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リース取引に係る会計基準目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成19年3月30日に公表した「リース取引に係る会計基準の適用指針」から「目的・適用指針・結論の背景」部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。

企業会計基準適用指針第16号

リース取引に関する会計基準の適用指針

(目的・適用指針・結論の背景)

改正平成19年 3月30日

企業会計基準委員会

平成 6年 1月18日

日本公認会計士協会

会計制度委員会

目次

目的

適用指針

範囲

用語の定義

ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引に該当するリース取引

具体的な判定基準

現在価値基準の判定における留意事項

不動産に係るリース取引の取扱い

ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

所有権移転ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

転リース取引

セール・アンド・リースバック取引

ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

所有権移転ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

セール・アンド・リースバック取引

開示

ファイナンス・リース取引に係る注記

転リース取引に係る注記

オペレーティング・リース取引に係る注記

適用時期等

適用時期

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(借手)

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(貸手)

四半期財務諸表における取扱い

適用初年度のリース取引の取扱い

議決

結論の背景

経緯

範囲

ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引の条件

具体的な判定基準

不動産に係るリース取引の取扱い

ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

適用時期等

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い


目的

1. 企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)が、平成19年3月30日に公表されている。本適用指針は、当該リース会計基準を実務に適用する際の指針を定めるものである。

適用指針

範囲

2. 本適用指針は、リース会計基準が適用される連結財務諸表及び財務諸表について適用する。

3. ファイナンス・リース取引については、リース会計基準においてファイナンス・リース取引と判定される取引のうち、通常の保守等以外の役務提供が組み込まれていないリース取引及び不動産に係るリース取引を取り扱う。

用語の定義

4. 本適用指針における用語の定義は、リース会計基準における用語の定義と同様とする。

ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引に該当するリース取引

5. ファイナンス・リース取引とは、次のいずれも満たすリース取引をいうとしている(リース会計基準第5項)。

(1) リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引(以下「解約不能のリース取引」という。)

(2) 借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(以下「フルペイアウトのリース取引」という。)

リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかは、これらの事項を十分に考慮して判定する必要がある。

6. 解約不能のリース取引に関して、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し、相当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引を解約不能のリース取引に準ずるリース取引として扱う(リース会計基準第36項)。リース契約上の条件により、このような取引に該当するものとしては、次のようなものが考えられる。

(1) 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料の概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引

(2) 解約時に、未経過のリース期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過のリース期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたものの概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース取引

7. 「リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」とは、当該リース物件を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受することであり、また、「リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」とは、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することである(リース会計基準第36項)。

具体的な判定基準

8. ファイナンス・リース取引は、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの(以下「所有権移転ファイナンス・リース取引」という。)と、それ以外の取引(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」という。)に分類するとしている(リース会計基準第8項)。

9. リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、第5項の要件を満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきものであるが、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される。[設例1][設例2]

(1) 現在価値基準

解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(以下「見積現金購入価額」という。)の概ね90パーセント以上であること(以下「現在価値基準」という。)

(2) 経済的耐用年数基準

解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。)(以下「経済的耐用年数基準」という。)

10. 前項でファイナンス・リース取引と判定されたもののうち、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するものとし、それ以外のファイナンス・リース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当するものとする。[設例1][設例2]

(1) リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借手に移転することとされているリース取引

(2) リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(以下合わせて「割安購入選択権」という。)が与えられており、その行使が確実に予想されるリース取引

(3) リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該リース物件の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース取引

11. 第9項における現在価値基準の適用にあたっては、当該リース取引が置かれている状況からみて借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リースに係るリース期間(以下「再リース期間」という。)又はリース料は、解約不能のリース期間又はリース料総額に含めない。現在価値基準を適用する場合のリース料総額の現在価値は推定額であるが、当該現在価値がリース物件の見積現金購入価額の概ね90パーセント以上の場合は、借手は当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用等ほとんどすべてのコストを負担することになり、したがって、ほとんどすべての経済的利益を享受するものと推定できるため、当該リース取引はファイナンス・リース取引と判定する。

12. 第9項における経済的耐用年数基準の適用にあたっては、当該リース取引が置かれている状況からみて借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リース期間は解約不能のリース期間に含めないものとし、また、リース物件の経済的耐用年数は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数による。経済的耐用年数基準に該当するリース取引は、通常、借手がリース物件からもたらされるほとんどすべての経済的利益を享受することができ、したがって、ほとんどすべてのコストを負担するものと推定できるため、当該リース取引はファイナンス・リース取引と判定する。

13. ただし、例外的に、リース物件の内容により、リース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であっても借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担しないこともあるため、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等により、それが明らかな場合には現在価値基準のみにより判定を行う。

現在価値基準の判定における留意事項

(維持管理費用相当額等の取扱い)

14. 借手が負担するリース料の中には、通常の場合、リース物件の維持管理に伴う固定資産税、保険料等の諸費用(以下「維持管理費用相当額」という。)が含まれる。現在価値基準の判定にあたり、維持管理費用相当額は、これをリース料総額から控除するのが原則である。しかし、一般的に、契約書等で維持管理費用相当額が明示されない場合が多く、また、当該金額はリース物件の取得価額相当額に比較して重要性が乏しい場合が少なくない。

したがって、維持管理費用相当額は、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額から控除しないことができる。

なお、リース料総額に通常の保守等の役務提供相当額が含まれる場合、当該役務提供相当額については、維持管理費用相当額に準じて取り扱う。

(残価保証の取扱い)

15. リース契約において、リース期間終了時に、リース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合は、借手に対して、その不足額を貸手に支払う義務が課せられることがある(以下このような条件を「残価保証」という。)。リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、残価保証額をリース料総額に含める。[設例3]

なお、貸手においては、借手以外の第三者による保証がなされた場合についても、当該保証額をリース料総額に含める。

(製造業者又は卸売業者の場合の取扱い)

16. 製品又は商品を販売することを主たる事業としている企業が、同時に貸手として同一製品又は商品をリース取引の対象物件としている場合、その見積現金購入価額は貸手の製作価額や現金購入価額によらず、当該リース物件の借手に対する現金販売価額を用いる。

(現在価値の算定に用いる割引率)

17. 貸手が現在価値の算定を行うにあたっては、リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)とリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額(以下「見積残存価額」という。)の合計額の現在価値が、当該リース物件の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額(以下合わせて「購入価額等」という。)と等しくなるような利率(以下「貸手の計算利子率」という。)を用いる。

借手が現在価値の算定のために用いる割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率とする。[設例1][設例2]

(連結財務諸表における判定)

18. 連結財務諸表において現在価値基準を判定する場合、必要に応じて、親会社のリース料総額及び連結子会社のリース料総額を合算した金額に基づき判定を行う。ただし、重要性が乏しい場合には、親会社及び連結子会社の個別財務諸表における結果の修正を要しないこととする。

不動産に係るリース取引の取扱い

19. 土地、建物等の不動産のリース取引(契約上、賃貸借となっているものも含む。以下同じ。)についても、第5 項から前項に従い、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定する。ただし、土地については、第10項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定する。

20. 土地と建物等を一括したリース取引(契約上、建物賃貸借契約とされているものも含む。以下同じ。)は、原則として、リース料総額を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、第9項(1)に定める現在価値基準の判定を行う。

ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

21. ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされている(リース会計基準第9項)。借手の行ったリース取引が所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定された場合には、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上し、第22項から第33項の方法に従い会計処理する。[設例1]

(リース資産及びリース債務の計上価額)

22. リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上する場合の価額は、次のとおりとする。

(1) 借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)を第17項に示した割引率で割り引いた現在価値と貸手の購入価額等とのいずれか低い額による。

(2) 貸手の購入価額等が明らかでない場合は、(1)に掲げる現在価値と見積現金購入価額とのいずれか低い額による。

(支払リース料の処理)

23. リース料総額は、原則として、利息相当額部分とリース債務の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として処理し、後者はリース債務の元本返済として処理する。全リース期間にわたる利息相当額の総額は、リース取引開始日におけるリース料総額とリース資産(リース債務)の計上価額との差額になる。

(利息相当額の各期への配分)

24. 利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法による(リース会計基準第11項)。利息法とは、各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する方法である。当該利率は、リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率として求められる。

(維持管理費用相当額の処理)

25. 現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額は、原則として、リース料総額から控除するが、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額から控除しないことができるとされている(第14項参照)。

現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合は、リース料総額から維持管理費用相当額の合理的見積額を差し引いた額を第23項によって処理し、維持管理費用相当額は、その内容を示す科目で費用に計上する。[設例4]

(通常の保守等の役務提供相当額の処理)

26. リース料総額に通常の保守等の役務提供相当額が含まれる場合、当該役務提供相当額については、前項の維持管理費用相当額に準じて会計処理を行う。

(リース資産の償却)

27. リース資産の償却年数については、原則として、リース期間を耐用年数とすることとされているが(リース会計基準第12項)、リース期間終了後の再リース期間をファイナンス・リース取引の判定においてリース期間に含めている場合は、再リース期間を当該耐用年数に含めるものとする。また、残存価額については原則としてゼロとすることとされているが(リース会計基準第12項)、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、原則として、当該残価保証額を残存価額とする。

28. リース資産の償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用する。この場合、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定する必要はない。

(リース期間終了時及び再リースの処理)

29. リース期間の終了時においては、通常、リース資産の償却は完了し、リース債務も完済しているため、リース物件を貸手に返却する処理を除き、特に会計処理を要しない。ただし、リース契約に残価保証の取決めがある場合は、貸手に対する不足額の確定時に、当該不足額をリース資産売却損等として処理する。

また、再リース期間を耐用年数に含めない場合の再リース料は、原則として、発生時の費用として処理する。

(中途解約の処理)

30. リース契約を中途解約した場合は、リース資産の未償却残高をリース資産除却損等として処理する。貸手に対して中途解約による規定損害金を一時又は分割払いで支払う必要が生じた場合は、リース債務未払残高(未払利息の額を含む。)と当該規定損害金の額との差額を支払額の確定時に損益に計上する。[設例1]

(リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)

31. リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用することができる。

(1) 第23項の定めによらず、リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる。この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される。

(2) 第24項の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができる。

32. リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過リース料の期末残高(第34項で通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととしたものや、第24項に従い利息相当額を利息法により各期に配分しているリース資産に係るものを除く。)が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合とする。

33. 連結財務諸表においては、前項の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕訳で修正を行う。

(少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い)

34. 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。

35. 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次の(1)から(3)のいずれかを満たす場合とする。

(1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引

ただし、リース料総額にはリース物件の取得価額のほかに利息相当額が含まれているため、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができる。また、この基準額は、通常取引される単位ごとに適用されるため、リース契約に複数の単位のリース物件が含まれる場合は、当該契約に含まれる物件の単位ごとに適用できる。

(2) リース期間が1年以内のリース取引

(3) 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引なお、(3)の場合、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができるものとする。

所有権移転ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

36. ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされている(リース会計基準第9項)。借手の行ったリース取引が所有権移転ファイナンス・リース取引と判定された場合には、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上し、第37項から第44項の方法に従い会計処理する。[設例2]

(リース資産及びリース債務の計上価額)

37. リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上する場合の価額は、次のとおりとする。

(1) 借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、当該価額による。

(2) 貸手の購入価額等が明らかでない場合には、第22項(2)と同様とする。なお、割安購入選択権がある場合には、第22項(1)のリース料総額にその行使価額を含める。

(支払リース料の処理)

38. 支払リース料の処理は、第23項と同様とする。

(利息相当額の各期への配分)

39. 利息相当額の各期への配分は、第24項と同様とする。なお、割安購入選択権がある場合には、リース料総額にその行使価額を含める。

(維持管理費用相当額の処理)

40. 維持管理費用相当額の処理は、第25項と同様とする。

(通常の保守等の役務提供相当額の処理)

41. 通常の保守等の役務提供相当額の処理は、第26項と同様とする。

(リース資産の償却)

42. リース資産の償却は、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定する。この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とする。

(リース期間終了時等の処理)

43. リース期間の中途又はリース期間終了時に所有権が移転した場合、自己所有の固定資産に振り替え、減価償却を継続する。

(中途解約の処理)

44. 中途解約の処理は、第30項と同様とする。

(少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い)

45. 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。

46. 個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次の(1)又は(2)のいずれかを満たす場合とする。

(1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引ただし、リース料総額にはリース物件の取得価額のほかに利息相当額が含まれているため、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができる。また、この基準額は、通常取引される単位ごとに適用されるため、リース契約に複数の単位のリース物件が含まれる場合は、当該契約に含まれる物件の単位ごとに適用できる。

(2) リース期間が1年以内のリース取引

転リース取引

47. リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第三者にリースする取引(以下「転リース取引」という。)であって、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する場合、貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース債務の双方を計上することとなるが、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で損益計算書に計上する。なお、リース債権又はリース投資資産とリース債務は利息相当額控除後の金額で計上することを原則とするが、利息相当額控除前の金額で計上することができる。[設例6]

セール・アンド・リースバック取引

48. 所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引をセール・アンド・リースバック取引という。セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかの判定は、第5項から第20項の「ファイナンス・リース取引の判定基準」に示したところによる。ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時におけるリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積った経済的使用可能予測期間を用いるとともに、当該リース物件の見積現金購入価額については、実際売却価額を用いる。[設例7]

49. セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引がファイナンス・リース取引に該当する場合、借手は、リースの対象となる物件の売却に伴う損益を長期前払費用又は長期前受収益等として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益に計上する。ただし、当該物件の売却損失が、当該物件の合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合は、売却損を繰延処理せずに売却時の損失として計上する。

50. 当該リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当する場合の会計処理は、リースの対象となる物件の売却損益に係る処理を除き、第21 項から第46 項と同様とする。

なお、セール・アンド・リースバック取引によるリース物件を、さらに概ね同一の条件で第三者にリースした場合で、当該転リース取引の貸手としてのリース取引がファイナンス・リース取引に該当し、かつ、その取引の実態から判断して当該物件の売買損益が実現していると判断されるときは、その売買損益は繰延処理せずに損益に計上することができる。

ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

(基本となる会計処理)

51. ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされている(リース会計基準第9項)。貸手の行ったリース取引が所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定された場合には、取引実態に応じ、次のいずれかの方法を選択し、継続的に適用する。なお、(1)又は(2)の方法を採用する場合は、割賦販売取引において採用している方法との整合性を考慮し、いずれかの方法を選択する。また、各期における利息相当額は(1)から(3)の方法のいずれの方法を採用しても、同額となることに留意する必要がある。[設例1]

(1) リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法

リース取引開始日に、リース料総額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する。また、リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により売上原価を計上する。

リース取引開始日に計算された売上高と売上原価との差額は、利息相当額として取り扱う。

リース期間中の各期末において、リース取引開始日に計算された利息相当額の総額のうち、各期末日後に対応する利益は繰り延べることとし、リース投資資産と相殺して表示する。

(2) リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法

リース取引開始日に、リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上する。

リース期間中の各期に受け取るリース料(以下「受取リース料」という。)を各期において売上高として計上し、当該金額からリース期間中の各期に配分された利息相当額を差し引いた額をリース物件の売上原価として処理する。

(3) 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法

リース取引開始日に、リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上する。

各期の受取リース料を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者をリース投資資産の元本回収額として処理する。

(借手又は第三者による残価保証がある場合の処理)

52. リース契約において、借手又は第三者による残価保証の取決めがある場合は、残価保証額を前項におけるリース料総額又は受取リース料に含める。

(利息相当額の各期への配分)

53. 利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として利息法による(リース会計基準第14項)。この場合に用いる利率は、貸手の計算利子率とする。

(維持管理費用相当額の処理)

54. 現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額は、原則として、リース料総額から控除するが、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額から控除しないことができるとされている(第14項参照)。

現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合は、維持管理費用相当額は、第51 項におけるリース料総額又は受取リース料と区分して会計処理する。リース料総額又は受取リース料と区分して会計処理する場合、リース料回収額に含まれる維持管理費用相当額は、収益に計上するか、又は、貸手の固定資産税、保険料等の実際支払額の控除額として処理する。[設例4]

(通常の保守等の役務提供相当額の処理)

55. リース料総額又は受取リース料に通常の保守等の役務提供相当額が含まれる場合、当該役務提供相当額については、前項の維持管理費用相当額に準じて会計処理を行う。リース料総額又は受取リース料と区分して会計処理する場合、通常の保守等の役務提供相当額部分は、収益として計上する。

(貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合の処理)

56. 製品又は商品を販売することを主たる事業としている企業が、同時に貸手として同一製品又は商品をリース取引の対象物件としている場合(第16項参照)で、貸手における製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差があるときには、当該差額はリース物件の販売益として扱う。当該販売益は、販売基準又は割賦基準により処理する。[設例8]

ただし、当該差額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、上記の処理によらず、販売益を利息相当額に含めて処理することができる。

また、当該販売益を割賦基準により処理する場合には、同様に、販売益を利息相当額に含めて会計処理することができる。

(リース期間終了時及び再リースの処理)

57. リース期間の終了により、借手からリース物件の返却を受けた場合は、貸手は当該リース物件を見積残存価額でリース投資資産からその後の保有目的に応じ貯蔵品又は固定資産等に振り替えるものとする。当該リース物件を処分した場合は、処分価額と帳簿価額との差額を処分損益に計上する。

第9項において再リース期間を解約不能のリース期間に含めない場合の再リース料は、発生時の収益に計上し、リース投資資産から振り替えた固定資産については、再リース開始時点の見積再リース期間にわたり減価償却を行う。この場合、固定資産の取得価額は、リース投資資産から振り替えた金額となる。

(中途解約の処理)

58. リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、次のいずれかの方法により処理する。

(1) 第51項の(1)又は(3)の方法を採用した場合

リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金と中途解約時のリース投資資産残高(中途解約時点での見積残存価額控除後)との差額を収益として計上する。

(2) 第51項の(2)の方法を採用した場合

リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金については、売上高として処理し、中途解約時のリース投資資産残高(中途解約時点での見積残存価額控除後)を売上原価として計上する。[設例1]

(貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)

59. 貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合は、第53 項の「利息相当額の各期への配分」の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。

60. 貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過リース料及び見積残存価額の合計額の期末残高(第51項に従い利息相当額を利息法により各期に配分しているリース資産に係るものを除く。)が当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合とする。

なお、連結財務諸表においては、上記の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕訳で修正を行う。

ただし、リース取引を主たる事業としている企業は、前項の簡便的な取扱いは適用できない。

所有権移転ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

(基本となる会計処理)

61. 貸手の行ったリース取引が所有権移転ファイナンス・リースと判定された場合の基本となる会計処理は、第51項と同様とする。この場合、同項にある「リース投資資産」は「リース債権」と読み替えるものとする。また、割安購入選択権がある場合には、その行使価額をリース料総額又は受取リース料に含める。[設例2]

(借手又は第三者による残価保証がある場合の処理)

62. 借手又は第三者による残価保証がある場合の処理は、第52項と同様とする。

(利息相当額の各期への配分)

63. 利息相当額の各期への配分は、第53項と同様とする。

(維持管理費用相当額の処理)

64. 維持管理費用相当額の処理は、第54項と同様とする。

(通常の保守等の役務提供相当額の処理)

65. 通常の保守等の役務提供相当額の処理は、第55項と同様とする。

(貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合の処理)

66. 貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合の処理は、第56項と同様とする。

(再リースの処理)

67. 第9項において再リース期間を解約不能のリース期間に含めない場合の再リース料は、発生時の収益として処理する。

(中途解約の処理)

68. リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、次のいずれかの方法により処理する。

(1) 第51項の(1)又は(3)の方法を採用した場合

リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金と中途解約時のリース債権残高との差額を収益として計上する。

(2) 第51項の(2)の方法を採用した場合

リース契約が中途解約された場合に受け取る規定損害金については、売上高として処理し、中途解約時のリース債権残高を売上原価として計上する。

セール・アンド・リースバック取引

69. セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引が、ファイナンス・リース取引に該当するかどうかの判定は、第5 項から第20項の「ファイナンス・リース取引の判定基準」に示したところによる。ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時におけるリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積った経済的使用可能予測期間を用いるとともに、当該リース物件の借手の見積現金購入価額については、借手の実際売却価額を用いるものとする。[設例7]

70. 当該リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当する場合の会計処理は、第51項から第68項までと同様とする。

開示

ファイナンス・リース取引に係る注記

71. リース会計基準第19項で定める借手における注記を省略できる判断基準は、第32項で定める判断基準と同様とする。また、リース会計基準第20 項及び第21 項で定める貸手における注記を省略できる判断基準は、第60項で定める判断基準と同様とする。

72. 貸手の行ったリース取引がファイナンス・リース取引と判定された場合には、貸手は、重要な会計方針において、第51項のいずれの方法を採用したかを注記する。

転リース取引に係る注記

73. 第47項なお書きによりリース債権又はリース投資資産とリース債務を利息相当額控除前の金額で計上する場合は、貸借対照表に含まれる当該リース債権又はリース投資資産とリース債務の金額を注記する。

オペレーティング・リース取引に係る注記

74. オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記することとしている(リース会計基準第22項)。

解約不能のリース取引として取り扱われるものは、第5項(1)及び第6項と同様である。

ただし、リース期間の一部分の期間について契約解除をできないこととされているものも解約不能のリース取引として取り扱い、その場合には当該リース期間の一部分に係る未経過リース料を注記する。

75. オペレーティング・リース取引のうち注記を要しないとされる重要性が乏しい場合とは(リース会計基準第22項)、次のいずれかに該当する場合をいう。

(1) 個々のリース物件のリース料総額が、第35 項(1)に該当するリース取引

(2) リース期間が1 年以内のリース取引

(3) 契約上数か月程度の事前予告をもって解約できるものと定められているリース契約で、その予告した解約日以降のリース料の支払を要しない事前解約予告期間(すなわち、解約不能期間)に係る部分のリース料

(4) 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1 件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引(1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができる。)

適用時期等

適用時期

76. 本適用指針の適用時期は、リース会計基準と同様とする。

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(借手)

77. 所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、会計基準の改正により、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理から、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に変更する場合、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理する。この場合、変更による影響額(適用初年度の期首までの税引前当期純損益に係る累積的影響額)は特別損益として処理する。[設例9]

78. ただし、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引については、会計基準適用初年度の前年度末における未経過リース料残高又は未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とし、期首に取得したものとしてリース資産に計上することができる。未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とした場合、会計基準適用後の残存期間における利息相当額については、第24項の「利息相当額の各期への配分」の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。なお、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のセール・アンド・リースバック取引について計上されている長期前払費用又は長期前受収益については、別途、会計基準適用初年度開始前に実施されていた会計処理を継続する。[設例9]

79. さらに、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引で、本会計基準に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されたものについては、第77項又は第78項の定めによらず、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用することができる。この場合、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び「リース取引に係る会計基準」(以下「改正前会計基準」という。)で必要とされていた事項(付録参照)を注記しなければならない。[設例9]

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(貸手)

80. 所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、会計基準の改正により、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理から、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に変更する場合、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理する。この場合、変更による影響額(適用初年度の期首までの税引前当期純損益に係る累積的影響額)は特別損益として処理する。[設例9]

81. ただし、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引については、会計基準適用初年度の前年度末における固定資産の適正な帳簿価額(減価償却累計額控除後)をリース投資資産の期首の価額として計上することができる。

また、当該リース投資資産に関して、会計基準適用後の残存期間においては、第53項の「利息相当額の各期への配分」の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。[設例9]

82. さらに、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引で、本会計基準に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されたものについては、第80項又は第81項の定めによらず、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用することができる。この場合、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び改正前会計基準で必要とされていた事項(付録参照)を注記しなければならない。[設例9]

83. 前項の定めは、リース取引を主たる事業としている企業は適用できない。また、リース取引を主たる事業としている企業においては、第81項を適用した場合、重要性が乏しいときを除き、会計基準適用初年度の会計基準適用後の残存期間の各期において、当該各期における第80 項を適用した場合の税引前当期純損益と第81 項を適用した場合の税引前当期純損益との差額を注記しなければならない。[設例9]

四半期財務諸表における取扱い

84. 借手において第79項を適用した場合、年度の財務諸表では、改正前会計基準で必要とされていた事項を財務諸表に注記する必要があるが、四半期財務諸表では当該注記は要しないものとする。ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用するリース取引に係る金額が企業再編等により前年度末と比較して著しく増減しているときは、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用するリース取引に関して、当該著しく増減した期における四半期財務諸表において、以下を注記する。

・ 著しく増加した場合:著しく増加したリース取引に係る未経過リース料期末残高相当額

・ 著しく減少した場合:著しく減少したリース取引に係る前年度末の未経過リース料期末残高相当額

85. 同様に、貸手において第82 項を適用した場合で、年度の財務諸表では、改正前会計基準で必要とされていた事項を財務諸表に注記する必要があるが、四半期財務諸表では当該注記は要しないものとする。ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用するリース取引に係る金額が企業再編等により前年度末と比較して著しく増減しているときは、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用するリース取引に関して、当該著しく増減した期における四半期財務諸表において、以下を注記する。

・ 著しく増加した場合:著しく増加したリース取引に係るリース物件の期末残高及び未経過リース料期末残高相当額

・ 著しく減少した場合:著しく減少したリース取引に係る前年度末のリース物件の期末残高及び未経過リース料期末残高相当額

適用初年度のリース取引の取扱い

86. リース会計基準を平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用する場合、平成20年4月1日前に契約を締結したリース取引については、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引として取り扱うことができる。

議 決

87. 本適用指針は、第125回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。

結論の背景

経緯

88. 平成5年6月に公表された「リース取引に係る会計基準」(企業会計審議会第一部会 平成5年6月17日)の実務上の指針として、日本公認会計士協会から「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(日本公認会計士協会 会計制度委員会 平成6年1月18日、以下「改正前指針」という。)が公表されている。本適用指針は、改正前指針を改正するものであり、主として、改正前指針における所有権移転外ファイナンス・リース取引の通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に関する見直しを行っている。

範囲

89. 本適用指針の適用範囲は、ファイナンス・リース取引については、「通常の保守等以外の役務提供が組み込まれていないリース取引及び不動産に係るリース取引」としており(第3項参照)、典型的なリース取引及び不動産に係るリース取引を取り扱うこととしている。すなわち、本適用指針では、リース会計基準でファイナンス・リース取引とされるもののうち、主たるものについて詳細な会計処理を示しており、本適用指針で詳細な会計処理を示していないファイナンス・リース取引については、実態に基づき会計処理を行うこととなる。

ここで、典型的なリース取引としては、リース期間中のリース料の支払いが均等であり、リース期間がリース物件の経済的耐用年数より長くないことを想定している。また、「通常の保守等」は、自動車やコピー機などのリース取引におけるメンテナンスなどを想定している。

なお、通常の保守等以外の労務等の役務提供が含まれているリース取引(例えば、システム関連業務において、システム機器のリース取引と労務等が一体化されている取引)については、本適用指針の対象としていないが、動産等のリース取引部分と役務提供部分が契約書等で判別できるケースなど容易に分離可能な場合には、動産等のリース取引部分について、本適用指針を適用するものとする。

90. リース料が将来の一定の指標(売上高等)により変動するリース取引など、特殊なリース取引については、本適用指針では取り扱っていない。

91. なお、リース会計基準におけるリース取引の定義を満たすものについては、リース契約、レンタル契約、賃貸借契約などの名称に関わらず、本適用指針を適用する上で、リース取引として取り扱われることに留意する必要がある。

ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引の条件

92. 本適用指針では、リース会計基準におけるファイナンス・リース取引の定義を受けて、「解約不能」と「フルペイアウト」の2つをファイナンス・リース取引の条件としている(第5項参照)。

第1の条件の「解約不能」とは、契約上一定のリース期間の定めがあることを前提としている。このリース期間は、実務上、「拘束期間」、「契約期間」、「賃貸借期間」等のさまざまな文言で表現されている。本適用指針では、契約上リース期間中は解約不能であることが明記されているもの以外に、これと同様に取り扱われる取引として事実上解約不能と認められるリース取引を2つ例示している(第6項参照)。なお、解約可能であることが明記されていなければ解約不能として取り扱われるわけではなく、事実上解約不能であるかどうかは、契約条項の内容、商慣習等を勘案し契約の実態に応じ判断されることになる。

このことは、オペレーティング・リース取引に係る注記の対象となる解約不能のリース取引の判断においても同様である。

93. 第2の条件である「フルペイアウト」について、リース会計基準では、「借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担すること」としている(第5項(2)参照)。

借手がリース物件の使用に伴って生じるコスト(当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等)を実質的に負担する場合には、借手はリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することになると推定できる。同様に、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができる場合には、通常、借手はリース物件の使用に伴って生じるコストを負担することになると推定できる。

本適用指針におけるファイナンス・リース取引の判定基準については、このような「フルペイアウト」の考え方が前提となっている。

具体的な判定基準

(ファイナンス・リース取引の判定基準)

94. 本適用指針では、ファイナンス・リース取引の判定基準を、@解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額の概ね90パーセント以上であること(現在価値基準)と、A解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75 パーセント以上であること(経済的耐用年数基準)のいずれかに該当することとしている(第9項参照)。

本適用指針では、これらのうち現在価値基準がフルペイアウトの判定を行う原則的な基準と考えているが、現在価値の計算をすべてのリース取引について行うことは実務上極めて煩雑と考えられるところから、簡便法としての経済的耐用年数基準を設けている。現在のリース取引の実態から判断すると、解約不能のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上である場合、借手がそのリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受すると考えられることが多い。

しかし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の中古市場の存在等により、借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担することにはならない場合 もあるとの指摘があり、そのような場合には原則的な基準である現在価値基準により判定を行うものとした(第13項参照)。

なお、現在価値基準と経済的耐用年数基準の具体的数値として、それぞれの基準において「概ね90パーセント以上」又は「概ね75パーセント以上」としているのは、現在価値基準の判定に見積りの要素が多いためであり、例えば、それぞれの数値が88パーセント又は73パーセントといった場合でも実質的にフルペイアウトと考えられる場合には、ファイナンス・リース取引と判定されることになる。

(現在価値基準適用上の留意点)

95. 貸手の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額が借手に明示されている場合には、その額を見積現金購入価額として借手の判定に用いることになるが、明示されていない場合には、適当と認められる方法により現金購入価額を見積ることになる。

なお、貸手が現在価値基準の判定を行う場合には、貸手の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額によることになるが、このことは借手の判定基準から自明であり本文ではあえて触れていない。

借手が現在価値基準を適用する場合において現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を借手が知り得るときにはこれによるが、知り得ないときには借手が割引率を見積ることになる。本適用指針では、後者の場合には借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によるとしており(第17項参照)、具体例としては、次のような利率のなかからその企業にとって適当と認められるものを用いることになる。

(1) リース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッドを加味した利率

(2) 新規長期借入金等の利率

@ 契約時点の利率

A 契約が行われた月の月初又は月末の利率

B 契約が行われた月の平均利率

C 契約が行われた半期の平均利率

なお、(2)の場合には、リース期間と同一の期間の借入れを行う場合に適用される利率を用いる。

また、1つのリース契約が多数のリース物件から構成されているような場合には、個々のリース物件ごとに現在価値基準の判定を行わずにリース契約全体で判定を行うことも認められる。

(経済的耐用年数基準適用上の留意点)

96. 本適用指針では、経済的耐用年数基準の判定に用いられる「経済的耐用年数」は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数によるものとしている(第12項参照)。この「経済的耐用年数」は、これまでの取扱いと同様に、経済的使用可能予測期間と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り、税法耐用年数を用いて判定を行うことも認められると考えられる(日本公認会計士協会 監査第一委員会報告第32号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」V2@)。

なお、1 つのリース契約が多数のリース物件から構成されているような場合には、個々のリース物件ごとに経済的耐用年数基準の判定を行わずに全リース物件の加重平均耐用年数により判定を行うことも認められる。

(所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引の分類)

97. 本適用指針では、ファイナンス・リース取引と判定されたもののうち、所有権移転条項のある場合、借手に割安購入選択権がありその行使が確実に予想される場合、特別仕様のリース物件の場合のいずれかに該当するときに、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するものとし、それ以外のファイナンス・リース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当するものとしている(第10項参照)。

このうち「特別仕様のリース物件」の中には、第10項(3)において「借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもの」とされているように、専用性の高い機械装置等以外に特別仕様の建物等の不動産も含まれる。

不動産に係るリース取引の取扱い

98. 本適用指針では、土地については、第10項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定することとしている(第19項ただし書き参照)。これは、土地の経済的耐用年数は無限であるため、第10項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除いては、通常、フルペイアウトのリース取引に該当しないと考えられることによる。

99. また、土地と建物等を一括したリース取引は、土地が無限の経済的耐用年数を有し建物等と異なる性格を有することを踏まえ、リース料総額を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、第9項(1)に定める現在価値基準の判定を行うこととしている(第20項参照)。リース料総額を土地に係る部分と建物等に係る部分に合理的に分割する方法としては以下が考えられ、このうち最も実態に合った方法を採用する。

(1) 賃貸借契約書等で、適切な土地の賃料が明示されている場合には、全体のリース料総額から土地の賃料を差し引いた額を、建物等のリース料総額とする。

(2) 全体のリース料総額から土地の合理的な見積賃料を差し引いた額を、建物等のリース料総額とみなす。合理的な見積賃料には、近隣の水準などを用いることが考えられる。

(3) 全体のリース料総額から土地の時価に借手の追加借入利子率を乗じた額の総額を差し引いた額を、建物等のリース料総額とみなす(借手の場合)。

100. 前項(1)のように適切な土地の賃料が契約書で明示されているなどの場合を除いては、借手においては、リース料に含まれている土地の賃料相当の金額の算出は容易ではないことが想定される。したがって、借手においては、ファイナンス・リース取引に該当するか否かが売却損益の算出に影響を与えるセール・アンド・リースバック取引を除き、土地の賃料が容易に判別可能でない場合は、両者を区分せずに第9 項(1)に定める現在価値基準の判定を行うことができるものとする。

ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理

(借手における費用配分の基本的な考え方)

101. 所有権移転ファイナンス・リース取引については、リース物件の割賦取得と同様の取引と考えられるため、費用配分についても割賦取得の場合と同様のものとなる。一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得の性格を有するものの、次の点で、所有権移転ファイナンス・リース取引と異なる性格も持つ(リース会計基準第38項)。

・ 経済的にはリース物件の取得及び取得のための資金調達と類似の性格を有する一方で、法的には賃貸借の性格を有し、また、役務提供が組み込まれる場合が多く、複合的な性格を有する。

・ フルペイアウトではあるが、リース物件の耐用年数とリース期間は異なる場合が多く、また、リース物件の返還が行われるため、物件そのものの売買というよりは、使用する権利の取得の性格を有する。

・ 借手が資産の使用に必要なコスト(リース物件の取得価額、金利相当額、役務提供相当額など)を、通常、契約期間にわたる定額のキャッシュ・フローとして確定する。

102. 本適用指針では、これらの所有権移転外ファイナンス・リース取引の性格を踏まえた上で、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引とで、異なる費用配分の方法を採用している。これらの差異は、主としてリース資産の減価償却方法、利息相当額に関する取扱い等に表れる。

103. なお、現状ではファイナンス・リース取引の大半が所有権移転外ファイナンス・リース取引であることが想定されるため、実務上の便宜から、所有権移転外ファイナンス・リース取引、所有権移転ファイナンス・リース取引の順で会計処理に関する定めを記載している(第21項から第46項参照。また、貸手も同様としている。)。

104. 本適用指針に示された会計処理は、割賦取引又は延払条件付譲渡取引についても適用が可能であるが、これらの取引の会計実務を拘束することを意図するものではない。

(リース資産及びリース債務の計上価額)

105. リース資産及びリース債務の計上額としては、リース料総額の割引現在価値、貸手の購入価額、借手の見積現金購入価額、リース資産の時価などの金額によることが考えられる。

リース債務の評価の側面を考えると、リース料総額の割引現在価値を利用することが、取得よりもリースを選択した借手の行動を反映すると考えられる。一方、リース資産の評価の側面を考えると、リース物件の価値による方法が考えられる。所有権移転外ファイナンス・リース取引については、負債の計上の必要性が重視されていることを踏まえると、リース料総額の割引現在価値を基本に考えるべきと思われるが、資産と負債が同額で計上されることを考えると、リース物件の価値も合わせ考えることとなる。

これらの観点から、本適用指針では改正前指針の方法を踏襲し、リース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額を基礎とする方法を採用することとした(第22項及び第37項参照)。

(支払リース料の処理、利息相当額の各期への配分)

106. 所有権移転ファイナンス・リース取引については、リース取引開始日におけるリース料総額とリース資産計上額との差額は、利息相当額として扱い、当該利息相当額の各期への配分は利息法によることとしている(第39項参照)。これは、所有権移転ファイナンス・リース取引については、一種の金融取引と考えられるためである。

107. 一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、第101項に記載したように複合的な性格を有するため、リース取引開始日におけるリース料総額とリース資産計上額との差額を利息相当額として扱い、これを利息法により費用配分することは一義的に決まるわけではない。しかしながら、金額的重要性がある場合には、金融の側面が重視されることも否定できず、改正前指針の注記処理の運用上も原則法として利息法を適用することが定着していることを踏まえ、改正前指針の方法を踏襲し、所有権移転ファイナンス・リース取引と同様に利息法によることとしている(第24項参照)。

108. なお、一定の要件を満たし金額的に重要性が乏しい場合には、リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法、又は利息相当額の各期への配分を定額法によることが認められる(第31項参照)。

(維持管理費用相当額の処理)

109. 我が国のリース契約において、リース料総額に含まれる維持管理費用相当額は、リース料に占める重要性が乏しく、また、借手では把握できないことが多いと想定される。したがって、ファイナンス・リース取引の判定及び会計処理において、重要性が乏しい場合には、これを控除又は区分しないことができることとしている(第25項及び第40項参照)。

維持管理費用相当額を区分して会計処理を行う場合には、「維持管理費」等の名称で一括すれば足り、これを固定資産税、保険料等に細分する必要はない。

110. 本適用指針では、維持管理費用相当額を区分する場合とは、ファイナンス・リース取引の判定においてこれらをリース料総額から控除する場合を想定している。

(通常の保守等の役務提供相当額の処理)

111. 本適用指針では、典型的なリース取引、すなわち役務提供相当額のリース料総額に占める割合が低いものを対象としているため、役務提供相当額は重要性が乏しいことが想定され、維持管理費用相当額に準じて会計処理を行うこととしている(第26項及び第41項参照)。

(リース資産の償却)

112. 所有権移転外ファイナンス・リース取引において、定率法を採用する企業が自己所有の固定資産の償却方法と近似する償却方法を選択したい場合には、級数法を採用すること以外に、残存価額を10パーセントとして計算した定率法による減価償却費相当額に簡便的に9 分の10を乗じた額を各期の減価償却費相当額とする方法も認められる(第28項参照)。

113. また、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、残価保証の取決めがある場合には、原則として、残価保証額を残存価額とすることとしているが(第27項参照)、これは、残価保証額がリース期間終了時の見積時価と大幅に乖離していないことを想定している。したがって、借手の保証する残価保証額がリース期間終了時の見積時価と大幅に乖離しているような特殊なリース取引については、その実態を反映した会計処理を行う必要がある。

(再リースの処理)

114. 我が国では、再リース期間は1年以内とするのが通常であり、再リース料も少額であるのが一般的であることから、本適用指針では、リース契約時から借手が再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リース料は、原則として、発生時の費用として処理することとしている(第29項また書き参照)。

(リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)

115. 我が国においては、リース取引を基幹設備に利用し、企業全体のリース資産の総額に重要性が見られるケースがある一方で、多くの企業では企業全体のリース資産の総額に重要性が乏しいと想定される。

企業全体のリース資産総額に重要性が乏しいかどうかの判断基準としては、未経過リース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が低い場合としている(第32項参照)。ここで、未経過リース料を使用しているのは、割引計算によりリース資産を求める煩雑さを避けるためである。また、無形固定資産も判断基準に加えているのは、ソフトウェアのリース取引が見られることを踏まえたものである。

116. これらの判断基準を満たした企業については、リース資産及びリース債務を計上した上で、煩雑な計算を避ける意味で、「リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法」、又は、「利息相当額の定額法による配分」を採用することができることとしている(第31項参照)。

(少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い)

117. 我が国のリース取引は、事務機器等の比較的少額なリース資産に利用されることが多いことを踏まえ、一定の金額以下のリース取引については、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができることとしている(第34項及び第35項(3)参照)。

118. このほか、通常の固定資産の取得でも購入時に費用処理される少額なもの、及びリース期間が1年以内のリース取引については、重要性が乏しいため、同様にオペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができることとしている(第34項及び第35項(1)、(2)参照)。

ファイナンス・リース取引に係る貸手の会計処理

(貸手における収益配分の基本的な考え方)

119. 通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う場合、借手がリース資産の取得の会計処理であるのに対し、貸手はリース資産の売却の会計処理となるが、両者の会計処理は対称的になるとは限らない。この点は、通常の売買における売上の会計処理と仕入の会計処理が必ずしも対称的にならないことと同様である。

120. 所有権移転ファイナンス・リース取引は、貸手からみるとリース物件の売却と同様の取引と考えられ、収益配分についても割賦取引の場合と同様と考えられる点については、借手における費用配分の基本的な考え方と同様である。また、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、通常の物件の売却と異なる性格を有する点も、借手の場合と同様である(第101項参照)。

121. なお、借手と同様に、本適用指針に示された貸手の会計処理は、割賦取引又は延払条件付譲渡取引についても適用が可能であるが、これらの取引の会計実務を拘束することを意図するものではない。

(基本となる会計処理)

122. リース会計基準では、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされており、本適用指針では、その具体的な方法として、次の3 つの方法を定めている(第51項及び第61項参照)。

(1) リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法

(2) リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法

(3) 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法

(1)の方法は、リース料総額をリース取引開始日に売上高として計上する方法であり、主として製造業、卸売業等を営む企業が製品又は商品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定している。(2)の方法は、リース期間中の各期の受取リース料を売上高として計上する方法であり、従来行われてきた割賦販売の処理を想定している。(3)の方法は、売上高を計上せず、利益の配分のみを行う方法であり、リース取引が有する複合的な性格の中でも、金融取引の性格が強い場合を想定している。リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額は受取利息相当額として取り扱い、リース期間にわたり各期へ配分する。この受取利息相当額の金額は(1)から(3)のいずれの方法を採用しても同額であり、各期の利益は同額となる。

123. 前項(1)及び(2)の方法は、いずれも割賦販売取引において、一般的に採用されている方法である。いずれの方法を採用するかは、割賦販売取引において当該企業が採用している方法と原則として同一の方法とすることとした(第51項及び第61項参照)。

124. なお、所有権移転ファイナンス・リース取引の場合は、貸手は、借手からのリース料及び割安購入選択権の行使価額で回収するが、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合はリース料と見積残存価額の価値により回収を図る。よって、所有権移転ファイナンス・リース取引で生じる資産はリース債権として表示し、所有権移転外ファイナンス・リース取引で生じる資産はリース投資資産として表示することとしている。リース投資資産は、将来のリース料を収受する権利と見積残存価額の複合的な資産である(リース会計基準第40項)。

(利息相当額の各期への配分)

125. 所有権移転ファイナンス・リース取引は、リース物件の売却とリース債権の回収取引と考えられるため、各期のリース債権残高に対して一定の利益率になるように利息法により受取利息相当額を配分することとしている(第63項参照)。

126. 一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合は、その金融的な側面に着目すると、所有権移転ファイナンス・リース取引と同様に利息法により受取利息相当額を配分することが整合的であり、また、貸手の原価の大半が資金調達コストである場合には、その費用配分処理と整合的な処理となる。よって、所有権移転外ファイナンス・リース取引についても、受取利息相当額を利息法で配分することを原則的な取扱いとしている(第53項参照)。

127. しかしながら、すべての収益配分が各期の投資額に対して一定の利益率になるようにされているわけではなく(例えば、割賦販売取引において、収益認識基準に割賦基準を適用し金利を考慮しない場合の処理)、利息法によることが必然的ではない点等を考慮し、重要性が乏しく、一定の要件を満たした場合には、定額法による受取利息相当額の配分を簡便的な取扱いとして認めている(第59項及び第60項参照)。

(貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合の処理)

128. 貸手における製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差があるケースでは、当該差額はリース物件の販売益と考えられるため、利息相当額とは区分して会計処理を行うこととしている。しかしながら、当該処理は煩雑になると考えられるため、当該差額に重要性が乏しい場合は、区分処理を行わないことができることとしている。また、当該販売益を割賦基準により処理することとしている場合には、結果的に販売益がリース期間に配分され、利息相当額に含める場合と利益計上額に大きな差が生じないと想定されるため、同様に区分処理を行わないことができることとしている(第56項参照)。

(貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)

129. リース取引の貸手には、リース取引を主たる事業としていない企業もあると想定されるため、一定の要件を満たし重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額的に配分できる取扱いを認めている(第59項及び第60項参照)。

適用時期等

適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い

130. 所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、会計基準の改正により、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理から、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に変更する場合、本適用指針では、我が国における会計処理の変更時の一般的な取扱いに従い、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理を行い、変更による影響額を特別損益として処理することとしている。

ただし、簡便的な取扱いとして、変更による影響額が生じない方法(第78項及び第81項参照)及び会計基準適用初年度開始前のリース取引について注記処理を認める方法(第79項及び第82項参照)を定めている。

なお、変更による影響額を期首の利益剰余金の調整とする方法も検討したが、今後検討を予定している過年度の財務諸表の遡及修正の議論にも関係することから、その推移を見守る必要があるため、採用していない。

131. また、貸手においては、会計基準改正前の処理(固定資産に計上)と会計基準改正後の処理(リース投資資産に計上)が大きく異なり、リース取引の重要性が高い場合、これらが混在することは適切ではないと考えられるため、リース取引を主たる事業としている企業については、会計基準適用初年度開始前のリース取引について第82項に定める注記処理を認める方法は適用できないこととしている(第83項参照)。なお、特別目的会社等を利用して資産を保有しファイナンス・リース取引の貸手となる事業体などのように、資産の取得を繰り返さないような場合には、処理が混在することはないと想定されるため、会計基準適用初年度開始前のリース取引について第82項に定める注記処理によることは妨げられないと考えられる。

132. 第77項又は第80項に従い、リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のリース取引について、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理を行う場合、会計基準適用前の財務諸表の資本連結をやり直す必要はないこととする。


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