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目次

 

(注)本内容は、平成21年4月9日企業会計審議会が公表した「監査基準の改訂に関する意見書」から「監査基準の改訂について」の部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該基準等を確認してください。

監査基準の改訂について

平成21年4月9日

企業会計審議会

 

 

一 経緯

企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という。)に関する監査基準については、平成14年の監査基準の改訂に際して、企業破綻の事例が相次ぎ、利害関係者の要望が強くなったことなどを背景に国際監査基準(ISA)などでも義務づけられていたことなどから導入されたものである。

近時の企業業績の急激な悪化に伴い、(四半期)財務諸表に継続企業の前提に関する注記や監査報告書に追記情報が付される企業が増加しているが、その背景として、継続企業の前提に関する注記の開示を規定している財務諸表等規則等やその監査を規定する監査基準において、一定の事象や状況が存在すれば直ちに継続企業の前提に関する注記及び追記情報の記載を要するとの規定となっているとの理解がなされ、一定の事実の存在により画一的に当該注記を行う実務となっているとの指摘がある。また、それらの規定や実務は国際的な基準とも必ずしも整合的でないとも指摘されている。

こうしたことから、当審議会は、平成21年3月、監査部会において、投資者により有用な情報を提供する等との観点から検討を行い、一定の事象や状況が存在すれば直ちに継続企業の前提に関する注記を要するとともに追記情報の対象と理解される現行の規定を改め、これらの事象や状況に対する経営者の対応策等を勘案してもなお、継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合に、適切な注記がなされているかどうかを監査人が判断することとした。当審議会では、これらを取り入れた公開草案を公表し広く意見を求め、寄せられた意見を参考にしつつ、更に審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、これを「監査基準の改訂に関する意見書」として公表することとした。今回の監査基準の改訂により、継続企業の前提に関する監査実務の国際的な調和を図ることができるものと考えられる。

なお、中間監査基準及び四半期レビュー基準においても、継続企業の前提に関わる同様の基準が規定されていることから、今後、監査部会において同様の観点からの改訂を検討することが必要である。

また、国際的には、継続的に監査基準の改訂が行われており、国際監査基準については、すべての基準を必須手続とそれ以外の手続に明確に区分することなどを内容とする明瞭性(クラリティ)プロジェクトが2009年(平成21年)3月に完了したところである。さらに、当審議会の企画調整部会において、「我が国における国際会計基準の取扱い」が検討されているところであり、仮に国際会計基準を導入する場合には、それが任意適用の段階であっても、国際会計基準に基づく財務諸表を適切に監査できることが必要である。我が国においても、こうした動きを踏まえて、継続的に監査基準を見直し、国際的な監査の基準との整合性をより高めつつ、公認会計士監査の質の向上を不断に図っていくことが重要であると考えられる。このため、当審議会では、今後も、継続的な監査基準の改訂作業を進めていく考えである。

二 主な改訂点とその考え方

1 継続企業の前提に関する監査の実施手続

我が国においては、経営者が継続企業の前提について評価すること、その結果について注記することについては、明確な会計基準が存在していない。このため、財務諸表の表示のルールを定めた内閣府令である財務諸表等規則等にしたがって継続企業の前提に関する開示の実務が行われていると考えられる。今般、投資者により有用な情報を提供する観点から国際会計基準などとの整合性をも踏まえ、財務諸表等規則等を改正し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であつて、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、経営者は、その評価の手順にしたがって、@当該事象又は状況が存在する旨及びその内容、A当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策、B当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由などを注記することが検討されている。

このような財務諸表等規則等の検討と合わせ、監査基準においても、国際監査基準における監査の実施手続と同様の手続を明確化することとした。すなわち、監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断した場合には、当該事象又は状況に関して合理的な期間について経営者が行った評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを確かめなければならないこととし、経営者が行った継続企業の前提に関する評価の手順を監査人においても確認するものとした。

なお、財務諸表の表示のルールや国際監査基準との整合性の観点も踏まえた「継続企業の前提に関する重要な不確実性」の文言については、継続企業の前提に関する監査の実施手続の文脈において、一続きで意味を持つ表現として使用することとしたものである。

2 継続企業の前提に関する意見表明

実施基準において、継続企業の前提に関し、監査人は、「継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否か」を確認することとなるよう改訂されることから、監査報告においても監査人は「継続企業の前提に関する重要な不確実性」が認められるときの財務諸表の記載に関して意見を表明することとした。

また、現行の報告基準において、重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消させるための合理的な経営計画等を示さないときには、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じ、意見の表明の適否を判断することとされている。この規定については、疑義を解消できる確実性の高い経営計画等が示されない場合には、監査人は意見を表明できないとの実務が行われているとの指摘がある。今般、国際的な実務をも踏まえ同規定を見直し、経営者が評価及び一定の対応策も示さない場合には、監査人は十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがあるため、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じ意見の表明の適否を判断することとした。

なお、従来、「継続企業の前提に関する注記」がなされてきたケースの一部について、経営者の対応策等から継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められないため、「注記」に至らないケースが生じることもある。上場会社等において、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められず当該注記を行わないケースにおいても、例えば、有価証券報告書の「事業等のリスク」等において、一定の事象や経営者の対応策等を開示し、利害関係者に情報提供が行われることが適切である。

三 実施時期等

1 改訂監査基準は、平成21年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する。なお、改訂基準の実施に当たり、関係法令において、基準の改訂に伴う所要の整備を行うことが適当である。

2 改訂基準を実務に適用するに当たって必要となる実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続の下で、早急に作成されることが要請される。


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