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目次

 

(注)本内容は、企業会計審議会が昭和31年12月25日に公表した「監査基準の設定について」から「監査基準等」部分を除いたものである。

監査基準の設定について

昭和三十一年十二月二十五日

大蔵省企業会計審議会中間報告

 

監査基準は、監査実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを帰納要約した原則であって、職業的監査人は、財務諸表の監査を行うに当り、法令によって強制されなくとも、常にこれを遵守しなければならない。

監査基準は、監査一般基準、監査実施基準及び監査報告基準の三種に区分する。監査一般基準は、監査人の適格性の条件及び監査人が業務上守るべき規範を明らかにする原則であり、監査実施基準は、監査手続の選択適用を規制する原則であり、監査報告基準は、監査報告書の記載要件を規律する原則である。

監査に関してかかる基準を設定する理由は、次のとおりである。

(1) 監査は、何人にも容易に行いうる簡便なものではなく、相当の専門的能力と実務上の経験とを備えた監査人にして初めて、有効適切にこれを行いうることが可能である。又監査人は何人にも安んじてこれを委せうるものではなく、高度の人格を有し、公正なる判断を下しうる立場にある監査人にして初めて、依頼人は信頼してこれを委任することができるのである。従って、監査人の資格及び条件について基準をもうけることは、監査制度の確立及び維持のために欠くべからざる要件である。

(2) 監査を実施するに当り、選択適用される監査手続きは、企業の事情により異なるものであって、一律にこれを規定することは不可能であり、監査人の判断にまつところが大である。しかしながら監査の能力と経験は個々の監査人によって差異があるから、一切をあげて監査人の自由に委ねることは、必ずしも社会的信用をかちうる所以ではない。それと同時に又監査に実施に関して公正妥当な任務の限界を明らかにしなければ、徒らに監査人の責任を過重ならしめる結果ともなる。従って鑑査に対する信頼性を高めるとともに、任務の範囲を限定するために、監査人の判断を規制すべき一定の基準を設け、これを遵守せしめることが必要である。

(3) 監査報告書は、監査の結果として、財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに、監査人が自己の意見に関する責任を正式に認める手段である。従ってその内容を簡潔明瞭に記載して報告するとともに責任の範囲を明確に記載して意見を表明することは、利害関係人ばかりでなく、監査人自身の利益を擁護するためにも重要である。過去の経験に徹するに、監査人は不当に責任を回避するため、あるいは徒らに晦渋な字句を用いて関係者を迷わせ、あるいは必要な記載を省略することが稀ではない。かくして監査人本来の目的を没却し、監査制度の健全な発展を阻害することになろう。それ故、監査報告書の記載要件につき一定の基準を設け、監査人をしてこれを厳重に守らしめなければならない。

(4) 監査実施基準に従えば、監査計画の設定に当って、いかなる監査手続きを選択し、いかにこれを適用するかは、基準の枠を逸脱しない限り、監査人がそのときの事情に応じて、適当に決定することができる。しかし本来監査実施基準は、企業の種類又は規模のいかんにかかわらず、あらゆる場合に妥当すべき根本原則であるから、その内容はおのずから一般的な制約にとどまらざるを得ない。従ってかかる抽象的な基準のみでは、監査慣行の充分に確立していないわが国の場合では、まだ必ずしも監査の社会的信用を確保するに足りるとはいえない。さらに具体的に監査実施の要件を定めて、監査人の任務の範囲を明らかにする必要が認められるので、監査実施基準を補足するものとして、監査実施準則を設定した。監査実施準則は、わが国の主要な企業の実際における会計制度の発展の現状を考慮して、事情の許す限り具体的に公正な限界を規定し、妥当な条件のもとに監査人を規制することを目的として制定したものである。

(5) 監査報告基準に対して監査報告準則を設定した趣旨も、監査実施基準に対する監査実施準則の関係とまったく同様である。監査報告基準は、およそ職業的監査人が行う正規の財務諸表監査における監査報告に関する根本原則であるが、かかる一般的な基準だけでは、未だ監査報告に関する慣行が確立していないわが国の現状では不充分であることを免れない。よって監査報告書の基本的様式、監査範囲に関する記載事項、財務諸表に対する意見の表明等に関して具体的な要件を明確にするために、監査報告基準を補足するものとして、監査報告準則を設定したのである。

昭和二十五年七月、経済安定本部企業会計基準審議会の中間報告として監査基準及び監査実施準則が公表されてから、すでに六年数ヶ月を経過した。当時におけるわが国の企業会計制度の実情のもとでは、この監査基準に基づいてただちに正規の財務諸表監査を実施することは、時期尚早であると考えられたので、初年度においては、会計制度監査を実施するにとどめ、その後の各年度においては、正規の財務諸表監査にいたるべき予備的段階として、財務諸表項目の一部について監査する部分的監査を実施することとし、逐次その範囲を拡大して今日に及んだのである。かくして企業会計制度の発展と相まって、監査慣行も次第に成熟するにいたったので、ここに正規の財務諸表監査を実施すべき時期が到来したのである。

本報告は、さきの中間報告の公表以来の数年の間における監査実務経験にかんがみ、監査基準及び準則の一部を改訂したが、監査基準における基本原則には何ら変更は加えられていない。

これを要するに、監査基準の設定は、徒らに監査人を制約するものではなくして、むしろ監査人、依頼人及び一般関係人の利害を合理的に調整して、監査制度に確固たる基準を与え、その円滑な運営を図ろうとするものである。 


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