1 ヘッジ会計とは
ヘッジ会計とは、ヘッジ手段であるデリバティブ取引とヘッジ対象となる取引の損益を同一期間に認識しようとするもので、一定の条件を満たしたヘッジ取引について、ヘッジ対対象となる取引の損益が認識されるまで、デリバティブ取引の損益認識を繰り延べるものである。
2 ヘッジ取引とは
ヘッジ取引とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動を相殺するか、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避することにより、ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動、金利変動及び為替変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいう。
ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段とのそれぞれに生じる損益が互いに相殺されるか又はヘッジ手段によりヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係になければならない。
なお、ヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合は、個々の資産又は負債が共通の相場変動等による損失の可能性にさらされており、かつ、その相場変動等に対して同様に反応することが予想されるものでなければならない。
3 ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象
ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債で、当該資産又は負債に係る相場変動等が評価に反映されていないもの、相場変動等が評価に反映されているが評価差額が損益として処理されないもの若しくは当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものである。なお、ヘッジ対象には、予定取引
(※)により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる。
※ 予定取引とは、未履行の確定契約に係る取引及び契約は成立していないが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が極めて高い取引をいう。
4 ヘッジ会計の要件
ヘッジ取引にヘッジ会計が適用されるのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。
(1) ヘッジ取引時の要件
ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、取引時に、次のいずれかによって客観的に認められること
@ 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること
A 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること
(2) ヘッジ取引時以降の要件
ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること
5 ヘッジ会計の方法
(1) ヘッジ取引に係る損益認識時点
ヘッジ会計は、原則として、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法による。
ただし、ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識することもできる。
(2) ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときの会計処理
ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。
ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額について、ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積もり当期の損失として処理しなければならない。
(3) ヘッジ会計の終了
ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の損益として処理しなければならない。また、ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときにおいても同様に処理する。
6 参考資料
金融商品に係る会計基準 |