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資産除去債務関する会計基準目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成20年3月31日に公表した「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」から「目的・適用指針・結論の背景」を抜粋したものです。なお、オリジナルと異なる表現をしている部分があります。実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。

企業会計基準適用指針第21号

資産除去債務に関する会計基準の適用指針

(目的・適用指針・結論の背景)

平成20年3月31日

企業会計基準委員会

 

目次

目的

適用指針

会計処理

資産除去債務の負債計上

資産除去債務の算定

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

開示

適用時期等

議決

結論の背景

会計処理

資産除去債務の負債計上

資産除去債務の算定

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

開示


目的

1.  企業会計基準18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)が平成20年3月31日に公表されている。本適用指針は、当該会計基準を適用する際の指針を定めるものである。

適用指針

会計処理

資産除去債務の負債計上

(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合)

2.  会計基準第5項に定める資産除去債務を合理的に見積ることができない場合とは、決算日現在入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいう。このような場合には、会計基準第16項(5)に定める注記を行わなければならない。

資産除去債務の算定

(割引前将来キャッシュ・フローの見積りにあたっての留意点)

3.  企業は、次の情報を基礎として、自己の支出見積りとしての有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積る。

(1) 対象となる有形固定資産の除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積り

(2) 対象となる有形固定資産を取得した際に、取引価額から控除された当該資産に係る除去費用の算定の基礎となった数値

(3) 過去において類似の資産について発生した除去費用の実績

(4) 当該有形固定資産への投資の意思決定を行う際に見積られた除去費用

(5) 有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)を行う業者など第三者からの情報

企業は、(1)から(5)により見積られた金額に、インフレ率や見積値から乖離するリスクを勘案する。また、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づき、技術革新などによる影響額を見積ることができる場合には、これを反映させる。[設例2]

なお、多数の有形固定資産について同種の資産除去債務が生じている場合には、個々の有形固定資産に係る資産除去債務の重要性の判断に基づき、有形固定資産をその種類や場所等に基づいて集約し、概括的に見積ることができる。

4.  将来キャッシュ・フローの見積りには、法人税等の影響額を含めない。

(資産除去債務の算定に際して用いられる割引率)

5.  将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されるため、資産除去債務の算定に際して用いられる割引率は、将来キャッシュ・フローが発生すると予想される時点までの期間に対応する貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の割引率とする(会計基準第6項(2))。

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

(資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の留意点)

6.  資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える(会計基準第7項)。

ただし、資産除去債務の対象が複数の有形固定資産から構成され、そのうち一部の資産については全体の除去以前により短い周期で除去され、再び取得される場合がある。この場合には、当該資産について、より短い周期での除去に係る法律上の義務及びそれに準ずるものはないものの、除去に係る法律上の義務等を有し資産除去債務の対象となる主たる資産があることから、主たる資産の除去に伴い当該構成資産が同時に除去されるものとみて、複数の有形固定資産の資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用を主たる資産の帳簿価額に加えることとする。[設例3]

7.  主たる資産の帳簿価額の増加額として資産計上された当該構成資産の除去費用は、減価償却を通じて、当該主たる資産の耐用年数にわたり各期に費用配分する。

(特別の法令等により除去に係る費用を適切に計上する方法がある場合)

8.  特別の法令等により、有形固定資産の除去に係るサービス(除去サービス)の費消を当該有形固定資産の使用に応じて各期間で適切に費用計上する方法がある場合には、当該費用計上方法を用いることができる。

ただし、この場合でも、会計基準の定めに基づき、当該有形固定資産の資産除去債務を負債に計上し、これに対応する除去費用を関連する有形固定資産の帳簿価額に加える方法で資産として計上しなければならない。また、当該費用計上方法については、注記する必要がある。

(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合)

9.  建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる。[設例6]

開示

(資産除去債務に関する注記)

10. 「資産除去債務の内容についての簡潔な説明」(会計基準第16項(1))においては、資産除去債務の発生原因となっている法的規制又は契約等の概要(法令等の条項及び契約条件等)を簡潔に記載する。[設例7-1]

なお、多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合には、有形固定資産の種類や場所等に基づいて、会計基準第16項で求められている注記をまとめて記載することができる。[設例7-2]

(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の注記)

11. 資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の「その旨及びその理由」の注記(会計基準第16項(5))にあたっては、「資産除去債務の内容についての簡潔な説明」(会計基準第16項(1))と関連付けて記載することが必要である。[設例8]

(資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い)

12. 資産除去債務を実際に履行した場合、その支出額についてはキャッシュ・フロー計算書上「投資活動によるキャッシュ・フロー」の項目として取り扱う。

13. 重要な資産除去債務を計上したときは、キャッシュ・フロー計算書に「重要な非資金取引」として注記を行う。

適用時期等

14. 本適用指針の適用時期は、会計基準と同様とする。

15. 建物等賃借契約に関連して支出している敷金について第9項の処理を行う場合には、適用初年度の期首において、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額のうち前期以前の負担に属する金額を、当期の損失(原則として特別損失)として計上する。

議決

16. 本適用指針は、第149回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。

結論の背景

会計処理

資産除去債務の負債計上

(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合)

17. 資産除去債務の履行時期や除去の方法が明確にならないことなどにより、その金額が確定しない場合でも、履行時期の範囲及び蓋然性について合理的に見積るための情報が入手可能なときは、資産除去債務を合理的に見積ることができる場合に該当する。例えば、キャッシュ・フローの発生額は確定していないが、キャッシュ・フローの発生確率の分布が推定可能であるために当該発生額の見積りが可能な場合には、資産除去債務を合理的に見積って、負債として計上することが必要と考えられる(第2項参照)。

資産除去債務の算定

(割引前将来キャッシュ・フローの見積りにあたっての留意点)

18. 将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づき見積られる必要があるため、本適用指針では、実務上、その見積りにあたって必要と考えられる留意点を示している(第3項及び第4項参照)。

19. 有害物質等に汚染された有形固定資産については、法令等によりその平均的な処理作業が定められ、その工程が明確にされているため、ほぼ画一的に将来キャッシュ・フローを見積ることができる場合がある。このような場合において、将来キャッシュ・フローの発生時期の見積りに必要な情報が得られるときには、インフレーション等を考慮し当該発生時期における将来キャッシュ・フローを見積った上で、現在価値に割引くこととなる(第3項(1)参照)。

20. 有害物質等が含まれる固定資産を売買する場合、法令に基づき売り手に告知義務が課され、売買金額から除去費用相当額が控除される場合がある。新たに取得した有形固定資産あるいは類似の資産について、除去費用が明らかとなっている場合には、当該金額を基礎とすることができるものとした(第3項(2)参照)。

21. 除去について平均的な処理作業に要する価格が明らかでない場合、過去において類似の資産について発生した除去費用の実績を基礎として将来キャッシュ・フローを見積ることが考えられる。また、各地域に分散した多数の同種の資産について将来キャッシュ・フローを見積る場合、毎期末時点で、発生実績などに基づき、除去が予想される固定資産の面積等を見積り、過去の実績から算定された面積当たりの除去費用を乗じて見積ることが考えられる(第3項(3)参照)。

22. 資産除去債務の測定値の属性を自己の支出見積りとしたことから、除去サービスを行う業者など、第三者へ見積りを依頼することまでは求めないこととした。ただし、合理的で説明可能な仮定及び予測を置くに際し、第三者からの情報を適宜利用することが考えられる(第3項(5)参照)。

(資産除去債務の算定に際して用いられる割引率)

23. 資産除去債務の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの割引率とする。したがって、この場合には、原則として将来キャッシュ・フローが発生するまでの期間に対応した利付国債の流通利回りなどを参考に割引率を決定することとなる。

なお、割引前将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることに対応して、割引率も税引前の数値を用いる必要がある(第5項参照)。

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

(資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の留意点)

24. 資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合、一般に、除去に係る法的義務等を有し、資産除去債務の対象となる主たる資産のほかに、単独では除去に係る法的義務等を有さず、より短い周期で更新される資産が含まれる。

当初取得した主たる資産とは別により短い周期で更新される資産は、主たる資産を含む有形固定資産全体の除去より短い周期で除去され、同様の資産が再度取得されることにより有形固定資産全体としての機能が維持されることになるが、その除去時点ではより短い周期で更新される資産も含めた有形固定資産全体を一括して除去することが必要となる。しかしながら、これらの資産に係る資産除去債務を個々の資産ごとに捉えることとすると、主たる資産の除去時点で存在するより短い周期で更新される資産の帳簿価額には、主たる資産の当初取得時点において、資産除去債務に対応する除去費用が計上されていないこととなる。

このため、複数の有形固定資産から構成される場合、当初取得時に一括して見積られた資産除去債務とそれに対応する除去費用には、より短い周期で除去される資産に係る除去費用も含め、主たる資産の除去に係る支出とみて、主たる資産の帳簿価額に加えることとした(第6項参照)。

このとき、主たる資産を除去するまでの間に行われる、より短い周期で実施される資産の除去及び再取得に係る支出は資産除去債務の対象とせず、主たる資産の除去と同時に行われる資産の除去に係る支出を対象とすることに留意する必要がある。

25. なお、個々の資産が除去に係る法的義務等を有するときには、当該複数の有形固定資産に対し、一括して資産除去債務を見積るのではなく、個々の有形固定資産について見積り、対応する除去費用を個々の有形固定資産の帳簿価額に加える必要がある。

(特別の法令等により除去に係る費用を適切に計上する方法がある場合)

26. 会計基準では、引当金処理の場合には有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないという問題があることから、国際的な会計基準とのコンバージェンス等の観点も考慮し、資産負債の両建処理を求めることとしている。この両建処理においては、対象となる有形固定資産の帳簿価額に加算された金額は当該有形固定資産と同一の方法で減価償却し、割引前のキャッシュ・フローとの差額については、時の経過による資産除去債務の調整額として利息法により費用配分する方法が通常の処理方法となる。

しかしながら、特別の法令等により、除去サービスの費消の態様を考慮して当該有形固定資産の使用に応じて各期間に適切に費用計上する会計方針を採用する場合、会計基準の通常の処理方法による費用配分に照らし、会計上、合理的な費用配分と考えられる場合がある。

このため、本適用指針では、そのような場合には、特別の法令等に従った費用配分方法を採用することができるものとした(第8項参照)。

ただし、その場合でも、貸借対照表における両建処理を妥当とする根拠が否定されるものではないため、通常の処理方法による負債計上額に対する不足額があるときは、当該不足額が資産除去債務に計上されることとなる。

(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合の取扱い)

27. 資産除去債務とそれに対応する除去費用の会計処理と敷金の会計処理は、本来個別に行われる必要があると考えられる。しかしながら、建物等の賃借契約において敷金を支出している場合、賃借建物等に関連する資産除去債務とこれに対応する除去費用を負債及び資産として両建処理すると、敷金と資産除去債務に対応する除去費用が二重に資産計上されるという見方もある。本適用指針では、資産除去債務に係る実務負担を考慮し、賃借契約に関連する敷金が資産に計上されている場合には、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上する方法によることができることとした(第9項参照)。

この処理による場合、当期の負担に属する金額は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間など合理的な償却期間に基づいて算定することが適当と考えられる。

なお、当該償却期間等を算定することが困難で、決算日現在で入手可能なすべての証拠を勘案して最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合には、会計基準第16項(5)に定める開示を行う必要がある。

開示

(資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い)

28. キャッシュ・フロー計算書上、資産除去債務の履行については、「営業活動によるキャッシュ・フロー」として取り扱う方法と、「投資活動によるキャッシュ・フロー」として取り扱う方法が考えられる。現行の実務における資産の除去に関するキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」として処理していることも多いと考えられ、また、投資活動による支出は一般的には固定資産の取得時に発生するものであるため、除去時の支出を投資活動による支出とすることは適切ではないとの見方もある。

しかし、会計基準では、資産除去債務に対応する除去費用を有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理するものとしていること(会計基準第7項)を考慮すると、固定資産の取得による支出と同様に、投資活動による支出と見ることが整合的と考えられる。また、固定資産の除去に伴う支出を固定資産の売却収入の控除項目と考えれば、投資活動によるキャッシュ・フローとみることができることから、資産除去債務の履行に係る支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」に含めることとした(第12項参照)。

29. 固定資産の取得に伴う資産除去債務の認識は、資金の移動を伴わずに資産及び負債を計上するものであり、資産除去債務が将来の支出となることから、重要性がある場合、「重要な非資金取引」として注記することとなる(第13項参照)。

(四半期財務諸表における注記)

30. 企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という。)第19項(21)及び第25項(20)で定める「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項」として、資産除去債務が前年度末と比較して著しく変動している場合には、その簡潔な説明及び変動額の内訳を記載することが考えられる。なお、会計基準の適用開始による資産除去債務の変動については、その影響が重要であれば、「重要な会計処理の原則及び手続についての変更」(四半期会計基準第19項(2)及び第25項(1))として注記を行うこととなる。


INDEX

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