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金融商品に関する会計基準目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成18年8月11日に公表した「金融商品に係る会計基準」から「結論の背景」部分を抜粋したものです。「目的・会計基準」は別に記載してあります。

企業会計基準第10号

金融商品に関する会計基準

(結論の背景)

改正平成18年8月11日

 企業会計基準委員会

平成11年1月22日

 企業会計審議会

目次

結論の背景

経緯

T.金融資産及び金融負債の範囲等

1.金融資産及び金融負債の範囲

2.時価

U.金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識

1.金融資産及び金融負債の発生の認識

2.金融資産の消滅の認識

(1) 基本的考え方

(2) 金融資産の譲渡に係る支配の移転

3.金融負債の消滅の認識

4.金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理

V.金融資産及び金融負債の評価基準に関する基本的考え方

W.金融資産及び金融負債の貸借対照表価額等

1.債権

2.有価証券

(1) 売買目的有価証券

(2) 満期保有目的の債券

(3) 子会社株式及び関連会社株式

子会社株式

関連会社株式

(4) その他有価証券

基本的な捉え方

時価評価の必要性

評価差額の取扱い

(評価差額の取扱いに関する基本的考え方)

(評価差額の一部の損益計算書への計上)

(5) 市場価格のない有価証券

(6) 時価が著しく下落した場合

3.運用を目的とする金銭の信託

4.デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務

5.金銭債務

X.貸倒見積高の算定

1.基本的考え方

2.貸倒見積高の算定方法

Y.ヘッジ会計

1.基本的考え方

2.ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象及びヘッジ手段

3.ヘッジ会計の要件

4.ヘッジ会計の方法

(1) 原則的処理方法

(2) ヘッジ対象に係る損益を認識する方法

(3) 金利スワップの取扱い

5.ヘッジ会計の終了等

Z.複合金融商品

1.払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品

2.その他の複合金融商品


結論の背景

経 緯

47. 企業会計審議会から平成2年5月に「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」が公表されるなど、先物取引、オプション取引及び市場性のある有価証券に係る時価情報の開示基準等が整備され、その後も、先物為替予約取引及びデリバティブ取引全般についての開示基準等の整備により、金融商品に係る時価情報の提供が広範に行われてきた。しかし、その後の証券・金融市場のグローバル化や企業の経営環境の変化等に対応して企業会計の透明性を一層高めていくためには、注記による時価情報の提供にとどまらず、金融商品そのものの時価評価に係る会計処理をはじめ、新たに開発された金融商品や取引手法等についての会計処理の基準の整備が必要とされる状況となった。

48. 企業会計審議会は、国際的動向も踏まえ、平成8年7月以降、金融商品部会(平成9年2月の部会改組以前は「特別部会・金融商品委員会」)において、金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識、金融商品の評価基準、貸倒見積高の算定方法、ヘッジ会計、複合金融商品等、金融商品に係る広範な問題についての審議を重ね、平成11年1月に「金融商品に係る会計基準」及び「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表した。

49. なお、平成9年及び平成10年における、諸般の課題に係る一連の会計基準等の整備は、@内外の広範な投資者の我が国証券市場への投資参加を促進し、A投資者が自己責任に基づきより適切な投資判断を行うこと及び企業自身がその実態に即したより適切な経営判断を行うことを可能にし、B連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構築するとの基本的認識に基づいて、21世紀に向けての活力と秩序ある証券市場の確立に貢献することを目指すものであり、平成11年1月に公表された本会計基準(改正前会計基準)も、このような基本的認識に沿った会計基準の整備の一環をなしている。

50. 平成18年公表の改正会計基準は、貸借対照表の純資産の部の表示を定めた企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)や会社法及び会社法への対応として公表された複数の会計基準等を踏まえ、これらとの関係で最小限必要な改正を行ったものである。

51. なお、金融市場の発展及び金融取引の開発はさらに進んでいくものと考えられることから、企業会計を取り巻く環境の変化に応じ、会計基準等の整備・改善について努力していく予定である。

T.金融資産及び金融負債の範囲等

1.金融資産及び金融負債の範囲

52. 本会計基準の適用対象となる金融資産及び金融負債については、適用範囲の明確化の観点から、米国基準等に見られる抽象的な定義によるのではなく、現金預金、金銭債権債務、有価証券、デリバティブ取引により生じる正味の債権債務等の具体的な資産負債項目をもって、その範囲を示すこととした。なお、デリバティブ取引に関しては、その価値は当該契約を構成する権利と義務の価値の純額に求められることから、デリバティブ取引により生じる正味の債権は金融資産となり、正味の債務は金融負債となる(第4項及び第5項参照)。このように金融資産及び金融負債の範囲を具体的に定めたことにより、国際的な基準における適用範囲との差異が生じるものではない。なお、金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称して金融商品ということにするが、金融商品には複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされているもの(複合金融商品)も含まれる。

53. 有価証券については、証券取引法に定義する有価証券以外のもので、証券取引法上の有価証券に類似し企業会計上有価証券として取り扱うことが適当と認められるものについても本会計基準を適用することが適当である。また、商品先物のような現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引は、本来の金融商品とは異なる面を有するが、通常、差金決済により取引が行われることにより金融商品と類似する性格をもつと認められるものについては、本会計基準を適用することが適当である。

2.時 価

54. 時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(市場価格)に基づく価額をいうこととした。また、デリバティブ取引等において、個々のデリバティブ取引について市場価格がない場合でも、当該デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときには、当該合理的に算定された価額は公正な評価額と認められる(第6項参照)。

なお、金融商品の種類により種々の取引形態があるが、市場には公設の取引所及びこれに類する市場の他、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる。

U.金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識

1.金融資産及び金融負債の発生の認識

55. 商品等の売買又は役務の提供の対価に係る金銭債権債務は、一般に商品等の受渡し又は役務提供の完了によりその発生を認識するが、金融資産又は金融負債自体を対象とする取引については、当該取引の契約時から当該金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや契約の相手方の財政状態等に基づく信用リスクが契約当事者に生じるため、契約締結時においてその発生を認識することとした(第7項参照)。

したがって、有価証券については原則として約定時に発生を認識し、デリバティブ取引については、契約上の決済時ではなく契約の締結時にその発生を認識しなければならない。

2.金融資産の消滅の認識

(1) 基本的考え方

56. 金融資産については、当該金融資産の契約上の権利を行使したとき、契約上の権利を喪失したとき又は契約上の権利に対する支配が他に移転したときに、その消滅を認識することとした(第8項参照)。例えば、債権者が貸付金等の債権に係る資金を回収したとき、保有者がオプション権を行使しないままに行使期間が満了したとき又は保有者が有価証券等を譲渡したときなどには、それらの金融資産の消滅を認識することとなる。

(2) 金融資産の譲渡に係る支配の移転

57. 金融資産を譲渡する場合には、譲渡後において譲渡人が譲渡資産や譲受人と一定の関係(例えば、リコース権(遡求権)、買戻特約等の保持や譲渡人による回収サービス業務の遂行)を有する場合がある。このような条件付きの金融資産の譲渡については、金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法(以下「リスク・経済価値アプローチ」という。)と、金融資産を構成する財務的要素(以下「財務構成要素」という。)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法(以下「財務構成要素アプローチ」という。)とが考えられる。証券・金融市場の発達により金融資産の流動化・証券化が進展すると、例えば、譲渡人が自己の所有する金融資産を譲渡した後も回収サービス業務を引き受ける等、金融資産を財務構成要素に分解して取引することが多くなるものと考えられる。このような場合、リスク・経済価値アプローチでは金融資産を財務構成要素に分解して支配の移転を認識することができないため、取引の実質的な経済効果が譲渡人の財務諸表に反映されないこととなる。

58. このため、本会計基準では、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによることとし、金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは次の三要件がすべて充たされた場合とすることとした(第9項参照)。

(1) 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること

譲渡人に倒産等の事態が生じても譲渡人やその債権者等が譲渡された金融資産に対して請求権等のいかなる権利も存在しないこと等、譲渡された金融資産が譲渡人の倒産等のリスクから確実に引き離されていることが必要である。したがって、譲渡人が実質的に譲渡を行わなかったこととなるような買戻権がある場合や譲渡人が倒産したときには譲渡が無効になると推定される場合は、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。なお、譲渡された金融資産が譲渡人及びその債権者の請求権の対象となる状態にあるかどうかは、法的観点から判断されることになる。

(2) 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること譲受人が譲渡された金融資産を実質的に利用し、元本の返済、利息又は配当等により投下した資金等のほとんどすべてを回収できる等、譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。したがって、譲渡制限があっても支配の移転は認められるが、譲渡制限又は実質的な譲渡制限となる買戻条件の存在により、譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受することが制約される場合には、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。

なお、譲受人が特別目的会社の場合には、その発行する証券の保有者が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。

(3) 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

譲渡人が譲渡した金融資産を満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していることにより、金融資産を担保とした金銭貸借と実質的に同様の取引がある。現先取引や債券レポ取引といわれる取引のように買戻すことにより当該取引を完結することがあらかじめ合意されている取引については、その約定が売買契約であっても支配が移転しているとは認められない。このような取引については、売買取引ではなく金融取引として処理することが必要である。

3.金融負債の消滅の認識

59. 金融負債については、当該金融負債の契約上の義務を履行したとき、契約上の義務が消滅したとき又は契約上の第一次債務者の地位から免責されたときに、その消滅を認識することとした(第10項参照)。したがって、債務者は、債務を弁済したとき又は債務が免除されたときに、それらの金融負債の消滅を認識することとなる。

60. 第一次債務を引き受けた第三者が倒産等に陥ったときに二次的に責任を負うという条件の下で、債務者が金融負債の契約上の第一次債務者の地位から免責されることがある。この場合には、財務構成要素アプローチにより当該債務に係る金融負債の消滅を認識し、その債務に対する二次的な責任を金融負債として認識することとなると考えられる。

4.金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理

61. 金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、それらの帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理することとした(第11項参照)。

62. 金融資産又は金融負債の一部の消滅を認識する場合には、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分の時価と残存部分の時価の比率により、当該金融資産又は金融負債の帳簿価額を消滅部分と残存部分の帳簿価額に按分することとした(第12項参照)。

63. また、金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たに発生した金融資産又は金融負債は時価により計上することとした(第13項参照)。

V.金融資産及び金融負債の評価基準に関する基本的考え方

64. 金融資産については、一般的には、市場が存在すること等により客観的な価額として時価を把握できるとともに、当該価額により換金・決済等を行うことが可能である。

このような金融資産については、次のように考えられる。

(1) 金融資産の多様化、価格変動リスクの増大、取引の国際化等の状況の下で、投資者が自己責任に基づいて投資判断を行うために、金融資産の時価評価を導入して企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ、投資者に対して的確な財務情報を提供することが必要である。

(2) 金融資産に係る取引の実態を反映させる会計処理は、企業の側においても、取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要である。

(3) 我が国企業の国際的な事業活動の進展、国際市場での資金調達及び海外投資者の我が国証券市場での投資の活発化という状況の下で、財務諸表等の企業情報は、国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められている。また、デリバティブ取引等の金融取引の国際的レベルでの活性化を促すためにも、金融商品に係る我が国の会計基準の国際的調和化が重要な課題となっている。

65. また、金融資産の時価情報の開示は、時価情報の注記によって満足されるというものではない。したがって、客観的な時価の測定可能性が認められないものを除き、時価による自由な換金・決済等が可能な金融資産については、投資情報としても、企業の財務認識としても、さらに、国際的調和化の観点からも、これを時価評価し適切に財務諸表に反映することが必要であると考えられる。

66. しかし、金融資産の属性及び保有目的に鑑み、実質的に価格変動リスクを認める必要のない場合や直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約がある場合が考えられる。このような保有目的等をまったく考慮せずに時価評価を行うことが、必ずしも、企業の財政状態及び経営成績を適切に財務諸表に反映させることにならないと考えられることから、時価評価を基本としつつ保有目的に応じた処理方法を定めることが適当であると考えられる。

67. 一方、金融負債は、借入金のように一般的には市場がないか、社債のように市場があっても、自己の発行した社債を時価により自由に清算するには事業遂行上等の制約があると考えられることから、デリバティブ取引により生じる正味の債務を除き、債務額(ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額)をもって貸借対照表価額とし、時価評価の対象としないことが適当であると考えられる。

W.金融資産及び金融負債の貸借対照表価額等

1.債 権

68. 一般的には、受取手形、売掛金、貸付金等の債権については市場がない場合が多く、客観的な時価を測定することが困難であると考えられるので、原則として時価評価は行わないこととした。一方、債権の取得においては、債権金額と取得価額とが異なる場合がある。この差異が金利の調整であると認められる場合には、金利相当額を適切に各期の財務諸表に反映させることが必要である。したがって、債権については、償却原価法を適用することとし、当該加減額は受取利息に含めて処理することとした。なお、債務者の財政状態及び経営成績の悪化等による債権の実質価額の減少については、別途、「X.貸倒見積高の算定」において取り扱うこととした(第14項、第27項及び第28項参照参照)。

2.有価証券

69. 有価証券については、保有目的等の観点から次のように分類し、それぞれ貸借対照表価額及び評価差額等の処理方法を定めた。

(1) 売買目的有価証券

70. 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)については、投資者にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での時価に求められると考えられる。したがって、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。また、売買目的有価証券は、売却することについて事業遂行上等の制約がなく、時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての財務活動の成果と考えられることから、その評価差額は当期の損益として処理することとした(第15項参照)。

(2) 満期保有目的の債券

71. 企業が満期まで保有することを目的としていると認められる社債その他の債券(満期保有目的の債券)については、時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないことから、原則として、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第16項参照)。

72. なお、このような考え方を採用するにあたっては、満期時まで保有する目的であることを債券の取得時及び取得時以降に確認し得ることが必要であり、保有目的が変更された場合には、当該変更後の保有目的に係る評価基準により債券の帳簿価額を修正することが必要である。

(3) 子会社株式及び関連会社株式

子会社株式

73. 子会社株式については、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づき、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17項参照)。

なお、連結財務諸表においては、子会社純資産の実質価額が反映されることになる。

関連会社株式

74. 関連会社株式については、個別財務諸表において、従来、子会社株式以外の株式と同じく原価法又は低価法が評価基準として採用されてきた。しかし、関連会社株式は、他企業への影響力の行使を目的として保有する株式であることから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であり、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17項参照)。なお、連結財務諸表においては、持分法により評価される。

(4) その他有価証券

基本的な捉え方

75. 子会社株式や関連会社株式といった明確な性格を有する株式以外の有価証券であって、売買目的又は満期保有目的といった保有目的が明確に認められない有価証券は、業務上の関係を有する企業の株式等から市場動向によっては売却を想定している有価証券まで多様な性格を有しており、一義的にその属性を定めることは困難と考えられる。このような売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式のいずれにも分類できない有価証券(その他有価証券)については、個々の保有目的等に応じてその性格付けをさらに細分化してそれぞれの会計処理を定める方法も考えられる。しかしながら、その多様な性格に鑑み保有目的等を識別・細分化する客観的な基準を設けることが困難であるとともに、保有目的等自体も多義的であり、かつ、変遷していく面があること等から、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものとして一括して捉えることが適当である。

時価評価の必要性

76. その他有価証券については、前述の評価基準に関する基本的考え方に基づき、時価をもって貸借対照表価額とすることとした(第18項参照)。ただし、第75項に述べたように、その他有価証券は直ちに売却することを目的としているものではないことに鑑みると、その他有価証券に付すべき時価に市場における短期的な価格変動を反映させることは必ずしも求められないと考えられることから、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額をもって期末の時価とする方法を継続して適用することも認められると考えられる。

評価差額の取扱い

(評価差額の取扱いに関する基本的考え方)

77. その他有価証券の時価は投資者にとって有用な投資情報であるが、その他有価証券については、事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切ではないと考えられる。

78. また、国際的な動向を見ても、その他有価証券に類するものの評価差額については、当期の損益として処理することなく、資産と負債の差額である「純資産の部」に直接計上する方法や包括利益を通じて「純資産の部」に計上する方法が採用されている。

79. これらの点を考慮して、本会計基準においては、原則として、その他有価証券の評価差額を当期の損益として処理することなく、税効果を調整の上、純資産の部に記載する考え方を採用した(第18項参照)。なお、評価差額については、毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとした。したがって、期中に売却した場合には、取得原価と売却価額との差額が売買損益として当期の損益に含まれることになる。

(評価差額の一部の損益計算書への計上)

80. その他有価証券のうち時価評価を行ったものの評価差額は、前述の考え方に基づき、当期の損益として処理されないこととなる。他方、企業会計上、保守主義の観点から、これまで低価法に基づく銘柄別の評価差額の損益計算書への計上が認められてきた。このような考え方を考慮し、時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄の評価差額は損益計算書に計上する方法によることもできることとした(第18項(2)参照)。この方法を適用した場合における損益計算書に計上する損失の計上方法については、その他有価証券の評価差額は毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとの整合性から、洗い替え方式によることとした。

(5) 市場価格のない有価証券

81. 時価をもって貸借対照表価額とする有価証券であっても、市場価格がなく客観的な時価を把握することができないものもあることから、市場価格のない有価証券については取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第19項参照)。

82. ただし、市場は幅広く定義されているので、例えば、証券投資信託の受益証券で基準価格が公表されていないものであっても、当該証券投資信託の運用する金融資産又は金融負債の時価に基づき取引されるものについては、市場価格のある有価証券に該当すると考えられる。

(6) 時価が著しく下落した場合

83. 従来、取引所の相場のある有価証券について、その時価が著しく下落したときには、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とすることとされている。また、取引所の相場のない株式については、その実質価額が著しく低下したときには相当の減額をすることとされている。このような考え方は、取得原価評価における時価の下落等に対する対応方法として妥当であると認められる。本会計基準においても、市場価格の有無に係わらせて、従来の考え方を踏襲することとした(第20項及び第21項参照)。

84. また、その他有価証券の時価評価について洗い替え方式を採っていることから、その時価が著しく下落したときには、取得原価まで回復する見込があると認められる場合を除き、当該銘柄の帳簿価額を時価により付け替えて取得原価を修正することが必要である。この場合には、当該評価差額を当期の損失として処理することとした(第20項から第22項参照)。

3.運用を目的とする金銭の信託

85. 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)については、企業が当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債を運用目的で間接的に保有しているものと考えられる。加えて、金銭の信託契約の満了時に、当該金銭の信託に係る信託財産又はそれを時価により換金した現金により支払を受ける場合、投資者及び企業双方にとって意義を有するのは信託財産の時価であると考えられる。また、信託財産の価値を、例えば保有期間中の配当収入と元本部分の価値に分けて捉えることもあるが、両者の合計は時価そのものであり、分けて捉える必要はないと考えられる。したがって、運用を目的とする金銭の信託の貸借対照表価額には、信託財産を構成する金融資産及び金融負債のうち時価評価が適切であるものについて、その時価を反映することが必要と考えられる。

86. このため、運用を目的とする金銭の信託については、当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債に付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とすることとした。この際、運用を目的とする金銭の信託に係る信託財産については委託者の事業遂行上等の観点からの売買・換金の制約がないことから、当該信託財産を構成する金融資産及び金融負債については時価評価を行い、評価差額は当期の損益に反映させることとした(第24項参照)。

87. なお、特定金銭信託又は指定金外信託等については、一般に運用を目的とするものと考えられるので、有価証券の管理目的等運用以外の目的であることが明確である場合を除き、運用を目的とする金銭の信託と推定される。

4.デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務

88. デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得又は損失を被るものであり、投資者及び企業双方にとって意義を有する価値は当該正味の債権又は債務の時価に求められると考えられる。したがって、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務については、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。

また、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務の時価の変動は、企業にとって財務活動の成果であると考えられることから、その評価差額は、後述するヘッジに係るものを除き、当期の損益として処理することとした(第25項参照)。

89. なお、デリバティブ取引については、一般に、市場価格又はこれに基づく合理的な価額により時価が求められるが、デリバティブ取引の対象となる金融商品に市場価格がないこと等により公正な評価額を算定することが困難と認められる場合には、取得価額をもって貸借対照表価額とすることができる。

5.金銭債務

90. 旧商法では、金銭債務の貸借対照表価額は債務額とすることとしていたことから、改正前会計基準では、社債は社債金額をもってその貸借対照表価額とし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合には、当該差額に相当する金額を、資産(繰延資産)又は負債として計上し、償還期に至るまで毎期一定の方法により償却することとしてきた。

ただし、会計上は、金銭債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、この差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとなる。金銭債務についても、その収入額と債務額とが異なる場合、当該差額は一般に金利の調整という性格を有しているため、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることが適当と考えられる。

会社法では、債務額以外の適正な価格をもって負債の貸借対照表価額とすることができることとされたことから、改正会計基準では、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第26項参照)。

X.貸倒見積高の算定

1.基本的考え方

91. 本会計基準では、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を、@経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(一般債権)、A経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)及びB経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)に区分し、その区分ごとに貸倒見積高の算定方法を示すこととした(第27項及び第28項参照)。

2.貸倒見積高の算定方法

92. 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定することができる。また、債務者が既に経営破綻等に陥っている場合には、個々の債権ごとに担保等により回収できない部分を貸倒見積高とすることが必要となる(第28項(1)及び(3)参照)。

93. これに対し、貸倒懸念債権については、一般債権と破産更生債権等の中間に位置し、個々の債権の実態に最も適合する算定方法を採用することが必要である。このため、貸倒懸念債権に係る貸倒見積高の算定方法としては、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を考慮する方法の他、元利金の将来のキャッシュ・フローを見積ることが可能な場合、元利金のキャッシュ・フローの予想額を当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と当該債権の帳簿価額の差額を貸倒見積高とする方法を示し、債務者の状況や債務返済計画等が変わらない限り、いずれかの方法を継続して適用することとした(第28項(2)参照)。

94. なお、例えば、劣後債券、劣後受益権及び資産担保型証券のように債権の内容が特殊なものである場合には、当該債権の内容に応じて適切な貸倒見積高を算定する必要がある。

95. また、貸倒引当金の対象となる債権には未収利息が含まれるが、契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払が行われていない状態にある場合や、それ以外でも債務者が実質的に経営破綻の状態にあると認められる場合には、未収利息を収益として認識することは適当でないと考えられることから、このような状態に至った場合には、すでに計上している未収利息を取り消すとともに、それ以後の期間に係る未収利息は計上してはならないこととした。

Y.ヘッジ会計

1.基本的考え方

96. ヘッジ取引とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動を相殺するか、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避することにより、ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動、金利変動及び為替変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいう。

97. ヘッジ手段であるデリバティブ取引については、原則的な処理方法によれば時価評価され損益が認識されることとなるが、ヘッジ対象の資産に係る相場変動等が損益に反映されない場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されないこととなる。このため、ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるヘッジ会計が必要と考えられる。

98. 本会計基準においては、ヘッジ会計を導入することとし、先物取引に係るヘッジ会計の考え方を示した企業会計審議会の「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」を踏まえ、デリバティブ取引をヘッジ手段として利用しているヘッジ取引全般に対応し得るよう、ヘッジ会計に係る処理を包括的に定めることとした。なお、デリバティブ取引以外にヘッジ手段として有効であると認められる現物資産があり得る場合には、本会計基準の考え方に沿って、ヘッジ会計を適用する余地があると考えられる。

99. また、多数の金融資産又は金融負債を保有してる金融機関等においては、それぞれの相場変動等によるリスクの減殺効果をヘッジ対象とヘッジ手段に区別して捉えることが困難あるいは適当でない場合がある。このような場合に、リスクの減殺効果をより適切に財務諸表に反映する高度なヘッジ手法を用いていると認められるときには、本会計基準の趣旨を踏まえ、当該ヘッジ手法の効果を財務諸表に反映させる処理を行うことができる。

2.ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象及びヘッジ手段

100. ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象には、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債のうち、相場等の変動が評価に反映されていないもの及び相場等の変動が評価に反映されていてもその評価差額が損益として処理されないものの他、相場等の変動を損益として処理することができるものであっても、当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものはヘッジ対象となる(第30項参照)。

101. また、ヘッジ対象には、この他、予定取引(未履行の確定契約を含む。)により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる(第30 項参照)。ただし、予定取引については、主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、その実行される可能性が極めて高い取引に限定することとした。

102. なお、他に適当なヘッジ手段がなく、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いるいわゆるクロスヘッジもヘッジ会計の対象となる。

3.ヘッジ会計の要件

103. ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、基本的には、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段のそれぞれに生じる損益が互いに相殺される関係にあること若しくはヘッジ手段によりヘッジ対象の資産又は負債のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係にあることが前提になる。

104. さらに、ヘッジ会計を適用できるか否かの具体的な判定にあたっては、企業の利益操作の防止等の観点から、「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」における事前テストと事後テストというヘッジ会計の適用基準の考え方を踏まえ、ヘッジ取引時にはヘッジ取引が企業のリスク管理方針に基づくものであり、それ以降は上記の前提の効果について定期的に確認しなければならないという具体的な要件を定めている(第31項参照)。

4.ヘッジ会計の方法

(1) 原則的処理方法

105. 改正前会計基準では、ヘッジ会計は、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法によることを原則としていたが、当該ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、純資産会計基準により、税効果を調整の上、純資産の部に記載することとなる(第32項参照)。

(2) ヘッジ対象に係る損益を認識する方法

106. ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることができる場合には、当該資産又は負債に係る損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する考え方がある。諸外国の会計基準では、このような考え方に基づく処理も採用されていることを考慮し、これを認めることとした(第32項参照)。

(3) 金利スワップの取扱い

107. 金利スワップを利用したヘッジ取引には、例えば固定利付債務の支払利息を変動利息に、あるいは、変動利付債務の支払利息を固定利息に実質的に変換するなど、原価評価されている資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されているものがある。当該資産又は負債と金利スワップがヘッジ会計の要件を充たしているものについては、本来、金利スワップの評価差額を貸借対照表に計上する処理を行うが、金利スワップの想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が金利変換の対象となる資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、両者を一体として、実質的に変換された条件による債権又は債務と考え、金利スワップの評価差額を繰り延べる処理に代えて、当該金利スワップに係る金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することも認めることとした。

5.ヘッジ会計の終了等

108. ヘッジ対象が消滅したときには、その時点でヘッジ会計が終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を当期の損益として処理することとした。また、ヘッジ対象である予定取引が行われないことが明らかになったときにおいても同様に処理することとした(第34項参照)。

109. これに対し、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額に関し、見合いのヘッジ対象に係る含み益の減少によりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積り、当期の損失として処理することとした(第33項参照)。

110. なお、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったとき以後のヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べることはできないこととなる。

Z.複合金融商品

111. 複合金融商品については、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区別して、それぞれ処理方法を定めることとした。

1.払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品

112. 新株予約権付社債のように契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的である。個々の複合金融商品の様態及び取引実態において、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債は払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分が同時に各々存在し得ることから、その取引の実態を適切に表示するため、それぞれの部分を区分して処理することが必要である。しかし、募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236条第1項第2号及び第3号)をあらかじめ明確にしている転換社債型新株予約権付社債については、以前の転換社債と経済的実質が同一であり、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいと考えられる。

113. こうした考え方に基づき、以前の転換社債と経済的実質が同一である転換社債型新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分せず一体とした処理又は転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債の処理に準じた処理をすることとし(ただし、取得者側については前者のみ認められる。)、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分して処理することとした(第36項から第39項参照)。

114. 新株予約権付社債の発行者が、新株予約権付社債を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分して処理する場合の新株予約権の対価部分の取扱いについて、新株予約権が行使され、新株を発行したときには、当該対価は株式発行の対価としての性格が認められることになることから資本金又は資本金及び資本準備金に振り替えられることとなる。また、権利行使の有無が確定するまでの間は、その性格が確定しないことから、これまでは仮勘定として負債の部に計上することとしてきたが、純資産会計基準により、純資産の部に計上することとなる(第38項参照)。

115. なお、平成13年11月に公布された「商法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第128号)施行前に発行した新株引受権付社債の会計処理については、権利が行使されたときに新株引受権の対価部分が資本準備金に振り替えられる点を除き、新株予約権付社債の取扱いに準ずる。

2.その他の複合金融商品

116. 上記以外の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コスト・オプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。

117. このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在し得るが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生する。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分せず一体として処理することとした(第40項参照)。ただし、通貨オプションが組み合わされた円建借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要である。

118. なお、金融機関のように、経営上、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を継続して区分して管理しており、投資情報としても区分して処理することが経営の実態を表す上で有用な場合には、区分して処理することも認められるものとする。

以上


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