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財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準目次

(注)本内容は、平成17年12月8日に企業会計審議会が公表したものから「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」の部分を抜粋したものです。

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について

平成17年12月8日

企業会計審議会内部統制部会

目次

一 審議の背景

(1) 内部統制の充実の必要性

(2) 審議の経過

(3) 今後の作業

二 基準案の構成等

三 基準案の主な内容等

(1) 内部統制の基本的枠組み

(2) 財務報告に係る内部統制の評価及び報告

(3) 財務報告に係る内部統制の監査

(4) 公認会計士等による検証の水準とコスト負担の考慮

四 その他

(1) 準備期間の確保

(2) 実施基準の整備等


一 審議の背景

(1) 内部統制の充実の必要性

証券市場がその機能を十全に発揮していくためには、投資者に対して企業情報が適正に開示されることが必要不可欠となるが、昨今、有価証券報告書の開示内容など証券取引法上のディスクロージャーをめぐり不適正な事例が発生している。これらの事例を見ると、ディスクロージャーの信頼性を確保するための企業における内部統制が有効に機能しなかったのではないかといったことがうかがわれ、また、日本公認会計士協会による調査においても、会計監査について、現状では、内部統制の評価等に費やされる時間が海外に比べて少ないとのデータが報告されている。

このような状況を踏まえると、ディスクロージャーの信頼性を確保するため、開示企業における内部統制の充実を図る方策が真剣に検討されるべきであると考えられる。開示企業における内部統制の充実は、個々の開示企業に業務の適正化・効率化等を通じた様々な利益をもたらすと同時に、ディスクロージャーの全体の信頼性、ひいては証券市場に対する内外の信認を高めるものであり、開示企業を含めたすべての市場参加者に多大な利益をもたらすものである。

この点に関しては、米国においても、エンロン事件等をきっかけに企業の内部統制の重要性が認識され、企業改革法(サーベインズ=オクスリー法)において、証券取引委員会(SEC)登録企業の経営者に年次報告書の開示が適切である旨の宣誓が義務づけられるとともに、財務報告に係る内部統制の有効性を評価した内部統制報告書の作成が義務づけられ、さらに、これについて公認会計士等による監査を受けることとされている。

また、米国以外でも、英国、フランス、カナダ、韓国等において、同様の制度が導入又は導入の過程にある。

我が国では、平成16年3月期決算から、会社代表者による有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書が任意の制度として導入されており、その中では財務報告に係る内部統制システムが有効に機能していたかの確認が求められている。主要金融機関では、平成15年3月期から前倒しでこの確認書を提出しており、さらに、平成17年3月期決算において、主要金融機関を含めて二百を超える会社から確認書が提出されている。内部統制の充実を図っていくためには、この制度の一層の活用を促していくことが重要であり、また、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価及び公認会計士等による監査の義務化のあり方についても真剣に検討していくことが重要な課題となっている。

(2) 審議の経過

企業会計審議会では、平成17年1月に開催された総会において、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価の基準及び公認会計士等による検証の基準の策定について審議の開始が決定され、平成17年2月から内部統制部会において審議が進められた。当部会では、諸外国における内部統制の基準等の内容を検討するとともに、我が国会社法制との整合性等にも留意し、国際的にも説明可能で、かつ、我が国の実情にあった実効性のある基準のあり方について、審議を行った。

審議に当たって、当部会では、委員間で議論を行うことに加え、法律実務家、IT専門家、企業関係者等からヒアリングを実施し、審議の参考としている。

以上の経過を経て、7月13日、当部会では、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について、広く各界の意見を求めるため、公開草案を公表した。

当部会では、寄せられた意見を参考にして、更に審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、「財務報告に係る内部統制の評価と監査の基準案」をとりまとめた。

本基準案の公表は、@前述の有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書の制度の一層の活用を促すことに資するとともに、A財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価及び公認会計士等による監査の義務化のあり方についての検討に際して、議論のベースを提供するとの役割が期待される。

(3) 今後の作業

当部会としては、今後、関係者において、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価及び公認会計士等による監査に関し、制度面での整備について検討が進められていくことを期待している。当部会では、この状況を踏まえ、必要に応じ、本基準案に係る追加的な検討を行っていくこととしたい。

二 基準案の構成等

本報告で示した基準案は、「T内部統制の基本的枠組み」「U財務報告に係る内部統制の評価及び報告」「V財務報告に係る内部統制の監査」の3部から構成されている。「T内部統制の基本的枠組み」は、経営者が整備・運用する役割と責任を有している内部統制それ自体についての定義、概念的な枠組みを示しており、「U財務報告に係る内部統制の評価及び報告」「V財務報告に係る内部統制の監査」はそれぞれ、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価及び公認会計士等による監査の基準についての考え方を示している。

三 基準案の主な内容等

(1) 内部統制の基本的枠組み

内部統制は、基本的に、企業等の4つの目的(@業務の有効性及び効率性、A財務報告の信頼性、B事業活動に関わる法令等の遵守、C資産の保全)の達成のために企業内のすべての者によって遂行されるプロセスであり、6つの基本的要素(@統制環境、Aリスクの評価と対応、B統制活動、C情報と伝達、Dモニタリング、EITへの対応)から構成される。このうち、財務報告の信頼性を確保するための内部統制を「財務報告に係る内部統制」と定義し、本基準案では、この有効性について経営者による評価及び報告並びに公認会計士等による監査を実施する際の方法及び手続についての考え方を示している。

国際的な内部統制の枠組みとして、米国のCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)の内部統制の基本的枠組みに関する報告書(以下「COSO報告書」という。)などがあるが、本基準案においては、国際的な内部統制議論がCOSO報告書をベースとしていることにかんがみ、COSO報告書の枠組みを基本的に踏襲しつつも、我が国の実情を反映し、COSO報告書の3つの目的と5つの構成要素にそれぞれ1つずつ加え、4つの目的と6つの基本的要素としている。

すなわち、内部統制の目的に関して、我が国においては、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認のもとに行われることが重要であることから、独立させて1つの目的として明示した。また、内部統制の基本的要素に関しても、COSO報告書公表後のIT環境の飛躍的進展により、ITが組織に浸透した現状に即して「ITへの対応」を基本的要素の1つに加えている。なお、COSO報告書の構成要素という用語を基本的要素としているのは、これらの要素は例示であることを明確にしたものである。

上記の内部統制の4つの目的は相互に関連を有しており、企業等は、内部統制を整備・運用することにより、4つの目的を達成していくことになる。財務報告の信頼性との関係からみると、経営者は、自社のすべての活動及び社内のすべての従業員等の行動を把握することは困難であり、それに代わって、経営者は、企業内に有効な内部統制のシステムを整備・運用することにより、財務報告における記載内容の適正性を担保することとなる。また、内部統制システムの整備・運用を通じて財務報告の信頼性を確保していくことは、業務の有効性及び効率性の確保による情報処理コストの削減、さらには、市場における資金調達機会の拡大や資金調達コストの削減等を通じて一定のメリットを企業等にもたらすこととなる。

経営者には、内部統制の基本的要素が組み込まれたプロセスを構築し、それを適切に機能させていくことが求められている。このため、単に内部統制を整備するだけでなく、それを意図していたように機能させていくことが重要となる。

なお、具体的に内部統制をどのように整備し、運用するかは、個々の企業等が置かれた環境や事業の特性等によって異なるものであり、一律に示すことは適切でない。経営者には、それぞれの企業の状況等に応じて、内部統制の機能と役割が効果的に達成されるよう、自ら適切に工夫を行っていくことが期待される。

(2) 財務報告に係る内部統制の評価及び報告

経営者は、内部統制を整備・運用する役割と責任を有しており、財務報告に係る内部統制については、その有効性を自ら評価しその結果を外部に向けて報告することが求められる。

この評価は、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲において行うものであり、この評価範囲は、財務報告に対する金額的及び質的影響の重要性を考慮して、合理的に決定することとした。これにより、例えば、重要性の乏しい勘定科目又は重要性の乏しい子会社若しくは関連会社などは評価の対象とする必要はない。

経営者が、内部統制の有効性を評価するに当たっては、まず、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(以下「全社的な内部統制」という。)について評価を行い、その結果を踏まえて、業務プロセスに係る内部統制について評価することとしている。これは、適切な統制が全社的に機能していることかどうかについて、まず心証を得た上で、それに基づき、財務報告に係る重大な虚偽の表示につながるリスクに着眼して業務プロセスに係る内部統制を評価していくという、トップダウン型のリスク重視のアプローチを採用するものである。

経営者は、「内部統制報告書」を作成し、財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果等を記載することとした。

(3) 財務報告に係る内部統制の監査

経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価は、その評価結果が適正であるかどうかについて、当該企業等の財務諸表の監査を行っている公認会計士等(以下「監査人」という。)が監査することによって担保される。

内部統制監査と財務諸表監査が一体となって行われることにより、同一の監査証拠を双方で利用するなど効果的でかつ効率的な監査が実施されるよう、内部統制監査は、当該企業の財務諸表監査に係る監査人と同一の監査人(監査事務所のみならず、業務執行社員も同一であることを求めている。)が実施することとした。

監査人は、企業の置かれた環境等を踏まえ、経営者による内部統制の整備並びに運用状況及び評価の状況を十分に理解し、監査上の重要性を勘案して監査計画を策定する。また、監査人は、経営者による内部統制の評価の結果を監査することから、まず、経営者により決定された評価範囲の妥当性を検討し、次いで、経営者が評価を行った全社的な評価及び全社的な評価に基づく業務プロセスに係る内部統制の評価について検討する。

監査人は、経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価に対する意見等を「内部統制監査報告書」として作成し報告するが、同報告書は、原則として、財務諸表監査における監査報告書と合わせて記載することとした。

(4) 公認会計士等による検証の水準とコスト負担の考慮

内部統制に係る監査人による検証は、信頼し得る財務諸表作成の前提であると同時に、効果的かつ効率的な財務諸表監査の実施を支える経営者による内部統制の有効性の評価について検証を行うものである。また、この検証は、財務諸表監査の深度ある効率的実施を担保するためにも財務諸表の監査と一体となって行われるが、同一の監査人が、財務諸表監査と異なる水準の保証を得るために異なる手続や証拠の収集等を行うことは適当でないのみならず、同一の監査証拠を利用する際にも、保証の水準の違いから異なる判断が導き出されることは、かえって両者の監査手続を煩雑なものとすることになる。これらのことから、内部統制の有効性の評価についての検証は、「監査」の水準とすることとした。

ただし、具体的な「監査」手続等の内容を検討するに当たっては、監査人のみならず、財務諸表作成者その他の関係者にとって過度の負担にならないように留意する必要がある。このため、経営者による評価及び監査人による監査の基準の策定に当たっては、評価・監査に係るコスト負担が過大なものとならないよう、先行して制度が導入された米国における運用の状況等も検証し、具体的に以下の方策を講ずることとした。

@ トップダウン型のリスク・アプローチの活用

経営者は、内部統制の有効性の評価に当たって、まず、連結ベースでの全社的な内部統制の評価を行い、その結果を踏まえて、財務報告に係る重大な虚偽の表示につながるリスクに着眼して、必要な範囲で業務プロセスに係る内部統制を評価することとした。

A 内部統制の不備の区分

本基準では、内部統制の不備を、財務報告に与える影響に応じ「重要な欠陥」と「不備」との2つに区分することとした。米国では不備を「重要な欠陥」「重大な不備」「軽微な不備」の3つに区分していることから、財務報告への影響等についての評価手続がより複雑なものになっているとの指摘がある。

B ダイレクト・レポーティングの不採用

監査人は、経営者が実施した内部統制の評価について監査を実施し、米国で併用されているダイレクト・レポーティング(直接報告業務)は採用しないこととした。この結果、監査人は、経営者の評価結果を監査するための監査手続の実施と監査証拠等の入手を行うこととなる。

C 内部統制監査と財務諸表監査の一体的実施

内部統制監査は、財務諸表監査と同一の監査人が実施することとした。これにより、内部統制監査で得られた監査証拠及び財務諸表監査で得られた監査証拠は、双方で利用することが可能となり、効果的かつ効率的な監査の実施が期待できる。

D 内部統制監査報告書と財務諸表監査報告書の一体的作成

内部統制監査報告書については、財務諸表監査報告書と合わせて記載することを原則とした。

E 監査人と監査役・内部監査人との連携

監査人は、監査役などの監視部門と適切に連携し、必要に応じ、内部監査人の業務等を適切に利用できることとした。

なお、監査役等は、独立した立場で経営者の職務の執行について業務監査の責務を担っていることから、企業等の内部統制に係る監査を業務監査として行うとともに、大会社等においては、監査役等が会計監査人の実施した監査の方法と結果の相当性を評価することとされている。一方、本基準案で示す内部統制の監査において、会計監査人は、監査役が行った業務監査の中身自体を検討するものではないが、財務報告に係る全社的な内部統制の評価の妥当性を検討するに当たり、監査役等を含めた経営レベルの内部統制の整備及び運用状況を統制環境の一部として評価することとなる。

四 その他

(1) 準備期間の確保

財務報告に係る内部統制の評価及び監査を実施するに当たって、企業等は内部統制の整備状況の確認や必要に応じた改善等を行うこととなる。また、財務報告に係る内部統制の監査を実施する監査人においても、監査体制の整備などの対応が求められることとなる。

したがって、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の制度面での整備の検討に当たっては、企業等及び監査人において十分な準備期間が確保されるよう留意していく必要がある。

(2) 実施基準の整備等

7月13日の公開草案に対して寄せられた意見においては、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案に加えて、これを実務に適用していくとした場合のより詳細な実務上の指針(以下「実施基準」という。)の整備を求める意見が多く出された。このため、当部会では、今後、実施基準のあり方についても、併せて検討を行っていくこととしたい。

なお、財務報告の信頼性を確保していくため、開示企業における内部統制の構築は、本来、企業規模等にかかわらず求められるものである。一方で、内部統制の構築の手法等は、個々の企業等が置かれた環境、事業の特性、事業規模等に応じて異なることが考えられ、実施基準のあり方の検討等に当たっては、この点について留意していくことが必要である。


INDEX

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準目次

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