(注)本内容は、企業会計審議会が平成2年5月29日に公表したしたもの
です。なお、オリジナルの設例とは異なる表現をしている部分があります。
実務への適用にあたっては念のため当該意見書等を確認して下さい。
第一部 先物・オプション取引等に係る時価情報の開示に関する意見書 |
平成二年五月二十九日
企業会計審議会第一部会
目次
一 時価情報の開示の必要性
二 先物・オプション取引に係る時価情報の開示基準
三 市場性ある有価証券にかかる時価情報の開示基準
(様式1)先物取引に係る時価情報
(様式2)オプション取引に係る時価情報
(様式3)市場性ある有価証券に係る時価情報
一 時価情報の開示の必要性
1 本意見書は、証券・金融先物及びオプション取引に係る時価情報並びに市場性ある有価証券に係る時価情報の開示基準をとりまとめたものである。なお、商品先物及び同オプション取引については、その目的や仕組み等、上記の取引と類似する点が多いので、本意見書に示された開示基準に準じて、その時価情報を開示するものとする。
2 先物・オプション取引等に係る時価情報の開示が必要とされる主な理由は、次のとおりである。
(1) 最近における金融・資本市場の急速な整備・拡充を背景として、先物・オプション取引等多様な金融商品取引が活発に行われるようになってきているが、企業は、これらの金融商品取引を利用して新たな収益機会を得る一方、価格リスク、金利リスク、為替リスク等各種のリスクにさらされる度合いを深めている。しかも、このような投資収益及びリスクの状況等金融商品取引に係る財務情報は、現行実務上、その多くがオフ・バランスとなっているため、投資者等企業の利害関係者(以下「投資者等」という。)は、それらの取引実態を的確に把握することが困難となっている。
特に先物・オプション取引については、その取引量も増大し、かつ、取引のグローバル化の傾向も顕著になってきているため、これらの取引の実態について、十分な財務情報の開示が、強く求められている。
(2) 先物取引の未決済の契約額は、現行実務上、オフ・バランスとなっており、また、オプション料についても、契約時にこれを収益・費用として処理している場合には、売建又は買建オプションが存在しても、その事実がオフ・バランスとなっている。
さらに、現行実務では、先物・オプション取引に係る損益は、当該取引を決済するまではこれを認識しない決済基準が採用されているので、先物・オプション取引が企業財務に与える影響は、当該取引の決済時まで明らかにされない。従って、これらの取引の実態が適時・適切に開示されるためには、先物取引の決済時における未決済の契約額及びオプションの貸借対照表価額に加えて、それぞれに対応する時価及び差損益を財務諸表に対する注記として開示し、財務諸表の有用性を高める必要がある。
(3) 先物・オプション取引に係る損益を決済時まで認識しない現行実務のもとでは、期末において利益の発生している取引のみを決済し、損失の発生している取引を未決済のまま残すといった恣意的な取引を行うことにより期間損益を操作する余地があるが、かかる操作を抑止するためにも、時価情報を開示することは有用である。
3 市場性ある有価証券に係る時価情報の開示が必要とされる主な理由は、次のとおりである。
(1) 先物・オプション取引がヘッジ目的で行われる場合には、先物・オプション取引に係る時価情報と、当該先物・オプション取引によりヘッジされている現物の有価証券等、特に市場性ある有価証券に係る時価情報を併せて開示しないと、ヘッジ取引に係る損益情報の開示が偏り、投資者等の判断を誤らせるおそれがある。
(2) 近年、企業資産のうち有価証券の保有額は、急速に増加しており、かつ、その含み損益が著しく増大しているため、企業の現状分析や将来性の判断資料として、かかる含み損益を加味した財務情報の開示が求められている。従って、保有有価証券の含み損益を開示することは、財務諸表の有用性を一層高めることとなる。
(3) 米英等においては、市場性ある有価証券に係る時価情報の開示が行われており、我が国においても会計基準の国際的調和の観点から時価情報の開示を制度化し、対外的にも我が国企業の財務情報の透明性を高める必要がある。なお、既に我が国の銀行・証券会社の一部及びSEC基準で連結財務諸表を作成している企業等においては、何らかの形で有価証券に係る時価情報が開示されている。
(4) 現在、有価証券の評価基準として原価法と低価法の選択適用が認められているが、原価法を適用している企業と低価法を適用している企業との間の開示面での均衡を図る観点からも、市場性ある有価証券の時価情報の開示が必要である。
二 先物・オプション取引に係る時価情報の開示基準
1 開示の対象
開示の対象とすべき先物・オプション取引は、取引所に上場されている証券・金融先物及び同オプション取引とする。
2 開示すべき情報
開示すべき情報は、先物取引については決算時における未決済の契約額、これに対応する時価及び差損益とし、オプション取引については決算時におけるオプションの貸借対照表価額、これに対応する時価及び差損益とする。
3 開示の方法
(1) 先物取引に係る時価情報は、株式、債券、金利等の種類ごとに、売建・買建別に開示する。また、オプション取引に係る時価情報は、株式、債券、金利等の種類ごとに、売建・買建、コール・プット別に開示する。ただし、種類について金額的に重要性の乏しい場合には「その他」に一括して開示することができる。
(2) オプションの貸借対照表価額は、売建又は買建時に授受されるオプション料の額とし、売建時に受け取ったオプション料は「売建オプション」等適当な科目をもって貸借対照表の負債の部に、買建時に支払ったオプション料は「買建オプション」等適当な科目をもって貸借対照表の資産の部に、それぞれ記載する。
(3) 先物取引の契約額又はオプションの貸借対照表価額に対応する時価は、決算時における取引所の相場を用いて算出する。
なお、外貨建取引に係る時価は、外貨による時価を決算時における為替相場を用いて換算する。
(4) 差損益は、先物取引の契約額叉はオプションの貸借対象表価額とそれぞれの時価との差額とする。
4 開示の箇所
財務諸表及び中間財務諸表の注記として開示する。
5 開示の様式
先物取引にかかる時価情報は、おおむね様式1により、オプション取引に係る時価情報は、おおむね様式2により開始する。
三 市場性ある有価証券にかかる時価情報の開示基準
1 開示の対象
開示の対象とすべき有価証券は、証券取引所に上場されている有価証券及びこれに準ずる有価証券とする。
2 開示すべき情報
開示すべき情報は、決算時における有価証券の貸借対照表価額、これに対応する時価及び評価損益とする。
3 開示の方法
(1) 流動資産に属する有価証券と固定資産に属する有価証券に区分し、さらに株式、債券等の種類別に開示する。ただし、種類について金額的に重要性の乏しい場合には「その他」に一括して開示することができる。
(2) 有価証券の貸借対照表価額に対応する時価は、決算時における市場の相場を用いて算出する。
なお、外貨建有価証券に係る時価は、外貨による時価を決算時における為替相場を用いて換算する。
(3) 評価損益は、貸借対照表価額と時価との差額とする。
(4) 関係会社有価証券については、有価証券の種類別に、貸借対照表価額、時価及び評価損益を、内書として開示する。
4 開示の箇所
財務諸表及び中間財務諸表の注記として開示する。
5 開示の様式
市場性ある有価証券に係る時価情報は、おおむね様式3により開示する。
(様式1)
先物取引に係る時価情報
種類及び売建・買建の別 |
契約額 |
時価 |
差損益 |
株 式 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
××× |
××× |
××× |
債 権 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
××× |
××× |
××× |
金 利 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
××× |
××× |
××× |
そ の 他 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
××× |
××× |
××× |
合 計 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
××× |
××× |
××× |
差引計 |
− |
− |
××× |
(様式2)
オプション取引に係る時価情報
種類及び売建・買建、コール・プットの別 |
貸借対照表価額 |
時価 |
差損益 |
株 式 |
|
|
|
売 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
債 権 |
|
|
|
売 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
金 利 |
|
|
|
売 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
そ の 他 |
|
|
|
売 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
買 建 |
|
|
|
コール |
××× |
××× |
××× |
プット |
××× |
××× |
××× |
合 計 |
|
|
|
売 建 |
××× |
××× |
××× |
|
|
|
|
買 建 |
××× |
××× |
××× |
差引計 |
− |
− |
××× |
(注)上場オプション取引の他、店頭で行われているオプション取引(債権店頭オプション、通貨オプション取引等)については、オプションの種類、売建、買建、コール・プット別に貸借対照表価額を注記すること。
(様式3)
市場性ある有価証券に係る時価情報
種 類 |
貸借対照表価額 |
時価 |
評価差損益 |
(1)流動資産に属するもの |
|
|
|
株 式 |
××× |
××× |
××× |
債 権 |
××× |
××× |
××× |
その他 |
××× |
××× |
××× |
小 計 |
××× |
××× |
××× |
(2)固定資産に属するもの |
|
|
|
株 式 |
××× |
××× |
××× |
債 権 |
××× |
××× |
××× |
その他 |
××× |
××× |
××× |
小 計 |
××× |
××× |
××× |
合 計 |
××× |
××× |
××× |
INDEX
■先物・オプション取引等の会計基準目次
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