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財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準目次

(注)本内容は、平成19年2月15日企業会計審議会が公表したものから「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためオリジナルの当該基準等を確認して下さい。

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準

平成19年2月15日

企業会計審議会

目次

T.内部統制の基本的枠組み

1.内部統制の定義

2.内部統制の基本的要素

3.内部統制の限界

4.内部統制に関係を有する者の役割と責任

U.財務報告に係る内部統制の評価及び報告

1.財務報告に係る内部統制の評価の意義

2.財務報告に係る内部統制の評価とその範囲

3.財務報告に係る内部統制の評価の方法

4.財務報告に係る内部統制の報告

V.財務報告に係る内部統制の監査

1.財務諸表監査の監査人による内部統制監査の目的

2.内部統制監査と財務諸表監査の関係

3.内部統制監査の実施

4.監査人の報告


T.内部統制の基本的枠組み

本枠組みは、経営者による財務報告に係る内部統制の評価及び報告の基準と監査人による財務報告に係る内部統制の監査の基準の前提となる内部統制の概念的な枠組みを示すものである。

(注)本基準において、経営者とは、代表取締役、代表執行役などの執行機関の代表者を念頭に規定している。

1.内部統制の定義

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

○ 業務の有効性及び効率性とは、事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めることをいう。

○ 財務報告の信頼性とは、財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することをいう。

○ 事業活動に関わる法令等の遵守とは、事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することをいう。

○ 資産の保全とは、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ることをいう。

(注)内部統制の目的はそれぞれに独立しているが、相互に関連している。

内部統制の目的を達成するため、経営者は、内部統制の基本的要素が組み込まれたプロセスを整備し、そのプロセスを適切に運用していく必要がある。それぞれの目的を達成するには、すべての基本的要素が有効に機能していることが必要であり、それぞれの基本的要素は、内部統制の目的のすべてに必要になるという関係にある。

内部統制は、社内規程等に示されることにより具体化されて、組織内のすべての者がそれぞれの立場で理解し遂行することになる。また、内部統制の整備及び運用状況は、適切に記録及び保存される必要がある。

なお、具体的に内部統制をどのように整備し、運用するかについては、個々の組織が置かれた環境や事業の特性等によって異なるものであり、一律に示すことはできないが、経営者をはじめとする組織内のすべての者が、ここに示した内部統制の機能と役割を効果的に達成し得るよう工夫していくべきものである?/p>

2.内部統制の基本的要素

内部統制の基本的要素とは、内部統制の目的を達成するために必要とされる内部統制の構成部分をいい、内部統制の有効性の判断の規準となる。

(1) 統制環境

統制環境とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応に影響を及ぼす基盤をいう?/p>

統制環境としては、例えば、次の事項が挙げられる。

@ 誠実性及び倫理観

A 経営者の意向及び姿勢

B 経営方針及び経営戦略

C 取締役会及び監査役又は監査委員会の有する機能

D 組織構造及び慣行

E 権限及び職責

F 人的資源に対する方針と管理

(注)財務報告の信頼性に関しては、例えば、利益計上など財務報告に対する姿勢がどのようになっているか、また、取締役会及び監査役又は監査委員会が財務報告プロセスの合理性や内部統制システムの有効性に関して適切な監視を行っているか、さらに、財務報告プロセスや内部統制システムに関する組織的、人的構成がどのようになっているかが挙げられる。

(2) リスクの評価と対応

リスクの評価と対応とは、組織目標の達成に影響を与える事象について、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価し、当該リスクへの適切な対応を行う一連のプロセスをいう。

@ リスクの評価

リスクの評価とは、組織目標の達成に影響を与える事象について、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価するプロセスをいう。

リスクの評価に当たっては、組織の内外で発生するリスクを、組織全体の目標に関わる全社的なリスクと組織の職能や活動単位の目標に関わる業務別のリスクに分類し、その性質に応じて、識別されたリスクの大きさ、発生可能性、頻度等を分析し、当該目標への影響を評価する。

A リスクへの対応

リスクへの対応とは、リスクの評価を受けて、当該リスクへの適切な対応を選択するプロセスをいう?/p>

リスクへの対応に当たっては、評価されたリスクについて、その回避、低減、移転又は受容等、適切な対応を選択する?/p>

(注)財務報告の信頼性に関しては、例えば、新製品の開発、新規事業の立ち上げ、主力製品の製造販売等に伴って生ずるリスクは、組織目標の達成を阻害するリスクのうち、基本的には、業務の有効性及び効率性に関連するものではあるが、会計上の見積り及び予測等、結果として、財務報告上の数値に直接的な影響を及ぼす場合が多い。したがって、これらのリスクが財務報告の信頼性に及ぼす影響等を適切に識別、分析及び評価し、必要な対応を選択していくことが重要になる。

(3) 統制活動

統制活動とは、経営者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続をいう。

統制活動には、権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続が含まれる。このような方針及び手続は、業務のプロセスに組み込まれるべきものであり、組織内のすべての者において遂行されることにより機能するものである?/p>

(注)財務報告の信頼性に関しては、財務報告の内容に影響を及ぼす可能性のある方針及び手続が、経営者の意向どおりに実行されていることを確保すべく、例えば、明確な職務の分掌、内部牽制、並びに継続記録の維持及び適時の実地検査等の物理的な資産管理の活動等を整備し、これを組織内の各レベルで適切に分析及び監視していくことが重要になる。

(4) 情報と伝達

情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう。組織内のすべての者が各々の職務の遂行に必要とする情報は、適時かつ適切に、識別、把握、処理及び伝達されなければならない。また、必要な情報が伝達されるだけでなく、それが受け手に正しく理解され、その情報を必要とする組織内のすべての者に共有されることが重要である。

一般に、情報の識別、把握、処理及び伝達は、人的及び機械化された情報システムを通して行われる。

@ 情報

組織内のすべての者は、組織目標を達成するため及び内部統制の目的を達成するため、適時かつ適切に各々の職務の遂行に必要な情報を識別し、情報の内容及び信頼性を十分に把握し、利用可能な形式に整えて処理することが求められる。

A 伝達

イ. 内部伝達

組織目標を達成するため及び内部統制の目的を達成するため、必要な情報が適時に組織内の適切な者に伝達される必要がある。経営者は、組織内における情報システムを通して、経営方針等を組織内のすべての者に伝達するとともに、重要な情報が、特に、組織の上層部に適時かつ適切に伝達される手段を確保する必要がある?/p>

ロ. 外部伝達

法令による財務情報の開示等を含め、情報は組織の内部だけでなく、組織の外部に対しても適時かつ適切に伝達される必要がある。また、顧客など、組織の外部から重要な情報が提供されることがあるため、組織は外部からの情報を適時かつ適切に識別、把握及び処理するプロセスを整備する必要がある。

(注)財務報告の信頼性に関しては、例えば、情報について、財務報告の中核をなす会計情報につき、経済活動を適切に、認識、測定し、会計処理するための一連の会計システムを構築することであり、また、伝達について、かかる会計情報を適時かつ適切に、組織内外の関係者に報告するシステムを確保することが挙げられる。

(5) モニタリング

モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいう。モニタリングにより、内部統制は常に監視、評価及び是正されることになる。モニタリングには、業務に組み込まれて行われる日常的モニタリング及び業務から独立した視点から実施される独立的評価がある。両者は個別に又は組み合わせて行われる場合がある。

@ 日常的モニタリング

日常的モニタリングは、内部統制の有効性を監視するために、経営管理や業務改善等の通常の業務に組み込まれて行われる活動をいう。

A 独立的評価

独立的評価は、日常的モニタリングとは別個に、通常の業務から独立した視点で、定期的又は随時に行われる内部統制の評価であり、経営者、取締役会、監査役又は監査委員会、内部監査等を通じて実施されるものである。

B 評価プロセス

内部統制を評価することは、それ自体一つのプロセスである。内部統制を評価する者は、組織の活動及び評価の対象となる内部統制の各基本的要素を予め十分に理解する必要がある。

C 内部統制上の問題についての報告

日常的モニタリング及び独立的評価により明らかになった内部統制上の問題に適切に対処するため、当該問題の程度に応じて組織内の適切な者に情報を報告する仕組みを整備することが必要である。この仕組みには、経営者、取締役会、監査役等に対する報告の手続が含まれる。

(注)財務報告の信頼性に関しては、例えば、日常的モニタリングとして、各業務部門において帳簿記録と実際の製造・在庫ないし販売数量等との照合を行うことや、定期的に実施される棚卸手続において在庫の残高の正確性及び網羅性を関連業務担当者が監視することなどが挙げられる。また、独立的評価としては、企業内での監視機関である内部監査部門及び監査役ないし監査委員会等が、財務報告の一部ないし全体の信頼性を検証するために行う会計監査などが挙げられる。

(6) ITへの対応

ITへの対応とは、組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のITに対し適切に対応することをいう。

ITへの対応は、内部統制の他の基本的要素と必ずしも独立に存在するものではないが、組織の業務内容がITに大きく依存している場合や組織の情報システムがITを高度に取り入れている場合等には、内部統制の目的を達成するために不可欠の要素として、内部統制の有効性に係る判断の規準となる。

ITへの対応は、IT環境への対応とITの利用及び統制からなる。

@ IT環境への対応

IT環境とは、組織が活動する上で必然的に関わる内外のITの利用状況のことであり、社会及び市場におけるITの浸透度、組織が行う取引等におけるITの利用状況、及び組織が選択的に依拠している一連の情報システムの状況等をいう。IT環境に対しては、組織目標を達成するために、組織の管理が及ぶ範囲において予め適切な方針と手続を定め、それを踏まえた適切な対応を行う必要がある。

IT環境への対応は、単に統制環境のみに関連づけられるものではなく、個々の業務プロセスの段階において、内部統制の他の基本的要素と一体となって評価される。

A ITの利用及び統制

ITの利用及び統制とは、組織内において、内部統制の他の基本的要素の有効性を確保するためにITを有効かつ効率的に利用すること、並びに組織内において業務に体系的に組み込まれてさまざまな形で利用されているITに対して、組織目標を達成するために、予め適切な方針及び手続を定め、内部統制の他の基本的要素をより有効に機能させることをいう。

ITの利用及び統制は、内部統制の他の基本的要素と密接不可分の関係を有しており、これらと一体となって評価される。また、ITの利用及び統制は、導入されているITの利便性とともにその脆弱性及び業務に与える影響の重要性等を十分に勘案した上で、評価されることになる。

(注)財務報告の信頼性に関しては、ITを度外視しては考えることのできない今日の企業環境を前提に、財務報告プロセスに重要な影響を及ぼすIT環境への対応及び財務報告プロセス自体に組み込まれたITの利用及び統制を適切に考慮し、財務報告の信頼性を担保するために必要な内部統制の基本的要素を整備することが必要になる。例えば、統制活動について見ると、企業内全体にわたる情報処理システムが財務報告に係るデータを適切に収集し処理するプロセスとなっていることを確保すること、あるいは、各業務領域において利用されるコンピュータ等のデータが適切に収集、処理され、財務報告に反映されるプロセスとなっていることを確保すること等が挙げられる。

3.内部統制の限界

内部統制は、次のような固有の限界を有するため、その目的の達成にとって絶対的なものではないが、各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである。

(1) 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。

(2) 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。

(3) 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。

(4) 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。

4.内部統制に関係を有する者の役割と責任

(1) 経営者

経営者は、組織のすべての活動について最終的な責任を有しており、その一環として、取締役会が決定した基本方針に基づき内部統制を整備及び運用する役割と責任がある。

経営者は、その責任を果たすための手段として、社内組織を通じて内部統制の整備及び運用(モニタリングを含む。)を行う。

経営者は、組織内のいずれの者よりも、統制環境に係る諸要因及びその他の内部統制の基本的要素に影響を与える組織の気風の決定に大きな影響力を有している。

(2) 取締役会

取締役会は、内部統制の整備及び運用に係る基本方針を決定する。

取締役会は、経営者の業務執行を監督することから、経営者による内部統制の整備及び運用に対しても監督責任を有している。

取締役会は、「全社的な内部統制」の重要な一部であるとともに、「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部である。

(3) 監査役又は監査委員会

監査役又は監査委員会は、取締役及び執行役の職務の執行に対する監査の一環として、独立した立場から、内部統制の整備及び運用状況を監視、検証する役割と責任を有している。

(4) 内部監査人

内部監査人は、内部統制の目的をより効果的に達成するために、内部統制の基本的要素の一つであるモニタリングの一環として、内部統制の整備及び運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す職務を担っている。

(注)本基準において、内部監査人とは、組織内の所属の名称の如何を問わず、内部統制の整備及び運用状況を検討、評価し、その改善を促す職務を担う者及び部署をいう。

(5) 組織内のその他の者

内部統制は、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスであることから、上記以外の組織内のその他の者も、自らの業務との関連において、有効な内部統制の整備及び運用に一定の役割を担っている。

U.財務報告に係る内部統制の評価及び報告

1.財務報告に係る内部統制の評価の意義

経営者は、内部統制を整備及び運用する役割と責任を有している。特に、財務報告の信頼性を確保するため、「内部統制の基本的枠組み」において示された内部統制のうち、財務報告に係る内部統制については、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、その有効性を自ら評価しその結果を外部に向けて報告することが求められる。

なお、本基準において、次の用語は以下の意味で使われる。

(1) 「財務報告」とは、財務諸表及び財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等に係る外部報告をいう。

(2) 「財務報告に係る内部統制」とは、財務報告の信頼性を確保するための内部統制をいう。

(3) 「財務報告に係る内部統制が有効である」とは、当該内部統制が適切な内部統制の枠組みに準拠して整備及び運用されており、当該内部統制に重要な欠陥がないことをいう。

(4) 「重要な欠陥」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備をいう。

2.財務報告に係る内部統制の評価とその範囲

(1) 財務報告に係る内部統制の有効性の評価

経営者は、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲について、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行わなければならない。

また、経営者は、評価に先立って、予め財務報告に係る内部統制の整備及び運用の方針及び手続を定め、それらの状況を記録し保存しておかなければならない。

なお、財務報告に係る内部統制の有効性の評価は、原則として連結ベースで行うものとする。

(注)外部に委託した業務の内部統制については評価範囲に含める。

(2) 評価の範囲の決定

経営者は、内部統制の有効性の評価に当たって、財務報告に対する金額的及び質的影響の重要性を考慮し、以下の事項等に関して合理的に評価の範囲を決定し、当該内部統制の評価の範囲に関する決定方法及び根拠等を適切に記録しなければならない。

○ 財務諸表の表示及び開示

○ 企業活動を構成する事業又は業務

○ 財務報告の基礎となる取引又は事象

○ 主要な業務プロセス

これらの事項については、重要な事業拠点の選定を踏まえ、財務諸表の表示及び開示について、金額的及び質的影響の重要性の観点から、評価の範囲を検討する。

この検討結果に基づいて、企業活動を構成する事業又は業務、財務報告の基礎となる取引又は事象、及び主要な業務プロセスについて、財務報告全体に対する金額的及び質的影響の重要性を検討し、合理的な評価の範囲を決定する。

(注)「財務諸表の表示及び開示」については、例えば、財務諸表における勘定科目ごとに、金額的影響の重要性の観点から一定金額を設定し、評価の範囲を検討するとともに、質的影響の重要性の観点から、財務諸表に対する影響の程度を勘案し、評価の範囲に必ず含めなければならない勘定科目を決定することが考えられる。なお、いずれかの重要性に該当する場合には、内部統制の評価の範囲に含める。

さらに、これに加えて、「企業活動を構成する事業又は業務」以下の事項に関しては、「財務諸表の表示及び開示」について検討した評価の範囲との関連性と財務報告全体に対する金額的及び質的影響の重要性を勘案し、合理的な評価の範囲を決定することとなる。

3.財務報告に係る内部統制の評価の方法

(1) 経営者による内部統制評価

経営者は、有効な内部統制の整備及び運用の責任を負う者として、財務報告に係る内部統制を評価する。経営者は、内部統制の評価に当たって、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(以下「全社的な内部統制」という。)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、業務プロセスに組み込まれ一体となって遂行される内部統制(以下「業務プロセスに係る内部統制」という。)を評価しなければならない。

なお、経営者による内部統制評価は、期末日を評価時点として行うものとする。

(注)企業において具体的にどのような内部統制を整備及び運用するかは、個々の企業の置かれた環境や事業の特性等によって様々である。経営者は、内部統制の枠組み及び評価の基準を踏まえて、それぞれの企業の状況等に応じて自ら適切に内部統制を整備及び運用するものとする。

(2) 全社的な内部統制の評価

経営者は、全社的な内部統制の整備及び運用状況、並びに、その状況が業務プロセスに係る内部統制に及ぼす影響の程度を評価する。その際、経営者は、組織の内外で発生するリスク等を十分に評価するとともに、財務報告全体に重要な影響を及ぼす事項を十分に検討する。例えば、全社的な会計方針及び財務方針、組織の構築及び運用等に関する経営判断、経営レベルにおける意思決定のプロセス等がこれに該当する。

(3) 業務プロセスに係る内部統制の評価

経営者は、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、評価対象となる内部統制の範囲内にある業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点(以下「統制上の要点」という。)を選定し、当該統制上の要点について内部統制の基本的要素が機能しているかを評価する。

(4) 内部統制の有効性の判断

経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行った結果、統制上の要点等に係る不備が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い場合は、当該内部統制に重要な欠陥があると判断しなければならない。

(5) 内部統制の重要な欠陥の是正

経営者による評価の過程で発見された財務報告に係る内部統制の不備及び重要な欠陥は、適時に認識し、適切に対応される必要がある。

重要な欠陥が発見された場合であっても、それが報告書における評価時点(期末日)までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効であると認めることができる。

(注)期末日後に実施した是正措置については、報告書に付記事項として記載できる。

(6) 評価範囲の制約

経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性を評価するに当たって、やむを得ない事情により、内部統制の一部について十分な評価手続を実施できない場合がある。

その場合には、当該事実が財務報告に及ぼす影響を十分に把握した上で、評価手続を実施できなかった範囲を除外して財務報告に係る内部統制の有効性を評価することができる。

(注)やむを得ない事情により十分な評価手続が実施できなかった場合としては、例えば、期末日直前における他企業の買収等により、当該企業に係る内部統制の有効性について十分な評価手続を実施できなかった場合等が考えられる。

(7) 評価手続等の記録及び保存

経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価手続及びその評価結果、並びに発見した不備及びその是正措置に関して、記録し保存しなければならない。

4.財務報告に係る内部統制の報告

(1) 経営者による内部統制の報告

経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価に関する報告書(以下「内部統制報告書」という。)を作成するものとする。

(2) 内部統制報告書の記載項目

内部統制報告書には、次の事項を記載する。

@ 整備及び運用に関する事項

A 評価の範囲、評価時点及び評価手続

B 評価結果

C 付記事項

(3) 整備及び運用に関する事項

@ 財務報告及び財務報告に係る内部統制に責任を有する者の氏名

A 経営者が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨B 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した一般に公正妥当と認められる内部統制の枠組み

C 内部統制の固有の限界

(4) 評価の範囲、評価時点及び評価手続

@ 財務報告に係る内部統制の評価の範囲(範囲の決定方法及び根拠を含む。)

A 財務報告に係る内部統制の評価が行われた時点

B 財務報告に係る内部統制の評価に当たって、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠した旨

C 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要

(5) 評価結果

財務報告に係る内部統制の評価結果の表明には、以下の方法がある。

@ 財務報告に係る内部統制は有効である旨

A 評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨、並びに実施できなかった評価手続及びその理由

B 重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨、並びにその重要な欠陥の内容及びそれが是正されない理由

C 重要な評価手続が実施できなかったため、財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できない旨、並びに実施できなかった評価手続及びその理由

(6) 付記事項

@ 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象

A 期末日後に実施した重要な欠陥に対する是正措置等 

V.財務報告に係る内部統制の監査

1.財務諸表監査の監査人による内部統制監査の目的

経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果に対する財務諸表監査の監査人による監査(以下「内部統制監査」という。)の目的は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、内部統制の有効性の評価結果をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人自らが入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。

なお、内部統制報告書に対する意見は、内部統制の評価に関する監査報告書(以下「内部統制監査報告書」という。)により表明する。

内部統制報告書が適正である旨の監査人の意見は、内部統制報告書には、重要な虚偽の表示がないということについて、合理的な保証を得たとの監査人の判断を含んでいる。

合理的な保証とは、監査人が意見を表明するために十分かつ適切な証拠を入手したことを意味している。

2.内部統制監査と財務諸表監査の関係

内部統制監査は、原則として、同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって行われるものである。内部統制監査の過程で得られた監査証拠は、財務諸表監査の内部統制の評価における監査証拠として利用され、また、財務諸表監査の過程で得られた監査証拠も内部統制監査の証拠として利用されることがある?/p>

(注)ここで「同一の監査人」とは、監査事務所のみならず、業務執行社員も同一であることを意味している。

一般に、財務報告に係る内部統制に重要な欠陥があり有効でない場合、財務諸表監査において、監査基準の定める内部統制に依拠した通常の試査による監査は実施できないと考えられる。

監査人は、内部統制監査を行うに当たっては、本基準の他、「監査基準」の一般基準及び「監査に関する品質管理基準」を遵守するものとする?/p>

3.内部統制監査の実施

(1) 監査計画の策定

監査人は、企業の置かれた環境や事業の特性等を踏まえて、経営者による内部統制の整備及び運用状況並びに評価の状況を十分に理解し、監査上の重要性を勘案して監査計画を策定しなければならない。

監査人は、監査計画の前提として把握した事象や状況が変化した場合、あるいは監査の実施過程で内部統制の不備及び重要な欠陥を発見した場合には、内部統制の改善を評価する手続を実施するなど、適時に監査計画を修正しなければならない。

(2) 評価範囲の妥当性の検討

監査人は、経営者により決定された内部統制の評価の範囲の妥当性を判断するために、経営者が当該範囲を決定した方法及びその根拠の合理性を検討しなければならない。

特に、監査人は、経営者がやむを得ない事情により、内部統制の一部について十分な評価手続を実施できなかったとして、評価手続を実施できなかった範囲を除外した内部統制報告書を作成している場合には、経営者が当該範囲を除外した事情が合理的であるかどうか及び当該範囲を除外することが財務諸表監査に及ぼす影響について、十分に検討しなければならない。

(3) 全社的な内部統制の評価の検討

監査人は、経営者による全社的な内部統制の評価の妥当性について検討する。

監査人は、この検討に当たって、取締役会、監査役又は監査委員会、内部監査等、経営レベルにおける内部統制の整備及び運用状況について十分に考慮しなければならない。

(4) 業務プロセスに係る内部統制の評価の検討

監査人は、経営者による業務プロセスに係る内部統制の評価の妥当性について検討する。監査人は、この検討に当たって、経営者による全社的な内部統制の評価の状況を勘案し、業務プロセスを十分に理解した上で、経営者が統制上の要点を適切に選定しているかを評価しなければならない。

監査人は、経営者が評価した個々の統制上の要点について、内部統制の基本的要素が適切に機能しているかを判断するため、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等の監査要点に適合した監査証拠を入手しなければならない。

なお、業務プロセスにおける内部統制の基本的要素が機能しているかどうかを判断するに当たっては、内部統制の整備及び運用状況(ITへの対応を含む。)についても十分に検討しなければならない。

(5) 内部統制の重要な欠陥等の報告と是正

監査人は、内部統制監査の実施において内部統制の重要な欠陥を発見した場合には、経営者に報告して是正を求めるとともに、当該重要な欠陥の是正状況を適時に検討しなければならない。また、監査人は、当該重要な欠陥の内容及びその是正結果を取締役会及び監査役又は監査委員会に報告しなければならない。

監査人は、内部統制の不備を発見した場合も、適切な者に報告しなければならない。

監査人は、内部統制監査の結果について、経営者、取締役会及び監査役又は監査委員会に報告しなければならない。

(注)監査人は、内部統制監査の過程で発見された内部統制の重要な欠陥については、会社法監査の終了日までに、経営者、取締役会及び監査役又は監査委員会に報告することが必要になると考えられる。

(6) 不正等の報告

監査人は、内部統制監査の実施において不正又は法令に違反する重大な事実を発見した場合には、経営者、取締役会及び監査役又は監査委員会に報告して適切な対応を求めるとともに、内部統制の有効性に及ぼす影響の程度について検討しなければならない。

(7) 監査役又は監査委員会との連携

監査人は、効果的かつ効率的な監査を実施するために、監査役又は監査委員会との連携の範囲及び程度を決定しなければならない。

(8) 他の監査人等の利用

監査人は、他の監査人によって行われた内部統制監査の結果を利用する場合には、当該他の監査人によって行われた内部統制監査の結果の重要性及び他の監査人に対する信頼性の程度を勘案して、他の監査人の実施した監査が適切であるかを評価し、他の監査人の実施した監査の結果を利用する程度及び方法を決定しなければならない。

監査人は、内部統制の基本的要素であるモニタリングの一部をなす企業の内部監査の状況を評価した上で、内部監査の業務を利用する範囲及び程度を決定しなければならない。

4.監査人の報告

(1) 意見の表明

監査人は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠し、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、内部統制監査報告書により意見を表明するものとする。なお、当該意見は、期末日における財務報告に係る内部統制の有効性の評価について表明されるものとする。

(注)期末日までに重要な欠陥が是正されている場合には、適正意見が表明される。また、期末日後に重要な欠陥が是正された場合には、内部統制監査報告書に追記情報として記載する。

(2) 内部統制監査報告書の記載区分

監査人は、内部統制監査報告書に、内部統制監査の対象、実施した内部統制監査の概要及び内部統制報告書に対する意見を明瞭かつ簡潔に記載しなければならない。ただし、意見を表明しない場合には、その旨を内部統制監査報告書に記載しなければならない。

監査人は、内部統制報告書が適正であると判断し、その判断に関して説明を付す必要がある事項等を内部統制監査報告書において情報として追記する場合には、意見の表明とは明確に区別しなければならない。なお、内部統制監査報告書は、原則として、財務諸表監査における監査報告書に合わせて記載するものとする。

(3) 内部統制監査報告書の記載事項

監査人は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠し、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見(この場合の意見を「無限定適正意見」という。)を表明しなければならない。

なお、監査人は、内部統制報告書において、経営者が財務報告に係る内部統制に重要な欠陥がある旨及びそれが是正されない理由を記載している場合において、当該記載が適正であると判断して意見を表明する場合には、当該重要な欠陥及びそれが是正されない理由、並びに当該重要な欠陥が財務諸表監査に及ぼす影響を内部統制監査報告書に追記しなければならない?/p>

監査人は、無限定適正意見を表明する場合には、内部統制監査報告書に次の記載を行うものとする。

@ 内部統制監査の対象

イ. 内部統制監査の範囲

ロ. 財務報告に係る内部統制の整備及び運用並びに内部統制報告書の作成の責任は経営者にあること

ハ. 内部統制監査に対する監査人の責任は独立の立場から内部統制報告書に対する意見を表明することにあること

ニ. 内部統制の固有の限界

A 実施した内部統制監査の概要

イ. 内部統制監査に当たって、監査人が一般に公正妥当と認められる内部統制の監査の基準に準拠して監査を実施した旨

ロ. 内部統制監査において実施した監査手続の概要

ハ. 内部統制監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たこと

B 内部統制報告書に対する監査人の意見

イ. 内部統制報告書における経営者の評価結果

ロ. 内部統制報告書が一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠し、財務報告に係る内部統制の評価結果について、すべての重要な点において適正に表示していると認められること

(4) 意見に関する除外

監査人は、内部統制報告書において、経営者が決定した評価範囲、評価手続、及び評価結果に関して不適切なものがあり、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が内部統制報告書を全体として虚偽の表示に当たるとするほどには重要でないと判断したときは、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、内部統制報告書に対する意見において、除外した不適切な事項、及び財務諸表監査に及ぼす影響について記載しなければならない。

監査人は、内部統制報告書において、経営者が決定した評価範囲、評価手続、及び評価結果に関して著しく不適切なものがあり、内部統制報告書が全体として虚偽の表示に当たると判断した場合には、内部統制報告書が不適正である旨の意見を表明しなければならない。この場合には、内部統制報告書が不適正である旨及びその理由、並びに財務諸表監査に及ぼす影響について記載しなければならない。

(5) 監査範囲の制約

監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が内部統制報告書に対する意見表明ができないほどには重要でないと判断したときは、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、実施した監査の概要において実施できなかった監査手続を記載し、内部統制報告書に対する意見において当該事項が財務諸表監査に及ぼす影響について記載しなければならない。

監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、内部統制報告書に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることができなかったときは、意見を表明してはならない。この場合には、内部統制報告書に対する意見を表明しない旨及びその理由を記載しなければならない。

(6) 追記情報

監査人は、次に掲げる事項を内部統制監査報告書に情報として追記するものとする。

@ 経営者が、内部統制報告書に財務報告に係る内部統制に重要な欠陥がある旨及びそれが是正されない理由を記載している場合において、当該記載が適正であると判断して無限定適正意見を表明するときは、当該重要な欠陥及びそれが是正されない理由、並びに当該重要な欠陥が財務諸表監査に及ぼす影響

A 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象

B 期末日後に実施された是正措置等

C 経営者の評価手続の一部が実施できなかったことについて、やむを得ない事情によると認められるとして無限定適正意見を表明する場合において、十分な評価手続を実施できなかった範囲及びその理由


INDEX

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準目次

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