目 的
1. 本適用指針は、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)を適用する際の指針を定めることを目的とする。
適用指針
範囲及び用語の定義
2. 本適用指針を適用する範囲及び用語の定義は、会計基準と同様とする。
四半期財務諸表の作成基準
会計処理
債権
(一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理)
3. 四半期会計期間末における一般債権に対する貸倒見積高は、次のように算定することができる。
(1)
一般債権の貸倒実績率等が前年度の財務諸表の作成において使用した貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、四半期会計期間末において、前年度末の決算において算定した貸倒実績率等の合理的な基準を使用することができる。
(2)
前年度の貸倒実績率等と著しく変動したことにより見直しを行った後の四半期会計期間において、当該見直し後の貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、当該見直し後の貸倒実績率等の合理的な基準を使用することができる。
有価証券
(有価証券の減損処理に係る四半期切放し法と四半期洗替え法)
4.
四半期会計期間末に計上した有価証券の減損処理に基づく評価損の戻入れに関しては、四半期切放し法と四半期洗替え法の2つがある。四半期切放し法とは、減損処理を行った後の四半期会計期間末の帳簿価額を時価等に付け替えて、当該銘柄の取得原価を修正する方法である。また、四半期洗替え法とは、四半期会計期間末における減損処理に基づく評価損の額を翌四半期会計期間の期首に戻し入れ、当該戻入れ後の帳簿価額と四半期会計期間末の時価等を比較して減損処理の要否を検討する方法である。
四半期会計期間末における有価証券の減損処理にあたっては、四半期切放し法と四半期洗替え法のいずれかの方法を選択適用することができる。この場合、いったん採用した方法は、原則として継続して適用する必要がある。なお、年度決算では、四半期洗替え法を採用して減損処理を行った場合には、当該評価損戻入れ後の帳簿価額と年度末の時価等を比較して減損処理の要否を判断することとなる。
(市場価格のない株式の減損処理)
5.
市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額(通常は、1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じることにより算定される。)が著しく低下したときは相当の減額を行わなければならないが、当該財政状態が悪化しているかどうかの判断にあたっては、四半期会計期間末までに入手し得る直近の財務諸表を使用する。なお、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明した場合には、直近の財務諸表に当該判明した事項を加味することが望ましい。
棚卸資産
(実地棚卸の省略)
6. 四半期会計期間末における棚卸高は、前年度に係る実地棚卸高を基礎として、合理的な方法により算定することができる。
(棚卸資産の簿価切下げに係る洗替え法と切放し法)
7. 年度決算において、棚卸資産の簿価切下げに洗替え法を適用している場合は、四半期会計期間末においても洗替え法による。
また、年度決算において切放し法を適用している場合は、四半期会計期間末において、洗替え法と切放し法のいずれかを選択適用することができる。この場合、いったん採用した方法は、原則として継続して適用する必要がある。なお、四半期で洗替え法を採用して評価損を計上した場合、年度決算では、当該評価損戻入れ後の帳簿価額と年度末の棚卸資産の正味売却価額(市場価格が観察できないときの合理的に算定された価額及び年度末において再調達原価によっている場合の再調達原価を含む。以下同様)を比較して簿価切下げの要否を判断することとなる。
(棚卸資産の簿価切下げにあたっての簡便的な会計処理)
8.
四半期会計期間末における通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切下げにあたっては、収益性が低下していることが明らかな棚卸資産についてのみ正味売却価額を見積り、簿価切下げを行うことができる。なお、収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門又は営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損失の発生状況などにより判断することとなる。
また、営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産であって、前年度末において帳簿価額を処分見込価額まで切り下げている場合には、当該四半期会計期間において前年度から著しい状況の変化がないと認められる限り、前年度末における貸借対照表価額を引き続き計上することができる。
(原価差異の配賦方法における簡便的な会計処理)
9.
予定価格等又は標準原価を用いているために原価差異が生じた場合、当該原価差異の棚卸資産と売上原価への配賦は、年度決算と比較して簡便的な方法によることができる。
10. (削 除)
経過勘定項目
11. 経過勘定項目は、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、合理的な算定方法による概算額で計上することができる。
固定資産
(減価償却費の算定における簡便的な会計処理:合理的な予算制度の利用)
12.
固定資産の年度中の取得、売却又は除却等の見積りを考慮した予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分する方法により、四半期会計期間又は期首からの累計期間の減価償却費として計上することができる。ただし、期中に取得、売却又は除却する固定資産の減価償却費に重要性がある場合には、その部分について適切に反映するよう当該期間按分額を調整するものとする。
(減価償却費の算定における簡便的な会計処理:定率法を採用している場合)
13.
減価償却の方法として定率法を採用している場合には、年度に係る減価償却費の額を期間按分する方法により、四半期会計期間又は期首からの累計期間の減価償却費として計上することができる。
(減損の兆候)
14.
四半期会計期間における減損の兆候の把握にあたっては、使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意することとする。
税金費用
年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い
15.
法人税その他利益に関する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)については、原則として年度決算と同様の方法により計算するものとされているが(会計基準第14項本文)、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額の算出等において、簡便的な方法によることができる。この場合における簡便的な方法としては、例えば、納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を、重要なものに限定する方法がある。
繰延税金資産の回収可能性の判断における簡便的な取扱い
(経営環境等に著しい変化が生じていない場合における繰延税金資産の回収可能性の判断)
16.
重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境の著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができる。
(経営環境等に著しい変化が生じた場合における繰延税金資産の回収可能性の判断)
17.
重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が生じ、又は、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化又は大幅な変動による影響を加味したものを使用することができる。
税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する四半期特有の会計処理
(税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法による税金費用の計算)
18.
期首からの累計期間に係る税金費用については、年度決算と同様の方法に代えて、同期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることができる(会計基準第14項ただし書き)。
この場合、各四半期会計期間の税金費用の計上額は、原則として、期首からの累計期間における税金費用の額から直前の四半期会計期間の末日までの期首からの累計期間における税金費用の額を差し引いて計算する。
なお、前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債については、繰延税金資産の回収見込額を各四半期決算日時点で見直した上で四半期貸借対照表に計上することになるが、当該見直しにあたっては、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、前2項で定める簡便的な方法によることも認められる。
(見積実効税率の算定方法等)
19.
前項の方法における見積実効税率の算定方法、税率が変更された場合の見積実効税率の算定方法及び見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合の取扱いについては、日本公認会計士協会
会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」第9項から第12項に準じて処理する。なお、見積実効税率の算定においては、税額控除を考慮することに留意する必要がある。
また、見積実効税率の算定において、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、一時差異に該当しない差異や税額控除等の算定にあたり、重要な項目に限定する方法によることができる。
重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理
20.
連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社(親会社及び連結子会社)において、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化及びその他の経営環境に著しい変化が発生しておらず、かつ、四半期財務諸表上の一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がない場合には、四半期財務諸表における税金費用の計算にあたり、税引前四半期純利益に、前年度の損益計算書における税効果会計適用後の法人税等の負担率を乗じて計算する方法によることができる。[設例
3]
なお、この方法によった場合、当該連結会社の前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債については、同額を四半期貸借対照表に計上することになる。
四半期連結財務諸表における会計処理
(四半期連結財務諸表における法人税等の会計処理)
21.
四半期連結財務諸表における税金費用は、連結会社の個別財務諸表上の税金費用と連結手続上生ずる一時差異等に係る法人税等調整額に分けて計算する。すなわち、連結会社の税金費用については、連結会社ごとに、第15項(年度決算と同様の方法を含む。)、第18項又は前項のいずれかの方法により計算し、また、連結手続上行われた修正仕訳に係る一時差異については、四半期会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づいて計算する。
(四半期連結財務諸表における未実現利益消去に係る税効果)
22.
期首から四半期会計期間末までの連結会社間での取引により生じた未実現利益を四半期連結の手続上で消去するにあたって、当該未実現利益額が、売却元の年間見積課税所得額(税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法による場合は、予想年間税引前当期純利益)を上回っている場合には、連結消去に係る一時差異の金額は、当該年間見積課税所得額を限度とする。[設例
4]
(連結納税制度を採用した場合における税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法の適用の可否)
23.
連結納税制度を採用した場合であっても、予想年間税金費用と予想年間税引前当期純利益を合理的に見積ることができるときには、期首からの累計期間に係る税金費用については、同期間を含む年度の税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることができる。この場合、各四半期会計期間の税金費用の計上額は、原則として、期首からの累計期間における税金費用の額から直前の四半期会計期間の末日までの期首からの累計期間における税金費用の額を差し引いて計算する。
また、この場合においても、第18項なお書き及び第19 項を適用することとする。
退職給付引当金
24. 期首に算定した年間の退職給付費用については、期間按分した額を四半期会計期間及び期首からの累計期間にそれぞれ計上する。
25.
数理計算上の差異を発生した年度に全額費用処理する会計方針を採用している場合以外においては、四半期会計期間及び期首からの累計期間の費用処理額は、それぞれ数理計算上の差異の年間費用処理額を期間按分することにより算定する。
26.
過去勤務債務について、発生時に全額費用処理する方法を採用している場合以外においては、四半期会計期間及び期首からの累計期間の費用処理額は、それぞれ過去勤務債務の年間費用処理額を期間按分することにより算定する。
27. (削 除)
四半期連結財務諸表上の会計処理
(連結会社相互間の債権債務及び取引の相殺消去における簡便的な会計処理)
28.
連結会社相互間の債権と債務を相殺消去するにあたり、当該債権の額と債務の額に差異が見られる場合には、合理的な範囲内で、当該差異の調整を行わないで債権と債務を相殺消去することができる。
29.
連結会社相互間の取引を相殺消去するにあたり、取引金額に差異がある場合で、当該差異の重要性が乏しいときには、親会社の金額に合わせる又は金額の大きい方に合わせるなど、一定の合理的な方法に基づき相殺消去することができる。
(未実現損益の消去における簡便的な会計処理)
30.
連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産に含まれる四半期会計期間末における未実現損益の消去にあたっては、四半期会計期間末在庫高に占める当該棚卸資産の金額及び当該取引に係る損益率を合理的に見積って計算することができる。また、前年度又は直前の四半期会計期間から取引状況に大きな変化がないと認められる場合には、前年度又は直前の四半期会計期間で使用した損益率や合理的な予算制度に基づいて算定された損益率を使用して計算することができる。
開 示
四半期財務諸表の科目の表示
四半期財務諸表の科目の集約記載の取扱い
31.
四半期連結貸借対照表又は四半期個別貸借対照表及び四半期連結損益計算書又は四半期個別損益計算書の表示科目については、質的及び金額的な重要性を考慮して主要な表示科目を決定した上で、原則として独立掲記し、その他の科目は集約して記載することができる。なお、主要な科目について独立掲記しない場合には、当該科目及びその金額を注記することとする。
32.
四半期連結キャッシュ・フロー計算書又は四半期個別キャッシュ・フロー計算書の表示科目は、各表示区分におけるキャッシュ・フローの主要な項目のみを記載することができる。なお、この場合における主要な項目は、各表示区分のキャッシュ・フローの状況を説明するにあたり、質的及び金額的な重要性を考慮して決定する。例えば、営業活動によるキャッシュ・フローを間接法により表示する場合の一般的な主要項目は、税金等調整前四半期純損益又は税引前四半期純損益、減価償却費、売上債権の増減額、棚卸資産の増減額、仕入債務の増減額、法人税等の支払額等が挙げられる。
また、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示にあたっては、「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準注解」(注7)の様式1 及び様式2
で示されている「小計」の記載は省略することができる。
注記事項
重要な会計処理の原則及び手続を変更した場合の影響額の取扱い
33.
会計基準第19項(2)及び第25項(1)の影響額とは、前年度又は直前の四半期会計期間と同一の会計処理の原則及び手続を適用した場合において計上される、期首からの累計期間に係る税金等調整前四半期純損益又は税引前四半期純損益その他の重要な項目への影響額をいうものとする。なお、影響額を適時に正確に算定することができない場合には、資本連結をやり直さないなど適当な方法による概算額を記載することができる。
第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続の変更を行った場合の影響額の取扱い
34. 会計基準第19項(3)
及び第25項(2)の影響額とは、直前の四半期会計期間の対応する期首からの累計期間における税金等調整前四半期純損益又は税引前四半期純損益その他の重要な項目の金額と、同期間に変更後の会計処理の原則及び手続を適用した場合に算定される金額との差額をいうものとする。なお、影響額を適時に正確に算定することができない場合には、資本連結をやり直さないなど適当な方法による概算額を記載することができる。
第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続の変更を行った場合の翌年度の四半期会計期間における取扱い
35. 会計基準第19項(4) 及び第25
項(3)の影響額とは、前年度の対応する四半期会計期間及び期首からの累計期間における税金等調整前四半期純損益又は税引前四半期純損益その他の重要な項目の金額と、同期間に変更後の会計処理の原則及び手続を適用した場合に算定される金額との差額をいうものとする。なお、影響額を正確に算定することができない場合には、資本連結をやり直さないなど適当な方法による概算額を記載することができる。
四半期財務諸表の表示方法の変更
36. 会計基準第19項(5)
及び第25項(4)の内容には、前年度の対応する四半期財務諸表との比較を行うために必要な事項を記載するものとする。ただし、変更の内容が明らかである場合には、記載しないことができる。
簡便的な会計処理及び四半期特有の会計処理
37.
会計基準第19項(6)及び第25項(5)に基づき、簡便的な会計処理及び四半期特有の会計処理を採用している旨及びその内容を記載する場合には、質的及び金額的な重要性を考慮する。通常記載が求められる重要なものとしては、例えば、税金費用の計算における年度と異なる処理方法(会計基準第14
項ただし書き)を採用している場合のほか、原価差異を繰延処理する方法(会計基準第12 項)や減価償却費を合理的な予算に基づいて算定する方法(第12
項参照)を採用している場合が挙げられる。
セグメント情報等に関する事項
38.
年度の連結財務諸表又は個別財務諸表のセグメント情報の開示にあたり、企業会計基準適用指針第20号「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」第14項に定める方法を適用している場合には、会計基準第19項(7)@及び第25項(5-2)@の開示にあたっても同様の方法を適用することとする。
39.
報告セグメントの売上高の記載(会計基準第19項(7)@及び第25項(5-2)@)にあたっては、外部顧客への売上高と、セグメント間の内部売上高又は振替高とを区分せずに記載することができる。
40.
報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合には、変更を行った四半期会計期間以後において、その内容を記載することとされている(会計基準第19項(7)C及び第25項(5-2)C)。この内容は、年度に準じた記載方法により、次の(1)及び(2)のとおりとする。
(1) 報告セグメントの変更
@ 事業セグメントの量的な重要性の変化による報告セグメントとして開示する事業セグメントの範囲の変更
その旨、期首からの累計期間に係る報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報に与える影響を記載する。
A 組織変更等、企業の管理手法が変更されたことによる報告セグメントの区分方法の変更
その旨、前年度の対応する期首からの累計期間について変更後の区分方法により作り直したセグメント情報に基づく報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報を記載する。ただし、当該情報を開示することが実務上困難な場合には、期首からの累計期間について前年度の区分方法により作成した報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報を記載することができる。
(2) 事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更
その旨、変更の理由、当該変更が期首からの累計期間に係る報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報に与えている影響を記載する。
なお、(1)及び(2)の記載のすべて又はその一部について、記載すべき金額を正確に算定することができない場合には概算額を記載することができる。また、記載すべき金額を算定することが実務上困難な場合には、その旨及びその理由を記載する。
41. 各報告セグメントに属する主要な製品及びサービスの種類について重要な異動がある場合には、その内容を記載することとする。
42.
会計基準第19項(7)A及び第25項(5-2)Aに定める「報告セグメントの資産の金額に著しい変動があった場合」の著しい変動の有無は、前年度末の金額と比較して判断するものとする。
43. (削 除)
44. (削 除)
45. (削 除)
46. (削 除)
47. (削 除)
48. (削 除)
49. (削 除)
(セグメント情報等に関する事項の開示対象期間)
50. セグメント情報等に関する事項の開示対象期間は、四半期会計期間及び期首からの累計期間とする。
1株当たり四半期純損益
(1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定上の基礎)
51. 開示する1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定上の基礎には、次の事項が含まれることとする。
(1)
四半期連結損益計算書又は四半期個別損益計算書における四半期純損益、1株当たり四半期純損益の算定に用いられた普通株式に係る四半期純損益及びこれらの差額(普通株主に帰属しない金額)の主要な内訳
(2) 1株当たり四半期純損益の算定に用いられた普通株式(普通株式と同等の株式を含む)の期中平均株式数
(3) 潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定に用いられた四半期純損益調整額
(4) 潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定に用いられた普通株式増加数
(5) 希薄化効果を有しないため、潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定に含まれなかった潜在株式について、前年度末から重要な変動がある場合にはその概要
(当四半期会計期間において株式併合又は株式分割が行われた場合)
52.
当四半期会計期間において株式併合又は株式分割が行われた場合には、その旨及び前年度の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における前年度の対応する四半期会計期間及び期首からの累計期間に係る1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1
株当たり四半期純利益を注記する。
(四半期会計期間後に株式併合又は株式分割が行われた場合)
53.
四半期会計期間の末日よりも後に株式併合又は株式分割が行われた場合には、重要な後発事象として取り扱う。その場合には、次のように、当該株式併合又は株式分割の影響を反映した前年同期及び当四半期会計期間の1
株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益を、当該株式併合又は株式分割が行われた旨とともに記載する。
(1) 前年度の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における前年同期の1 株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益
(2) 当年度の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における当四半期会計期間の1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益
(1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1 株当たり四半期純利益の開示対象期間)
54. 1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の開示対象期間は、四半期会計期間及び期首からの累計期間とする。
1株当たり純資産額
(1株当たり純資産額の算定上の基礎)
55. 四半期財務諸表において1株当たり純資産額を開示する場合には、当該金額の算定上の基礎として次の事項を注記することが望ましい。
(1)
四半期連結貸借対照表及び四半期個別貸借対照表における純資産の部の合計額と、1株当たり純資産額の算定に用いられた普通株式に係る四半期会計期間末における純資産額との差額の主要な内訳
(2) 1株当たり純資産額の算定に用いられた普通株式(普通株式と同等の株式を含む)の数
(当四半期会計期間において株式併合又は株式分割が行われた場合)
56.
当四半期会計期間において株式併合又は株式分割が行われた場合には、その旨及び前年度の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における前年度末の1株当たり純資産額を注記することが望ましい。
(四半期会計期間後に株式併合又は株式分割が行われた場合)
57.
四半期会計期間の末日後に株式併合又は株式分割が行われた場合には、第53項の記載に加え、前年度の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における前年度末及び当四半期会計期間末の1
株当たり純資産額を記載する。
(1株当たり純資産額の開示対象期間)
58. 当四半期会計期間の末日及び前年度の末日における1株当たり純資産額を開示する。
新株予約権及び自己新株予約権に関する事項
(新株予約権に関する事項)
59.
会計基準第19項(10)及び第25項(8)の新株予約権(連結子会社が発行した新株予約権は除く。)の目的となる株式数とは、当該新株予約権が権利行使されたものと仮定した場合に増加する株式数をいい、新株予約権の目的となる株式の種類ごとに、四半期会計期間末における当該株式の数を記載する。この場合、権利行使期間(会社法第236条第1項第4号)の初日が到来していない新株予約権については、それが明らかになるように記載する。
60. 四半期会計期間末残高は、親会社におけるものと、連結子会社におけるものを区分して記載する。
(自己新株予約権に関する事項)
61. 会計基準第19項(10)及び第25項(8)の自己新株予約権については、新株予約権との対応が明らかとなるように次の事項を記載することとする。
(1)
親会社が発行した新株予約権を親会社が保有している場合(親会社の自己新株予約権)には、新株予約権の目的となる株式の種類、数及び親会社における自己新株予約権の四半期会計期間末残高を記載する。
(2)
連結子会社が発行した新株予約権を当該子会社が保有している場合(連結子会社の自己新株予約権)には、連結子会社における自己新株予約権の四半期会計期間末残高を記載する。
ストック・オプションに関する事項
(ストック・オプションを新たに付与した場合及び重要な事項に変更がある場合の注記)
62. 当四半期会計期間にストック・オプションを付与した場合には、次の事項を記載する。
ただし、四半期財務諸表に重要な影響を与えない場合には、記載を省略することができる。
(1) 付与対象者の区分(役員、従業員などの別)及び人数
(2) ストック・オプションの数(権利行使された場合に交付することとなる株式の数を記載する。)
(3) 付与日
(4) 権利確定条件(付されていない場合にはその旨)
(5) 対象勤務期間(定めがない場合にはその旨)
(6) 権利行使期間
(7) 権利行使価格
(8) 付与日における公正な評価単価
また、ストック・オプションの条件変更を行った結果、四半期財務諸表に重要な影響がある場合には、その変更内容を記載する。
配当に関する事項
63. 期首からの累計期間において行われた配当に関して、次に掲げる事項を記載する。
(1) 配当財産が金銭の場合には、株式の種類ごとの配当金の総額、1株当たり配当額、基準日、効力発生日及び配当の原資
(2)
配当財産が金銭以外の場合(分割型の会社分割を含む。)には、株式の種類ごとの配当財産の種類並びに帳簿価額(配当の効力発生日における時価をもって純資産を減少させる場合には、当該時価により評価した後の帳簿価額をいう。)、1株当たり配当額、基準日、効力発生日及び配当の原資
(3) 基準日が期首からの累計期間に属する配当のうち、配当の効力発生日が当四半期会計期間の末日後となるものについては、(1)又は(2)に準ずる事項
株主資本の金額の著しい変動
64.
会計基準第19項(13)及び第25項(11)に定める「株主資本の金額に著しい変動があった場合」の著しい変動の有無は、前年度末の金額と比較して判断するものとする。
なお、著しい変動があった場合に記載することとなる主な変動事由としては、例えば次のものが挙げられる。
(1) 新株の発行又は自己株式の処分
(2) 剰余金(その他資本剰余金又はその他利益剰余金)の配当。ただし、配当に関する事項を参照することとした場合には、省略することができる。
(3) 自己株式の取得
(4) 自己株式の消却
(5) 企業結合(合併、会社分割、株式交換、株式移転など)による増加又は分割型の会社分割による減少
(6) 連結範囲の変動又は持分法の適用範囲の変動(連結子会社又は持分法適用会社の増加又は減少)
なお、主な変動事由の金額を記載する場合には、概算額によることができる。
重要な保証債務その他の重要な偶発債務
65.
会計基準第19項(16)及び第25項(15)に定める「重要な保証債務その他の重要な偶発債務」を記載するにあたっては、金額及びその内容(種類及び保証先など)を記載することとする。
重要な企業結合に関する事項
(取得とされた重要な企業結合)
66.
取得とされた重要な企業結合を行った四半期会計期間において記載が求められる注記には、以下のものを含むこととする。なお、四半期会計期間において複数の取得とされた企業結合が行われ、個々の企業結合においては重要性が乏しいが、企業結合全体で重要性がある場合には、当該企業結合全体で(1)及び(2)を注記する。
(1) 会計基準第19項(17)@ア 及び第25項(16)@ア
に定める「企業結合の概要」とは、被取得企業の名称及び事業の内容、企業結合を行った主な理由、事業を取得した場合は、相手企業の名称及び取得した事業の内容、企業結合日、企業結合の法的形式、結合後企業の名称及び取得した議決権比率をいう。
(2) 同項に定める「実施した会計処理の概要」には、被取得企業等の取得原価及びその内訳、発生したのれんに関する事項を記載する。
@ 被取得企業等の取得原価及びその内訳には、株式を交付した場合における株式の種類別の交換比率及びその算定方法並びに交付又は交付予定の株式数を含むものとする。
A 発生したのれんに関する事項には、のれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間、また、負ののれんの場合には、負ののれんの金額及び発生原因を記載する。なお、暫定的な処理により算定されている場合はその旨も記載することとする。
(逆取得となる吸収合併の場合で、結合後企業が四半期連結財務諸表を作成しない企業結合)
67.
逆取得となる吸収合併の場合で、結合後企業が四半期連結財務諸表を作成していないときは、パーチェス法を適用したとした場合に四半期個別貸借対照表及び四半期個別損益計算書に及ぼす影響の概算額を注記する。当該注記は、企業結合を行った四半期会計期間後においても、「影響の概算額」の重要性が乏しくなった場合を除き、四半期会計期間ごとに継続的に開示する。
68.
当該企業結合を行った四半期会計期間後に四半期連結財務諸表を作成することとなった場合には、「影響の概算額」の重要性が乏しくなった場合を除き、当該逆取得を反映した四半期連結財務諸表を作成する。
69. (削 除)
(重要な共通支配下の取引等)
70.
四半期会計期間において重要な共通支配下の取引等がある場合の注記には、以下のものを含むこととする。なお、当四半期会計期間において複数の共通支配下の取引等が行われ、個々の共通支配下の取引等では重要性が乏しいが、共通支配下の取引等の全体で重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する。
(1)
会計基準第19項(17)B及び第25項(16)Bに定める「企業結合の概要」とは、結合当事企業又は対象となった事業の名称及びその事業の内容、企業結合の法的形式、結合後企業の名称、取引の目的を含む取引の概要をいう。
(2) 同項の「実施した会計処理の概要」には、子会社株式を追加取得した場合における取得原価及びその内訳、のれんに関する事項を記載する。
@ 取得原価及びその内訳には、株式を交付した場合における株式の種類別の交換比率及びその算定方法並びに交付又は交付予定の株式数を含むこととする。
A のれんに関する事項には、のれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間、また、負ののれんの場合には、負ののれんの金額及び発生原因を記載する。なお、暫定的な処理により算定されている場合はその旨も記載することとする。
(子会社が親会社を吸収合併した場合で、当該子会社が四半期連結財務諸表を作成しない企業結合)
71.
子会社が親会社を吸収合併した場合で、当該子会社が四半期連結財務諸表を作成していないときは、親会社が当該子会社を吸収合併したものとした場合と比較した当該子会社の四半期個別貸借対照表及び四半期個別損益計算書に及ぼす影響の概算額を注記する。
72.
前項の注記事項は、企業結合を行った四半期会計期間後においても、「影響の概算額」の重要性が乏しくなった場合を除き、継続的に開示する。また、当該企業結合を行った四半期会計期間後に四半期連結財務諸表を作成することとなった場合には、「影響の概算額」の重要性が乏しくなったときを除き、当該企業結合を反映した四半期連結財務諸表を作成する。
(共同支配企業の形成が行われた場合の共同支配投資企業における注記)
73.
共同支配投資企業は,企業結合を行った四半期会計期間(共同支配企業を形成した四半期会計期間)において重要な取引がある場合には、共通支配下の取引等に係る注記事項(第70項参照)に準じた注記を行う。
74. 会計基準第19項(17)B及び第25項(16)Bに定める「実施した会計処理の概要」の記載にあたっては、共同支配企業の形成と判定した理由を併せて注記する。
重要な事業分離に関する事項
(企業結合に該当しない重要な事業分離における分離元企業の注記)
75. 分離元企業が、共通支配下の取引や共同支配企業の形成に該当しない重要な事業分離を行った場合において記載が求められる注記には、以下のものを含むこととする。
なお、四半期会計期間において複数の事業分離が行われ、個々の事業分離において重要性が乏しいが、事業分離全体で重要性がある場合には、当該事業分離全体で(1)及び(2)を注記する。
(1)
会計基準第19項(18)及び第25項(17)に定める「事業分離の概要」とは、分離先企業の名称、分離した事業の内容、事業分離を行った主な理由、事業分離日及び法的形式を含む取引の概要をいう。また、四半期財務諸表におけるセグメント情報等に関する事項において、当該分離した事業が含まれていた報告セグメント区分の名称も記載することとする。
(2) 同項に定める「実施した会計処理の概要」には、分離元企業の継続的関与があるものの移転損益を認識した場合、当該継続的関与の主な概要を含むこととする。
(企業結合に該当しない重要な事業分離における分離先企業の注記)
76. 四半期会計期間に、分割型の単独新設分割のように、企業結合に該当しない重要な事業分離を行った場合には、分離先企業は、前項(1)に準じてその概要を注記する。
(子会社が重要な企業結合を行った場合の親会社(結合当事企業の株主)における注記)
77.
四半期会計期間に子会社が重要な企業結合を行った場合において、子会社を結合当事企業とする株主(親会社)は、結合当事企業(子会社)の企業結合により子会社に該当しなくなったときには、当該企業結合日の属する四半期会計期間において、当該企業結合に関する次の事項を注記する。なお、四半期会計期間において複数の企業結合が行われ、個々の企業結合においては重要性が乏しいが、企業結合全体で重要性がある場合には、当該企業結合全体で(1)及び(2)を注記する。
(1) 子会社が行った企業結合の概要
各結合当事企業の名称、その事業の内容、企業結合を行った主な理由、企業結合日、法的形式を含む取引の概要及び当該結合当事企業が含まれていた報告セグメント区分の名称
(2) 実施した会計処理の概要(結合当事企業の株主の継続的関与があるものの交換損益を認識した場合には、当該継続的関与の主な概要を含む。)
(3) 四半期連結損益計算書に計上されている結合当事企業に係る損益の概算額
重要な後発事象
78.
四半期会計期間の末日後から四半期財務諸表を作成する日までの間に発生した重要な開示後発事象を注記する。なお、四半期会計期間の末日が四半期決算日と異なる子会社及び関連会社については、当該子会社及び関連会社の四半期決算日後に発生した事象を注記の対象とする。
79. 前項の記載にあたっては、日本公認会計士協会
監査委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」で記載された開示後発事象の例示を参考とするものとする。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項
80.
会計基準第19項(21)及び第25項(20)で定める「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項」とは、企業集団又は企業の状況に関する財務諸表利用者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるものであり、日本公認会計士協会
監査委員会報告第77
号「追加情報の注記について」で記載されている事項、貸倒引当金や減価償却累計額などで資産の控除科目として表示されていない科目の記載、重要な子会社の四半期決算日に変更があった場合の記載のほか、例えば次のようなものが挙げられる。なお、これらの金額の記載にあたり、適時に正確な金額を算定することができない場合には、概算額によって記載することもできる。
(1) 企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」を適用したことによる四半期財務諸表への影響額に重要性がある場合における次の事項
@ サービスを取得した場合には、当四半期会計期間において計上した費用の額とその科目名称
A 財貨を取得した場合には、その取引による当初の資産計上額(又は費用計上額)と科目名称
B 権利不行使による失効が生じた場合には、利益として計上した額
(2) 企業集団又は企業の事業運営にあたっての重要な項目であり、かつ、前年度末と比較して著しく変動している資産又は負債等に関する次の事項
@ 時価のある満期保有目的の債券については、四半期会計期間末における時価及び四半期貸借対照表計上額とその差額、時価のあるその他有価証券については、有価証券の種類(株式及び債券等)ごとに四半期会計期間末における四半期貸借対照表計上額及び取得原価とその差額
A デリバティブ取引(ヘッジ会計が適用されているものは除くことができる。)については、取引の対象物の種類(主な通貨、金利、株式、債券及び商品等)ごとの契約額又は契約において定められた元本相当額、時価及び評価損益
B 担保に供されている資産については、四半期会計期間の末日現在で担保に供されている資産の内容及び金額
適用時期
81. 平成19年公表の本適用指針(以下「平?9年適用指針」という。)の適用時期は、平成19年公表の会計基準と同様とする。
(平成20年改正適用指針)
81-2. 平成20年改正の本適用指針(以下「平?0年改正適用指針」という。)の適用時期は、平成20年改正の会計基準と同様とする。
(平成21年改正適用指針)
81-3.
平成21年改正の本適用指針(以下「平?1年改正適用指針」という。)(ただし、第10項及び第37項を除く。)の適用時期は、平成21年改正の会計基準第28-5項と同様とする。また、平成21年改正適用指針第10項及び第37項の適用時期は、平成21年改正の会計基準第28-6項と同様とする。
議 決
82. 平成19年適用指針は、第124回企業会計基準委員会に出席した委員10名全員の賛成により承認された。
82-2. 平成20年改正適用指針は、第168回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
82-3. 平成21年改正適用指針は、第173回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
四半期財務諸表の作成基準
会計処理
債権
(貸倒見積高の算定における債権の区分)
83.
債権管理は通常、期中を通じて行っていると想定されるため、貸倒見積高の算定にあたっては、四半期会計期間末においても、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を一般債権、貸倒懸念債権及び破産更生債権等の3
つに区分しなければならないことを前提としている。
(一般債権の貸倒見積高の算定)
84.
会計基準は、四半期財務諸表の性格として「実績主義」の考え方を基本としていることから(会計基準第39項)、一般債権の貸倒見積高についても、各四半期会計期間末における貸倒実績率等の合理的な基準により算定することになる。しかしながら、四半期財務諸表に求められる開示の迅速性の観点から、貸倒実績率等が前年度末に算定したものから著しい変動がないと考えられる場合には、前年度の決算において算定した貸倒実績率等の合理的な基準を使用することができるものとした(第3項(1)参照)。
また、四半期会計期間末で貸倒実績率等の見直しを行った後の四半期会計期間における貸倒実績率等が、当該見直し後の貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、見直しを行った後の四半期会計期間末で改めて貸倒実績率等を算定することをせず、当該見直し後の貸倒実績率等の合理的な基準を使用することができることとした(第3項(2)参照)。
有価証券
(有価証券の減損処理に係る四半期切放し法と四半期洗替え法)
85.
有価証券の減損処理は、年度末においては切放し法のみであるが、四半期会計期間末においては、関連諸制度との整合性も考慮し、継続適用を条件として、四半期切放し法と四半期洗替え法のいずれかの方法を選択適用することができることとした(第4項参照)。
なお、第4項にいう「時価等」には、市場価格又は合理的に算定された価額だけでなく、実質価額を含むものとする。
(市場価格のない子会社株式及び関連会社株式の減損処理)
86.
市場価格のない子会社株式及び関連会社株式の減損処理の検討にあたっては、一般には、当該子会社及び関連会社の事業計画等を入手することにより、より実態に即した実質価額を算定することが、それ以外の株式に比べ容易であると考えられることから、直近の貸借対照表には反映されていない四半期会計期間末における資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した実質価額を、可能な限り四半期会計期間ごとに算定することが望ましいものと考えられる(第5項参照)。
棚卸資産
(棚卸資産の簿価切下げに係る洗替え法と切放し法)
87.
企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産会計基準」という。)第14項によれば、前年度に計上した簿価切下額の戻入れに関して、当期に戻入れを行う洗替え法と、戻入れを行わない切放し法を選択適用できる。したがって、四半期会計期間末においても、原則として年度決算に選択する方法と同様の方法を適用することになるため、年度決算において洗替え法を適用している場合には、四半期会計期間においても洗替え法を適用することとなる。
一方、年度決算において切放し法を採用している場合には、関連諸制度との整合性も考慮し、継続適用を条件として、洗替え法と切放し法のいずれかを選択適用することができることとした(第7項参照)。
(棚卸資産の簿価切下げの判断にあたっての簡便的な会計処理)
88.
棚卸資産会計基準では、通常の販売目的で保有する棚卸資産の正味売却価額がその帳簿価額を下回っているときには、帳簿価額の切下げを行うことが適当であるとするとともに、実務上、収益性が低下していないことが明らかであり、事務負担をかけて収益性の低下の判断を行うまでもないと認められる場合には、正味売却価額を見積る必要はないと考えられるとしている。しかしながら、四半期財務諸表においてこれと同様の処理を求めると、四半期財務諸表の迅速な作成が阻害されるおそれもあることから、四半期会計期間末においては、収益性が低下していることが明らかな棚卸資産のみ正味売却価額等を見積り、簿価切下げを行うことができることとした。
また、営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産についても、前年度末において帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる方法により収益性の低下の事実を適切に反映させている場合には、それ以降著しい状況の変化がないと認められる限り、前年度末における貸借対照表価額を引き続き計上することができることとした(第8項参照)。
(原価差異の配賦方法における簡便的な会計処理)
89.
予定価格等又は標準原価を用いていることにより四半期会計期間末に発生した原価差異については、@原価計算期間末までに当該原価差異がほぼ解消すると見込まれる場合と、A原価計算期間末までに当該原価差異が解消すると見込まれない場合が考えられる。会計基準では、このうち@に該当し、かつ、当該原価差異が操業度等の季節的な変動に起因して発生したものである場合には、継続適用を条件として、当該原価差異を繰り延べることができることとした(会計基準第12項)。[設例
1]
一方、上記の繰延処理を採用しない場合には、四半期会計期間末までに発生した原価差異を「原価計算基準」に従って処理することになるが、迅速性の観点から、年度決算における原価差異の会計処理よりも簡便的な方法によることができることとした(第9項参照)。ただし、簡便的に、年度末における原価差異の配賦区分よりも大きな区分により配賦計算を行う場合であっても、財務諸表利用者の判断を誤らせないよう、例えば、報告セグメントを超えない程度の区分による配賦計算を行うことが必要と考えられる。
なお、原価差異の金額に重要性が乏しい場合は、原価計算基準に従って、売上原価にすべて賦課することとなる点に留意する。
固定資産
(減価償却費の算定における簡便的な会計処理:合理的な予算制度の利用)
90.
中間財務諸表を作成するにあたっての簡便な決算手続の適用例として、「中間財務諸表作成基準」注解(注2)ロでは、「減価償却の方法として定率法を採用している場合には、事業年度に係る減価償却費の額を期間按分する方法により減価償却費を計上することができる」とされている。当該取扱いは、定率法を採用している場合、中間決算においては半年率を適用するのではなく、年間の率に基づき算定された減価償却費を期間按分して計上することができるという簡便的な取扱いであると考えられる。しかしながら、四半期会計期間においては、四半期会計期間末ごとに、年度に係る減価償却費を算定し期間按分することは、適時性に係るより強い制約との関係で困難な場合も考えられる。したがって、固定資産の年度中の取得、除却及び売却等の見積りを考慮した上で減価償却費に係る予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分する方法により、四半期会計期間又は期首からの累計期間の減価償却費として計上することができることとした。なお、期中に取得、売却又は除却する固定資産の減価償却費に重要性がある場合には、その部分について適切に反映するよう当該期間按分額を調整するものとした(第12項参照)。
91.
四半期財務諸表における減価償却費の算定にあたり、合理的な予算制度の利用を容認した理由としては、@重要性の乏しい有形固定資産の増減まで厳密に考慮して四半期財務諸表を作成するのは煩雑であり、開示の迅速性の観点から、予算上の数値での計上の取扱いを求める財務諸表作成者側の意見があることに加え、A証券取引所における四半期開示の状況を踏まえると、実績と大きく乖離しなければそのような取扱いを認めてよいとする財務諸表利用者側の意見があることなどが挙げられる。
(減損の兆候)
92.
「固定資産の減損に係る会計基準」では、固定資産の減損の兆候として4つの事象が例示されている。また、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」第76項において、「通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングにおいて利用可能な企業内外の情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別することとなる」とされている。したがって、本適用指針においてもこれらの趣旨を勘案し、前年度末等において所有する資産又は資産グループについて全体的に減損の兆候を把握している場合には、必ずしも四半期会計期間ごとに資産又は資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローあるいはその市場価格を算定又は入手することを求めるのではなく、使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意することとした(第14項参照)。
税金費用
年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い
93. 四半期財務諸表における税金費用の計算を原則的な会計処理による場合においては、四半期会計期間を1
つの年度とみなして、年度決算と同様の方法により税額計算をして法人税等を算出するとともに、当該計算により生じた将来減算一時差異に対しては繰延税金資産を、将来加算一時差異に対しては繰延税金負債を計上することになる。
しかしながら、四半期財務諸表において、例外なく年度決算と同様の方法を求めることは開示の適時性を害するおそれがあるため、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額の算出等において簡便的な方法によることができることとした(第15項参照)。
繰延税金資産の回収可能性の判断における簡便的な取扱い
94.
四半期財務諸表に計上された繰延税金資産についても、原則として、年度決算と同様の方法により回収可能性の判断を行うこととなるため、四半期決算日ごとに、将来の回収見込みについて見直しを行うことになる。しかしながら、四半期会計期間ごとに収益力に基づく課税所得の十分性やタックス・プランニング、あるいは将来加算一時差異の十分性について改めて判断することを求めるのは実務上過度な負担を強いることになるとも考えられることから、経営環境等に著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができることとした(第16項参照)。
一方、経営環境等に著しい変化が生じている場合、又は、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合(具体的には、日本公認会計士協会
監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」5(1)に例示されている区分が変わる程度の著しい変化又は大幅な変動が、生じた場合などが考えられる。)には、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化又は大幅な変動による影響を加味したものを使用することができることとした(第17項参照)。
税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する四半期特有の会計処理
(税金費用の計算と繰延税金資産の回収可能性の判断)
95.
税金費用の計算は、年度決算と同様の方法に代えて、年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることもできるとされているが、この場合の繰延税金資産の回収可能性の判断は、原則として四半期決算日時点で見直すことになる。
しかしながら、四半期決算においては、年度及び中間会計期間における決算手続以上に迅速性が求められていることから、財務諸表利用者の投資判断を誤らせない範囲において、経営環境に著しい変化等が生じていない場合における前年度末の将来の業績予測等の利用を認めるとともに、経営環境に著しい変化等が生じている場合においても、前年度末の将来業績予測等に当該著しい変化等を加味したものを使用することができることとした(第18項参照)。
重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理
96.
連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社(親会社及び連結子会社)にまで年度決算と同様の方法あるいは税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法を求めると、四半期決算の迅速性が阻害されることも想定される。したがって、これらの会社においては、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が発生しておらず、かつ、四半期財務諸表上の一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がない場合には、四半期財務諸表における税金費用の計算にあたっては、税引前四半期純利益に、前年度の損益計算書における税効果会計適用後の法人税等の負担率を乗じて計算する方法によることができることとした(第20項参照)。
なお、この方法は、当該連結会社の前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債の回収可能性等の判断結果が当該四半期会計期間末まで継続している場合にのみ認められるため、前年度末における繰延税金資産及び繰延税金負債はそのまま四半期貸借対照表に計上されることになる。
四半期連結財務諸表における会計処理
(四半期連結財務諸表における未実現利益消去に係る税効果)
97.
期首から四半期会計期間末までの連結会社間の取引により生じた未実現利益を四半期の連結手続上で消去する場合、当該未実現利益額に係る一時差異の金額の限度額については、売却元の期首からの累計期間に係る見積課税所得額とする考え方と年間見積課税所得額とする考え方がある。前者の方法によった場合、四半期連結財務諸表においては、同じ年度内で売却元の期首からの累計期間に係る課税所得が四半期を経るごとに変動することに伴い、一時差異の限度額も変動し、法人税等調整額等が変動することになる。その結果、1株当たり四半期純損益の算定基礎となる四半期純損益が大きく変動する可能性があるという指摘がある。
一方、後者の方法によれば、年間見積課税所得が変わらない限り、未実現利益の消去を行った四半期会計期間以外の四半期純損益に影響を及ぼさず、また、実際の税金費用は年度の課税所得をもって確定することから、四半期会計期間においても年間見積課税所得額を一時差異の限度額として用いることによって年度との整合性を図ることにより、年間の業績見通しに資する情報を提供することとなると考えられる。
このような点を踏まえ、当該未実現利益額に係る一時差異の金額は、年間の見積課税所得額を限度とする考え方を採用することとした(第22項参照)。
退職給付引当金
98.
「中間財務諸表作成基準」注解(注2)ハにおいて、「退職給与引当金繰入額は、事業年度の合理的な繰入見積額を期間按分する方法により計上することができる」とされている。したがって、四半期会計期間及び期首からの累計期間において負担すべき退職給付費用についても同様に、期首において算定された年間の退職給付費用を期間按分する方法によりそれぞれ算定することとした(第24項参照)。
99.
数理計算上の差異を発生した翌年度から費用処理する会計方針を採用している場合(翌年度に一括して費用処理する方法を含む。)、各四半期会計期間においては、年間償却額を期間按分して計上することとした(第25
項参照)。これは、発生した年度に全額費用処理する方法を採用している場合以外では、当該差異は、平均残存勤務期間以内の一定の年数により規則的に処理することが適当であることから、期間按分する方法により、各四半期会計期間及び期首からの累計期間に負担すべき額を計上するものと考えられるためである。
また、数理計算上の差異を発生年度から費用処理する場合、数理計算上の差異は年度末において生じるものであるため、発生年度においては第4
四半期に1年分の費用処理額が計上されることになる。
100.
過去勤務債務については、発生時一括費用処理の方針を採用している場合以外においては、発生時点から平均残存勤務期間内の一定の年数にわたり月割等により規則的に償却することが適当であることから、四半期会計期間及び期首からの累計期間の費用処理額は、それぞれ年間費用処理額を期間按分することにより算定することになる(第26項参照)。
101. (削 除)
四半期連結財務諸表上の会計処理
(連結会社相互間の債権債務及び取引の相殺消去における簡便的な会計処理)
102.
「中間連結財務諸表作成基準」(以下「中間連結作成基準」という。)注解(注2)イにおいて、「連結会社相互間の債権の額と債務の額に差異がみられる場合には、合理的な範囲内で、当該差異の調整を行わないで債権と債務を相殺消去することができる。」とされている。したがって、四半期連結財務諸表の作成にあたっても、中間財務諸表よりも適時性に係るより強い制約があることから、同様の取扱いとすることとした(第28項参照)。また、連結会社相互間の取引の相殺消去についても、取引金額に差異がある場合で、当該差異の重要性が乏しいときには、一定の合理的な方法に基づき相殺消去することができることとした(第29項参照)。
(未実現損益の消去における簡便的な会計処理)
103.
中間連結作成基準注解(注2)ロにおいて、「連結会社相互間の取引によって取得したたな卸資産に含まれる未実現損益の消去に当たっては、中間期末在庫高に占める当該たな卸資産の金額及び当該取引に係る損益率を合理的に見積って計算することができる。」とされている。したがって、四半期連結財務諸表の作成にあたっても同様に、未実現損益の消去にあたっては、四半期会計期間末在庫高に占める当該棚卸資産の金額及び当該取引に係る損益率を合理的に見積って計算することができることとし、さらに、中間財務諸表よりも適時性に係るより強い制約があることから、前年度又は直前の四半期会計期間から取引状況に大きな変化がないと認められる場合には、前年度又は直前の四半期会計期間で使用した損益率や合理的な予算制度に基づいて算定された損益率を使用することができることとした(第30項参照)。
開 示
四半期財務諸表の科目の表示
四半期財務諸表の科目の集約記載の取扱い
104.
四半期財務諸表における個々の表示科目については、開示の適時性の要請を踏まえ、中間財務諸表だけでなく、既に35日以内での開示が義務付けられている米国SEC規則での取扱いも参考にして、四半期キャッシュ・フロー計算書を含め、主要な科目について独立掲記を求めることとし、その他の科目については集約できることとした(第31項及び第32項参照)。なお、主要な科目を決定する際の重要性は、単に金額の多寡により判断するのではなく、財務諸表利用者が意思決定を行う上で重要であるか否かにより判断することに留意する必要がある。
なお、財務諸表利用者からは、財務分析上、可能であれば年度と同様の科目表示が望ましいという意見もあり、四半期財務諸表において、より詳細な科目表示を行うことができるものと考えられる。
注記事項
四半期財務諸表の表示方法の変更
105.
四半期財務諸表の表示方法の変更を行った場合には、第1四半期での変更を含め、その内容及び前年度に係る四半期財務諸表との比較を行うために必要な事項の記載を求めることとした(第36項参照)。
この点について、当年度における表示方法の変更を行った四半期会計期間よりも前の四半期会計期間の財務諸表との比較を行うために必要な事項を記載しなかった場合、比較可能性が保てなくなるおそれがあるという指摘があった。しかし、表示方法の変更は、金額の重要性を理由とするものや科目の明瞭表示を理由とするものが大部分であると考えられる。しかも、四半期財務諸表では科目を集約して記載することも容認していることを加味すると、比較情報として開示される前年度に係る四半期財務諸表との比較可能性を確保するために必要な事項を記載することで足りることとした。
セグメント情報等に関する事項
(報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合の取扱い)
106.
四半期会計期間において、報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合においては、年度での記載に準じて、比較可能性を保つために必要な記載をそれぞれの場合に応じて求めることとした(第40項(1)及び(2)参照)。
なお、事業セグメントの量的な重要性の変化による報告セグメントとして開示する事業セグメントの範囲の変更(第40項(1)@参照)及び事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法の重要な変更(第40
項(2)参照)の場合においても、当該変更が期首からの累計期間に係る報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報に与えている影響額そのものの記載に代えて、前年度の対応する期首からの累計期間に係る報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報を変更後の報告セグメントの区分及び事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法により作成したものを記載することも考えられる。
1株当たり四半期純損益
107. 1株当たり四半期純損益は、普通株式に係る四半期純損益を普通株式の期中平均株式数で除して算定するため、各四半期会計期間の1
株当たり四半期純損益の合計は、年度の期首からの累計期間の1株当たり四半期純損益に必ずしも合致しないことに留意する必要がある。
108.
四半期財務諸表に係る会計処理の原則及び手続を変更した場合において、当該変更が1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益に重要な影響を与えているときには、1株当たり情報の重要性に鑑み、前年同期との比較可能性を保つため、1株当たり四半期純損益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益に与える影響額の開示も求めるべきであるという意見があった。しかしながら、現行の年度の財務諸表及び中間財務諸表ではそのような開示が行われていないことも考慮し、四半期財務諸表での開示は求めないこととした。
109. 潜在株式調整後1
株当たり四半期純利益の算定上の基礎に関連する事項として、上場会社において転換価格下方修正条項付転換社債型新株予約権付社債等の発行が見られることを踏まえ、最大発行株式数の開示が必要であるという意見もあった。しかし、四半期固有の事項ではないこと及び非財務情報に関わることから、四半期財務諸表での開示は求めないこととした。
重要な後発事象
110.
後発事象は、開示後発事象と修正後発事象からなる。開示後発事象は、発生した事象が翌四半期会計期間以降の四半期財務諸表又は年度の財務諸表に影響を及ぼすため、四半期財務諸表に注記を行う必要がある事象である。一方、修正後発事象は、発生した事象の実質的な原因が四半期決算日においてすでに存在するため、四半期財務諸表の修正を行う必要がある事象である。
111.
四半期財務諸表を作成する日までの間に発生した重要な開示後発事象は、四半期財務諸表の注記事項として公認会計士等のレビュー手続の対象となるものであるため、事実上、レビュー報告書提出日までに生じた後発事象となると考えられる。なお、レビュー報告書の提出日と四半期報告書の公表日の間に差がある場合、その間に生じた後発事象については非財務情報として開示することが考えられる(第78項参照)。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項
112. 企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項の例として、第80
項では、ストック・オプション関係の他、有価証券関係、デリバティブ関係、担保提供資産関係を掲げている。後者の3項目などについては、四半期決算における迅速性を考慮して、企業集団又は企業の事業運営にあたっての重要な項目であり、かつ、前年度末と当該四半期会計期間末を比較して著しい変動がある場合にのみ、当該四半期会計期間末の情報を注記することとした。また、適時に正確な金額を算定することができない場合には、概算額によって記載することもできることとした。
設例
以下の設例は、本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
[設例 1]原価差異の繰延処理
(1) 前提条件
@ 会社は大規模装置を所有し、標準原価計算制度を採用する3月決算の製造会社である。
当該大規模装置については、当年度では第2四半期に2か月程度稼動を停止し、修繕を行うこととなっている。そのため、修繕に伴う操業度の変動に起因して原価差異(操業度差異)が発生する。
A 原価計算期間は年度と一致している。
B 原価標準の設定の際に使用された予想操業度は次のとおりである。
|
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
合計 |
予想操業度(個) |
300,000 |
100,000 |
300,000 |
300,000 |
1,000,000 |
|
C 原価差異(操業度差異)は、原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれる。
D 実際の操業度、標準原価、原価の実際発生額及び原価差異は次のとおりであった。原価差異はすべて操業度差異である。
|
(単位:百万円)
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
標準原価 |
30,000 |
10,100 |
29,700 |
30,100 |
実際発生原価 |
26,500 |
20,530 |
26,410 |
26,530 |
原価差異(3か月) |
3,500 |
△10,430 |
3,290 |
3,570 |
原価差異(累計期間) |
3,500 |
△6,930 |
△3,640 |
△70 |
|
E 各四半期末において、実際操業度は概ね予想操業度どおりであり、その後も予想通りの操業度となることが見込まれていた。
F 税効果は考慮しない。
(2) 第1四半期末
(単位は百万円とする。以下同じ。)
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
売上原価(原価差異) |
(*1)
3,500 |
その他の流動負債 |
3,500 |
(*1) 標準原価と実際発生額の相違から、原価差異(累計期間)が貸方残高として3,500生じているが(前提条件D参照)、操業度の季節的な変動に起因して発生したものであり、原価計算期間末までにほぼ解消することが見込まれることから、当該原価差異の売上原価・棚卸資産への配賦等は行わず、流動負債として繰り延べる(以下同様)。
|
(3) 第2四半期末
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
その他の流動負債 |
3,500 |
売上原価(原価差額) |
(*2)
3,500 |
その他の流動資産 |
6,930 |
売上原価(原価差額) |
(*3)
6,930 |
(*2) 第1四半期末での仕訳を戻し入れている。
(*3) 第2四半期末における期首からの累計の原価差異(前提条件D参照)。
|
(4) 第3四半期末
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
売上原価(原価差異) |
(*4)
6,930 |
その他の流動資産 |
6,930 |
その他の流動資産 |
3,640 |
売上原価(原価差額) |
(*5)
3,640 |
(*4) 第2四半期末での仕訳を戻し入れている。
(*5) 第3四半期末における期首からの累計の原価差異(前提条件D参照)。
|
[設例 2]削除
[設例 3]重要性が乏しい連結会社における税金費用の簡便的な処理
(1) 前提条件
@ 親会社P社の連結財務諸表において、連結子会社S1社は重要性が乏しいと判定されている。
A 前年度のS1社の損益計算書は次のとおりであった(抜粋)。
税引前当期純利益 1,000百万円
法人税、住民税及び事業税 440百万円
法人税等調整額 △ 40百万円
当期純利益 600百万円
B 当第3四半期における、S1社の期首からの累計期間にかかる税引前四半期純利益は500百万円である。
C S1社の四半期財務諸表上の一時差異等の発生状況について、前年度末から大幅な変動はない。
(2) 第3四半期末(期首からの累計期間)
(単位は百万円とする。)
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
法人税、住民税及び事業税 |
(*1)
200 |
未払法人税等 |
200 |
(*1) S1 社の法人税、住民税及び事業税は以下のように計算される。
(1) 前年度の税効果会計適用後の法人税等の負担率計算
(440百万円−40百万円)÷1,000百万円=40%
(2) 期首からの累計期間の税金費用の計算
第3四半期におけるS1社 税引前四半期純利益×(1)=500百万円×40%=200百万円
|
[設例 4]未実現利益の消去に係る税効果(土地)
(1) 前提条件
@ X1年4月1日に、親会社P社は、100%子会社S社に土地(帳簿価額6,000百万円)を10,000百万円で売却し、X2年3月31日現在S社が当該土地を保有している。
A P社及びS社とも3月決算会社である。
B P社に適用される法人税等の税率は40%である。また、法定実効税率も40%である。
C P社は、税務調整項目がなく、税引前利益と課税所得が一致している。
D P社の年間見積課税所得は、10,000百万円であり、年度を通じて年間課税所得の見積りは変わらないものとする。
E P社におけるX1年4月1日からX2年3月31日までの期首からの累計期間及び3か月の各四半期個別損益計算書の概要は次のとおりである。
|
<累計期間(単位:百万円)>
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
(第4四半期) |
S社への土地売却益 |
4,000 |
4,000 |
4,000 |
4,000 |
その他の損益 |
△3,000 |
△2,000 |
5,000 |
6,000 |
税引前利益 |
1,000 |
2,000 |
9,000 |
10,000 |
法人税等 |
400 |
800 |
3,600 |
4,000 |
純利益 |
600 |
1,200 |
5,400 |
6,000 |
|
|
<3か月(単位:百万円)>
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
(第4四半期) |
S社への土地売却益 |
4,000 |
0 |
0 |
0 |
その他の損益 |
△3,000 |
1,000 |
7,000 |
1,000 |
税引前利益 |
1,000 |
1,000 |
7,000 |
1,000 |
法人税等 |
400 |
400 |
2,800 |
400 |
純利益 |
600 |
600 |
4,200 |
600 |
|
(2) 第1四半期末(X1年6月30日)
(単位は百万円とする。以下同じ。)
・未実現利益の消去
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
土地売却益 |
4,000 |
土地 |
4,000 |
|
・未実現利益の消去に係る税効果の計算
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
繰延税金資産 |
(*1)
1,600 |
法人税等調整額 |
1,600 |
連結決算手続上消去された未実現利益4,000は、連結財務諸表固有の一時差異に該当する。未実現利益の消去に係る将来減算一時差異4,000は、売却元P社の年間見積課税所得10,000を超えないため、4,000について税効果を認識する。
(*1) 繰延税金資産 1,600=4,000×40%
|
(3) 第2四半期末(X1年9月30日)
・未実現利益の消去
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
土地売却益 |
4,000 |
土地 |
4,000 |
|
・未実現利益の消去に係る税効果の計算
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
繰延税金資産 |
1,600 |
法人税等調整額 |
1,600 |
年間課税所得の見積りが変わらないため、第1 四半期末と同じ処理を行う。
|
(4) 第3四半期末(X1年12月31日)
・未実現利益の消去
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
土地売却益 |
4,000 |
土地 |
4,000 |
|
・未実現利益の消去に係る税効果の計算
|
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
繰延税金資産 |
1,600 |
法人税等調整額 |
1,600 |
年間課税所得の見積りが変わらないため、第1四半末と同じ処理を行う。
|
(5)
P社におけるX1年4月1日からX2年3月31日までの期首からの累計期間及び3か月の各四半期連結損益計算書の概要(P社に関係する部分のみ)は次のとおりである。
|
<四半期連結損益計算書:累計期間(単位:百万円)>
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
(第4四半期) |
連結間土地売却益 |
0 |
0 |
0 |
0 |
その他の損益 |
△3,000 |
△2,000 |
5,000 |
6,000 |
税金等調整前純利益 |
△3,000 |
△2,000 |
5,000 |
6,000 |
法人税等 |
400 |
800 |
3,600 |
4,000 |
法人税等調整額 |
△1,600 |
△1,600 |
△1,600 |
△1,600 |
純利益 |
△1,800 |
△1,200 |
3,000 |
3,600 |
|
|
<四半期連結損益計算書:3か月(単位:百万円)>
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
(第4四半期) |
連結間土地売却益 |
0 |
0 |
0 |
0 |
その他の損益 |
△3,000 |
1,000 |
7,000 |
1,000 |
税金等調整前純利益 |
△3,000 |
1,000 |
7,000 |
1,000 |
法人税等 |
400 |
400 |
2,800 |
400 |
法人税等調整額 |
△1,600 |
0 |
0 |
0 |
純利益 |
△1,800 |
600 |
4,200 |
600 |
|
付録
第2四半期以降で自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更した場合における影響額の記載
<前提>
自発的に会計処理の原則及び手続を変更した時期が次のようなものであったとする。
|
|
|
Q1 |
Q2 |
Q3 |
Q4 |
A |
B |
B |
B |
A |
A |
B |
B |
|
(注)A、B は会計処理方法を示す。
Q1、Q2、Q3、Q4 は、第1四半期、第2四半期、第3四半期、第4四半期を示す。
<影響額の記載>
ケース1:第2四半期に自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更(A→B)した場合
|
|
会計基準 |
注記する影響額 |
当期
(Q2での開示)
|
第19項(2)
第25項(1) |
累計情報(Q1+Q2)をAで行った場合の影響額 |
第19項(3)
第25項(2) |
Q1をBで行った場合の影響額 |
当期
(Q3での開示) |
第19項(2)
第25項(1) |
累計情報(Q1+Q2+Q3)をAで行った場合の影響額 |
翌期
(Q1での開示) |
第19項(4)
第25項(3) |
前期Q1をBで行った場合の影響額 |
|
ケース2:第3四半期に自発的に重要な会計処理の原則及び手続を変更(A→B)した場合
|
|
会計基準 |
注記する影響額 |
当期
(Q3での開示)
|
第19項(2)
第25項(1) |
累計情報(Q1+Q2+Q3)をAで行った場合の影響額 |
第19項(3)
第25項(2) |
累計情報(Q1+Q2)をBで行った場合の影響額 |
翌期
(Q1での開示) |
第19項(4)
第25項(3) |
前期Q1をBで行った場合の影響額 |
翌期
(Q2での開示) |
第19項(4)
第25項(3) |
前期Q2をBで行った場合の影響額
かつ、累計情報(前期Q1+前期Q2)をBで行った場合の影響額 |
|
(注) 影響額の記載については、適時に正確な金額を算定することができない場合には、資本連結をやり直さないなど、適当な方法による概算額を記載することができる。
また、影響額を算定することが実務上困難な場合には、影響額の記載に代えて、その旨及びその理由を記載することができる(会計基準第19項(3)及び(4)、第25項(2)及び(3)、適用指針第33項から第35項参照)。
以上