は、それぞれ親会社による子会社株式の追加取得及び一部売却に準じて処理する。
18. 第17項により、連結子会社による当該連結子会社の自己株式の少数株主からの取得を、親会社による子会社株式の追加取得に準じて処理する場合、自己株式の取得の対価と少数株主持分の減少額との差額をのれん(又は負ののれん)として処理する。
19. 第17項により、連結子会社による当該連結子会社の自己株式の少数株主への処分を、親会社による子会社株式の一部売却に準じて処理する場合、連結子会社による少数株主への第三者割当増資に準じて処理する。
20. 連結子会社が、保有する自己株式を消却した場合、連結貸借対照表上、資産の部、負債の部及び純資産の部に変動は生じない。
(持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社が保有する当該持分法適用会社の自己株式に関する取扱い)
21. 持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社(以下「持分法適用会社」という。)による当該持分法適用会社の自己株式の親会社等(子会社においては親会社、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社)以外からの取得及び親会社等以外への処分は、連結子会社の場合の第17項から第19項と同様に、それぞれ親会社等による持分法適用会社の株式の追加取得及び一部売却に準じて処理する。
22. 持分法適用会社が、保有する自己株式を消却した場合、持分法上の会計処理は生じない。
適用時期
23. 平成18年改正の本適用指針の適用時期に関する取扱いは、同時に改正した自己株式等会計基準と同様とする。
なお、平成18年改正の本適用指針の適用前の処理については、平成17年改正の本適用指針による。ただし、会社法の定めが適用される前の処理については、平成14年公表の本適用指針(平成17年12月27日改正前の本適用指針をいう。以下同じ。)及び適用指針第5号による。
議決
24. 平成14年公表の本適用指針は、第9回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
24-2. 平成17年改正の本適用指針は、第94回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
24-3. 平成18年改正の本適用指針は、第110回企業会計基準委員会に出席した委員13 名全員の賛成により承認された。
結論の背景
検討の経緯
25. 平成14年2月21日に公表された本適用指針は、同時に公表された自己株式等会計基準の実務上の指針として定められた。平成17年には、平成17年12月27日に自己株式等会計基準を改正したことに伴い、本適用指針についても所要の改正を行った。
26. 平成17年改正の本適用指針には、平成14年9月25日に公表した適用指針第5号に所要の改正を行ったものが含まれている。適用指針第5号は、平成14年2月21日に公表された自己株式等会計基準及び本適用指針の公開草案に対するコメントで要望された実務上の取扱いのうち、本適用指針では取り上げなかった項目について、追加して実務上の指針を定めていたものである。なお、適用指針第5号は、平成17年改正の本適用指針の適用により、廃止されることとなった。
27. 平成17年改正の本適用指針では、平成14年公表の本適用指針及び適用指針第5号に含まれていた以下の処理についての定めを削除した。
(1) 企業再編時における自己株式の処分
(2) 新株予約権の権利行使時における自己株式の処分
(1)については企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」、(2)については企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」において示されることとなった。
なお、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」においては、会社がその従業員等に対し新株予約権を付与する取引の他、会社が財貨又はサービスの取得において、報酬又は対価として自己株式を用いる取引等も適用範囲に含まれている。
28. 平成17年改正の本適用指針では、会社法において自己株式の取得の対価及び配当財産が金銭以外の場合もあることが明らかにされたことから、新たにこれらの会計処理を取り扱うこととした。なお、配当財産が金銭以外の場合の会計処理については、分配側の会計処理のみを本適用指針で示し、受取側の会計処理については企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」で示されている。
28-2. 平成18年改正の本適用指針では、平成18年5月1日に会社計算規則(平成18年法務省令第13号)が施行されたこと等に伴い、自己株式の処分と新株の発行が同時に行われた場合の会計処理を新たに取り扱うなどの改正を行った。
自己株式の会計処理及び表示
自己株式の取得及び処分の認識時点
29. 自己株式等会計基準では、第7項に自己株式の取得の会計処理を、第9項及び第10項に募集株式の発行等の手続による自己株式の処分の会計処理をそれぞれ定めているが、それらをいつ認識すべきかについては明示していないため、自己株式の取得と募集株式の発行等の手続による自己株式の処分を取り上げて、認識時点の検討を行った。
30. 自己株式の取得及び処分の認識時点については、以下の方法が考えられる。
(1) 有価証券の売買契約の認識に準ずる方法
(2) 資本の払戻し及び資本の払込みの性格を有する類似の取引の認識に準ずる方法
31. 前項の(1)の有価証券の売買契約の認識に準ずる方法は、自己株式の取得及び処分が既発行株式の売買によって行われることに着目する方法である。この方法によると、自己株式の取得及び処分は、原則的に取引の相手先との契約時に認識することになる。
32. 一方、第30項の(2)の資本の払戻し及び資本の払込みの性格を有する類似の取引の認識に準ずる方法は、自己株式の取得及び処分が、株主への資本の払戻し及び株主からの資本の払込みの性格を有することに着目する方法である。自己株式等会計基準では、自己株式の取得及び処分は、株主との間の資本取引であり、資本の払戻し及び資本の払込みの性格を有すると位置付けた上で、その考えに照らして会計処理を定めている。よって、この会計処理との整合性から、(2)の資本の払戻し及び資本の払込みの性格を有する類似の取引の認識に準ずる方法が適切であると考えられる。
33. 第30項の(2)の資本の払戻し及び資本の払込みの性格を有する類似の取引の認識に準ずる方法を採用した場合、まず、自己株式の取得については、本適用指針適用以前の有償消却の処理に準ずることが考えられる。有償消却の処理については、特に明文化された定めはなかったが、一般的には、法的手続が完了し株主に消却の代金を支払うべき日に、認識されていたものと思われる。よって、自己株式の取得についても、原則的に対価を支払うべき日に認識することが適切であると考えられる。また、対価が金銭以外の場合は、交換の処理に準じて、対価が引き渡された日に認識することが適切であると考えられる。
34. 一方、募集株式の発行等の手続による自己株式の処分については、会社法上、その効力が生じるのは払込期日とされており、払込期日に認識することが適切である(第5項参照)。
35. なお、自己株式の処分を払込期日に認識する場合、払込期日前日までに受領した自己株式の処分の対価相当額のうち、未だ処分の認識を行っていないものに関する貸借対照表における会計処理が問題になる。これについては、預り金として負債の部に計上する方法と、純資産の部に計上する方法が考えられる。自己株式の処分が募集株式の発行等の手続により行われ、この受領額については投資家がそれに応じて払い込んでいる以上、当該受領額は返済されず、極めて短期間に自己株式の処分の対価となる。よって、これらは負債の部に計上することは適切ではなく、申込期日経過後における新株式申込証拠金と同様に、純資産の部に計上することが適切である(第6項参照)。
具体的な表示としては、自己株式申込証拠金の科目をもって表示することが考えられる。
また、純資産の部における表示個所としては、株主資本の控除とされている自己株式に対応するものであるため、その直後に表示することが適切と考えられる。
自己株式の取得原価の算定(対価が金銭以外の場合)
(企業集団内の企業から自己株式を取得する場合)
36. 企業会計審議会から公表された「企業結合に係る会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。なお、平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)三4(1)@イでは、共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上するとされている。当該定めは企業又はある企業を構成する事業の移転を前提としたものであるが、当該定めについて「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「企業結合会計意見書」という。なお、平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)三5(1)では、共通支配下の取引を企業集団内における純資産等の移転取引としての内部取引と考えたため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないようにするための定めである旨の説明がなされている。また、企業結合会計基準三4(1)@ハでは、移転された資産及び負債の対価として取得した株式の取得原価は、当該資産及び負債の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて算定することとされている。このため、企業集団内の企業から金銭以外の財産を対価として、自己株式を取得する場合についても、共通支配下の取引に準じて、当該自己株式の取得原価は、移転された資産及び負債の適正な帳簿価額により算定することが適切と考えられる。
この場合における企業集団内の企業については、企業結合会計意見書三 5 及び企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第201項及び第202項の定めに準じて取り扱うこととし、支配の判定は、日本公認会計士協会監査委員会報告第60号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」に準じて行うものとする。
(自社の他の種類の株式を交付する場合)
37. 自己株式の取得の対価として、自社の株式(新株又は自己株式)を交付した場合の自己株式の取得原価の算定方法は以下の2つが考えられる。
(1) 対価として交付した自社の株式の時価を基礎として算定する方法
(2) 対価として交付した自社の株式の帳簿価額を基礎として算定する方法
なお、新株の発行においては、帳簿価額がないため零とする。
(1)は、取得の対価として交付した自社の株式が新株であれ自己株式であれ、自己株式の取得原価は同額になるべきとの考えによる。
(2)は、当該取引の実態は、純資産の部の株主資本内の移動であって、新たな払込みの事実がなく、払込資本を増加させる必要はないとの考えによる。
検討の結果、以下の理由により、(2)の方法によることとした。
@ 自己株式の取得の対価として自社の株式を交付した場合、その対価の算定基礎が交付した自社の株式の時価であれ帳簿価額であれ、純資産の部の株主資本の合計は変わらず、また、損益も生じない。このため、自己株式の取得原価は、資産の取得原価と異なり、取得の対価によりその金額が異なっても、その後の損益に影響はなく、不適切とはいえないこと
A 交付した自社の株式の時価を基礎として会計処理すると、他の種類の新株を発行した場合に、払込資本と純資産の部の株主資本の控除項目である自己株式が時価相当分だけ増加するが、増加する払込資本を資本金又は資本準備金としたときに分配可能額(会社法第461条第2項)が減少すること
なお、株主に対して新たに払込みをさせないで、自社の株式を交付する場合(株式無償割当て)も同様に、(2)の考え方によることが適切と考えられる。
金銭以外の財産をもって自己株式を取得した場合や現物配当を行う場合の会計処理
38. 本適用指針では、自己株式の取得の対価が金銭以外の財産となる場合の会計処理も示している(第7項から第9項参照)。当該取引は、自己株式の取得(株主資本の減少)と現物資産の減少(資産の減少)であり、現物配当も同様の経済効果を有する。本適用指針では、両者の会計処理の整合性を図るよう現物配当を行う会社の会計処理についても示している(第10項参照)。
一般に、金銭以外の財産をもって会社を清算した場合、投資の回収の結果を示すよう分配前に清算損益を計上することが適切である。このため、金銭以外の財産をもって配当した場合や金銭以外の財産をもって自己株式を取得した場合も同様に、原則として、分配前に損益を計上し、配当財産の時価をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額することが適切であると考えられる。これは、株主との取引であっても、通常、時価を基礎として当該取引が行われているものと考えられることとも整合的である。
しかしながら、事業分離日に生じた分割承継会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当する場合(分割型の会社分割(按分型))には、従来、人的分割と言われていたように、分割会社自体が単に分かれただけであるという見方が一般的であり、また、事業分離日ではなくても、保有している子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当する場合も同様の見方が可能であることから、損益を計上しないことが適切であると考えられる。さらに、企業集団内の企業へ配当する場合には、企業結合における共通支配下の取引に準じて(第36項参照)、また、市場価格がないことなどにより公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合にも、損益を計上しないことが適切であると考えた。
したがって、本適用指針では、国際的な調和も勘案し、このような場合には、配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額し、損益を計上しないものとした。
自己株式の無償取得の会計処理
39. 自己株式を無償で取得した場合、自己株式等会計基準適用前は、通常の有価証券と同様に、譲受時の時価で自己株式を資産として計上し、同額を利益として計上してきたと思われるが、自己株式等会計基準の適用により、自己株式の取得が資本の控除とされたことから、これらの会計処理を再検討する必要が生じた。
40. 自己株式の無償取得の会計処理としては、以下の方法が考えられる。
(1) 自己株式を時価で測定し、同額を利益とする方法
(2) 自己株式を時価で測定し、同額を資本剰余金とする方法
(3) 自己株式の数のみの増加として処理する方法
41. 前項の(1)及び(2)の自己株式を時価で測定する方法は、以下のような点を論拠とする。
@ 通常の有価証券と同様に自己株式も換金性があり、価値のあるものを受け取っている限り、その側面を適切に表すために、自己株式を時価で測定し認識すべきである。
A 自己株式を時価で取得した後に、取得の対価の支払を免除されたと擬制できる。
B 自己株式の譲渡者は、通常譲り受けた会社が利益を計上することを意図しており、その意図を反映すべきである。
なお、自己株式を時価で測定した場合に、利益とするか資本剰余金とするかの選択は、資本剰余金に含めるべき範囲をどう考えるかによると思われる。
42. 一方、第40項の(3)の自己株式の数のみの増加として処理する方法は、自己株式を無償で取得しても、取得した会社にとっては資産が増加せず、贈与した株主が有していた持分が他の株主に移転するのみ、すなわち株主間の富の移転が生じているのみと考えられることを論拠とする。ここで、新株の有利発行の際に、時価と発行価額の差額を費用処理しないことにみられるように、一般に、株主間の富の移転のみによって当該会社の株主持分額の変動は認識されない。その処理との整合性からは、自己株式を無償で取得した場合は、自己株式の数のみの増加として処理することとなる。
なお、自己株式等会計基準第7項では「取得した自己株式は、取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する。」としているが、(3)の考えを採用した場合、取得の対価がない自己株式の無償取得については、取得原価は存在しないものと解される。
43. 自己株式等会計基準では、自己株式の取得は、株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しと位置付け、純資産の部の株主資本から控除する会計処理を採用している。その考えとの整合性からは、第40項の(1)及び(2)の方法のように、換金可能な資産としての側面に着目し、自己株式を時価で測定する方法は適切ではないと考えられる。また、(1)及び(2)の方法の論拠である自己株式を時価で取得した後に、取得の対価の支払を免除されたとの擬制についても、支払の免除という事実がないにもかかわらず、それらの取引があったかのように処理することは、そのような擬制をする方がより実態を表す場合を除いては適切ではないと考えられる。さらに、譲渡者の意図を反映すべきとの考えについても、このケースにおいては、譲渡者の意図により、会計処理を変える合理的な理由はないと思われる。
よって、(3)の自己株式の数のみの増加として処理する方法を採用することとした。
44. なお、無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合は、その事実を開示するため、その旨及び株式数を連結財務諸表及び個別財務諸表に注記することが適切と考えられる。
子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い
45. 平成13年改正商法により、自己株式の取得及び保有規制の見直しがなされたことに伴い、子会社及び関連会社においても当該会社の自己株式が相当数長期間にわたり保有されることとなった。子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式については、自己株式等会計基準適用前は子会社及び関連会社で資産として計上されており、連結財務諸表上も資産とされていたが、自己株式等会計基準の適用により、子会社及び関連会社において当該会社の自己株式が資本の控除項目となったことから、連結財務諸表における会計処理も再検討する必要が生じた。
(連結子会社が保有する当該連結子会社の自己株式に関する取扱い)
46. 連結子会社が保有する当該連結子会社の自己株式の連結財務諸表における会計処理を検討する上では、以下の事項が論点になると考えられる。
(1) 連結子会社が自己株式を少数株主から取得した段階で、親会社の持分比率の変動を認識すべきか。
(2) 連結子会社における当該連結子会社の少数株主との間の資本取引を、連結財務諸表上も資本取引として取り扱うべきか。
(3) 連結子会社における自己株式の取引により生じた親会社持分の変動額を、どの期の損益に帰属させるべきか。
47. まず、連結子会社が当該連結子会社の少数株主から自己株式を取得した段階で、親会社の持分比率の変動を認識すべきかという論点に関しては、肯定する意見と否定する意見がある。
持分比率の変動を認識すべきとの意見は、連結子会社が自己株式を少数株主から取得した段階で、実際に連結子会社の純資産の変動が生じるとともに、少数株主が有する株式数が減少している点を論拠とする。一方、持分比率の変動を認識すべきでないとの意見は、連結子会社における自己株式の取得は処分及び消却までの暫定的な状態であることを論拠とする。
48. 以下の理由から、連結子会社が当該連結子会社の自己株式を少数株主から取得した段階で、親会社の持分比率の変動を認識すべきと考えられる。
(1) 持分比率の変動を認識しなかった場合、実際に少数株主が減少しているのに、減少に見合う少数株主損益及び少数株主持分の減少が認識されないことになること
(2) 会社法では、自己株式の保有目的を限定していないため、子会社による自己株式の保有が、長期間継続することが想定されること
なお、親会社の持分比率の変動を認識する場合、親会社の持分比率は、親会社の保有する当該連結子会社の株式数を、当該連結子会社の発行済株式総数から当該連結子会社の自己株式数を控除した数で除して算定することになる。
49. 次に、連結子会社における当該連結子会社の少数株主との取引を、連結上の資本取引と考えるべきかが論点になる。連結子会社の少数株主との取引も資本取引であると考えた場合は、原則として損益は生じないことになる。この問題については、連結財務諸表の作成目的と関連する問題である。連結財務諸表の作成目的については、古くから連結財務諸表を親会社の財務諸表と位置付け親会社の株主の立場から連結財務諸表を作成する方法(親会社説)と、連結財務諸表を企業集団の財務諸表と位置付け企業集団を構成するすべての会社の株主の立場から連結財務諸表を作成する方法(経済的単一体説)の2 つが論じられている。
現行の連結財務諸表原則(連結財務諸表に関しては、平成20年12月に企業会計規準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準という。)が公表されている。)では、親会社説を採用しており、連結子会社における当該連結子会社の少数株主との取引は、連結上の資本取引とは考えないことが適切と考えられる。
50. 連結子会社における少数株主との取引を連結上の資本取引と考えない場合、次に、連結子会社の自己株式の取引による親会社持分の変動額について、過去の損益の修正とするか、当期の損益とするか、将来に繰り延べるか、ということが論点になり、どのような会計処理を採用すべきかが問題になる。
51. 連結子会社の自己株式の少数株主からの取得については、少数株主への払戻しにより親会社の持分比率が増加する点で、親会社による少数株主からの子会社株式の追加取得に準じて処理することが考えられる。この場合、自己株式の取得の対価と少数株主持分の減少額との差額をのれん(又は負ののれん)とすることが適切と思われる。
52. 連結子会社の少数株主への自己株式の処分については、少数株主からの払込みにより親会社の持株比率が減少する点で、親会社による子会社株式の一部売却に準じて処理することが考えられる。この場合、通常は連結子会社による少数株主への第三者割当増資に準じて処理することが適切と思われる。
なお、連結財務諸表原則会計基準では、連結子会社による少数株主への第三者割当増資に伴う持分変動差額は、原則として当期の損益とされ、例外的に「利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる場合には、連結利益剰余金に直接加減することができる」こととされている。
53. 連結子会社が保有する自己株式を消却した場合、連結される子会社の資本の変動及び親会社の持分比率の変動はもたらされないため、連結貸借対照表上、資産の部、負債の部及び純資産の部に変動は生じないと考えられる。
54. また、第51項及び第52項の方法によった場合、例えば連結子会社による少数株主への第三者割当増資と自己株式の取得を組み合わせたり、自己株式の取得と処分を繰り返すことにより、親会社の投資に生じている評価益を損益に計上することも想定される。これらの取引が利益の計上のみを目的にした意図的に仕組まれた取引であり、実質的に第三者に子会社の持分の支配が移転したとみなすことができない場合は、損益の計上は認められないと考えられるため留意が必要である。
55. 第17項から第19項に定めた方法は現行の連結財務諸表原則会計基準に則した処理であるが、子会社における自己株式取引は今後増加し、子会社における資本取引の重要性が高まることが想定される。よって、子会社の資本取引により生じた親会社持分の変動額を、どの期の損益に帰属させるべきかという論点については、今後必要に応じて検討すべき課題であると考えられる。
(持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社が保有する当該持分法適用会社の自己株式に関する取扱い)
56. 持分法適用会社が保有する当該持分法適用会社の自己株式の取扱いについても、論点の内容は連結子会社が保有する自己株式の取扱いと同様である。よって、連結子会社の場合と同様に、持分法適用会社における親会社等以外からの自己株式の取得及び親会社等以外への処分は、親会社等による持分法適用会社の株式の追加取得及び一部売却に準じて処理することが適切と思われる。
したがって、持分法適用会社における親会社等以外の株主からの自己株式の取得の場合は、自己株式の取得の対価と親会社等以外の持分の減少額との差額を投資に含め、のれん(又は負ののれん)と同様に処理することになる。また、持分法適用会社による親会社等以外の株主への自己株式の処分の場合は、通常は持分法適用会社における親会社等以外に対する第三者割当増資に準じて処理することになる。さらに、持分法適用会社が、保有する自己株式を消却した場合、持分法適用会社の純資産の変動及び親会社等の持分比率の変動をもたらさないため、持分法上の会計処理は生じないこととなる。
設例
[設例1]
自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合の取扱い
<前提>
1. 株主総会で以下の事項が決議され、実行された。
@ 募集株式の数 100株
(うち新株の発行は90株、自己株式の処分は10株)
A 募集株式に関わる払込金額 100
B 処分する自己株式の帳簿価額 20
2. 新株の発行に対応する払込金額はすべて資本金とする。
3. なお、処分に係る付随費用及び払込期日までの処理は考慮しない。
<自己株式の処分と新株の発行>
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100 |
資本金(*1) |
80 |
|
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自己株式 |
20 |
(*1) 資本金80=(募集株式に関わる払込金額100×新株発行数90株/募集株式発行数100株)−会社計算規則第37条第1項第3号により算出される額10(*2)
(*2) 会社計算規則第37条第1項第3号により算出される額10=処分する自己株式の帳簿価額20−(募集株式に関わる払込金額100×自己株式処分数10株/募集株式発行数100株)。
なお、当該額が負の値となる場合、当該差額はその他資本剰余金の額の増加として処理することとなる(会社計算規則第37条第2項第1号)。
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なお、本設例における<前提>1 が以下の場合、会計処理は次のようになる。
1.株主総会で以下の事項が決議され、実行された。
@ 募集株式の数 100株
(うち新株の発行は10株、自己株式の処分は90株)
A 募集株式に関わる払込金額 100
B 処分する自己株式の帳簿価額 120
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100 |
自己株式 |
120 |
その他資本剰余金 |
20 |
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会社計算規則第37条第1項第3号により算出される額30(=処分する自己株式の帳簿価額120−(募集株式に関わる払込金額100×自己株式処分数90株/募集株式発行数100株))が零以上であり、当該額が、払込金額に新株発行の割合を乗じて得た額10(=100×10/100)を超えるため、資本金の額は増加しない(会社計算規則第37条第1項)。
このとき減少するその他資本剰余金の額は、会社計算規則第37条第2項第1号により算出される額となる。
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[設例2]
連結財務諸表における子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱い
1.連結子会社の場合
<前 提>
1. P社(親会社=上場会社)はS社(子会社)の株式の80%を所有している。
2. X1年3月31日(決算日)に、S社の保有するP社株式の帳簿価額は100、時価は150であった。S社はP社株式をその他有価証券に分類した。税率は40%とする。
3. X1年5月19日にS社はP社株式全株を200で市場売却し、売却益100を計上した。
4. X2年3月31日(決算日)にS社はP社株式売却益100に対応する税金40を計上した。
<X1年3月期>
@ S社によるP社株式の期末時価評価(X1年3月31日(決算日))
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
P社株式(その他有価証券) |
50 |
繰延税金負債 |
20 |
|
|
その他有価証券評価差額金 |
30 |
|
A 連結修正仕訳(X1年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
繰延税金負債 |
20 |
P社株式(その他有価証券) |
50 |
その他有価証券評価差額金 |
30 |
|
|
|
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己株式(*1) |
80 |
P社株式(その他有価証券) |
100 |
小数株主持分 |
20 |
|
|
(*1) 連結財務諸表上、自己株式として控除する金額=S社の取得価額100×80%=80
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<X2年3月期>
@ S社によるP社株式の売却(評価差額期首洗替仕訳は省略)(X1年5月19日)
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
200 |
P社株式(その他有価証券) |
100 |
|
|
有価証券売却益 |
100 |
|
A S社によるP社株式売却益に対応する税金の計上(X2年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
法人税等 |
40 |
未払法人税等 |
40 |
|
B 連結修正仕訳(X2年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
小数株主損益 |
12 |
小数株主持分 |
12 |
|
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
有価証券売却益 |
80 |
法人税等 |
32 |
|
|
資本剰余金(*2) |
48 |
(*2) 連結財務諸表上、資本剰余金(自己株式処分差益)として処理する金額=60(P社株式売却益100−対応する税金40)×80%=48
|
2.持分法適用関連会社の場合
<前提>
1.P社(上場会社)はA社(関連会社)の株式の30%を所有している。
2. その他の前提は、「1.連結子会社の場合」と同様とする。
<X1年3月期>
@ A社によるP社株式の期末時価評価(X1年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
P社株式(その他有価証券) |
50 |
繰延税金負債 |
20 |
|
|
その他有価証券評価差額金 |
30 |
|
A 連結修正仕訳(X1年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
A社株式(関連会社株式) |
9 |
その他有価証券評価差額金 |
9 |
|
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
その他有価証券評価差額金 |
9 |
A社株式(関連会社株式) |
9 |
|
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己株式(*1) |
30 |
A社株式(関連会社株式) |
30 |
(*1) 連結財務諸表上、自己株式として控除する金額=A社の取得価額100×30%=30
|
<X2年3月期>
@ A社によるP社株式の売却(評価差額期首洗替仕訳は省略)(X1年5月19日)
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
200 |
P社株式(その他有価証券) |
100 |
|
|
有価証券売却益 |
100 |
|
A A社によるP社株式売却益に対応する税金の計上(X2年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
法人税等 |
40 |
未払法人税等 |
40 |
|
B 連結修正仕訳(X2年3月31日(決算日))
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
A社株式(関連会社株式) |
18 |
持分法投資損益 |
18 |
|
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
持分法投資損益 |
18 |
資本剰余金(*2) |
18 |
(*2) 連結財務諸表上、資本剰余金(自己株式処分差益)として処理する金額=60(P社株式売却益100−対応する税金40)×30%=18
|
[設例3] 子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表における取扱い(連結子会社が保有する当該連結子会社の自己株式に関する取扱い)
1.子会社株式の取得
<前提>
1. P社はS社株式の70%をX1年3月31日に1,120で取得し、S社を連結子会社とした。
2. S社の資産、負債に土地等時価評価すべきものはない。
3. S社の発行済株式数は100株とする。
4. X1年3月31日時点のS社の資本金は1,000、利益剰余金は600とする。
5. P社、S社ともに、決算日は3月31日である。
<X1年3月31日の連結修正仕訳>
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
資本金 |
1,000 |
S社株式 |
1,120 |
利益剰余金 |
600 |
少数株主持分(*1) |
480 |
(*1) 少数株主持分=1,600×30%=480
|
2.連結子会社における当該連結子会社の自己株式の少数株主からの取得
<前提>
1. X2年3月31日に、S社は少数株主より自社の自己株式を10株取得した。取得価額は300であった。
2. X2年3月期のS社の利益は0であり、剰余金の配当等は行っていない。
X2年3月31日のS社による自己株式取得による持分変動後の親会社及び少数株主の持分比率、持分額は以下のとおりとなる。
|
|
持分比率 |
持分額 |
親会社持分 |
70株÷(100−10)株=77.8% |
(1,600−300)×77.8%=1,011 |
小数株主持分 |
20株÷(100−10)株=22.2% |
(1,600−300)×22.2%= 289 |
|
|
|
|
|
22.2%=289 |
77.8%=1,011 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
30%=480 |
70%=1,120 |
<自己株式の少数株主からの取得>
自己株式の少数株主からの取得は、親会社による少数株主からの子会社株式の追加取得に準じて取り扱い、自己株式の取得の対価と少数株主持分の減少額との差額はのれんとして処理する。
この取引は、持分比率に応じた子会社による資本の払戻しと、親会社による少数株主からの追加取得に分解して考えることもできる。
@ まず、従来の持分比率で親会社(70%)、少数株主(30%)に300の資本の払戻しを行ったと考える。
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
小数株主持分(*1) |
90 |
自己株式(子会社) |
300 |
S社株式(*2) |
210 |
|
|
(*1) 少数株主持分の減少額=300×30%=90
(*2) S社株式の減少額=300×70%=210
|
A 次に、親会社は、@の取引により払い戻された現金をもって、少数株主持分を追加取得したと考える。
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
小数株主持分(*3) |
101 |
S社株式 |
210 |
のれん(*4) |
109 |
|
|
(*3)少数株主持分の減少比率=30%(当初持分比率)−22.2%(自己株式取得後の持分比率)=7.8%
少数株主持分の減少額=(1,600−300)×7.8%=101
(*4)のれん=210−101=109
|
3.連結子会社における当該連結子会社の自己株式の少数株主への処分
<前提>
1. X3年3月31日に、S社は自社の自己株式10株を第三者に対し処分した。その際の処分価格は400であった。
2. X3年3月期のS社の利益は 0であり、剰余金の配当等は行っていない。
3. のれんは20年で償却している。
<開始仕訳>
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
資本金 |
1,000 |
S社株式 |
1,120 |
利益剰余金 |
600 |
小数株主持分(*1) |
289 |
のれん |
109 |
自己株式(子会社) |
300 |
(*1)少数株主持分=1,300(子会社純資産)×22.2%(少数株主比率)=289
|
<のれんの償却>
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
のれん償却費(*2) |
5 |
のれん |
5 |
(*2) S社のX2年3月期発生ののれんを償却する。
109÷20年=5
|
<自己株式の少数株主への処分>
自己株式の少数株主への処分については、親会社による子会社株式の一部売却に準じて取り扱い、通常は連結子会社による少数株主への第三者割当増資と同様に処理する。
この取引は、子会社が処分した自己株式をいったん持分比率に応じて親会社と少数株主で取得し、親会社はその取得金額で少数株主へ当該自己株式を売却したものと考えることもできる。
X3年3月31日のS社による自己株式の処分後の親会社及び少数株主の持分比率、持分額は以下のとおりとなる。
|
|
持分比率 |
持分額 |
親会社持分 |
70株÷(90+10)株=70% |
(1,300+400)×70%=1,190 |
小数株主持分 |
30株÷(90+10)株=30% |
(1,300+400)×30%= 510 |
|
@ まず、自己株式処分前の持分比率に応じて、親会社(77.8%)、少数株主(22.2%)が自己株式を取得したとする。
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己株式(子会社) |
300 |
小数株主持分(*3) |
89 |
資本剰余金 |
100 |
S社株式(*4) |
311 |
(*3) 少数株主持分=400×22.2%=89
(*4) 親会社持分=400×77.8%=311
|
A 次に、@の親会社の取得金額で、少数株主に7.8%の持分を売却したとする。
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
S社株式 |
311 |
少数株主持分(*5) |
132 |
|
|
持分変動損益 |
179 |
持分変動損益(のれん償却費相当) |
10 |
のれん(*6) |
10 |
(*5) 少数株主持分の増加=(1,300+400)×7.8%=132
(*6) 売却持分に対応するのれんを償却し、持分変動損益に加減する。
のれん減少額=(109−5)×7.8%÷77.8%=10
|
4.連結子会社における当該連結子会社の自己株式の消却
<前 提>
1. 「2.連結子会社における当該連結子会社の自己株式の少数株主からの取得」を前提とする(「3.連結子会社における当該連結子会社の自己株式の少数株主への処分」の代わりに、当該自己株式を消却するケースである。)。
2. X2年4月1日に、S社は自社の自己株式10株を消却した。
<開始仕訳>
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
資本金 |
1,000 |
S社株式 |
1,120 |
利益剰余金 |
600 |
少数株主持分(*1) |
289 |
のれん |
109 |
自己株式(子会社) |
300 |
(*1)少数株主持分=1,300(子会社純資産)×22.2%(少数株主比率)=289
|
<自己株式の消却>
子会社で自己株式の消却が行われても、発行済株式総数から自己株式数を控除した数に変更はないため、親会社の持分比率の変動は起こらない。よって、子会社における自己株式の消却の処理を取り消すのみとなる。
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借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己株式(子会社) |
300 |
その他資本剰余金 |
300 |
|
以上
INDEX
■自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準目次|
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