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四半期財務諸表に関する会計基準目次

(注)本内容は、平成21年3月27日企業会計基準委員会が公表した「四半期財務諸表に関する会計基準」から「結論の背景」部分を抜粋したものです。「目的・会計基準」は別に記載してあります。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第12号

四半期財務諸表に関する会計基準

(結論の背景)

平成19年3月14日

改正平成20年12月26日

最終改正平成21年3月27日

企業会計基準委員会

目 次

目的・会計基準は別に記載してあります。

結論の背景

検討の経緯

検討の前提

四半期財務諸表の範囲等

四半期財務諸表の範囲

四半期財務諸表等の開示対象期間

四半期財務諸表の作成基準

四半期財務諸表の性格

会計処理

開 示

年度における四半期財務情報に係る開示

適用時期等


結論の背景

検討の経緯

30. 平成17年6月に公表された金融審議会金融分科会第一部会ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告「今後の開示制度のあり方について」(以下「金融審議会報告書」という。)において「四半期開示のあり方」が示され、四半期財務諸表に係る作成基準の一層の整備に関しては、「(財)財務会計基準機構・企業会計基準委員会においてすみやかに策定作業が進められるよう要請したい。」という内容が盛り込まれた。企業会計基準委員会(以下「当委員会」という。)では、この金融審議会報告書を受けて、平成17年7月に四半期会計基準専門委員会を設置し、本会計基準及びその適用指針の開発を進めた。平成19年会計基準の公表までの経緯は、概ね次のとおりである。

当委員会では、まず、財団法人 財務会計基準機構内に設けられているテーマ協議会から平成13年11月に中長期テーマとして「四半期開示の検討」が提言されたことに加え、証券取引所による上場会社への四半期財務情報の開示の要請等を踏まえ、平成15年11月から研究プロジェクトを立ち上げ、国際的な会計基準の調査を行うとともに、市場関係者へのヒアリングを幅広く行った。その後、金融審議会金融分科会第一部会での四半期開示に関する検討開始を受け、平成17年1月からは、四半期開示ワーキング・グループを設置して、四半期財務情報の開示の実態調査を行った上で、検討すべき点についての洗い出し作業を行った。そして、平成17年7月に、前述の金融審議会報告書において四半期財務諸表の位置付けが明らかになったことを踏まえ、会計基準の開発に本格的に着手するために四半期会計基準専門委員会を設置して検討を行ってきた。平成17年12月には、それまでの議論を踏まえ、論点ごとに可能な限り検討の方向性も示した「四半期財務諸表の作成基準に関する論点の整理」を取りまとめ、広く一般から意見を募集するために公表した。

その後、上記の金融審議会報告書に沿って平成18年6月に「金融商品取引法制」を整備する法改正が成立し、上場会社等を対象として平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から四半期報告制度が導入されることとなった。当委員会では、上記の論点整理に寄せられたコメントを分析した上で検討を重ね、平成18年11月には公開草案として公表し、広くコメント募集を行った。平成19年会計基準は、当委員会において寄せられたコメントを検討し、公開草案を一部修正した上で、公表するに至ったものである。

30-2. 当委員会は、平成20年3月に企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下「セグメント情報等会計基準」という。)が公表されたことに伴い、同会計基準適用後の四半期財務諸表のセグメント情報の開示について検討した。

平成20年改正会計基準は、平成20年7月に公表した公開草案に対して当委員会に寄せられたコメントを検討し、公開草案を一部修正した上で、平成19年会計基準の改正を行ったものである。

30-3. 平成21年改正会計基準は、平成20年9月改正の棚卸資産会計基準により選択できる評価方法から後入先出法が削除されたことや、平成20年改正企業結合会計基準における持分プーリング法の廃止等に対応して、技術的な改正を行ったものである。

検討の前提

金融審議会報告書の内容

31. 平成19年会計基準の検討にあたっては、金融審議会報告書の「四半期開示のあり方」において示された一定の方向性を前提条件として検討を行った。その後、平成17年12月に公表された金融審議会金融分科会第一部会報告においても、金融審議会報告書に沿って、四半期報告制度の制度化を進めることが適当であるとされた。

金融審議会報告書で示された四半期報告制度の概要は、次のとおりである。

(1) 四半期開示の対象会社は、上場会社を基本とする。

(2) 開示時期は、四半期終了後、最低限45日以内とした上で、できる限りその短縮化を図る。

(3) 開示内容は、四半期貸借対照表、四半期損益計算書、四半期キャッシュ・フロー計算書及び四半期セグメント情報並びに非財務情報とし、原則として連結ベースで記載する。

(4) 四半期財務諸表に係る作成基準の一層の整備を図る。

(5) 四半期財務諸表の保証手続としてレビューの導入を図ることとし、レビュー手続に係る保証基準の整備を図る。

(6) 四半期開示を証券取引法上の制度として位置付けていくにあたって、次の要件が満たされることを前提に、半期報告制度を廃止し、四半期報告制度に統一することを検討する。

@ 財務情報が投資判断を行うために必要な詳しさのものとなること

A 必要な非財務情報が開示されること

B 必要に応じて単体情報についても開示されること(特に、第2 四半期)

C 開示企業の内部統制が適正に確保されていることを前提に、公認会計士等によるレビュー手続が投資者の信頼を十分に確保した形で実施されること

32. したがって、当委員会では、平成19年会計基準の検討にあたり、@上場会社等においては半期報告制度が廃止されて四半期報告制度へ統一され、中間財務諸表が第2四半期の四半期財務諸表に置き換わり、第1四半期、第2四半期、第3四半期という形で四半期財務諸表による開示が行われること、A原則として四半期連結財務諸表ベースでの開示のみが求められ、特定の会社を除き四半期個別財務諸表の開示は求められないこと、B四半期会計期間終了後、公認会計士又は監査法人のレビュー手続を経た上で、遅くとも45日以内での開示が求められるという、適時性に係るより強い制約があることを前提とした。

なお、平成18年6月に成立した金融商品取引法において、「内閣府令で定める事業を行う会社」以外の会社は、四半期個別財務諸表の開示は求められないことになった点も踏まえて検討を行った。

証券取引所での四半期開示

33. 平成19年会計基準の検討においては、現行の「中間連結財務諸表作成基準」及び「中間財務諸表作成基準」(以下合わせて「中間作成基準」という。)だけでなく、証券取引所の要請に基づく上場会社の四半期財務情報の開示が定着しつつあることから、上場会社の開示状況も参考にした。

しかし、証券取引所の要請に基づく四半期開示は中間財務諸表制度を前提とし、また、公認会計士等による意見表明を求めていないことなど、金融審議会報告書に示された前提条件とは大きく異なっていることから、この点も考慮に入れて検討を行った。

国際的な会計基準等

34. また、米国基準、国際会計基準、カナダ基準などの国際的な会計基準の内容や米国証券取引委員会の規則(以下「米国SEC規則」という。)に基づく四半期開示の状況も参考にしながら、検討を行った。特にカナダ基準は、予測主義に基づく米国基準に内在する問題点等を踏まえて平成12年に改訂されたものであるため、その改訂内容を参考にした。

四半期連結財務諸表の作成基準と四半期個別財務諸表の作成基準を設ける理由

35. 四半期連結財務諸表は、中間作成基準と同様、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した四半期個別財務諸表を基礎として作成するものと考えられる。また、上場会社の中には連結対象となる子会社が存在しないため個別財務諸表のみを開示している会社が見られる。

したがって、本会計基準では、四半期連結財務諸表の作成基準に加え、四半期個別財務諸表の作成基準も定めることとした。

四半期財務諸表の範囲等

四半期財務諸表の範囲

36. 四半期財務諸表の範囲については、年度の財務諸表との整合性を踏まえ、四半期貸借対照表、四半期損益計算書及び四半期キャッシュ・フロー計算書に加え、四半期株主資本等変動計算書も含めるという考え方がある。その理由としては、@企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」の公表に伴い、株主資本等変動計算書が基本財務諸表の1つとなり、中間連結財務諸表でも、中間連結剰余金計算書が中間連結株主資本等変動計算書に置き換えられたこと、A国際会計基準やカナダ基準では、四半期財務諸表に「連結剰余金計算書」又は「連結株主持分変動計算書」を含めていること、B会社法施行後の四半期配当の実施などにより必要性が高まると考えられることなどが挙げられる。

その一方、四半期財務諸表の範囲については、四半期貸借対照表、四半期損益計算書及び四半期キャッシュ・フロー計算書とし、株主資本の金額に著しい変動があった場合に、主な変動事由等を注記すれば足りるという考え方がある。その理由としては、@四半期開示制度の定着している米国においても、四半期財務諸表としての「連結株主持分変動計算書」の開示は求めておらず、財政状態に重大な変動がある場合に注記が求められていること、A連結株主資本等変動計算書は従来の連結剰余金計算書よりも作成に負担を要するものであり、45日以内での開示が必要な点を考えると、作成は不要とすべきであるという見方があることなどが挙げられる。

検討の結果、本会計基準では、四半期開示制度が定着している米国の状況や四半期開示における適時性の要請などを踏まえ、四半期株主資本等変動計算書の開示は求めず、株主資本の金額に著しい変動があった場合には、主な変動事由を注記事項として開示することとした(第19項(13)及び第25項(11)参照)。

なお、注記の記載方法については、株主資本の金額の著しい変動の内訳が一覧できるよう、表形式で開示することができるものと考えられる。

四半期財務諸表等の開示対象期間

37. 四半期損益計算書の開示方法としては、次のように、大きく3つの考え方がある。

(1) 期首からの累計期間の情報のみを開示。これは、四半期損益計算書は年間の業績見通しの進捗度を示す情報を開示するという考え方に基づく。

(2) 四半期会計期間の情報のみを開示。これは、収益動向の変化点を開示するという考え方に基づく。

(3) 期首からの累計期間及び四半期会計期間の情報をともに開示。これは、年間の業績見通しの進捗度の情報だけでなく、収益動向の変化点を把握するための情報も開示するという考え方に基づく。

我が国の上場会社の四半期損益計算書の開示状況をみると、期首からの累計期間の情報のみを開示している場合が多い。これは、年間の業績見通しの進捗度の開示という点に加え、中間財務諸表制度も影響していると思われる。このため、四半期会計期間の情報開示を求めることは、財務諸表作成者の負担の増加につながると危惧する意見がある。しかし、四半期会計期間の情報については、米国基準等の国際的な会計基準では開示が求められており、また、我が国でも証券アナリスト等から強い開示ニーズが指摘されている。ただし、証券アナリストにおいても、担当業種の特性によっては、開示ニーズが多少異なっているという意見もある。

検討の結果、本会計基準では、証券市場がグローバル化している状況や証券アナリスト等の開示ニーズを踏まえ、国際的な会計基準と同様に、四半期損益計算書の情報については、四半期会計期間及び期首からの累計期間の情報をともに開示することとした(第7項(2)参照)。

38. 四半期キャッシュ・フロー計算書についても、四半期損益計算書の開示方法との整合性の観点から、カナダ基準のように、期首からの累計期間の情報に加えて四半期会計期間の情報の開示を求める必要があるか否かの検討を行った。

検討の結果、本会計基準では、開示ニーズと四半期開示の適時性とを比較衡量して、米国基準や国際会計基準と同様、四半期キャッシュ・フロー計算書については、期首からの累計期間の情報のみを開示することとした(第7項(3)参照)。

四半期財務諸表の作成基準

四半期財務諸表の性格

39. 四半期財務諸表の性格付けについては、中間財務諸表と同様、「実績主義」と「予測主義」という2つの異なる考え方がある。

「実績主義」とは、四半期会計期間を年度と並ぶ一会計期間とみた上で、四半期財務諸表を、原則として年度の財務諸表と同じ会計処理の原則及び手続を適用して作成することにより、当該四半期会計期間に係る企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する情報を提供するという考え方である。これは、我が国の中間作成基準や国際会計基準で採用されている考え方である。また、カナダ基準も、基本的には、「実績主義」を採用している。

一方、「予測主義」は、四半期会計期間を年度の一構成部分と位置付けて、四半期財務諸表を、年度の財務諸表と部分的に異なる会計処理の原則及び手続を適用して作成することにより、当該四半期会計期間を含む年度の業績予測に資する情報を提供するという考え方である。昭和48年に制定された米国基準や我が国の平成10年改訂前の「中間財務諸表作成基準」は、この考え方に基づいている。

当委員会では、「実績主義」と「予測主義」のいずれの考え方によるべきかという点について、国際的な会計基準の動向も踏まえて検討を行った。その結果、本会計基準では、次のような理由から、「実績主義」を基本とすることとした。

(1) 平成10年3月に企業会計審議会から公表された「中間連結財務諸表等の作成基準の設定に関する意見書」において、@中間会計期間の実績を明らかにすることにより、将来の業績予測に資する情報を提供するものと位置付けることがむしろ適当と考えられること、A恣意的な判断の介入の余地や実行面での計算手続の明確化などを理由として、中間財務諸表等の性格付けが「予測主義」から「実績主義」に変更されたこと

(2) 季節変動性については、「実績主義」による場合でも、十分な定性的情報や前年同期比較を開示することにより、財務諸表利用者を誤った判断に導く可能性を回避できると考えられること

(3) 当委員会が実施した市場関係者へのヒアリング調査や当委員会等での審議を通じて確認した我が国の市場関係者の意見では、「実績主義」における実務処理の容易さが指摘されただけでなく、「予測主義」によると会社の恣意性が入る可能性があり、また、会社ごとに会計方針が大きく異なると企業間比較が困難になるとの指摘が多かったこと

(4) 平成12年9月に改訂されたカナダ基準では、「予測主義」の弊害を掲げて「実績主義」が望ましいと判断されたこと

会計処理

四半期個別財務諸表への準拠

40. 本会計基準では、四半期連結財務諸表は年度の連結財務諸表と同様、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した四半期個別財務諸表を基礎として作成することとしている(第8項参照)。

したがって、四半期連結キャッシュ・フロー計算書についても、各連結会社の四半期個別キャッシュ・フロー計算書に基づいて連結会社相互間のキャッシュ・フローを相殺消去して連結すること(原則法)を想定している。ただし、簡便的に、四半期連結損益計算書、四半期連結貸借対照表の期首残高、四半期末残高の増減額の分析及びその他の情報から作成すること(簡便法)も認められる。その場合には、財務諸表利用者において、原則法を採用した場合と同様のキャッシュ・フローに関する情報が得られるように留意しなければならない。

四半期決算手続

41. 四半期決算手続は、わが国の市場関係者が四半期決算を理解する上で重要なものであるという指摘を踏まえ、論点整理の段階から検討を行った。

その検討においては、「四半期単位積上げ方式」、「累計差額方式」、「折衷方式」の3方式注1を取り上げたが、これらの四半期決算手続は個々の会計処理の集合体として整理することが可能である。すなわち、前述の3方式の選択適用により四半期会計期間の損益に影響が生じるのは、棚卸資産の評価方法や外貨建収益及び費用の為替換算などに、どのような会計処理を選択適用するかによるものと整理することができる注2。検討の結果、国際的な会計基準では具体的な四半期決算手続について言及していな いことも踏まえ、より実務的に個々の会計処理の選択適用に焦点を当てることとした。

この結論は、個々の会計処理の選択適用によった場合、「四半期単位積上げ方式」的な考え方と「累計差額方式」的な考え方が混在する可能性もあるが、個々の会計処理の適切な選択適用により、財務諸表利用者の判断を誤らせることはないと考えられることによる。

(注1) 四半期決算手続のうち、「四半期単位積上げ方式」とは、四半期会計期間を1会計期間として3か月情報を作成し、各四半期会計期間の3か月情報を積み上げていく方式をいう。また、「累計差額方式」とは、年度の財務諸表との整合性を重視して、四半期ごとに過去の四半期財務諸表を洗い替えて再計算することにより累計情報を作成し、3か月情報は当該四半期の累計情報から直前の四半期の累計情報を差し引いて計算する方式をいう。さらに、「折衷方式」とは第3四半期の決算手続においては、中間財務諸表制度や中間納税制度との関係から、第2四半期までは「累計差額方式」で作成し、それに、「四半期単位積上げ方式」で作成した第3四半期の3か月情報を合算する方式をいう(この場合、年度の財務諸表は、半期単位の情報を積み上げた上で所定の決算手続を経て作成するなど、いくつかの作成方法があると考えられる。)。

(注2) 棚卸資産の評価方法については、期末単価の計算方法に総平均法や売価還元法を採用する場合において、四半期、期首からの累計期間等のうち、いずれかの算定期間を選択するかという点に整理できる。また、外貨建収益及び費用の為替換算については、為替相場に期中平均相場を採用する場合の算定期間として月、四半期、期首からの累計期間等のうち、いずれかの算定期間を選択するか、又は決算日の為替相場を選択するかという点に整理できる。さらには、有価証券の減損処理や棚卸資産の収益性の低下に伴う簿価切下げにおいては、四半期段階で切放し法と洗替え法のいずれを選択するかという点に整理できる。

会計処理の原則及び手続

42. 本会計基準では、「実績主義」を基本に据えて四半期財務諸表を作成することとしたため、四半期財務諸表は、原則として年度の財務諸表の作成にあたって適用される会計処理の原則及び手続に準拠して作成されなければならない(第9項及び第20項参照)。

43. 収益の認識及び測定は、財務諸表の信頼性の根幹をなす重要なものであるため、年度の財務諸表と四半期財務諸表とで同一の会計処理が適用されなければならないと考えられる。

その理由としては、@年度の財務諸表と四半期財務諸表との会計処理の原則及び手続の首尾一貫性の観点から、異なる会計処理は認められないこと、A国際的な会計基準においても、収益の認識及び測定に季節的変動等を考慮した例外的な取扱いは設けられていないことなどが挙げられる。

したがって、例えば、年度の財務諸表では検収基準を採用している会社が、四半期財務諸表では迅速な対応を理由に、出荷基準を採用することは認められないと考えられる。

44. 費用の認識及び測定についても、財務諸表の信頼性の根幹をなす重要なものであるため、年度の財務諸表と四半期財務諸表とで、基本的には、同一の会計処理が適用されなければならないと考えられる。

したがって、例えば、年度の財務諸表では棚卸資産の評価方法として先入先出法を採用している会社が、四半期財務諸表において簡便的な会計処理として総平均法を採用することは認められないと考えられる。

45. ただし、年度決算において有価証券の減損処理や棚卸資産の収益性の低下に伴う簿価切下げに切放し法を採用している場合には、関連諸制度との整合性を考慮して、当該年度内に含まれる四半期会計期間においては、切放し法のほか、洗替え法も選択することができるものとすることが適当であると考えられる。

(外貨建収益及び費用の為替換算)

46. 外貨建収益及び費用の為替換算についてはいくつかの問題点が指摘された。特に、在外子会社等を通じた海外事業の占める割合が高く、為替相場の変動の影響を大きく受ける場合において、外貨建収益及び費用を決算日の為替相場や年間(期首からの累計期間)を算定期間とする平均相場等で換算した累計ベースの売上高や損益情報をもとにして、直前の四半期会計期間の累計ベースを差し引いて当該四半期会計期間の売上高や損益情報を算定すると、財務諸表利用者の判断を誤らせる可能性があるとの指摘があった。しかし、外貨建取引等会計処理基準及び同注解では、月間や四半期を算定期間とする平均相場などで換算する方法を選択することもできることから、本会計基準では特別な取扱いを設けないこととした。

(簡便的な会計処理)

47. 四半期財務諸表は、年度の財務諸表や中間財務諸表よりも開示の迅速性が求められている。本会計基準では、この点を踏まえ、四半期会計期間及び期首からの累計期間に係る企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、中間作成基準よりも簡便的な会計処理によることができることとした(第9項及び第20項参照)。

具体的には、中間作成基準において簡便的な会計処理が認められている項目(棚卸資産の実地棚卸の省略、減価償却方法に定率法を採用している場合の減価償却費の期間按分計算、退職給付費用の期間按分計算、連結会社相互間の債権債務の相殺における差異調整の省略と未実現損益の消去における見積り計算等)に加え、一般債権の貸倒見積高の算定方法、棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げの方法、原価差異の配賦方法、固定資産の減価償却費の算定方法、経過勘定項目の処理方法、税金費用の算定方法などが、簡便的な会計処理として考えられる。

なお、「証券取引法の一部を改正する法律」第3条により施行が予定される金融商品取引法第24条の4の7の規定の適用を受ける上場会社等のうち、内閣府令で定める事業を行う会社は、第2四半期の四半期財務諸表では別途の対応を行うことが必要であると考えられる。

四半期特有の会計処理

(税金費用の計算)

48. 法人税等は、基本的には年度決算と同様の方法により計算するが、法人税等は年度末において確定するため、累進税率が適用されるような場合には、四半期会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率を予測して計算することとした。

ただし、本会計基準では、中間作成基準と同様、四半期会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて法人税等の額を計算できることとした。この場合、四半期貸借対照表には未払法人税等その他適当な科目により、流動負債又は流動資産として表示し、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債については、回収可能性や適用税率の変更の影響等を検討した上で、四半期貸借対照表に計上することとした(第14項参照)。

(その他の四半期特有の会計処理)

49. 四半期財務諸表の性格として「実績主義」を貫徹した場合、売上原価や営業費用に関して繰延処理や繰上計上は認められないこととなるが、平成19年会計基準では、例外的に、原価差異の繰延処理と後入先出法における売上原価修正を認めるかどうかについて検討を行った。

これらは、「中間財務諸表作成基準」の改訂時に「予測主義」から「実績主義」に基本的な考え方を変更する際に、相対的にみて恣意的な判断の介入の余地が大きい等の理由により削除された処理である。しかし、四半期財務諸表では、中間財務諸表よりも売上原価が操業度等により大きく変動し、売上高と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性があるため、売上原価に関連するこの2項目については例外的に四半期特有の会計処理を認めた方が経済的実態をより適切に表し、財務諸表利用者に対して将来の業績予測に資する情報を提供することができるという見方がある。また、平成12年に改訂されたカナダ基準では、「実績主義」を採用しつつ、原価差異の繰延処理や後入先出法における売上原価修正を特例として定めている。

検討の結果、四半期決算では、年度決算や中間決算よりも短い会計期間の中で企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する情報を適切に提供しなければならないという点を踏まえ、平成19年会計基準では、原価差異の繰延処理と後入先出法における売上原価修正について一定の条件を満たした場合には、継続適用を条件に四半期特有の会計処理として認めることとした。なお、後入先出法における売上原価修正については、平成20年9月に改正された棚卸資産会計基準において、選択できる評価方法から後入先出法が削除されたことから、平成21年改正会計基準で削除されている。

(原価差異の繰延処理)

50. 原価差異の繰延処理は、操業度等が季節的に大きく変動することにより、売上高と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性があることを考慮した会計処理である。そこで、四半期会計期間における経済的実態をより適切に反映させるよう、予定価格又は標準原価が年間(又は6か月等)を基礎に設定されているために発生する原価差異で、原価計算期間末である年度末(又は第2四半期会計期間末等)までにほぼ解消が見込まれる場合には、継続適用を条件として、当該原価差異を流動資産又は流動負債として繰り延べることを認めることとした(第12項参照)。

なお、原価計算期間が四半期会計期間と同じ又はそれよりも短い場合や原価計算期間末までに原価差異の解消が見込まれない場合には、当該原価差異は繰り延べることができないことに留意する必要がある。

51. (削 除)

子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日

52. 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の注5において、支配獲得日、株式の取得日又は売却日等が子会社の決算日以外の日である場合には、当該日の前後いずれかの決算日に支配獲得、株式の取得又は売却等が行われたものとみなして処理できることとされている。また、平成20年3月改正前の日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第7項では、「この場合の決算日には中間決算日が含まれる」とされていた。したがって、四半期連結財務諸表の作成においても、中間連結財務諸表での取扱いと同様、子会社を含む企業集団の経済実態を適切に反映させるため、この決算日には四半期決算日を含むこととした(第16項参照)。

ただし、取得とされた企業結合における「みなし取得日」は、企業結合の合意公表日以降としなければならないとされていることに、留意する必要がある(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第117項)。

開 示

四半期財務諸表の科目の表示

(科目の集約記載)

53. 四半期財務諸表の表示科目については、開示の適時性の要請を踏まえ、中間作成基準だけでなく、35日以内での開示を義務づけている米国SEC規則での取扱いを参考にして、主要な科目について独立掲記した上で、その他の科目は集約して記載できることとした(第17項及び第23項参照)。

(年度の財務諸表の表示区分との整合性)

54. 四半期財務諸表の表示区分については、年度の財務諸表の表示区分との関係で2つの考え方がある。

1つは、四半期財務諸表と年度の財務諸表との整合性は考慮せず、四半期財務諸表単独で判断するという考え方である。この理由としては、@四半期会計期間を年度と並ぶ1会計期間としてみる「実績主義」の考え方と整合していると考えられること、A金額的重要性の判断について、四半期財務諸表の作成段階で年度の財務諸表における表示区分を合理的に予測することは困難な場合が多いことが挙げられる。

もう1つは、四半期財務諸表においても、年度の財務諸表における表示区分を考慮して判断するという考え方である。この理由としては、@四半期財務諸表は「実績主義」を基本としつつも、年度の業績予測に資することが期待されていること、A四半期損益計算書と年度の損益計算書の利益の表示区分とが整合している方が、企業業績の分析上は望ましいと考えられることが挙げられる。

検討の結果、本会計基準では、「実績主義」を基本としつつも、年度の業績予測により資する情報を提供するという観点から後者の考え方を採用し、当該年度の財務諸表における表示区分との整合性を勘案しなければならないこととした(第18項及び第24項参照)。

例えば、第2四半期に会計処理の原則及び手続を変更し、変更による影響額が過年度分と当期分とに区分して算定できる場合には、第2四半期会計期間の四半期損益計算書では過年度に係る影響額及び当期分のうち第1四半期会計期間に係る影響額を特別損益に計上し、期首からの累計期間の四半期損益計算書では過年度に係る影響額のみが特別損益に計上されるように組替えを行う方法が考えられる。

なお、実務上の対応を考慮し、金額的重要性により表示区分を判断するものについては、期中での表示区分の変更を容認することが適当であると考えられる。

注記事項

(基本的な考え方)

55. 注記事項については、遅くとも45日以内での開示が求められることを前提にして、中間作成基準や国際的な会計基準あるいは米国SEC規則も参考にして検討を行った。

検討の結果、四半期財務諸表が年度の財務諸表や中間財務諸表と比較して開示の迅速性が求められていることや、最近の情報通信技術の発達に伴って過去に公表された財務諸表の入手が容易になったことを踏まえ、中間財務諸表よりも注記事項及び注記内容の簡略化を図ることとし、前年度と比較して著しい変動がある項目など、財務諸表利用者が四半期財務諸表を理解する上で重要な事項を注記事項として定めることとした(第19項及び第25項参照)。四半期財務諸表の注記を行う上での重要性については、年度の業績予測に資する情報を提供するという観点から、年度における注記事項との整合性を考慮して判断できるものと考えられる。なお、本会計基準で定めた項目は、最小限の項目を掲げており、個々の企業集団又は企業が事業内容や事業形態を踏まえ、これを上回る開示を行うことを妨げるものではない。

(第2四半期以降で自発的に行う重要な会計処理の原則及び手続の変更)

56. 会計処理の原則及び手続の変更は期首に行われることが一般的であり、第2四半期以降に行われることは稀であると考えられる。しかし、第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更する場合もあり、そのような場合には、年度と四半期会計期間の会計処理の首尾一貫性が確保されないことから、どのような情報開示が必要になるか検討を行った。ここで、自発的に会計処理の原則及び手続を変更した場合とは、会計基準の設定又は改正以外の理由により会計処理及び手続を変更した場合をいう。また、重要性が増したことに伴う本来の会計処理への変更や新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の採用は、会計処理の原則及び手続の変更には該当しない。

自発的に会計処理の原則及び手続を変更した場合の対応方法については、大きく分けて次の2 つの考え方がある。

(1) 会計処理の原則及び手続を変更したことによる影響額は変更した四半期会計期間に負担させ、変更前の会計処理の原則及び手続を当該四半期会計期間に適用した場合の影響額等を注記するという考え方

(2) 変更後の会計処理の原則及び手続を遡及適用した情報を開示するという考え方

(@既に開示している四半期財務諸表の遡及再表示を行う方法、A四半期財務諸表の遡及再表示は行わないが、変更後の会計処理の原則及び手続を適用した場合の既に開示している四半期財務諸表への影響額等を注記する方法)

検討の結果、財務情報の期間比較可能性を確保する強いニーズは存在するところであるが、我が国における遡及再表示を行わない実務慣行や監査制度を踏まえ、年度の期首に遡って遡及再表示をした四半期財務諸表の開示は求めず、年度と中間における会計処理の首尾一貫性を欠く場合と同様に、その旨、その理由及び直前の四半期会計期間の末日までの期首からの累計期間への影響額の注記を行うこととした。ただし、適時性に係るより強い制約から影響額の見積りに関する情報を入手することが困難な場合など、当該影響額の算定を行うことが実務上困難な場合も考えられることから、その場合にはその旨及びその理由を注記することで、影響額を記載しないことも認めることとした(第19項(3)及び第25項(2)参照)。

また、翌年度においても、比較可能性を確保する観点から、同様の注記を求めることとした(第19項(4)及び第25項(3)参照)。

なお、上記の影響額の記載は、過年度遡及修正の検討とあわせて整理すべきであり、本会計基準で定めるべきではないという意見もあった。当委員会では、国際会計基準審議会との会計基準のコンバージェンスに向けた共同プロジェクトで、過年度遡及修正を検討課題として取り組むこととしているため、将来的にはその検討結果を踏まえ、開示方法の見直しを行うことが考えられる。

(セグメント情報等に関する事項)

57. 平成19年会計基準の審議では、セグメント情報について、@証券アナリスト等の財務諸表利用者においては、所在地別セグメント情報や海外売上高も含め、中間連結財務諸表と同様の開示ニーズが強く、A財務諸表作成者も、業績の詳細説明をする上で、セグメント別営業損益までの開示が必要であるということであった。このため、平成19年会計基準では、セグメント別売上高及び営業損益の情報については、中間連結財務諸表と同様に、事業の種類別セグメント情報、所在地別セグメント情報、海外売上高を開示することとしていた。

また、セグメント別資産の情報については、大規模な企業買収の事例が散見されることも踏まえ、情報の有用性と事務負担を比較衡量し、企業結合や事業分離などにより事業の種類別セグメント情報に係るセグメント別資産の金額に著しい変動があった場合に、その概要の開示を求めることとしていた。

58. しかしながら、セグメント情報等会計基準により、企業は、それまでのセグメント情報の開示に代わって、国際的な会計基準で採用されているマネジメント・アプローチに基づくセグメント情報及びその関連情報、固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報並びにのれんに関する報告セグメント別情報を年度の連結財務諸表又は個別財務諸表に開示することとされた(セグメント情報等会計基準第1項及び第3項)。

このため、当委員会は、セグメント情報等会計基準適用後の四半期財務諸表のセグメント情報の開示について、国際的な会計基準の取扱いも参考に、情報の有用性と事務負担を比較衡量して検討を行った。その結果、平成20年改正会計基準では、セグメント情報に関する事項として、報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高について開示することとし、報告セグメントの資産については、企業結合や事業分離などによりセグメント情報に係る報告セグメントの資産の金額に著しい変動があった場合に、その概要の開示を求めることとした(第19項(7)@及びA並びに第25項(5-2)@及びA参照)。なお、報告セグメントの利益(又は損失)の開示については、財務諸表利用者の当該開示の理解に資する情報として、その合計額と四半期損益計算書の利益(又は損失)計上額の差異調整に関する主な事項の概要を開示することとした(第19項(7)B及び第25項(5-2)B参照)。

また、報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合には、比較可能性を保つための開示を求めることとした(第19項(7)C、D及びE並びに第25項(5-2)C、D及びE参照)。

58-2. さらに、固定資産の減損損失及びのれんに関する報告セグメント別情報の開示について、情報の有用性と事務負担を比較衡量し、重要な減損損失を認識した場合及びのれんの金額に重要な影響を及ぼす事象(重要な負ののれんを認識する事象を含む。)が生じた場合に、その報告セグメント別の概要の開示を求めることとした(第19項(7)F及びG並びに第25項(5-2)F及びG参照)。

なお、当委員会は、セグメント情報の関連情報についても、重要な事象の発生によって当該情報の金額に著しい変動があった場合に、その概要の開示を求めるか否かを検討したが、国際的な会計基準において開示が求められていないことや、適時性に係るより強い制約を考慮し、四半期財務諸表での開示は求めないこととした。

(1株当たり四半期純損益、1株当たり純資産額及び1株当たり四半期純損益の算定上の基礎)

59. 財務諸表利用者からは1株当たり四半期純損益に加え、その算定上の基礎や1株当たり純資産額についても強い開示ニーズがあると指摘されている。一方、財務諸表作成者からは、開示の迅速性の観点から、可能な限り注記情報を厳選すべきであり、1株当たり四半期純損益の算定上の基礎や1株当たり純資産額の開示は不要とすべきであるという指摘がある。

検討の結果、本会計基準では、1株当たり四半期純損益及びその算定上の基礎については、財務諸表利用者の強い開示ニーズがあることに加え、国際的な会計基準でも開示が求められており、かつ、算定上の基礎は1株当たり四半期純損益の算定過程で把握されていると考えられることから、開示を求めることとした(第19項(8)及び第25項(6)参照)。また、1株当たり純資産額についても、財務諸表利用者の強い開示ニーズがあり、年度の財務諸表でも注記されていることから、注記を求めることとした(第19項(9)及び第25項(7)参照)。

(継続企業の前提への重要な疑義)

60. 継続企業の前提に重要な疑義が存在する場合の注記については、公認会計士又は監査法人の責任やレビュー手続との関係も考慮に入れて慎重に対応すべきであるという意見がある。その一方、財務諸表利用者の強い開示ニーズが指摘されているとともに、米国では公認会計士又は監査法人のレビュー手続を前提とした開示が行われている。

検討の結果、本会計基準では、財務諸表に対する二重責任の原則を前提として、継続企業の前提に重要な疑義がある場合の注記を求めることとした(第19項(14)及び第25項(12)参照)。しかしながら、開示対象となる四半期会計期間において新たに継続企業の前提に重要な疑義が生じた場合、四半期財務諸表を作成する日までに、当該疑義を解消又は大幅に改善するための経営計画などを策定することは実務上困難なことも考えられる。したがって、四半期財務諸表においては、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する旨及びその内容、継続企業の前提に関する重要な疑義の存在及び経営者の対応等に関する注記を求めることとした。

この場合における経営者の対応等には、当該重要な疑義の影響を四半期財務諸表に反映しているか否かに関する記載を行うほか、重要な疑義を解消するための経営計画がある場合にはその内容、重要な疑義を解消するための経営計画がない場合には経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが合理的と判断した理由を記載することが考えられる。なお、後者の場合においても、例えば、債務超過であるときや重要な債務の不履行等の可能性が高いときには、当該事由の解消の見通し等を記載することが必要であると考えられる。

また、四半期会計期間の末日に存在した継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が、四半期財務諸表を作成する日までの間に解消又は大幅に改善した場合、若しくは当該事象又は状況が変化した場合には、その旨及びその経緯も含めて記載することが必要であると考えられる。

(著しい季節的変動)

61. 著しい季節的変動の開示については、中間作成基準や国際的な会計基準において注記事項として明示されている。また、売上高に季節的変動のある企業について、財務諸表利用者は証券投資に際して利益の季節的変動を織り込んだ意思決定をしていないものと解釈できる海外の実証研究もあるが、財務諸表利用者の判断を誤らせないためには、定性的情報及び対前年同期比較を併せて開示することが必要と考えられる。

これらの点を踏まえ、本会計基準では、営業収益又は営業費用に著しい季節的変動がある場合には注記を求めることとした(第19項(15)及び第25項(13)参照)。

(重要な偶発債務)

62. 偶発債務については、中間作成基準や国際的な会計基準においても注記事項として明示されている。また、偶発債務は財務諸表の本体から把握することができず、偶発債務の金額に重要性がある場合には、財務諸表利用者の意思決定に大きな影響を与えると考えられる。

検討の結果、重要な偶発債務については、金額の変動の有無に関係なく、注記を求めることとした(第19項(16)及び第25項(15)参照)。

(重要な企業結合又は事業分離)

63. 重要な企業結合又は事業分離については、当該企業集団又は企業の将来の業績に重要な影響を与えることになるため、取得とされた企業結合が当年度の期首に完了したと仮定したときの四半期連結損益計算書への与える影響の概算額の開示を含め、年度の財務諸表と同様の開示を求めるべきであるという意見があった。その一方で、開示の迅速性の観点から、企業結合又は事業分離に関する注記事項も必要最小限の記載にすべきであるという意見もあった。

検討の結果、重要な企業結合又は事業分離については、国際的な会計基準や米国の開示状況を参考にするとともに、適時性に係るより強い制約も考慮し、年度の注記事項よりも簡略化することとした(第19項(17)及び(18)、第25項(16)及び(17)参照)。

64. (削 除)

(重要な後発事象)

65. 重要な後発事象は、財務諸表利用者の意思決定に大きな影響を与えると考えられることから、中間作成基準や国際的な会計基準及び米国の開示状況を参考にして、本会計基準においても注記を求めることとした(第19項(19)及び第25項(18)参照)。

(四半期連結財務諸表を作成していない場合における持分法損益)

66. 連結子会社がない会社においては四半期連結財務諸表が作成されないが、関連会社に多額の損益が生じている場合がある。このため、四半期連結財務諸表を作成していない会社においては、年度及び中間個別財務諸表における開示と同様、関連会社に持分法を適用した場合の投資の額及び投資損益の額を注記事項として記載を求めることとした(第25項(14)参照)。

(重要なその他の事項)

67. 本会計基準では、中間作成基準や米国SEC規則等を参考にして、注記事項として個別に定めたもののほか、財務諸表利用者が企業集団又は企業の四半期会計期間及び期首からの累計期間に係る財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項があるときには記載しなければならないとしている(第19項(21)及び第25項(20)参照)。これは、企業集団又は企業にとって開示の対象となる会計事象や取引は、業種・業態によって様々であり、また、同一の企業集団等であっても、その時々において予期し得ない事態が起こることがあるため、本会計基準が特に定めた個別の注記事項のみでは財務諸表利用者が適切に判断できない場合があることを想定したものである。

(重要な誤謬の訂正)

68. 当四半期会計期間に発見した過去の重要な誤謬の訂正についても検討を行った。特に、当年度の既に開示した四半期会計期間に係るものについては、年度の財務諸表との整合性を図る観点から、四半期財務諸表でどのように開示すべきか検討する必要があった。

平成19年会計基準における検討の結果、証券取引法に基づく開示上、訂正報告書の提出事由に該当する場合には修正再表示が行われていることや、遡及修正については包括的に整理すべきであるとの指摘を踏まえ、本会計基準の中では取り扱わないこととした。

なお、重要な誤謬の訂正についても、国際的な会計基準を参考にすると、第56項に記載した過年度遡及修正に関するプロジェクトの中で検討が行われるものと考えられる。

年度における四半期財務情報に係る開示

年度末における重要な会計処理の原則及び手続の変更

69. 年度末において自発的に重要な会計処理の原則及び手続の変更が行われた場合には、各四半期財務諸表での開示と同様、当年度の既に開示されている第3四半期会計期間の末日までの期首からの累計期間への影響額についても、期間比較を適切に行うにあたって有用な情報であると考えられる。したがって、今後、年度の財務情報として、どのように扱っていくべきか検討することが適当であると考えられる。

各四半期別の企業業績の要約開示

70. 上場会社においては第4四半期の四半期財務諸表の作成は求められていない。しかし、四半期データの連続性確保などの観点から、第4四半期の財務情報に対する強い開示ニーズが存在するとの指摘がある。米国でも第4四半期会計期間の情報を四半期報告書(Form 10-Q)ではなく年次報告書(Form 10-K)の中で、監査対象外の情報として四半期ごとの売上高や純損益などの限定的な情報を開示している状況にある。

したがって、米国と同様に、四半期会計期間ごとの売上高や純損益などの限定的な情報を監査対象外の年度の財務情報として記載することが適当であると考えられる。

適用時期等

71. 平成19年会計基準は、金融商品取引法で規定されている四半期報告制度の導入時期とあわせて、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用することとした(第26項参照)。

72. 当委員会の平成19年会計基準の審議では、上場会社の多くが四半期損益計算書で累計情報のみを開示している現状や、適用初年度が多くの新会計基準の適用や財務報告に係る内部統制の評価及び監査が開始される時期と重なることを踏まえ、円滑な四半期報告制度の導入のためには、四半期会計期間に係る四半期損益計算書の開示に一定の準備期間を設けることが望ましいとする意見が多くみられた。

以上


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