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会計基準結論の背景適用指針第2号|適用指針第3号|目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成17年2月27日に公表したものです。なお、実務への適用に当ってはオリジナルの当該適用指針等を確認してください。

企業会計基準適用指針第3号

その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理

(目的・適用指針・結論の背景)

平成14年2月21日

改正平成17年12月27日

企業会計基準委員会

目次

目的

適用指針

範囲

会計処理

適用時期

議決

結論の背景

検討の経緯

会計処理


目的

1. 本適用指針は、その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理を定めるものである。

適用指針

範囲

2. 本適用指針は、その他資本剰余金の処分による配当(配当財産が金銭である場合に限る。以下同じ。)を受けたすべての会社に適用する。

配当財産が金銭以外である場合の株主の会計処理は、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下「事業分離等会計基準」という。)によることになる。

会計処理

3. 株主が資本剰余金の区分におけるその他資本剰余金の処分による配当を受けた場合、配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合を除き、原則として配当受領額を配当の対象である有価証券の帳簿価額から減額する。

4. 配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合は、配当受領額を受取配当金(売買目的有価証券運用損益)として計上する。

5. 第4項に定める以外の場合でも、以下の例のように配当受領額を収益として計上することが明らかに合理的である場合は、受取配当金に計上できるものとする。

(1) 配当の対象となる時価のある有価証券を時価まで減損処理した期における配当

(2) 投資先企業を結合当事企業とした企業再編が行われた場合において、結合後企業からの配当に相当する留保利益が当該企業再編直前に投資先企業において存在し、当該留保利益を原資とするものと認められる配当(ただし、配当を受領した株主が、当該企業再編に関して投資先企業の株式の交換損益を認識していない場合に限る。)

(3) 配当の対象となる有価証券が優先株式であって、払込額による償還が約定されており、一定の時期に償還されることが確実に見込まれる場合の当該優先株式に係る配当

6. 配当金の認識は、「金融商品会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号最終改正平成17年2月15日)第94項と同様とする。

なお、配当金を計上する際に、その他利益剰余金の処分によるものか、その他資本剰余金の処分によるものかが不明な場合は、受取配当金に計上できるものとする。その後、その他資本剰余金の処分によるものであることが判明した場合には、その金額に重要性が乏しい場合を除き、その時点で修正する会計処理を行う。

適用時期

7. 平成17年12月27日改正の本適用指針(以下「改正適用指針」という。)は、会社法(平成17年法律第86号)施行日以後に認識される配当から適用する。

なお、改正適用指針の適用前に認識される配当については、改正前の本適用指針(以下「改正前適用指針」という。)による。

議決

8. 改正適用指針は、第94回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。

結論の背景

検討の経緯

9. 平成14年2月21日に当委員会が公表した改正前適用指針は、同時に公表した企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」に関連し、その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理を定めたものである。

改正適用指針は、平成17年7月26日に会社法が公布されたこと、また、当委員会が、平成17年12月27日に企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」を改正したこと、及び平成17年12月27日に事業分離等会計基準を公表したことに伴い、改正前適用指針について所要の改正を行ったものである。

会計処理

10. 現行の会計実務では、留保利益から配当を受けたときは受取配当金で処理し、払込資本の払戻しを受けたときは投資勘定の減額で処理することが多い。この処理は、投資成果の分配と投資そのものの払戻しを、支払側の配当の原資に従って区別することを意図している。

11. その他資本剰余金は、資本金及び資本準備金の額の減少により生じた剰余金及び自己株式処分差益等の額で構成され、その内容は原則として株主からの払込資本である。よって、その他資本剰余金の処分による配当は、基本的には投資の払戻しの性格を持つ。したがって、現行の会計実務に合わせ、それらの配当を受けた株主の側では、有価証券の帳簿価額を減額することを原則的な処理とした。

12. 配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券であり、期末に時価評価され評価差額が損益計算書に計上されている場合には、配当に伴う価値の低下が期末時価に反映されているため、配当の原資にかかわらず収益計上することが適切であり、受取配当金(売買目的有価証券運用損益)として処理することとした。

13. なお、本質的には支払側の配当の原資(その他資本剰余金又はその他利益剰余金)により、自動的に受取側の会計処理(投資成果の受取又は投資の払戻し)が決定されるわけではない。例えば、以下の場合には、支払側の配当の原資に従って受取側が処理しても、必ずしも投資成果の分配と投資そのものの払戻しを整合的に処理できない。

(1) その他利益剰余金の処分による配当の原資が、投資以後に投資先企業が計上した留保利益の額を超えている場合

(2) その他利益剰余金の処分による配当の原資が、投資先企業で行われた資本金又は資本準備金による欠損てん補の額に満たない留保利益である場合

こうした支払側と受取側の不整合は、子会社株式及び関連会社株式、その他有価証券のすべてに持分法を適用しない限り、避けられない。

14. また、資本準備金は原則として払込資本であるが、以下のような場合には利益性の剰余金たる性格を持つ部分が含まれている。

(1) 過去に行われた資産の再評価益が資本準備金に計上されている場合

(2) 株式移転設立完全親会社の資本準備金に株式移転完全子会社の留保利益相当額が含まれている場合

15. よって、その他資本剰余金の処分による配当受領額でも、収益として計上することが明らかに合理的である場合は、その場合に限って受取配当金として収益計上できるものとした。第5項で掲げた収益とみることが明らかに合理的な例の各々の趣旨は以下のとおりである。

(1) 配当の対象となる時価のある有価証券を時価まで減損処理した期における配当(第5項(1)参照)

投資の対象となった有価証券が期末に時価まで減損処理され、評価損が損益計算書に反映されている場合、配当に伴う価値の低下が期末時価に反映されているため、売買目的有価証券のケースと同様に受取配当金として収益計上できると考えた。

(2) 投資先企業を結合当事企業とした企業再編が行われた場合において、結合後企業からの配当に相当する留保利益が当該企業再編直前に投資先企業において存在し、当該留保利益を原資とするものと認められる配当(ただし、配当を受領した株主が、当該企業再編に関して投資先企業の株式の交換損益を認識していない場合に限る。)(第5項(2)参照)

結合後企業のその他資本剰余金の処分による配当が、実質的に企業再編直前の投資先企業(結合当事企業)の留保利益相当額からの配当であることが確認できる場合は、その他利益剰余金からの配当と同様に取り扱い、受取配当金として収益計上できると考えた。

このような例示に該当する場合としては、配当を受領した株主が、投資先企業の株式の交換損益を認識しないことを前提に、例えば、以下の場合が挙げられる。

@ 吸収合併存続会社のその他資本剰余金に投資先企業であった吸収合併消滅会社の留保利益相当額が含まれている場合の当該存続会社からの配当

A 株式移転設立完全親会社のその他資本剰余金に投資先企業であった株式移転完全子会社の留保利益相当額が含まれている場合の当該親会社からの配当

なお、被結合企業に関する投資が清算されたとみる場合には、被結合企業の株式と引換えに受け取った財の時価と、被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額との差額を交換損益として認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとするとされている(事業分離等会計基準第32項(1))。このため、当該交換損益を認識した株主が、結合後企業のその他資本剰余金の処分による配当を受けた場合には、その配当の原資が実質的に企業再編直前の投資先企業の留保利益に相当するものかどうかにかかわらず、投資の払戻しとして有価証券の帳簿価額を減額処理することになる。

改正前適用指針では、当該会計処理の例示として、企業結合年度の配当であることを示していたが、改正適用指針では示していない。これは、企業結合年度後の配当であっても、その配当の原資が企業再編直前に投資先企業に存在していた留保利益相当額であることが明らかな場合もあることを考慮したためである。ただし、この取扱いは、もともと配当受領額を収益として計上することが明らかに合理的である場合の取扱いであるため、投資先企業からの企業結合年度後における配当について当該会計処理を適用する場合には、上記の要件に照らして慎重に判断することが必要である。

(3) 配当の対象となる有価証券が優先株式であって、払込額による償還が約定されており、一定の時期に償還されることが確実に見込まれる場合の当該優先株式に係る配当(第5項(3)参照)優先株式の中には、発行者が償還する権利を持つものがある。そのような優先株式の場合で、払込額による償還が約定されており、一定の時期に償還されることが確実に見込まれる場合には、保有する当該優先株式は経済的には清算時の弁済順位を除き、債券と同様の性格を持つと考えられる。よって、当該優先株式に係る受取配当は受取利息と同様に収益として計上することが可能であると考えられる。この場合の優先株式の評価は債券の評価に準ずることになる。

16. 配当金を計上する際に、その他利益剰余金の処分によるものか、その他資本剰余金の処分によるものかが不明な場合は、受取配当金に計上できるものとしている(第6項なお書き参照)。これは、配当可能な剰余金として、資本剰余金と利益剰余金の双方がある場合には、一般に利益剰余金を優先的に配当の原資としているものと考えられること、及び事務負担への配慮によるものである。

なお、剰余金を配当する会社は、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた配当の原資(その他資本剰余金又はその他利益剰余金)を速やかに公表することが望ましい。

17. 現行の会計実務では、留保利益を原資とする配当を受けたときは受取配当金として処理する(第10項及び第11項参照)が、第13項で示されているように、支払側の配当の原資に従って受取側が処理しても、必ずしも投資成果の分配と投資そのものの払戻しを整合的に処理できない場合がある。

このため、留保利益を原資とする配当を受取配当金として計上すると、明らかに合理性を欠くと考えられる場合、例えば、帳簿価額に比して実質価額が低下しているものの減損処理に至っていない株式について、投資後に行われた資本金又は資本準備金による欠損てん補の額に満たない留保利益を原資とする配当を受領した場合(第13項(2)参照)、配当を受領した株主は、重要性が乏しい場合を除き、有価証券の帳簿価額を減額処理することが適当である。

以上


INDEX

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