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会計基準結論の背景適用指針│設例│目次

 

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成20年12月26日に公表した「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」から「設例」部分を抜粋したものです。「目的・会計基準・結論の背景」部分は別に記載してあります。

なお、オリジナルとは異なる表現をしている部分や記載を省略した部分があります。実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの当該設例等を確認してください。

企業会計基準適用指針第10号

企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針

(設例)

平成17年12月27日

改正平成18年12月22日

改正平成19年11月15日

最終改正平成20年12月26日

企業会計基準委員会

 

<設例全般の留意点について>

・以下の設例は、本適用指針で示された内容について理解に資するため、参考として示されたものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることとなる。

・簡便化のため、特に断りのない限り、税効果は考慮していない。

・払込資本と表記している箇所は、貸借対照表項目に置き換えると資本金又は資本剰余金(資本準備金又はその他資本剰余金)となる。具体的にどの項目を増加させるかは会社法の定めによることになる。

目次

適用指針の部分は別に記載してあります。 

取得の会計処理

[設例4] 取得原価の算定−段階取得(取得が複数の取引により達成された場合)の会計処理(取得企業が被取得企業の株式を保有している場合)

[設例5] 取得原価の算定−条件付取得対価の会計処理

[設例6] 取得原価の配分−時価が一義的に定まりにくい資産への配分額

[設例7] 取得原価の配分−被取得企業においてヘッジ会計が適用されていた場合

[設例8] 取得原価の配分−暫定的な会計処理

[設例9] 取得企業の増加資本の会計処理−新株の発行と自己株式の処分を併用した場合

[設例10] 逆取得となる吸収合併の会計処理

[設例11] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)−分離先企業が新たに子会社となる場合

[設例11-1] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合−吸収分割による場合

[設例11-2] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合−共同新設分割による場合

[設例11-3] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

[設例11-4] 子会社が他の子会社に吸収分割により事業を移転する場合

[設例12] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)−分離先企業が関連会社となる場合

[設例12-1] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合

[設例12-2] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有している場合

[設例12-3] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を関連会社株式として保有している場合

[設例13] 分離元企業の会計処理(受取対価:現金等の財産と分離先企業の株式の場合)−分離先企業が関連会社である場合

[設例14] 取得−株式交換完全親会社の会計処理

[設例14-1] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式を保有していない場合

[設例14-2] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

[設例14-3] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式を、株式交換完全親会社とその子会社がいずれもその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

[設例15] 取得−株式移転設立完全親会社の会計処理

共同支配企業の形成の会計処理

[設例18] 共同支配企業の形成−子会社同士の合併の会計処理

[設例19] 共同支配企業の形成−会社分割(共同新設分割)の会計処理

共通支配下の取引の会計処理

[設例20] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理−買収により取得した子会社を合併した場合

[設例21] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理−過年度に親会社が子会社に資産を売却している場合

[設例22] 子会社が親会社を吸収合併した場合の会計処理

[設例23] 同一の株主(個人)により支配されている企業同士の合併の会計処理

[設例24] 会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理

[設例25] 分割型の会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理

[設例26] 事業譲渡又は会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の会計処理

[設例26-1] 移転に係る対価が現金等の財産のみである場合

[設例26-2] 移転に係る対価が子会社株式のみである場合

[設例26-3] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合−分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を上回る場合

[設例26-4] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合−分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を下回る場合

[設例27] 株式交換により親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合の会計処理

[設例28] 株式移転により親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の会計処理

[設例29] 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理

[設例29-1] 合併の対価が現金等の財産のみである場合

[設例29-2] 合併の対価が子会社株式のみである場合

[設例29-3] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合−結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合(1)

[設例29-4] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合−結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合(2)

[設例29-5] 子会社とその子会社との合併(子会社と孫会社との合併)

結合当事企業の株主に係る会計処理

[設例30] 被結合企業の株主に係る会計処理−受取対価が結合企業の株式のみの場合

[設例31] 被結合企業の株主に係る会計処理−受取対価が現金等の財産と結合企業の株式の場合

税効果会計

[設例32] 取得とされた吸収合併の取得企業(吸収合併存続会社)の税効果会計

[設例33] 取得とされた株式移転における株式移転設立完全親会社の税効果会計

[設例35] 共通支配下の取引における吸収合併存続会社の税効果会計

[設例36] 事業分離日の属する事業年度の前期末の分離元企業における繰延税金資産の回収可能性

[設例37] 事業分離日の分離元企業における税効果会計の適用(投資が継続する場合)

付録:フローチャートは省略してあります。


[設例1] 削除

[設例2] 削除

[設例3] 削除

[設例4] 取得原価の算定−段階取得(取得が複数の取引により達成された場合)の会計処理(取得企業が被取得企業の株式を保有している場合)

1. 被取得企業の株式をその他有価証券に分類していた場合

(1) 前提条件

@ A社(公開企業 決算日3月31日)とB社(公開企業)は次の条件で合併に合意した。

・吸収合併存続会社:A社、吸収合併消滅会社:B社

・合併期日(企業結合日):4月1日

・B社株主に対して割り当てるA社の株式数18株

A 当該企業結合は取得とされ、取得企業はA社となった。

B A社は過年度にB社株式を1株当たり4で10株(B社の議決権比率10%)取得し、その他有価証券(帳簿価額40)としている。

C その他の条件

・合併期日(企業結合日)におけるA社の株価:1株当たり30

・合併期日(企業結合日)におけるB社の株価:1株当たり6

・決算日におけるB社の株価:1株当たり6

・合併期日(企業結合日)におけるB社の識別可能資産の時価:400

・合併に直接要した支出額(取得の対価性が認められるもの):20(合併期日(企業結合日)に現金で支払うものとする。)

(2) 企業結合日における取得企業A社の会計処理

@ 個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券評価差額金

20

B社株式

20

・期末に時価評価されているB社株式の時価評価差額(20=(@6−@4)×10株)を振り戻す。

 

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

400

払込資本(*1)

540

のれん

200

B社株式(*2)

40

 

 

現金

20

・取得原価の算定:580(取得の対価)+20(取得に直接要した支出額)=600

580(取得の対価)=540(@30(合併期日のA社の株価)×18株(B社株主に対する割当株式数))(*1)+40(企業結合日直前にA社が保有していたB社株式の帳簿価額)(*2)(第46項参照)。

・取得原価の配分額:400(企業結合日におけるB社の識別可能資産の時価を基礎として配分)

・のれんの算定:200(取得原価600と取得原価の配分額400との差額)

 

@ 連結修正仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん(*3)

20

段階取得に係る差益(*3)

20

・A社はB社株式を保有していたため、その時価60(=@6×10株)と適正な帳簿価額40との 差額20(*3)を損益とし、これに見合う金額は、のれんの修正として処理する(第46-2項参照)。

 

2. 被取得企業の株式を関連会社株式に分類していた場合(関連会社との合併)

(1) 前提条件

@ A社(公開企業 決算日3月31日)とB社(A社の関連会社)は次の条件で合併に合意した。

・吸収合併存続会社:A社、吸収合併消滅会社:B社

・合併期日(企業結合日):4月1日

・B社株主に対して割り当てるA社の株式数14株

A 当該企業結合は取得とされ、取得企業はA社となった。

B A社は過年度にB社株式を1株当たり4 で30株(B社の議決権比率30%)取得し、関連会社株式(帳簿価額120)としている。A社の連結財務諸表において、B社に対する合併期日(企業結合日)直前の持分法による評価額は150 であった。

C その他の条件

・合併期日(企業結合日)におけるA社の株価:1株当たり30

・合併期日(企業結合日)におけるB社の株価:1株当たり6

・合併期日(企業結合日)におけるB社の識別可能資産の時価:500

・合併に直接要した支出額(取得の対価性が認められるもの):20(合併期日(企業結合日)に現金で支払うものとする。)

(2) 企業結合日における取得企業A社の会計処理

@ 個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

500

払込資本(*4)

420

のれん

60

B社株式(*5)

120

 

 

現金

20

・取得原価の算定:540(取得の対価)+20(取得に直接要した支出額)=560

540(取得の対価)=420(@30(合併期日のA社の株価)×14株(B社株主に対する割当株式数))(*4)+120(企業結合日直前にA社が保有していたB社株式の帳簿価額)(*5)(第46項参照)。

・取得原価の配分額:500(企業結合日におけるB社の識別可能資産の時価を基礎として配分)

・のれんの算定:60(取得原価560と取得原価の配分額500との差額)

 

A 連結修正仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん(*6)

30

段階取得に係る差益(*6)

30

・A社は持分法適用関連会社B社と企業結合したため、持分法による評価額150と合併期日の時価180(=@6×30株)との差額30(*6)を損益とし、これに見合う金額は、のれんの修正として処理する(第46-2項参照)。

 

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん(*7)

30

B社株式(*7)

30

・合併期日(企業結合日)において消滅することとなる関連会社株式について、合併期日直前における個別財務諸表上の帳簿価額120と持分法による評価額150との差額30(*7)を、のれんの修正として会計処理する(第46-2項参照)。

 

[設例5] 取得原価の算定−条件付取得対価の会計処理

1. 将来の業績に依存する条件付取得対価の場合

(1) 前提条件

X1年9月30日、A社及びB社(いずれも公開企業で決算日は3月31日)は、A社がB社を株式交換により完全子会社化する(企業結合日はX2年4月1日)ことについて、それぞれの株主総会で承認を受けた。

企業結合契約において、X3年3月31日終了事業年度のB社の経常利益が500を上回っている場合には、A社はその時点の時価相当額が100となるA社株式をB社株主に対して追加で交付する条項が含まれていたものとする。

X3年3月31日終了事業年度のB社の経常利益は1,000となることがほぼ確実となったため、A社はB社株主に対してA社株式を追加交付することとなったとする。

なお、のれんの償却期間は10年とする。

(2) X3年3月31日のA社の連結財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん

90

未払金(*1)

100

のれん償却

10

 

 

(*1) 株式発行時に払込資本へ振り替える。

A社は、条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。追加的に認識するのれん又は負ののれんは、企業結合日(X2年4月1日)時点で認識されたものと仮定して計算し、追加認識する事業年度以前に対応する償却額は損益として処理する(第47項(1)参照)。

 

2. 特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価の場合

(1) 株式を追加交付する場合

@ 前提条件

X1年9月30日、A社及びB社(いずれも公開企業で決算日は3月31日)は、A社がB社を株式交換により完全子会社化する(企業結合日はX2年4月1日)ことについて、それぞれの株主総会で承認を受けた。

企業結合契約において、企業結合日後1年経過時点におけるA社の株価が契約に定めた株価を下回っている場合には、A社はB社株主が不利益を被らないように(当初合意した価額を維持するように)B社株主に対して追加でA社株式を発行する条項が含まれていたものとする。

X3年4月1日現在において、A社の株価が契約に定めた株価を下回っていたため、A社株式の追加交付が確実となったとする。

A X3年3月31日のA社の連結財務諸表上の会計処理

 

(仕訳なし)

企業結合の対価総額は変わらないため、会計処理は不要であり、発行する株式数を増加させるだけである。

 

(2) 社債を追加交付する場合

@ 前提条件

X2年4月1日にA社は社債(額面100、時価80)10口をB社株主に交付して、B社の発行済株式のすべてを取得したものとする。また、B社のX2年4月1日の個別貸借対照表は次のとおりであったとする。

 

B社個別貸借対照表

諸資産(時価700)

500

株主資本

500

合計

500

合計

500

 

さらに企業結合契約において、X3年3月31日現在の当該社債の時価総額が800 未満の場合、当初の合意した価額800を維持するために、A社はB社株主に対して追加で社債を交付する条項が含まれていたものとする。X3年3月31日現在において、A社の社債の時価が契約に定めた価額を下回っていたため、社債の追加交付が確実となったとする。

なお、時価により交付したことによるA社の社債の取得価額800と社債の額面1,000の差額200(社債発行差金相当額)は社債償還期間(5年)で認識(償却)するものとする。

のれんの償却期間は10年とする。

A X2年4月1日のA社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

B社株式

800

社債(*2)

800

(*2) 交付した社債の時価:@80×10口=800

 

B X2年4月1日のA社の連結修正仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

700

B社株式

800

のれん

100

 

 

C X3年3月31日のA社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

社債利息(*3)

40

社債

40

(*3) X2年4月1日交付社債に係る償却原価法による差額の認識(償却):40(=200÷5年)

 

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん償却(*4)

10

のれん

10

(*4) のれん償却:10(=100÷10年)

 

 

仕訳なし(*5)

(*5) X3年3月31日現在のA社の交付した社債10口の時価総額は500 であったため、X3年3月31日にA社は額面100(時価50)の社債6口(=(800−500)÷@50)を追加的に交付した。A社は、条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点であるX3年3月31日に、追加交付する条件付取得対価を、その時点の時価で認識することになるため、追加交付した社債に係る差額:(100−50)×6口=300をX3年3月31日現在で算定するが処理は行わず、償却原価法により社債の償還期間について、将来にわたり翌年度から認識(償却)する。

また、企業結合日(X2年4月1日)現在で交付している社債をX3年3月31日時点の時価に修正し、当該修正により生じたX3年3月31日現在の社債ディスカウントの増加額300(=(80−50)×10口)(社債発行差金相当額)について、X3年3月31日時点では処理を行わず、償却原価法により社債の残存している償還期間について、将来にわたり翌年度から認識(償却)する(第47項(2)参照)。

 

[設例6] 取得原価の配分−時価が一義的に定まりにくい資産への配分額

(1) 前提条件

A社はB社を吸収合併し、A社が取得企業とされた(取得原価を500とする。)。A社がB社から受け入れた資産に時価が一義的には定まりにくい土地が含まれており、これを評価することにより、負ののれんが多額に発生することが見込まれる。なお、その他の資産の時価は信頼性をもって評価できるものとする(ただし、簡便化のため時価と帳簿価額は等しいものとする。)。

B社の企業結合日前日の個別貸借対照表は次のとおりであった。

 

B社個別貸借対照表

売掛金

200

負債

300

棚卸資産

200

株主資本

400

土地

300

 

 

合計

700

合計

700

 

(2) 取得原価への配分額

土地に関し、仮に一定の条件の下で鑑定した場合の評価額1,200を用いて、識別可能資産及び負債へ取得原価を配分した場合の会計処理は、以下のようになる。

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

売掛金

200

負債

300

棚卸資産

200

払込資本

500

土地

1,200

負ののれん(*)

800

(*) △800=500(取得原価)−(200(売掛金)+200(棚卸資産)+1,200(土地)−300(負債))

 

このように、受け入れた資産に時価が一義的には定まりにくい土地が含まれており、これを評価することにより、負ののれんが多額に発生することが見込まれる場合、当該資産への取得原価の配分額は、負ののれんが発生しない範囲で評価した額とすることができる(第55項参照)。したがって、次のとおり、仮に一定の条件の下で鑑定した場合の評価額1,200 から負ののれんに相当する800を控除した400(=1,200−800)を土地への配分額とすることができる。

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

売掛金

200

負債

300

棚卸資産

200

払込資本

500

土地

400

 

ただし、企業結合条件の交渉過程で取得企業が利用可能な独自の情報や前提など合理的な基礎に基づき当該資産の価額を算定しており、それが取得の対価の算定にあたり考慮されている場合には、その価額を取得原価の配分額とする(第55項参照)。

 

[設例7] 取得原価の配分−被取得企業においてヘッジ会計が適用されていた場合

(1) 前提条件

@ A社はB社をX2年4月1日に吸収合併した(取得原価400)。

A A社(吸収合併存続会社)、B社(吸収合併消滅会社)とも3月決算である。当該合併は取得とされ、取得企業はA社である。

B 被取得企業B社は、変動利付の借入1,000(X1年4月1日からX4年3月31日までの期間3年間)を行っている。利払期間は4月1日から3月31日までであり、3月31日に期首の利率で後払いするものとする。

C B社は、当該借入に対応する固定金利3%支払・変動金利受取の金利スワップ契約(想定元本1,000、期間一致)をX1年4月1日に金融機関と締結し、繰延ヘッジ処理を行っていた。

D A社は、X2年4月1日に上記Cの金利スワップ契約をヘッジ指定し、繰延ヘッジを適用した。

E X2年3月31日の金利は2%、X3年3月31日の金利は3.5%であった。

F X2年3月31日の金利スワップの時価は△10、X3年3月31日の時価は5 であった。

G A社はのれんを5年で償却するものとする。

H B社の合併直前事業年度の貸借対照表は次のとおりである。

 

B社個別貸借対照表

諸資産(*1)

1,200

金利スワップ

10

 

 

借入金(*1)

1,000

 

 

株主資本

200

 

 

繰延ヘッジ損益

△10

合計

1,200

合計

1,200

(*1) 諸資産及び借入金の時価と簿価は等しいものとする。

 

(2) 取得企業A社による企業結合日(X2年4月1日)の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

1,200

金利スワップ

10

のれん

210

借入金

1,000

 

 

払込資本

400

被取得企業において繰延ヘッジ損益が計上されていても、取得企業はそれを引継ぐことはできない(第68項参照)。

 

(3) ヘッジ指定時の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

金利スワップ

10

前受利息(*2)

10

(*2) デリバティブの時価を前受利息に振り替える(第68項参照)。

 

(4) 結合事業年度末(X3年3月31日)の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

支払利息(*3)

20

現金

20

支払利息(*4)

10

現金

10

前受利息(*5)

5

受取利息

5

受取利息

5

支払利息

5

金利スワップ(*6)

5

繰延ヘッジ損益

5

のれん償却(*7)

42

のれん

42

(*3) 1,000×2%=20

(*4) 1,000×(2%−3%)=△10

(*5) 前受利息10×1年/2年(X2年4月1日〜X4年3月31日)=5

(*6) 時価の変動額:5(X3年3月31日の時価)−(△10(X2年3月31日の時価)+10((3)のヘッジ指定時の戻し))=5を繰り延べる。

(*7) のれんの償却:210×1年/5年=42

 

(5) 借入返済日(X4年3月31日)の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

支払利息(*8)

35

現金

35

現金(*9)

5

支払利息

5

前受利息

5

受取利息

5

受取利息

5

支払利息

5

繰延ヘッジ損益

5

金利スワップ

5

借入金

1,000

現金

1,000

のれん償却

42

のれん

42

(*8) 1,000×3.5%=35

(*9) 1,000×(3.5%−3%)=5

 

[設例8] 取得原価の配分−暫定的な会計処理

(1) 前提条件

@ X1年10月1日を企業結合日(合併期日)とし、A社(決算日3月31日)はB社を吸収合併した。

取得企業はA社とされ、取得原価は600 であった。

A 企業結合日(合併期日)以後の年度決算(X2年3月31日)において、B社の土地については、時価が入手できず、取得原価の配分作業が完了しなかったため、その時点において入手可能な合理的な情報(評価額300)に基づき暫定的な会計処理を行った。また、その他の資産の時価は信頼性をもって評価できるものとする(ただし、簡便化のため時価と帳簿価額は等しいものとする。)。

B B社の企業結合日(合併期日)前日の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

B社個別貸借対照表

売掛金

200

負債

300

棚卸資産

200

株主資本

400

土地

300

 

 

合計

700

合計

700

 

C その後、X2年4月1日に追加的な情報を入手し、当該土地の時価が400であると算定されたとする。なお、のれんは10年で償却するものとする。

(2) 企業結合日(合併期日)の会計処理(X1年10月1日)

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

売掛金

200

負債

300

棚卸資産

200

払込資本

600

土地(*1)

300

のれん

200

(*1) 土地への取得原価の配分は、この時点で入手可能な情報(評価額300)に基づき、暫定的に行う(第69項参照)。

 

(3) 企業結合日以後の年度決算時の会計処理(X2年3月31日)

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん償却(*2)

10

のれん

10

(*2) のれんの償却:200÷10年×1/2=10

 

(4) 暫定的な会計処理の確定時の会計処理(X2年6月30日)

暫定的な会計処理を確定させたことにより取得原価の配分額を修正した場合には、企業結合日におけるのれんの額を修正したものとして会計処理を行い、のれんを修正すべき金額については、当該確定処理を行った年度において特別損益(前期損益修正)として計上する(第70項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

土地(*3)

100

のれん

100

のれん

5

前期損益修正(*5)

5

のれん償却(*4)

2.5

のれん

2.5

(*3) 400(時価)−300(暫定的な評価額)=100

(*4) のれん(当四半期分):100÷10年×1/4=2.5

(*5) のれん償却の修正:10(X2年3月31日計上分)−100÷10年×1/2=5

 

[設例9] 取得企業の増加資本の会計処理−新株の発行と自己株式の処分を併用した場合

(1) 前提条件

@ A社とB社はX1年4月1日を企業結合日(合併期日)として合併し、A社が吸収合併存続会社となった。当該合併は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。

A 合併期日のA社株式の時価は1株当たり6 であり、交付した株式(総数100株)の時価総額は600となった。A社は、B社株主へのA社株式の交付(総数100株)にあたり、自己株式を10株(帳簿価額70)処分し、新株を90株(時価540)発行した。

B 企業結合日(合併期日)において、B社が保有するその他有価証券の時価は170(帳簿価額150)であった。なお、その他の資産は時価と帳簿価額が同じであったものとする。

C A社は、増加すべき株主資本のうち、資本金を200、資本準備金を100 増加させ、残額についてはその他資本剰余金とした。

D X1年3月31日現在のB社の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

B社個別貸借対照表

諸資産

200

資本金

150

有価証券

(帳簿価額:150)

170

資本剰余金

(資本準備金)

100

 

 

利益剰余金

100

 

 

その他有価証券評価差額金

20

合計

370

合計

370

 

(2) 企業結合日の個別財務諸表上の会計処理(X1年4月1日)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

200

自己株式(*2)

70

有価証券

170

資本金(*2)

200

のれん(*1)

230

資本剰余金(*2)

(資本準備金)

100

 

 

資本剰余金(*2)

(その他資本剰余金)

230

(*1)・取得原価:交付した株式数100株(自己株式の処分10+新株の発行90)×@6(600÷100)=600

・取得原価の配分額(識別可能資産):諸資産200+その他有価証券170=370

・のれん:取得原価600−取得原価の配分額(識別可能資産)370=230

(*2) 増加すべき株主資本の額(新株の発行と自己株式の処分の対価の額:600)から交付した自己株式の帳簿価額70を控除して算定した額を払込資本の増加として処理し、増加すべき払込資本の内訳項目は、前提条件Cにより、資本金200、資本準備金100、残額をその他資本剰余金とする(第80項参照)。

 

[設例10] 逆取得となる吸収合併の会計処理

(1) 前提条件

@ A社とB社は合併した。当該合併は、A社が吸収合併存続会社となったが、取得企業はB社とされた(逆取得)。

A 合併比率(A社:B社)は、1:2.5、合併期日のB社の株価は1株当たり40 であった。

B 発行済株式数は、A社が100株、B社が60株であった。

C A社及びB社の合併期日前日の個別貸借対照表は次のとおりであったものとする。

 

A社(吸収合併存続会社・被取得企業) 個別貸借対照表

諸資産(*1)

1,100

資本金

300

 

 

利益剰余金

800

合計

1,100

合計

1,100

(*1) 企業結合日におけるA社の諸資産の時価は1,300 であった。

 

 

B社(吸収合併消滅会社・取得企業) 個別貸借対照表

諸資産

2,000

資本金

600

 

 

利益剰余金

1,300

 

 

その他有価証券評価差額金

100

合計

2,000

合計

2,000

 

(2) A社(吸収合併存続会社)の個別財務諸表上の会計処理

A社の個別財務諸表上、B社の合併期日の前日に算定した適正な帳簿価額により資産及び負債を受け入れ、資産と負債の差額のうち、B社の株主資本の額を、原則としてA社の払込資本とし、株主資本以外の項目(評価・換算差額等など)については、適正な帳簿価額を引き継ぐ。また、B社の株主資本の額については、A社の払込資本を増加させる方法に代えて、B社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目をそのまま引き継ぐことができる(第84項(1)参照)。

なお、ここでは、B社の株主資本の額をA社の払込資本とし、その全額を資本剰余金としている。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

2,000

資本剰余金

1,900

   

その他有価証券評価差額金

100

 

この結果、合併後のA社の個別貸借対照表は以下のようになる。

 

A社個別貸借対照表

諸資産

3,100

資本金

300

 

 

資本剰余金

1,900

 

 

利益剰余金

800

 

 

その他有価証券評価差額金

100

合計

3,100

合計

3,100

 

(3) A社(吸収合併存続会社)の連結財務諸表(A社を被取得企業とした連結財務諸表)上の会計処理

@ 取得原価の算定

合併が逆取得となる場合の取得の対価となる財の時価は、A社株主が合併後の企業(結合後企業)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のB社株式を、B社が交付したものとみなして算定する(第85項(1)参照)。

・A社株主の結合後企業に対する議決権比率:

合併前A社発行済株式数 100株÷合併後A社発行済株式数(100株+60株×2.5)=40%

・この議決権比率になるように、B社が交付したとみなすB社株式の数(X株)

X÷(X+60株)=40%

X=40株

・取得原価:40株×@40=1,600

A 取得原価の配分額:企業結合日におけるA社諸資産の時価1,300

B のれん:取得原価1,600−取得原価の配分額1,300=300

のれんは、取得原価1,600 から、会計上の被取得企業であるA社から受け入れた資産及び引き受けた負債の正味の時価1,300を差し引いて算定する(第85項(2)参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

1,300

払込資本

1,600

のれん

300

 

 

 

C 増加すべき株主資本の会計処理

@で算定された取得原価1,600をB社の払込資本600に加算する。ただし、連結貸借対照表上の資本金は吸収合併存続会社A社の資本金300とし、A社の資本金300と合併直前のB社の資本金600 が異なるため、その差額300を資本剰余金に振り替える(第85項(3)参照)。

この結果、A社の連結貸借対照表は次のようになる。

 

A社連結貸借対照表

諸資産 (*2)

3,300

資本金 (*3)

300

のれん

300

資本剰余金 (*4)

1,900

 

 

利益剰余金 (*3)

1,300

 

 

その他有価証券評価差額金 (*3)

100

合計

3,600

合計

3,600

(*2) 3,300=1,300(A社諸資産の時価)+2,000(B社諸資産の帳簿価額)

(*3) 吸収合併消滅会社B社(取得企業)の合併期日の前日の財務諸表の金額を計上するため、いったん、資本金600、利益剰余金1,300、その他有価証券評価差額金100とするが、資本金については吸収合併存続会社A社の資本金300とし、差額の300(600−300)は資本剰余金へ振り替える。

(*4) 1,900=増加すべき株主資本1,600+(B社資本金600−A社資本金300)

 

[設例11] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)

−分離先企業が新たに子会社となる場合

[設例11-1]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合

−吸収分割による場合

(1) 前提条件

B社は、X1年3月31日にb事業を営むY社を80(株式100株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は80(株主資本80)、諸資産の時価は80)。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。

この結果、A社はY社の株式400株(時価800、@2)を受け取り、Y社を80%子会社とする。

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価を算定することとなる(第98項(1)参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

480

諸資産

580

評価・換算差額等

100

 

 

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

 

子会社となる分離先企業Y社の企業結合直前の貸借対照表

諸資産

100

株主資本

100

合計

100

合計

100

 

・ A社からのa事業の受入れ(逆取得に該当する。)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

580

払込資本

480

 

 

評価・換算差額等

100

 

イ 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・Y社(のb事業)にパーチェス法を適用

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*1)

50

子会社株式(*3)

160

株主資本

100

小数株主持分(*4)

30

のれん(*2)

40

 

 

(*1) 諸資産の評価差額50(=受け入れたb事業の諸資産の時価150−適正な帳簿価額100)

(*2) 分離先企業に対して投資したとみなされる額160(Y社のb事業の時価200×80%)と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本120(Y社のb事業の諸資産の時価150×80%)の差額

(*3) A社がY社のb事業の80%を取得するため、連結上パーチェス法の適用による取得原価は160(=b事業の80%に対する取得時の時価(b事業の時価200×80%又はY社の株式価格@2×80株))

(*4) 少数株主持分30(=Y社の資本(諸資産の時価を基礎にした取得原価の配分後)150×20%)

 

・支配獲得後の資本連結

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

株主資本

480

子会社株式(*6)

320

評価・換算差額等(*5)

20

小数株主持分(*7)

116

 

 

持分変動差額(*8)

64

(*5) 評価・換算差額等に係る少数株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%

(*6) 子会社株式320=事業分離による取得原価480−b事業の新規取得に要した額160

(*7) 移転したa事業に係る少数株主持分116=96(=a事業の取得原価480×20%)+20(*5)

(*8) 親会社となる分離元企業A社の連結上、分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額160(=移転したa事業の時価800×20%)と、移転した事業に係る親会社の持分の減少額96(=移転したa事業の株主資本相当額480×20%)との間に生じた差額64(貸方)は、持分変動差額として処理する。なお、当該金額は、Y社株式の取得原価480(移転したa事業に係る株主資本相当額)とこれに対応する親会社の持分544(=(移転したa事業の株主資本相当額480+b事業の時価200)×80%)との差額として算定することもできる。

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例11-2]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合

−共同新設分割による場合

(1) 前提条件

共同新設分割により、分離元企業(新設分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社のb事業(b事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100、b事業に係る諸資産の時価は150、b事業の時価は200)とともに、分離先企業(新設分割設立会社)Y社に移転する。

この結果、A社はY社の株式400株(80%)(時価800)を受け取りY社の親会社となる。なお、B社はY社の株式100株(20%)(時価200)を受け取る。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

企業結合会計基準では、新設分割による子会社の設立は、共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するとされているため、分離元企業A社の個別財務諸表上、取得する新設分割設立会社Y社の株式(子会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定することとなる(第98項(1)参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

480

諸資産

580

評価・換算差額等

100

 

 

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

・A社からのa事業の受入れ(共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するため、移転直前に付された適正な帳簿価額により計上する。)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

580

払込資本

480

   

評価・換算差額等

100

 

・B社からのb事業の受入(取得)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

150

払込資本

200

のれん

50

 

 

 

イ 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・分離先企業Y社の個別財務諸表に計上されているのれんをそのまま計上する方法による(第98項(2)Aただし書き参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

680

子会社株式

480

評価・換算差額等(*1)

20

小数株主持分(*2)

156

 

 

持分変動差額(*3)

64

(*1) 評価・換算差額等に係る少数株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%

(*2) 少数株主持分156=Y社の資本(a事業に係る評価・換算差額等を含む。)780×20%

(*3) 親会社となる分離元企業A社の連結上、移転事業に係る株主資本相当額480とこれに対応する親会社の持分544との間に差額64(貸方)が生ずる。分離元企業A社のa事業は、連結上も既に支配していたものであり、B社のb事業を少数株主から取得したと考えられることにより生じた差額64(貸方)は、支配獲得後における子会社の時価発行増資等により生じた差額と同様に、持分変動差額として処理する。

なお、新設分割設立会社Y社を連結するに際して、分離元企業A社の連結財務諸表上、パーチェス法が適用されるが、分離先企業Y社の個別財務諸表に計上されているのれんをそのまま計上する方法によるため、連結財務諸表上も50(借方)がのれんとして計上されている。

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例11-3]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

(1) 前提条件

b事業を営むY社は、株式を100株発行しており、A社が10株、B社が90株保有している。分離元企業A社は、当該Y社株式10株(取得原価は13(市場価格なし))をその他有価証券としている。なお、Y社株式取得時(X1年3月31日)のY社の諸資産の適正な帳簿価額は80(払込資本50、利益剰余金30)であり、諸資産の時価は80 であった。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は700)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(払込資本50、利益剰余金50)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。

この結果、A社はY社の株式350株(時価700)を受け取り、Y社を80%子会社とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式の取得原価を算定することとなる(第99項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

493

諸資産

580

評価・換算差額等

100

その他有価証券

13

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

 

子会社となる分離先企業Y社の企業結合直前の貸借対照表

諸資産

100

株主資本

100

合計

100

合計

100

 

・A社からのa事業の受入れ(逆取得に該当する。)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

580

払込資本

480

   

評価・換算差額等

100

 

イ 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・Y社(のb事業)にパーチェス法を適用

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(*1)

7

段階取得に係る差益(*1)

7

(*1) 連結財務諸表上、分離元企業が保有していた分離先企業の株式の事業分離日の時価を加算することになり(第99項(2)@参照)、Y社株式には市場価格がないため、Y社のb事業に係る時価200の10%である20を時価とした。A社はY社株式をその他有価証券として保有していたため、その時価と適正な帳簿価額13との差額7 は当期の段階取得に係る損益として処理する(第99項(2)@なお書き参照)。

 

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

50

子会社株式(*4)

160

株主資本(*2)

100

小数株主持分(*5)

30

のれん(*3)

40

 

 

(*2) 諸資産の評価差額50(=受け入れたb事業の諸資産の時価150−適正な帳簿価額100)

(*3) 分離先企業に対して投資したとみなされた額160(Y社のb事業の時価200の70%である140と、Y社株式10株の時価である20との合計額)と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本120(Y社のb事業の諸資産の時価150の80%)の差額

(*4) 段階取得において、連結上パーチェス法の適用による取得原価は、次の合計の160となる。

・当初10%取得分であるY社株式の時価20

・追加70%取得分である吸収分割による取得原価140(=b事業の70%に対する取得時の時価:b事業の時価200×70%又はY社の株式価格@2×70株)

(*5) 少数株主持分30(=Y社の資本(諸資産の時価を基礎にした取得原価の配分後)150×20%)の計上

 

・支配獲得後の資本連結

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

480

子会社株式(*7)

340

評価・換算差額等(*6)

20

小数株主持分(*8)

116

 

 

持分変動差額(*9)

44

(*6) 評価・換算差額等に係る少数株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%

(*7) 子会社株式340=事業分離による取得原価500(=480+20)−b事業の新規取得に要した額160(=20+140)

(*8) 移転したa事業に係る少数株主持分の増加116=96(=a事業の取得原価480×20%)+20(*6)

(*9) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額140(=移転したa事業の時価700×20%)と、移転した事業に係る親会社の持分の減少額96(=移転したa事業の株主資本相当額480×20%)との間に生ずる差額44については、持分変動差額として取り扱う。

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例11-4] 子会社が他の子会社に吸収分割により事業を移転する場合

(1) 前提条件

A社は、P社の100%子会社、B社はP社の80%子会社である。

B社は、X1年3月31日にb事業を営むY社を設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は100、発行済株式100株)。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額(株主資本相当額)は480、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。

この結果、A社はY社の株式400株(時価800、@2)を受け取り、Y社を80%子会社とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価を算定することとなる(第254-2項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

480

諸資産

480

 

A 分離先企業Y社の個別財務諸表

 

子会社となる分離先企業Y社の企業結合直前の貸借対照表

諸資産

100

株主資本

100

合計

100

合計

100

 

・A社からのa事業の受入れ(共通支配下の取引に該当する。)(第254-3項参照)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

480

払込資本

480

 

B 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・持分変動差額を認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

株主資本

580

子会社株式

480

持分変動差額(*2)

16

小数株主持分(*1)

116

(*1) Y社の資本(事業分離前100+事業分離後(受け入れた諸資産の帳簿価額)480)×20%

(*2) A社は企業集団の最上位の親会社ではないため、帳簿価額を基礎とした会計処理を行うことになる(第254-4項(1)参照)。したがって、Y社のb事業の時価(持分)である160(=200×80%)について、少数株主との取引に準じてのれん40(=160−150×80%)を認識することはせず、また、持分が減少した移転事業に係る持分変動差額64(=160−480×20%)を認識することはしない。このため、16(=480-(a事業480+b事業100)×80%))を持分変動差額として処理する。これは、評価差額40(=(150―100)×80%)と上記(のれんを認識しなかった額)40の合計80とa事業に係る減少した持分64との差額である16(借方)と同額となる。

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

C B社の個別財務諸表

・A社からのa事業の受入れに伴う関連会社株式への振替(100%→20%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

100

子会社株式

100

 

D B社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・開始仕訳と連結から持分法への移行に伴う開始仕訳の取消し(純額では影響なし)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

株主資本

100

子会社株式

100

子会社株式

100

株主資本

100

 

・持分変動差額を認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

16

持分変動差額(*3)

16

(*3) 関連会社株式の個別上の帳簿価額100と持分法評価額116(=Y社の資本(事業分離前100+事業分離後(受入れた諸資産の帳簿価額)480)×20%)との差額

 

B社は企業集団の最上位の親会社ではないため、帳簿価額を基礎とした会計処理を行うことになる(第254-4項(2)参照)。したがって、B社の連結上、A社のa事業の時価(持分)である160(=800×20%)について、持分法における部分時価評価法を適用した場合ののれん64(=160-480×20%)を認識することはせず、また、持分が減少した移転事業に係る持分変動差額80(=160-100×80%)を認識することはしない。このため、上記(のれんを認識しなかった額)64とb事業に係る減少した持分80との差額である16(貸方)を持分変動差額として処理する。

E 企業集団の最上位の親会社P社の連結財務諸表(Y社に係る部分)

<連結修正仕訳>

P社は、当該会社分割の結果、a事業に対する持分が、100%から96%(=100%×80%+20%×80%)に減少するが、b事業に対する持分は80%から96%(=80%×20%+100%×80%)へと増加する。

・持分変動差額の少数株主持分への振替

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

持分変動差額(*4)

3.2

小数株主持分(*5)

3.2

(*4) DによりB社で認識したY社に係る持分変動差額16のうち、少数株主持分に係る金額3.2(=16×20%)を振り替える。

(*5) 少数株主持分は、事業分離前の20(=b事業100×20%)と事業分離後23.2(a事業480×4%=19.2とb事業100×4%=4の合計)の差額3.2として算定することもできる。

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例12] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)

−分離先企業が関連会社となる場合

[設例12-1]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合

(1) 前提条件

X1年3月31日に、B社はb事業を営むY社を400(株式400株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は400(株主資本400)、諸資産の時価は400)。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、a事業に係る諸資産の時価は150、a事業の時価は200)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は480(株主資本480)、諸資産の時価は640、企業の時価は800)に移転する。

この結果、A社はY社の株式100株(20%)(Y社の株価@2、時価200)を受け取り、Y社を関連会社とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方(第100項参照)

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

100

諸資産

100

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

 

関連会社となる分離先企業Y社の企業結合直前の貸借対照表

諸資産

480

株主資本

480

合計

480

合計

480

 

・A社からのa事業の受入れ(取得)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

150

払込資本

200

のれん

50

 

 

 

イ 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・Y社株式20%の取得によるのれんの算定

関連会社となる分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加(20%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん32(借方)(=分離先企業に対して投資したとみなされる額160(*1)−関連会社に係る分離元企業の持分の増加額128(*2))を算定する(第100項(2)参照)。

 

(仕訳なし)

(*1) 分離先企業に対して投資したとみなされる額160=分離先企業Y社(のb事業)の時価800×20%

(*2) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額128=投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(640×20%)

 

・持分変動差額の認識

移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(80%)により生じた差額80(貸方)(=分離元企業の事業が移転されたとみなされる額160(*3)−移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額80(*4))は、持分変動差額として取り扱う(第100項(2)参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

80

持分変動差額

80

(*3) 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額160=移転したa事業の時価200×80%

(これは、(*1) 分離先企業に対して投資したとみなされる額と同額となる。)

(*4) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額80=移転したa事業の株主資本相当額100×80%

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例12-2]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有している場合

(1) 前提条件

X0年4月1日に、B社はb事業を営むY社を400(株式400株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は400(株主資本400)、諸資産の時価は400)。

X1年3月31日に、A社は当該Y社株式40株(取得原価は70)をB社から取得し、その他有価証券としている。なお、Y社株式取得時のY社の諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)であり、諸資産の時価は600 であった。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は50(株主資本相当額50)、a事業に係る諸資産の時価は80、a事業の時価は100)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は650(払込資本400、利益剰余金250)、諸資産の時価760、企業の時価は800)に移転する。

この結果、A社はY社の株式50株(時価100)を受け取り、Y社株式を関連会社株式とする。持分法適用上、のれんは5年で償却するものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方(第101項参照)

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

120

その他有価証券

70

 

 

諸資産

50

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

ア Y社に対する持分法の適用(当初取得分)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

3

利益剰余金(*1)

3

(*1) 以下の合計3の剰余金が計上される。

・のれんの償却:2(借方)=(投資原価70−持分額(600×10%))/5年

・取得後剰余金:5(貸方)=(250−200)×10%

 

イ 追加取得についてののれんの算定

関連会社となる分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加(10%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん4(借方)(=分離先企業に追加投資したとみなされる額80(*2)−関連会社に係る分離元企業の持分の増加額76(*3))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額80=Y社(のb事業)の時価800×10%

(*3) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額76=追加投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(760×10%)

 

 

・持分変動差額の認識

移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(80%)により生じた差額40(貸方)(=分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額80(*4)−移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額40(*5))は、持分変動差額として取り扱う。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

40

持分変動差額

40

(*4) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額80=移転したa事業の時価100×80%

(これは、(*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)

(*5) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額40=移転したa事業の株主資本相当額50×80%

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例12-3]事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を関連会社株式として保有している場合

(1) 前提条件

b事業を営むY社は、株式を400株発行しており、A社が80株(20%)、B社が320株(80%)保有している。分離元企業A社は、Y社の当該株式80株(取得原価は140)を関連会社株式としている。なお、Y社株式取得時(X1年3月31日)のY社の諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)であり、諸資産の時価は600 であった。持分法適用上、のれんは5年で償却するものとする。なお、社外流出はないものとする。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業A社(吸収分割会社)は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、a事業に係る諸資産の時価は150、a事業の時価は200)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は650(払込資本400、利益剰余金250)、諸資産の時価は750、企業の時価は800)に移転する。

この結果、A社はY社の株式100株(時価200)を受け取り、Y社を36%関連会社とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方(第102項参照)

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

100

諸資産

100

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

ア Y社に対する持分法適用(20%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

6

持分法による投資損益(*1)

6

(*1) 次の合計6の剰余金が計上される。

・のれんの償却4(借方)=(投資原価140−持分額120(=600×20%))/5年

・取得後剰余金10(貸方)=(250−200)×20%

 

イ Y社に対する16%の追加取得

・追加取得分についてのれんの算定

事業分離により、関連会社である分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加額(追加取得持分16%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん8(借方)(=分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128(*2)−関連会社に係る分離元企業の持分の増加額120(*3))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128=分離先企業Y社(のb事業)の時価800×16%

(*3) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額120=追加投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(750×16%)

 

・持分変動差額の認識

移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(64%)により生じた差額64(貸方)(=分離元企業の事業が移転されたとみなされる額128(*4)−移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額64(*5))は、持分変動差額として取り扱う。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

64

持分変動差額

64

(*4) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額128=移転したa事業の時価200×64%(これは、(*2)分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)

(*5) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額64=移転したa事業の株主資本相当額100×64%

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例13] 分離元企業の会計処理(受取対価:現金等の財産と分離先企業の株式の場合)−分離先企業が関連会社である場合

(1) 前提条件

X1年3月31日に、A社はY社株式16株(20%)を125 で取得し、関連会社株式としている(Y社株式取得時のY社の諸資産の適正な帳簿価額は420(資本金400、利益剰余金20)、諸資産の時価は600)。なお、持分法適用上、のれんは5年で償却するものとし、また、社外流出はないものとする。

X2年3月31日に分離元企業A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は150(株主資本相当額150)、a事業に係る諸資産の時価は300、a事業の時価は400)を、分離先企業Y社(株主資本の適正な帳簿価額は480(資本金400、利益剰余金80)、諸資産の時価は700、企業の時価は800)に移転する。

この結果、A社は次の対価を受け取る(事業分離後のY社に対する持分比率は、36%(=(16株+20株)/(80株+20株))となる)。

・新株発行 20株(時価200)

・他社の株式 5株(Y社の適正な帳簿価額20、時価100)

・現金 100

なお、分離先企業Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

関連会社である分離先企業Y社の企業結合直前の個別貸借対照表

現金

100

資本金

400

その他有価証券

100

利益剰余金

80

諸資産

360

その他有価証券評価差額金

80

合計

560

合計

560

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方(第105項参照)

@ 分離元企業A社の個別財務諸表

受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。当該時価が移転事業に係る株主資本相当額を上回るため、移転利益を認識する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

0

諸資産

150

その他有価証券

100

移転利益

50

現金

100

 

 

 

A 分離元企業A社の連結財務諸表

ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

・A社のa事業の受入れ(パーチェス法を適用)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

300

その他有価証券

100

のれん

100

現金

100

 

 

払込資本

200

その他有価証券評価差額金

80

その他有価証券処分益

80

なお、以下の持分法の適用にあたっては、その他有価証券処分益80に係る未実現利益の消去及び持分法による投資損益とする処理については、省略している。

イ 分離元企業A社の連結財務諸表

<連結修正仕訳>

・Y社に対する持分法適用(20%)

 

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

11

利益剰余金(*1)

11

(*1) 以下の合計11の剰余金が計上される。

・のれんの償却 1(借方)=(投資原価125−持分額120 (=600×20%))/5年

・取得後剰余金 12(貸方)=(80−20)×20%)

 

・a事業に係る移転利益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

移転利益(*2)

18

関連会社株式(*3)

18

(*2) 個別上認識された移転損益は、分離元企業の連結財務諸表上、持分法会計基準第13項における未実現損益の消去に準じて、投資会社の持分相当額18(=50×36%)を消去する。

(*3) 未実現損益の消去に準じ、買手側である関連会社に対する投資の額に加減する。

 

・Y社に対する16%の追加取得

・Y社に対する16%の追加取得

・追加取得分についてのれんの算定

事業分離により、関連会社である分離先企業Y社に係る分離元企業の持分の増加額(追加取得持分16%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん16(借方)(=分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128(*4)−関連会社に係る分離元企業の持分の増加額112(*5))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*4) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128=分離先企業Y社の時価800×16%

(*5) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額112=追加取得時のY社の諸資産の時価700×16%

 

・持分変動差額の認識

分離元企業の事業が移転されたとみなされる額128(*6)と、移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額0との間に生ずる差額128については、持分変動差額として取り扱う。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

128

持分変動差額

128

(*6) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額128=(移転したa事業の時価400−受取対価200)×64% (これは、(*4)分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)

 

 

a事業及びY社に係る事業分離前のA社の抜粋連結財務諸表

諸資産(A社)

150

利益剰余金(Y社)

11

関連会社株式(Y社)

136

   

 

 

a事業及びY社に係る事業分離後のA社の抜粋連結財務諸表

現金(A社)

100

利益剰余金(Y社)

11

その他有価証券(A社)

100

持分変動差額

128

関連会社株式(Y社)

246

移転利益

32

 

Y社の資本に関する図は省略してある。

 

[設例14] 取得−株式交換完全親会社の会計処理

[設例14-1]株式交換前に完全子会社となる企業の株式を保有していない場合

(1) 前提条件

@ A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。

A 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。

B A社はB社の株主にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12 であり、交付した株式の時価総額は600(=@12×100株×0.5)となった。

C 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。

D A社は、増加すべき株主資本600のうち、100を資本金とし、残額500については剰余金とした。

E 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

 

B社個別貸借対照表(被取得企業)

現金

100

資本金

100

有価証券

170

資本剰余金

(資本準備金)

100

土地

100

利益剰余金

150

 

 

その他有価証券評価差額金

20

合計

370

合計

370

 

(2) A社の個別財務諸表上の会計処理

株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第36項(取得原価の算定方法の概要)及び第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

B社株式

600

資本金

100

 

 

その他資本剰余金

500

 

(3) A社の連結財務諸表上の会計処理

取得原価は、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金

100

B社株式

600

有価証券

170

 

 

土地

220

 

 

のれん

110

 

 

 

図は省略してある。

 

[設例14-2]株式交換前に完全子会社となる企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

(1) 前提条件

@ A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。

A 株式交換前において、A社はB社の株式を10株保有しており(取得原価は46)、その他有価証券として処理していた。

B 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。

C A社はB社の株主にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12 であり、交付した株式の時価総額は540(=@12×90株×0.5)となった。また、株式交換日のB社株式の時価は、 1株当たり6 であった。

D 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。

E A社は、増加すべき株主資本540のうち、40を資本金とし、残額500については剰余金とした。

F 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

 

B社個別貸借対照表(被取得企業)

現金

100

資本金

100

有価証券

170

資本剰余金

(資本準備金)

100

土地

100

利益剰余金

150

 

 

その他有価証券評価差額金

20

合計

370

合計

370

 

(2) A社の個別財務諸表上の会計処理

株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第36項(取得原価の算定方法の概要)及び第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。また、取得企業が株式交換日の前日に被取得企業の株式を保有していた場合、株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える(第110項また書き参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

B社株式(子会社株式)

540

資本金

40

 

 

その他資本剰余金

500

 

B社株式(子会社株式)

46

B社株式(その他有価証券)

46

 

(3) A社の連結財務諸表上の会計処理

A社は株式交換以前にB社の株式をその他有価証券として保有していたため、株式交換日の時価に基づいて子会社株式に振り替えて取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、損益として処理する(第116項(1)なお書き参照)。なお、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金

100

B社株式(*1)

586

有価証券

170

段階取得に係る差益(*2)

14

土地

220

 

 

のれん

110

 

 

(*1) A社の個別財務諸表上のB社株式簿価 540+46=586

(*2) B社株式の帳簿価額46と時価60(=@6×10株)との差額14を損益として処理する。

 

図は省略してある。

 

[設例14-3]株式交換前に完全子会社となる企業の株式を、株式交換完全親会社とその子会社がいずれもその他有価証券として保有していた場合(段階取得)

(1) 前提条件

@ A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。

A A社には100%子会社であるS社が存在する。株式交換前において、A社はB社の株式を4株(取得原価は18)、連結子会社であるS社はB社の株式を6株(取得原価は28)、それぞれ有しており、いずれもその他有価証券として処理していた。

B 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。

C A社は、B社の株主(連結子会社であるS社を含む。)にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12であり、交付した株式の時価総額は576(=@12×96株×0.5)となった。また、株式交換日のB社株式の時価は、1株当たり6 であった。

D 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。

E A社は、増加すべき株主資本576のうち、76を資本金とし、残額500については剰余金とした。

F 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

 

B社個別貸借対照表(被取得企業)

現金

100

資本金

100

有価証券

170

資本剰余金

(資本準備金)

100

土地

100

利益剰余金

150

 

 

その他有価証券評価差額金

20

合計

370

合計

370

 

(2) A社の個別財務諸表上の会計処理

株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第36項(取得原価の算定方法の概要)及び第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。また、取得企業が株式交換日の前日に被取得企業の株式を保有していた場合、株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える(第110項また書き参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

B社株式(子会社株式)

576

資本金

76

 

 

その他資本剰余金

500

 

B社株式(子会社株式)

18

B社株式(その他有価証券)

18

 

(3) S社の個別財務諸表上の会計処理

S社の個別財務諸表上、その他有価証券として保有していたB社株式の株式交換の対価として、親会社であるA社の株式(その他有価証券)が割り当てられたため、株式交換前にB社株式に付されていた適正な帳簿価額で振り替える(第280項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式(その他有価証券)

28

B社株式(その他有価証券)

28

 

(4) A社の連結財務諸表上の会計処理

A社は株式交換以前にB社の株式をその他有価証券として保有していたため、株式交換日の時価に基づいて子会社株式に振り替えて取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、損益として処理する(第116項(1)なお書き参照)。なお、A社の連結財務諸表においては、株式交換前にS社が保有していたB社株式についても、株式交換日の時価で測定することになるように連結上修正する。

また、取得原価は、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式(*4)

8

段階取得に係る差益(A社)(*1)

6

現金

100

段階取得に係る差益(S社)(*2)

8

有価証券

170

B社株式(*3)

594

土地

220

 

 

のれん

110

 

 

(*1) A社が保有していたB社株式の帳簿価額18と時価24(=@6×4株)との差額6を連結財務諸表上、損益として処理する。

(*2) S社が保有していたB社株式の帳簿価額28と時価36(=@6×6株)との差額8を連結財務諸表上、損益として処理する。

(*3) A社の個別財務諸表において取得の対価として計上されたB社株式(576+18=594)

(*4) この結果、連結財務諸表上の株主資本から控除されるS社保有のA社株式は36(=28+8)となり、株式交換によってA社がS社に交付したA社株式の時価36(=@12×6株×0.5)と一致する。

 

図は省略してある。

 

[設例15] 取得−株式移転設立完全親会社の会計処理

(1) 前提条件

@ A社とB社(A社とB社に資本関係はない。)は、株式移転(交換比率は1:0.5)により株式移転設立完全親会社C社を設立した。

A 当該株式移転は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。

B A社の株主には、A社株式1株当たりC社株式が1株交付された。また、B社の株主には、B社株式1株当たりC社株式0.5株が交付された。なお、株式移転日のA社の株価(1株当たり12)により計算したB社株主に交付した株式の時価総額は600(=@12×100株×0.5)であったものとする。また、A社及びB社の発行済株式総数はそれぞれ100株であったものとする。

C 株式移転日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。

D 株式移転設立完全親会社C社は、増加すべき株主資本1,100のうち、資本金を300 増加させ、残額については剰余金とした。

E 株式移転日の前日のA社及びB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

 

A社個別貸借対照表

現金

200

資本金

200

有価証券

180

資本剰余金

(資本準備金)

150

土地

150

利益剰余金

150

 

 

その他有価証券評価差額金

30

合計

530

合計

530

 

 

B社個別貸借対照表

現金

100

資本金

100

有価証券

170

資本剰余金

(資本準備金)

100

土地

100

利益剰余金

150

 

 

その他有価証券評価差額金

20

合計

370

合計

370

 

(2)株式移転設立完全親会社C社における個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式(*1)

500

資本金

300

B社株式(*2)

600

その他資本剰余金(*3)

800

(*1) 取得企業A社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額500に基づいて、取得企業A社の株式(株式移転完全子会社の株式)の取得原価を算定する(第121項(1)参照)。

(*2) 第36項(取得原価の算定方法の概要)及び第37項から第50項に準じて算定された取得原価で、被取得企業B社の株式(他の株式移転完全子会社の株式)を計上する。この場合、当該取得原価は、B社の株主がC社に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のA社株式をA社が交付したとみなして算定する(第121項(2)参照)。

100株×0.5÷(100株×1+100株×0.5)=33.3%

(150株×33.3%)×@12=600

(*3) 増加すべき株主資本の額1,100(=600+500)−資本金への組入額300=800

 

(3)株式移転設立完全親会社C社における連結財務諸表上の会計処理

@ 株式移転完全子会社A社(取得企業)に関する会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金

200

A社株式

500

有価証券

180

その他有価証券評価差額金

30

土地

150

 

 

C社の連結財務諸表に計上される資産は株式移転完全子会社A社(取得企業)の帳簿価額により計上される(第124項(1)参照)。

 

A 株式移転完全子会社A社(取得企業)の純資産の引継ぎ

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本剰余金

150

利益剰余金

150

C社の連結財務諸表上、株式移転完全子会社A社(取得企業)の利益剰余金を引継ぐ(第125項参照)。

 

B 株式移転完全子会社B社(被取得企業)に関する会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金

100

B社株式

600

有価証券

170

 

 

土地

220

 

 

のれん

110

 

 

C社の連結財務諸表上、B社株式の取得原価はB社から取得した資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する。なお、取得原価と取得原価の配分額との差額はのれんとなる(第124項(2)参照)。

 

 

C社連結貸借対照表

現金

300

資本金

300

有価証券

350

資本剰余金

650

土地

370

利益剰余金

150

のれん

110

その他有価証券評価差額金

30

合計

1,130

合計

1,130

 

[設例16] 削除

[設例17] 削除

[設例18] 共同支配企業の形成―子会社同士の合併の会計処理

(1) 前提条件

A社の100%子会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は450(株主資本400、評価・換算差額等50)、諸資産の時価は500、企業の時価は600)を吸収合併消滅会社とし、B社の100%子会社Y社(株式数200株、諸資産の適正な帳簿価額は200(株主資本180、評価・換算差額等20)、諸資産の時価は300、企業の時価は400)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、X社の株主はY社の株式300株を受け取る。この際、A社とB社はY社を共同支配する契約を締結し、当該吸収合併は共同支配企業の形成と判定されたものとする。

この結果、合併後のY社(株式数500株)に対する持分比率は、A社が60%(300株)、B社が40%(200株)となった。

なお、A社の子会社X社とB社の子会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

 

X社個別貸借対照表

諸資産

450

資本金

300

   

利益剰余金

100

   

その他有価証券評価差額金

50

合計

450

合計

450

 

 

Y社個別貸借対照表

諸資産

200

資本金

150

   

利益剰余金

30

   

その他有価証券評価差額金

20

合計

200

合計

200

 

また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は300、B社の保有するY社の株式の適正な帳簿価額は150であった。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ Y社(共同支配企業)の個別財務諸表(共同支配企業の形成)の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

450

払込資本(*1)

400

   

その他有価証券評価差額金(*2)

50

(*1) 払込資本として処理するのが原則であるが、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目をそのまま引き継ぐこともできる(第185項参照)。

(*2) 評価・換算差額等については、移転直前の適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ。

 

A A社(共同支配投資企業)の会計処理

ア A社(共同支配投資企業)の個別財務諸表

移転した子会社株式Xの適正な帳簿価額300に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

300

子会社株式

300

 

イ A社(共同支配投資企業)の連結財務諸表

・持分法の適用(第190項参照)

被結合企業の株主の連結財務諸表上、これまで連結していた被結合企業Xについて、Y社に対する投資の取得原価を共同支配企業の形成時点における持分法による投資評価額へ修正する(子会社株式Xに関する開始仕訳とその振戻しを行うとともに、100%子会社としてX社に対して連結上計上していた取得後剰余金100を持分法による取得後剰余金100として認識する。)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

100

利益剰余金

100

 

・Y社に対する60%の取得についてのれんの算定

Y社に係るA社の持分の増加額(取得分60%)について、持分法適用上、のれん60(借方)(=Y社に対して投資したとみなされる額240(*3)−Y社に係るA社の持分の増加額180(*4))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*3) Y社に対して投資したとみなされる額240=Y社の時価400×60%

(*4) Y社に係るA社の持分の増加額180=企業結合直前の吸収合併存続会社Y社の資本(諸資産の時価)300×A社の持分比率の増加60%

 

・持分変動差額の認識

吸収合併により消滅したX社の事業に係るA社の持分の減少(40%)により生じた差額80(貸方)(=X社の事業が移転されたとみなされる額240(*5)−X社の事業に係るA社の持分の減少額160(*6))を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

80

持分変動差額

80

(*5) X社の事業が移転されたとみなされる額240=X社の時価600×40%(これは、(*3) Y社に対して投資したとみなされる額と同額となる。)

(*6) X社の事業に係るA社の持分の減少額160=X社の株主資本400×A社の持分比率の減少40%

 

Y社の資本の図、旧X社の評価・換算差額等に係る記載は省略してある。

 

B B社(共同支配投資企業)の会計処理

ア B社(共同支配投資企業)の個別財務諸表

移転した子会社株式Yの適正な帳簿価額150に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

150

子会社株式

150

 

イ  B社(共同支配投資企業)の連結財務諸表

・持分法の適用(第190項参照)

結合企業の株主の連結財務諸表上、これまで連結していた結合企業Yについて、Y社に対する投資の取得原価を共同支配企業の形成時点における持分法による投資評価額へ修正する(子会社株式Yに関する開始仕訳とその振戻しを行うとともに、100%子会社としてY社に対して連結上計上していた取得後剰余金30を持分法による取得後剰余金30として認識する。)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

30

利益剰余金

30

 

・X社に対する40%の取得についてのれんの算定

吸収合併により消滅したX社に係るB社の持分の増加額(取得分40%)について、持分法適用上、のれん40(借方)(=X社に対して投資したとみなされる額240(*8)−X社の事業に係るB社の持分の増加額200(*9))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*8) X社に対して投資したとみなされる額240=X社の時価600×40%

(*9) X社に係るB社の持分の増加額200=企業結合直前の吸収合併消滅会社X社の資本(諸資産の時価)500×B社の持分比率の増加40%

 

・持分変動差額の認識

Y社の事業に係るB社の持分の減少(60%)により生じた差額132(貸方)(=Y社の事業が移転されたとみなされる額240(*10)−Y社の事業に係るB社の持分の減少額108(*11))を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式

132

持分変動差額

132

(*10) Y社の事業が移転されたとみなされる額240=Y社の時価400×60%(これは、(*8) X社に対して投資したとみなされる額と同額となる。)

(*11) Y社の事業に係るB社の持分の減少額108=Y社の株主資本180×B社の持分比率の減少60%

 

Y社の資本の図、Y社(合併の前)の評価・換算差額等に係る記載は省略してある。

 

[設例19] 共同支配企業の形成−会社分割(共同新設分割)の会計処理

(1) 前提条件

@ X1年4月1日にA社とB社は共同新設分割によりY社を設立した。A社とB社はY社を共同支配する契約を締結し、当該共同新設分割は共同支配企業の形成と判定されたものとする。

A A社及びB社の移転する事業の移転直前の内容等は、次のとおりである。

 

 

諸資産(*1)

株主

資本

評価・換算

差額等

(*2)

取得したY社の株式数

(持分比率)

A社が移転する事業a

500(600)

400

100

300株(60%)

B社が移転する事業b

180(400)

180

200株 (40%)

合計

680(1,000)

580

100

500株(100%)

(*1) 帳簿価額を記載しており、( )内はその時価である。また、a事業の時価は660、b事業の時価は440とする。それぞれののれんは6年で償却する。

(*2) A社が移転する事業に係る資産には、その他有価証券が含まれており、移転直前の時価を帳簿価額としている。

B X2年3月期のY社の当期純利益は100であった。

C A社、B社及びY社の決算期は3月31日である。

 

(2) Y社(共同支配企業)の個別財務諸表上の会計処理

[X1年4月1日]

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

a事業資産(*3)

500

払込資本

400

 

 

その他有価証券評価差額金(*4)

100

b事業資産(*3)

180

払込資本

180

(*3) 各共同支配投資企業から移転される資産及び負債を分割期日の前日における適正な帳簿価額により計上する(第192項参照)。

(*4) 移転事業に係る評価・換算差額等について、移転直前の帳簿価額をそのまま引き継ぐ。

 

(3) A社(共同支配投資企業)の会計処理

[X1年4月1日]

a事業をY社へ移転する。

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(*5)

400

a事業資産

500

その他有価証券評価差額金

100

 

 

(*5) 移転した事業に係る株主資本相当額400に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する(第196項参照)。

 

連結修正仕訳−持分法の適用(第197項参照)

・b事業に対する60%の取得についてのれんの算定

b事業に係るA社の持分の増加額(取得分60%)について、持分法適用上、のれん24(借方)(=b事業に対して投資したとみなされる額264(*6)−b事業に係るA社の持分の増加額240(*7))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*6) b事業に対して投資したとみなされる額264=b事業の時価440×60%

(*7) b事業に係るA社の持分の増加額240=取得時のb事業の諸資産の時価400×60%

 

・持分変動差額の算定

a事業に係るA社の持分の減少(40%)により生じた差額104(貸方)(=a事業が移転されたとみなされる額264(*8)−a事業に係るA社の持分の減少額160(*9))を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(投資有価証券)

104

持分変動差額

104

(*8) a事業が移転されたとみなされる額264=a事業の時価660×40%

(*9) a事業に係るA社の持分の減少額160=a事業の株主資本相当額400×40%

 

[X2年3月31日]

個別財務諸表上の会計処理

 

(仕訳なし)

 

連結修正仕訳

連結上、Y社の当期純利益100のうち、持分相当額(60%)である60とのれん償却費4(=24÷6年)を持分法投資損益として取り込む。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(投資有価証券)

56

持分法投資損益

56

 

(4) B社(共同支配投資企業)の会計処理

[X1年4月1日]

b事業をY社へ移転する。

個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(関係会社株式)(*10)

180

b事業資産

180

(*10) 移転した事業に係る株主資本相当額180に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。

 

連結修正仕訳−持分法の適用(第197項参照)

・a事業に対する40%の取得についてのれんの算定

a事業に係るB社の持分の増加額(取得分40%)について、持分法適用上、のれん24(借方)(=a事業に対して投資したとみなされる額264(*11)−a事業に係るB社の持分の増加額240(*12))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*11) a事業に対して投資したとみなされる額264=a事業の時価660×40%

(*12) a事業に係るB社の持分の増加額240=取得時の事業aの諸資産の時価600×40%

 

・持分変動差額の算定

b事業に係るB社の持分の減少(60%)により生じた差額156(貸方)(=b事業が移転されたとみなされる額264(*13)−b事業に係るB社の持分の減少額108(*14))を算定する。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(投資有価証券)

156

持分変動差額

156

(*13) b事業が移転されたとみなされる額264=b事業の時価440×60%

(*14) b事業に係るB社の持分の減少額108=b事業の株主資本相当額180×60%

 

[X2年3月31日]

個別財務諸表上の会計処理

 

(仕訳なし)

 

連結修正仕訳

連結上、Y社の当期純利益100のうち、持分相当額(40%)である40とのれん償却費4(=24÷6年)を持分法投資損益として取り込む。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

共同支配企業株式(投資有価証券)

36

持分法投資損益

36

 

 

[設例20] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理−買収により取得した子会社を合併した場合

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日にS社の株式の80%を1,700 で取得し、子会社とした。株式取得時のS社の資産は、土地(再評価額1,000、土地再評価差額金400)と、有価証券(時価評価額500、その他有価証券評価差額金100)であり、取得時のS社の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

S社個別貸借対照表

有価証券

500

資本金

1,000

土地

1,000

その他有価証券評価差額金

100

   

土地再評価差額金

400

合計

1,500

合計

1,500

 

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする)。

C S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1 である。

D P社は新株をS社の少数株主に20株(合併期日の時価600(1株当たり30))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。

E P社は連結財務諸表作成にあたり、S社株式取得時に発生したのれんの償却期間は5年としている。

F 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

300

資本金

1,000

S社株式

1,700

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

有価証券

600

利益剰余金

1,000

土地

1,000

その他有価証券評価差額金

200

 

 

土地再評価差額金

400

合計

2,600

合計

2,600

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

1,300

小数株主持分(*2)

520

有価証券

600

資本金

1,000

土地

1,000

利益剰余金(*3)

1,700

のれん(*1)

400

その他有価証券評価差額金(*4)

80

合計

3,300

合計

3,300

(*1) 取得時ののれん500(S社株式の取得原価1,700−S社の取得時の純資産の時価1,500の80%)から、X2年3月期の償却額100を控除した金額となる。

(*2) 取得時の300(S社の取得時の純資産の時価1,500×20%)、取得後剰余金200(1,000×20%)及びその他有価証券評価差額金の増加額20(100×20%)の合計額となる。

(*3) P社の利益剰余金1,000とS社の取得後剰余金800(1,000×80%)の合計から、のれんのX2年3月期の償却額100を控除した金額となる。

(*4) S社のその他有価証券評価差額金の支配獲得時からの増加額のうち親会社持分について計上される。

 

(2) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(80%)(*5)

800

S社株式

1,700

有価証券(80%)(*5)

480

その他有価証券評価差額金(*5)(*6)

80

土地(80%)(*5)

800

 

 

のれん(*7)

400

抱合せ株式消滅差益

(*8)

700

 

諸資産(20%)(*5)

200

その他資本剰余金(*9)

600

有価証券(20%)(*5)

120

その他有価証券評価差額金(*5)(*6)

20

土地(20%)(*5)

200

 

 

のれん(*10)

100

 

 

(*5) 子会社から受け入れる資産及び負債は、連結財務諸表上の帳簿価額2,500(子会社の帳簿価額2,000+株式取得時の時価評価差額500)及びのれん(未償却残高)400により計上する。この際、親会社持分相当額と少数株主持分相当額を持分比率により按分する(第206項(2)参照)。

・親会社持分相当額 2,500×80%=2,000(諸資産800+有価証券480+土地800−その他有価証券評価差額金80)

・少数株主持分相当額 2,500×20%=500(諸資産200+有価証券120+土地200−その他有価証券評価差額金20)

(*6) その他有価証券評価差額金のうち、投資と資本の消去の対象とされていない100(支配獲得後に増減した額)について引き継ぐ(第206項(2)A参照)。土地再評価差額金は支配獲得時に投資と資本の消去の対象とされており、引き継がない。

(*7) のれんの未償却残高400 は、親会社持分に相当するものであるため、合併時にも親会社持分相当額にのみ含める。当該金額は連結財務諸表上の帳簿価額として、親会社の個別財務諸表に引き継がれる(第207項(1)参照)。

(*8) 親会社持分相当額(のれんの未償却残高400を含む。)2,400と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の帳簿価額1,700の差額700を特別損益に計上する(第206項(2)@ア参照)。なお、P社の連結財務諸表上は、過年度に認識済みの損益であるため、利益剰余金と相殺消去する(第208項参照)。

(*9) 取得の対価(少数株主に交付した親会社株式の時価)600 が増加すべき株主資本となる(第206項(2)@イ参照)。

(*10) 取得の対価600と子会社から受け入れる資産及び負債の少数株主持分相当額500との差額をのれんとする(第206項(2)@イ参照)。

 

合併後(X2年4月1日)のP社個別貸借対照表は次のとおりとなる。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,300

資本金

1,000

有価証券

600

資本剰余金

600

土地

1,000

利益剰余金

1,700

のれん

500

その他有価証券評価差額金

100

合計

3,400

合計

3,400

 

 

[設例21] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理−過年度に親会社が子会社に資産を売却している場合

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分比率80%)を設立した。

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする)。

C S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1 である。

D P社は新株をS社の少数株主に20株(合併期日の時価500(1株当たり25))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。

E X1年度にP社は簿価1,000の土地をS社に1,700 で売却し、売却益700を計上している。

F 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

有価証券

400

資本金

1,000

土地

1,700

利益剰余金

1,000

 

 

その他有価証券評価差額金(*1)

100

合計

2,100

合計

2,100

(*1) 設立時の有価証券の簿価は300であったため、すべて設立後に計上された評価差額であり、投資と資本の消去の対象とされていないものである。

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

1,200

小数株主持分

420

有価証券

400

資本金

1,000

土地

1,000

利益剰余金

1,100

 

 

その他有価証券評価差額金

80

合計

2,600

合計

2,600

 

(2) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

有価証券(80%)(*2)

320

S社株式

800

土地(80%)(*3)

1,360

その他有価証券評価差額金(80%)(*2)

80

 

 

抱合せ株式消滅差益(*4)

800

 

有価証券(20%)(*2)

80

その他有価証券評価差額金(20%)(*2)

20

土地(20%)(*3)

340

その他資本剰余金

500

のれん(*5)

100

   

(*2)(*3)(*4)(*5) [設例20]参照

(*6) 子会社から未実現損益の消去後の連結財務諸表上の適切な帳簿価額で土地を受入れるため、親会社の個別財務諸表上、当該修正に伴う差額は、特別損益に計上する(第207項(2)参照)。

 

 

合併後(X2年4月1日)のP社個別貸借対照表は次のとおりとなる。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

有価証券

400

資本剰余金

500

土地

1,000

利益剰余金

1,100

のれん

100

その他有価証券評価差額金

100

合計

2,700

合計

2,700

 

 

[設例22] 子会社が親会社を吸収合併した場合の会計処理

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に取得原価1,600で、S社の株式(80%)を取得し、子会社とした。取得時のS社の貸借対照表は以下のとおりであった。X2年3月期のS社の当期純損失は300であった。

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

土地(*1)

500

利益剰余金

500

合計

1,500

合計

1,500

(*1) S社の取得時(支配獲得時)の土地の時価は1,000であった。

 

A S社はP社をX2年4月1日に合併した。吸収合併存続会社はS社である。

B 合併比率は1:1とされ、S社は新株を100株発行し、P社の株主に100株割り当てた(P社株式の合併期日の時価5,000(1株当たり50))。

C S社は新株発行に伴う増加すべき株主資本のうち、1,000を資本金とし、残額を剰余金とした。

D P社は連結財務諸表を作成するにあたり、S社株式取得時点に発生したのれんの償却期間は5年としている。

E 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

1,600

利益剰余金

1,800

合計

2,800

合計

2,800

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

700

資本金

1,000

土地

500

利益剰余金

200

合計

1,200

合計

1,200

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

1,900

小数株主持分

340

土地(*2)

1,000

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,560

合計

2,900

合計

2,900

(*2) 連結上の土地の簿価は、支配獲得時の時価1,000となる。

 

(2) S社の個別財務諸表上の合併に関する会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*3)

1,200

資本金(*4)

1,000

S社株式(*3)

1,600

利益剰余金

1,800

 

自己株式(*5)

1,600

S社株式

1,600

(*3) 共通支配下の取引であり、企業集団内を移転する資産及び負債は移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第210項(1)参照)。

(*4) 移転された資産及び負債の差額は、純資産として処理する(210項(2)参照)。親会社が吸収合併消滅会社である場合、親会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。また、合併の対価が新株のみである場合、親会社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことが認められる(第210項(2)参照)。ここでは、そのまま引き継ぐ処理を適用している。

(*5) 自己株式への振替

 

(3) S社の連結財務諸表上の会計処理

S社の個別財務諸表における取引をいったん戻したうえで、改めて、S社を吸収合併消滅会社、P社を吸収合併存続会社であるとみなして連結財務諸表を作成する。S社の資産及び負債は、連結会計方針で採用された評価方法により計上された時価評替後の資産及び負債を連結財務諸表上の簿価として受け入れる。S社がP社の株主に交付したS社株式は内部取引であり、消去する(第212項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*7)

340

払込資本(*6)

1,000

のれん(*7)

660

 

 

(*6) P社にとっては、S社を吸収合併存続会社とする合併の経済実態は、少数株主持分340を取得するために、対価1,000(1株当たり50×20株)をS社株主に支払った取引と考えられる。少数株主が保有するS社株式20株は、株式の交換はないものの、連結財務諸表上は、新たに交付したものとみなして支払対価を算定する。

(*7) 合併前の連結財務諸表で計上していた少数株主持分(340)を減少させ、支払対価との差額660をのれんとして認識する。

 

(4) 合併後(X2年3月31日)の貸借対照表

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,900

資本金

2,000

土地

500

利益剰余金

2,000

 

 

自己株式

△1,600

合計

2,400

合計

2,400

 

 

S社連結貸借対照表(S社個別貸借対照表部分)

諸資産

1,900

資本金(*9)

2,000

土地(*8)

1,000

利益剰余金

1,560

のれん

660

自己株式

0

合計

3,560

合計

3,560

(*8) 時価評価替後の資産及び負債を連結財務諸表上の帳簿価額とする(第212項参照)。

(*9) 連結財務諸表上の資本金は子会社の資本金とし、これと合併前の連結上の資本金が異なる場合は、その差額を資本剰余金に振り替える(第212項参照)。

 

[設例23] 同一の株主(個人)により支配されている会社同士の合併の会計処理

(1) 前提条件

@ A社はB社を吸収合併した。

A A社とB社の株主及び株式の所有状況は次のとおりである。なお、甲氏とその配偶者は同一の内容の議決権を行使するものと認められるものとする。

<A社>

 

株主

所有割合

所有株数(株)

甲氏

40%

180

甲氏配偶者

20%

90

第三者

40%

180

合計

100%

450

 

<B社>

 

株主

所有割合

所有株数(株)

甲氏

40%

100

甲氏配偶者

40%

100

第三者

20%

50

合計

100%

250

 

B 合併期日の前日のA社及びB社の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

A社(吸収合併存続会社)個別貸借対照表

諸資産

200

資本金

100

 

 

資本剰余金

50

 

 

利益剰余金

50

合計

200

合計

200

 

 

B社(吸収合併消滅会社)個別貸借対照表

諸資産

50

資本金

20

 

 

資本剰余金

20

 

 

利益剰余金

10

合計

50

合計

50

 

C 合併比率等は1:0.6(B社株式1株に対してA社株式0.6株を交付)であったため、A社は、B社の株主である甲氏、その配偶者に対してそれぞれ60株(=100株×0.6)、第三者に対して30株(=50株×0.6)を交付した。

合併後のA社の株主及び株式の所有状況は次のとおりである。

 

株主

所有割合

所有株数(株)

甲氏

40%

240

甲氏配偶者

25%

150

第三者

35%

210

合計

100%

600

 

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ A社及びB社は、甲氏により議決権の40%を保有され、かつ甲氏の配偶者と合わせて議決権の過半数を保有されている。

A 甲氏の配偶者が、実質的に甲氏にとって緊密な者又は同意している者であると判断される場合、甲氏の持分と甲氏の配偶者の持分を合算した甲氏グループにより、A社及びB社は支配されていることになる。

したがって、A社とB社は甲氏グループという同一の株主により、最終的に支配されているため、A社とB社の合併は共通支配下の取引となる(第201項参照)。

B A社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*1)

50

資本金(*2)

20

 

 

資本剰余金(*2)

20

 

 

利益剰余金(*2)

10

(*1) A社とB社の合併は、甲氏グループを同一の株主とする共通支配下の取引であるため、B社から受け入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第254項(1)参照)。

(*2) A社は企業集団の最上位の親会社ではないため、A社が合併の対価として甲氏、甲氏の配偶者及び第三者に株式を交付する取引は、第200項の定めによる少数株主との取引を適用せず、増加すべき株主資本の額はB社の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定される。増加すべき株主資本の内訳は、原則として、払込資本として処理することになるが、合併の対価が株式のみの場合は、B社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を、抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことができる。ここでは、株主資本の構成を引き継ぐ処理を採用している場合を示している(第254項(2)参照)。

 

C 吸収合併後のA社の個別財務諸表

 

吸収合併後A社個別貸借対照表

諸資産

250

資本金

120

 

 

資本剰余金

70

 

 

利益剰余金

60

合計

250

合計

250

 

 

[設例24] 会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社はX2年4月1日にS社からS1事業(S1事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は1,100(株主資本相当額1,000、評価・換算差額等100)、諸資産の時価1,200、事業の時価1,250)を受け入れた。

C P社はS1事業の受入れの対価としてS社に新株50株を発行した(吸収分割)。分割期日の株価により計算したS社への交付株式の時価は1,250(1株当たり25)である。

D P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。

E 分割期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

S1事業資産

1,100

利益剰余金

1,000

 

 

その他有価証券評価差額金(*1)

100

合計

2,100

合計

2,100

(*1) S1事業資産に含まれる有価証券に係るものであり、支配獲得後に計上されたものとする。

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

2,200

小数株主持分

420

S1事業資産

1,100

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,800

 

 

その他有価証券評価差額金

80

合計

3,300

合計

3,300

 

子会社のS社の事業に係るP社の持分の追加取得(帳簿価額200、時価250)イメージ図、評価・換算差額等に係る記載は省略してある。

 

(2) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

S1事業資産(*2)

1,100

その他資本剰余金(*3)

1,000

 

 

その他有価証券評価差額金(*2)(*3)

100

(*2) 分割期日前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第214項(1)参照)。

(*3) 移転事業に係る評価・換算差額等を引継ぐとともに、移転事業に係る株主資本相当額は払込資本として処理する(第214項(2)参照)。

 

(3) S社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

P社株式(親会社株式)(*4)

1,000

S1事業資産(*4)

1,100

その他有価証券評価差額金(*4)

100

 

 

(*4) S社はS1事業の移転の対価として親会社株式(その他有価証券)を取得することになるが、当該取引は共通支配下の取引として会計処理することとなる。したがって、S社が取得するP社の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定するため(第216項参照)、事業移転時に損益は認識しない。

 

(4) P社の連結財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金(S社)(*5)

1,000

小数株主持分(*5)

200

 

 

S社株式(*5)

800

 

利益剰余金(*5)

200

小数株主持分(*5)

200

 

資本剰余金(*6)

800

P社株式

1,000

小数株主持分(*7)

200

 

 

 

のれん(*8)

50

資本剰余金

50

(*5) 開始仕訳

(*6) S社が取得したP社株式のうち分割期日前日における親会社持分相当額とこれに対応するP社の払込資本の増加額は、内部取引として消去する(第217項(1)参照)。

(*7) 少数株主持分相当額は、少数株主持分から控除する(第217項(2)参照)。

(*8) 連結財務諸表上、S1事業に係る親会社P社の持分が80%から100%になったため、当該事業に対する追加取得持分(20%)に対する帳簿価額200(=1,000×20%)と支払対価の時価250(=1,250×20%)との差額50をのれんとして計上し、資本剰余金を同額増加させる(第217項(3)参照)。

 

(5) 分割後(X2年4月1日)の貸借対照表

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S1事業資産

1,100

資本剰余金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

 

 

その他有価証券評価差額金

100

合計

3,100

合計

3,100

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

P社株式

1,000

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

2,200

小数株主持分

200

S1事業資産

1,100

資本金

1,000

のれん

50

資本剰余金

250

 

 

利益剰余金

1,800

 

 

その他有価証券評価差額金

100

合計

3,350

合計

3,350

 

 

[設例25] 分割型の会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社はX2年4月1日にS社からS1事業(S1事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は1,100(株主資本相当額1,000、評価・換算差額等100)、諸資産の時価1,200、事業の時価1,250)を受け入れた。

C P社はS1事業の受入れの対価として、S社に対して新株100株を発行し、S社は、受け取ったP社株式を、その取得と同時に配当した(分割型の会社分割)。なお、配当の内訳は、S社の少数株主に10株、P社に90株である。また、分割期日の株価により計算したP社株式の時価は1株当たり25(S社の少数株主への交付株式の時価は250)である。

D P社は新株の発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。

E S社は事業移転に伴う資産の減少に対応して、利益剰余金を減少させた。

F 分割期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

S1事業資産

1,100

利益剰余金

1,000

 

 

その他有価証券評価差額金(*1)

100

合計

2,100

合計

2,100

(*1) S1事業資産に含まれる有価証券に係るもので、すべて設立後に計上された評価差額であり、投資と資本の消去の対象とされていないものである。

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

2,200

小数株主持分

420

S1事業資産

1,100

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,800

 

 

その他有価証券評価差額金

80

合計

3,300

合計

3,300

 

 

図は省略してある。

 

(2) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

S1事業資産(*2)

880

S社株式(*4)

400

 

 

その他有価証券評価差額金(*2)

80

 

 

抱合せ株式消滅差益(*5)

400

 

S1事業資産(*2)

220

その他資本剰余金(*3)

250

のれん(*3)

50

その他有価証券評価差額金(*2)

20

(*2) P社がS社から受け入れたS1事業に係る資産及び負債は、分割期日前日に付された適正な帳簿価額1,100により計上する(第218項(1)参照)。また、受け入れたS1事業に係る資産及び負債の差額(純資産)のうち株主資本額1,000については、親会社持分相当額と少数株主持分相当額に按分する(第218項(2)参照)。

・親会社持分相当額 1,000×80%=800

・少数株主持分相当額 1,000×20%=200

株主資本相当額以外の項目については、S社の評価・換算差額等(投資と資本の消去の対象外のもの)の適正な帳簿価額を引き継ぐため、その他有価証券評価差額金100を引き継ぐ(第218項(2)参照)。

なお、P社は、S社に株式を発行するものの、同時にS社から当該株式が交付されるため、P社は自己株式を保有することになる。会計上、当該株式の発行と自己株式の取得は一体とみて、自己株式の帳簿価額はゼロとなる(第218項(2)参照)。

(*3) 少数株主に係る増加すべき株主資本は、少数株主に交付した親会社株式の時価250 で算定し、少数株主持分相当額200(*2)との差額50はのれんとして処理する(第218項(2)参照)。

(*4) この設例では、分割に係る抱合せ株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額を、関連する帳簿価額の比率(S1事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額1,000とS社の分割直前の株主資本の適正な帳簿価額との比率)50%(=1,000/(1,000+1,000))で按分する方法(第219項(3)参照)が合理的と認められる方法であるものとし、次のように、S社株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額を算定する。

・S社株式の簿価 800×50%=400

(*5) 受け入れた資産と負債の差額のうち株主資本の親会社持分相当額800(*2)と、分割に係る抱合せ株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額400(*4)との差額400を特別損益に計上する(第218項(2)参照)。

 

(3) S社の個別財務諸表上の会計処理

S社は、事業移転に伴う資産の減少に対応して、利益剰余金を減少させたものと仮定しているため、移転したS1事業に係る資産及び負債の帳簿価額1,000に基づき利益剰余金を減少させる。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

P社株式(*6)

1,000

S1事業資産(*6)

1,100

その他有価証券評価差額金(*6)

100

 

 

 

利益剰余金(*7)

1,000

P社株式(*7)

1,000

(*6) P社株式の取得価額は、S1事業に係る株主資本相当額(ただし、当該事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除した額)に基づいて算定する(第221項(1)参照)。

(*7) S社は受け取ったP社株式の取得価額により、株主資本を減少させる。減少させる株主資本の内訳は、取締役会等の企業の意思決定機関において定められた結果に従う(第221項(2)参照)。

 

(4) P社の連結財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金(S社)(*8)

1,000

小数株主持分(*8)

200

 

 

S社株式(*8)

800

 

利益剰余金(*9)

200

小数株主持分(*9)

200

 

S社株式(*10)

400

利益剰余金

800

抱合せ株式消滅差益(*10)

400

 

 

 

小数株主持分(*11)

200

利益剰余金

200

(*8) 開始仕訳(投資と資本の相殺消去)

(*9) 開始仕訳(取得後剰余金の少数株主持分への振替)

(*10) P社が減少させたS社株式の帳簿価額及び抱合せ株式消滅差益は、内部取引として消去する(第222項参照)。

(*11) 移転した事業に係る持分の追加取得に伴う少数株主持分の減少(親会社持分の増加)について振替処理を行う(一種の少数株主への配当(S社によるP社株式の現物分配)が生じていると考えることができるため、少数株主持分を調整する。)。

 

(5) 分割後(X2年4月1日)の貸借対照表

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S1事業資産

1,100

資本剰余金

250

S社株式

400

利益剰余金

1,400

のれん

50

その他有価証券評価差額金

100

合計

2,750

合計

2,750

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

1,000

資本金

1,000

合計

1,000

合計

1,000

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

2,200

小数株主持分

200

S1事業資産

1,100

資本金

1,000

のれん

50

資本剰余金

250

 

 

利益剰余金

1,800

 

 

その他有価証券評価差額金

100

合計

3,350

合計

3,350

 

 

[設例26]事業譲渡又は会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の会計処理

[設例26-1] 移転に係る対価が現金等の財産のみである場合

(1) 前提条件

分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は150(株主資本相当額100、評価・換算差額等50)、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(諸資産の適正な帳簿価額は600(資本金400、利益剰余金200))に移転する。この結果、P社は現金200を受け取る(事業分離又は事業移転後のS社に対する持分比率は、P社60%のままである。)。

なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

S社個別貸借対照表

現金

200

資本金

400

諸資産

400

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社は、S社の設立時からS社の株式を保有しており、その適正な帳簿価額は240であったものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金(*1)

200

諸資産(*1)

150

評価・換算差額等(*1)

50

移転損益(*1)

100

(*1) P社は、S社から受け取った現金等の財産を移転前に付された適正な帳簿価額により計上し、当該価額とp事業に係る株主資本相当額との差額は、原則として移転損益として認識する(第223項参照)。

 

A 分離元企業P社の連結財務諸表

ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理

・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

150

現金

200

のれん(*2)

100

評価・換算差額等(*2)

50

(*2) P社におけるp事業に係る資産及び負債の移転前に付された適正な帳簿価額(p事業に係る評価・換算差額等を含む。)により計上する。p事業に係る株主資本相当額と交付した現金等の財産の適正な帳簿価額との差額はのれんとして処理する(第224項(1))。

 

イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金(*3)

80

小数株式持分(*4)

240

(*3) 取得後の利益剰余金200のうち、40%分は少数株主持分へ振り替える。

(*4) S社の資本600のうち、40%分は少数株主持分に相当する。

 

・p事業に係る移転損益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

移転損益(*5)

100

のれん(*6)

100

(*5) 個別上認識された移転損益は、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第225項参照)。

(*6) S社で認識されたのれんの消去

 

 

p事業及びS社に係る事業分離前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S社)

200

小数株主持分(S社)

240

諸資産(P社150+S社400)

550

利益剰余金(S社)

120

   

評価・換算差額等(P社)

50

 

 

p事業及びS社に係る事業分離後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

200

小数株主持分(S社)(*7)

260

諸資産(S社)(*7)

550

利益剰余金(S社)

120

   

評価・換算差額等(S社)(*7)

30

(*7) 評価・換算差額等50のうち、P社持分60%の30が評価・換算差額等として計上され、40%の20が少数株主持分に計上される。

 

[設例26-2] 移転に係る対価が子会社株式のみである場合

(1) 前提条件

b事業を営むS社は、株式を100株発行しており、P社が60株、B社が40株それぞれ保有している。分離元企業(親会社)P社は、当該S社株式60株(取得原価は98)を子会社株式としている。なお、S社株式取得時(X1年3月31日)のS社の諸資産の適正な帳簿価額は80(資本金50、利益剰余金30)であり、諸資産の時価は130であった。のれんは5年で償却するものとする。

なお、剰余金の分配による社外流出はないものとする。

X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は140(株主資本相当額120、評価・換算差額等20)、p事業に係る諸資産の時価は150、p事業の時価は200)を、分離先企業(吸収分割承継会社となる子会社)S社(諸資産の適正な帳簿価額は100(資本金50、利益剰余金50)、諸資産の時価は160、企業の時価は200)に移転する。

この結果、P社はS社の株式100株(S社の株価@2、時価200)を受け取り、S社を80%子会社とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

共通支配下の取引として、移転した事業に係る株主資本相当額に基づき、取得する分離先企業S社の株式(子会社株式)の取得原価を算定する(第226項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

120

諸資産

140

評価・換算差額等

20

 

 

 

A 分離元企業P社の連結財務諸表

ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理

 

分離先企業S社の企業結合直前の貸借対照表

諸資産

100

資本金

50

 

 

利益剰余金

50

合計

100

合計

100

 

・P社からのp事業の受入れ

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*1)

140

払込資本(*2)

120

 

 

評価・換算差額等(*1)(*2)

20

(*1) S社がP社から受入れる資産及び負債は、分割期日前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第227項(1)参照)。

(*2) p事業に係る評価・換算差額等を引継ぐとともに、p事業に係る株主資本相当額は払込資本として処理する(第227項(2)参照)。

 

イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・S社に対する連結(60%)の開始仕訳

・S社の資産を時価評価

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*3)

50

資本(評価差額)

50

(*3) 資産の評価差額の計上 50=130−80

 

・S社に対する連結法による60%の持分の認識(投資と資本の相殺消去)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

50

子会社株式(*4)

98

利益剰余金

30

小数株主持分(*5)

52

資本(評価差額)

50

 

 

のれん

20

 

 

(*4) 取得原価98

(*5) 少数株主持分52(=S社の資本(評価差額計上後)130×40%)

 

・のれんの償却

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

のれん償却(*6)

4

のれん

4

(*6)のれんの償却 4(借方)=20/5年

 

・少数株主損益の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主損益(*7)

8

小数株主持分

8

(*7) 少数株主損益の認識 8=(50−30)×40%

 

・S社(のb事業)に対する20%持分の追加取得(少数株主との取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*9)

30

子会社株式(*8)

40

のれん

10

 

 

(*8) 分離先企業(子会社)に対して追加投資したとみなされる額40=分離先企業(子会社)S社の時価200×20%

(*9) 子会社に係る親会社の持分の増加額(追加取得持分)は30(=追加投資に対応する分離先企業(子会社)の事業分離直前の資本(150×20%))であり、追加取得した株式に対応する少数株主持分は減少する(第229項参照)。

 

・支配獲得後の資本連結

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

120

子会社株式(*10)

80

 

 

小数株主持分(*11)

24

 

 

持分変動差額(*12)

16

(*10)事業分離による取得原価120−b事業の新規取得に要した額40(*8)

(*11) 移転したp事業に対応する少数株主持分の増加 24=120×20%

(*12) 分離元企業(親会社)のp事業が移転されたとみなされる額40(=移転したp事業の時価200×20%)(これは、(*8) 分離先企業(子会社)に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)と、移転した事業に係る親会社の持分の減少額24(=移転したp事業の株主資本相当額120×20%)との間に生ずる差額16については、持分変動差額として取り扱う。

 

S社の資本の図、p事業の評価・換算差額等に係る記載は省略してある。

 

[設例26-3] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合−分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を上回る場合

(1) 前提条件

分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)、企業の時価は800)に移転する。

この結果、P社は次の対価を受け取る(分離後のS社に対する持分比率は、60%から62.4%(=(80株×60%+5株)/(80株+5株))となる。)。

・新株発行 5株(時価50)

・現金 150

なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

S社個別貸借対照表

現金

150

資本金

400

諸資産

450

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社の保有するS社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(S社)

0

諸資産

100

現金

150

移転利益(*1)

50

(*1) 受け取った現金等の財産の帳簿価額がp事業に係る株主資本相当額よりも大きい場合、当該差額を移転利益に計上する(第230項(1)A参照)。

 

A 分離元企業P社の連結財務諸表

ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理

・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

100

払込資本(*3)

0

のれん(*3)

50

現金

150

(*2) 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第231項(1)参照)。

(*3) p事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産より小さい場合、払込資本をゼロとし、当該差額をのれんに計上する(第231項(2)A参照)。

 

イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金(*4)

80

小数株主持分

240

(*4)少数株主持分600×40%+S社株式240−払込資本400=80

 

・p事業に係る移転利益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

移転損益(*5)

50

のれん(*6)

50

(*5) 個別上認識された移転利益は、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第232項参照)。

(*6) S社で認識されたのれんの消去

 

・S社株式の追加取得(60%→62.4%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*7)

14

子会社株式(*8)

19

のれん

5

 

 

(*7) 減少した少数株主持分14=600×(40%−37.6%)

(*8) 子会社株式(S社株式)を追加取得したとみなされる額19=800×(62.4%−60%)

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

0

子会社株式(*9)

△19

 

 

持分変動差額(*10)

19

(*9) S社株式の取得原価−S社株式を追加取得したとみなされる額19=△19

(*10) (200−150)×37.6%=19

 

 

p事業及びS社に係る事業分離前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S社)

150

小数株主持分(S社)

240

諸資産(P社100+S社450)

550

利益剰余金(S社)

120

 

 

p事業及びS社に係る事業分離後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

150

小数株主持分(S社)

226

諸資産(S社)

550

利益剰余金(S社)

120

のれん

5

持分変動差額

19

 

 

S社の資本の図は省略してある。

 

[設例26-4] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合−分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を下回る場合

(1) 前提条件

分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(資本金400、利益剰余金200)、企業の時価は800)に移転する。

この結果、P社は次の対価を受け取る(分離後のS社に対する持分比率は、60%から66.3%(=(80株×60%+15株)/(80株+15株))となる。)。

・ 新株発行 15株(時価150)

・ 現金 50

なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は、次のとおりである。

 

S社個別貸借対照表

現金

50

資本金

400

諸資産

550

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社の保有するS社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(S社)(*1)

50

諸資産

100

現金

50

 

 

(*1) 受け取った現金等の財産の帳簿価額がp事業に係る株主資本相当額より小さい場合、当該差額を子会社株式の取得原価とする(第230項(1)@参照)。

 

A 分離元企業P社の連結財務諸表

ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理

・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

100

払込資本(*3)

50

 

 

現金

50

(*2) 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第231項(1)参照)。

(*3) p事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産より大きい場合、当該差額を払込資本の増加として処理する(第231項(2)@参照)。

 

イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金(*4)

80

小数株主持分

240

(*4)少数株主持分600×40%+S社株式240−払込資本400=80

 

・p事業に係る移転損益の修正

 

(仕訳なし)

 

・S社株式の追加取得(60%→66.3%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*5)

38

子会社株式(*6)

51

のれん

13

 

 

(*5) 減少した少数株主持分38=600×(40%−33.7%)

(*6) 子会社株式(S社株式)を追加取得したとみなされる額51=800×(66.3%−60%)

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

50

子会社株式(*7)

△1

 

 

小数株主持分(*8)

17

 

 

持分変動差額(*9)

34

(*7)事業移転によるS社株式の取得原価50−S社株式を追加取得したとみなされる額51=△1

(*8) p事業移転に係る少数株主持分17=50×33.7%

(*9) (200−50−50)×33.7%=34

 

 

p事業及びS社に係る事業分離前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S社)

50

小数株主持分(S社)

240

諸資産(P社100+S社550)

650

利益剰余金(S社)

120

 

 

p事業及びS社に係る事業分離後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

50

小数株主持分(S社)

219

諸資産(S社)

650

利益剰余金(S社)

120

のれん

13

持分変動差額

34

 

 

S社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例27]株式交換により親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合の会計処理

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社はX2年4月1日に株式交換によりS社を完全子会社化した。

C 株式の交換比率は1:1 であり、P社は新株をS社の少数株主に20株(株式交換日の時価500(1株当たり25))を発行した。

D P社は株式交換の手続の中で、債権者保護手続を実施し、P社は新株の発行に伴う増加資本の全額をその他資本剰余金とした。

E 株式交換の日直前(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

2,000

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

3,200

小数株主持分

400

 

 

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,800

合計

3,200

合計

3,200

 

(2) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

S社株式(*1)

500

その他資本剰余金

500

(*1) 株式交換完全子会社株式の取得原価は、取得の対価(少数株主に交付した親会社株式の時価500)で算定される(第236項(1)参照)。

 

(3) P社の連結財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金(*2)

1,000

小数株主持分(*2)

200

 

 

S社株式(*2)

800

利益剰余金(*2)

200

小数株主持分(*2)

200

小数株主持分

400

S社株式

500

のれん(*3)

100

 

 

(*2) 開始仕訳

(*3) 追加取得した株式交換完全子会社株式の取得原価500と減少する少数株主持分の金額400との差額をのれんとして処理する(第237項参照)。

 

(4)株式交換後(X2年4月1日)の貸借対照表

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

1,300

その他資本剰余金

500

 

 

利益剰余金

1,000

合計

2,500

合計

2,500

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

2,000

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

3,200

資本金

1,000

のれん

100

資本剰余金

500

 

 

利益剰余金

1,800

合計

3,300

合計

3,300

 

 

[設例28]株式移転により親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の会計処理

(1) 前提条件

@ P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。

A X2年3月期のS社の当期純利益は1,000 であった。

B P社とS社はX2年4月1日に株式移転により株式移転設立完全親会社HD社を設立した。

C 株式の移転比率は1:1 であり、HD社は新株を200株発行し、P社の株主に100株、S社の株主に100株(うち、P社に80株、S社の少数株主に20株)割り当てた。株式移転日のP社株式の株価により算定した、S社の少数株主に交付したHD社株式の時価は500(1株当たり25)であった。

D HD社は株式移転の手続の中で、債権者保護手続を実施し、HD社は新株発行に伴う増加すべき株主資本のうち、資本金を1,000、残額をその他資本剰余金とした。

E 株式移転の日直前(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

S社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

2,000

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

P社連結貸借対照表

諸資産

3,200

小数株主持分

400

 

 

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,800

合計

3,200

合計

3,200

 

(2) HD社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

P社株式(*1)

2,000

資本金

1,000

S社株式(80%)(*2)

1,600

その他資本剰余金

3,100

S社株式(20%)(*3)

500

   

(*1) 株式移転完全子会社株式(旧親会社P社株式)の取得原価は、P社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額2,000 で算定する(第239項(1)@参照)。

(*2) 株式移転完全子会社株式(旧子会社S社株式)の取得原価のうち、P社が所有していた持分相当額(80%)については、S社の適正な帳簿価額による株主資本の額2,000により算定する(第239項(1)Aア参照)。

(*3) 株式移転完全子会社株式(旧子会社 S社株式)の取得原価のうち、少数株主持分相当額(20%)の取得原価は、S社の少数株主に交付した完全親株式HD社の時価500 で算定される(第239項(1)Aイ参照)。

 

(3) P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

HD社株式(*4)

800

S社株式

800

(*4) P社は株式移転設立完全親会社株式(その他有価証券)を取得することになるが、当該取引は共通支配下の取引として会計処理する。したがって、P社が取得するHD社の株式の取得原価は、S社株式の適正な帳簿価額とし(第239-4項参照)、株式移転時の株式の交換による損益は認識しない。

 

(4) HD社の連結財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金(*5)

1,000

P社株式(*5)

2,000

利益剰余金(*5)

1,000

 

 

資本金(*5)

1,000

S社株式(*5)

2,100

利益剰余金(*5)

1,000

 

 

のれん(*5)(*6)

100

 

 

自己株式(*7)

800

HD株式

800

資本剰余金(*8)

1,000

利益剰余金(P社)

1,000

資本剰余金(*8)

800

利益剰余金(S社)

800

(*5) 投資と資本の相殺消去

(*6) S社株式の取得原価(支払対価の時価)500と減少する少数株主持分相当額の金額400との差額100をのれんとして処理する。

(*7) P社が取得したHD社株式は、連結財務諸表上、自己株式に振り替える(第240項(2)参照)。

(*8) HD社の資本は、株式移転直前の連結財務諸表の資本項目に少数株主との取引により増加した払込資本の額を加算するように調整する(第240項(3)参照)。

 

(5) 株式移転直後(X2年4月1日)の貸借対照表は次のとおりとなる。

 

HD社個別貸借対照表

P社株式

2,000

資本金

1,000

S社株式

2,100

資本剰余金

3,100

合計

4,100

合計

4,100

 

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

1,000

HD社株式

800

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

諸資産

2,000

資本金

1,000

 

 

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

 

 

HD社連結貸借対照表

諸資産

3,200

資本金

1,000

のれん

100

資本剰余金

1,300

 

 

利益剰余金

1,800

 

 

自己株式

△800

合計

3,300

合計

3,300

 

 

[設例29] 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理

[設例29-1] 合併の対価が現金等の財産のみである場合

(1) 前提条件

P社は期首に、80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする合併をさせる。この結果、S1社の株主は現金200を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%のままである。)。

なお、P社の子会社S1社と子会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

S1社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

S2社個別貸借対照表

現金

200

資本金

400

諸資産

400

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金(*1)

160

子会社株式

64

 

 

交換損益(*2)

96

(*1) 200×80%=160 P社が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第244項参照)。

(*2) (*1)と引き換えられたS1社の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として交換損益として認識する(第244項参照)。

 

A 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表

ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*3)

100

現金(*3)

200

のれん(*3)

100

 

 

(*3) S2社がS1社から受入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上し、S1社の株主資本と取得の対価として支払った現金等の財産の適正な帳簿価額との差額をのれんとして計上する(第243項(1)参照)。

 

イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

諸資産

100

利益剰余金

20

 

 

 

ウ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

子会社株式

64

利益剰余金

4

小数株主持分

20

 

・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金

80

小数株主持分

240

 

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し(S1社はS2社に合併されているため)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

64

資本金

80

小数株主持分

20

利益剰余金

4

 

・子会社株式(S1社株式)の交換損益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

交換損益(*4)

96

利益剰余金(*5)

16

 

 

のれん(*6)

80

(*4) 個別上、認識された交換損益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第245項参照)。

(*5) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)の認識

(*6) S2社で認識されたのれんのうち持分80%分の消去(20%は少数株主との取引により生じたのれんとなる。)

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合直前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S2社)

200

小数株主持分(S1社20+S2社240)

260

諸資産(S1社100+S2社400)

500

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合直後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

160

小数株主持分(S2社)

240

諸資産(S1社100+S2社400)

500

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

のれん

20

 

 

 

 

S2社の資本の図、S1社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例29-2] 合併の対価が子会社株式のみである場合

(1) 前提条件

P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、S1社の株主はS2社の株式20株を受け取る。

この結果、合併後のS2社(株式数100株)に対する持分比率は、P社が64%(64株)、P社以外の旧S1社の株主が4%(4株)、P社以外の旧S2社の株主が32%(32株)となるものとする。

なお、P社の子会社S1社と子会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

S1社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

S2社個別貸借対照表

諸資産

600

資本金

400

 

 

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240であった。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式S2(*1)

64

子会社株式S1(*1)

64

(*1) P社が受け取ったS2社株式の取得原価は、引き換えられたS1社の株式に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上する(第248項参照)。

 

A 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表

ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

100

払込資本(*3)

100

(*2) S1社から受け入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第247項(1)参照)。

(*3)株主資本項目については、S2社は、S1社の合併期日前日に付された適正な帳簿価額による株主資本を払込資本として計上する。対価が株式のみの場合は、S1社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を、抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことができる。株主資本以外の項目については、S1社の評価・換算差額等の適正な帳簿価額を引き継ぐ(第247項(2)参照)。

 

イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

80

諸資産

100

利益剰余金

20

 

 

 

ウ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

子会社株式

64

利益剰余金

4

小数株主持分

20

 

・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金

80

小数株主持分

240

 

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し(S1社はS2社に合併されているため)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

64

資本金

80

小数株主持分

20

利益剰余金

4

 

・S2社株式の追加取得によるのれんの算定(少数株主との取引)

P社がS2社の4%を追加取得するため、少数株主との取引により、S2社の取得原価は当該S2社の時価800の4%である32(*4)ととらえ、連結上生ずる少数株主持分は24(*5)(=S2社の純資産の適正な帳簿価額600×4%)であることから、のれんが8(*6)生ずると考える。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*5)

24

子会社株式(*4)

32

のれん(*6)

8

 

 

 

・持分変動差額の認識

吸収合併消滅会社S1社の株主(親会社)P社の連結上、被結合企業S1社に対する持分が交換されたとみなされる額32(交換された被結合企業S1社の時価200に減少した株主P社の持分比率16%を乗じた額であり、上記の結合企業に対して投資したとみなされる額と同額となる。)と、被結合企業S1社に係る被結合企業の株主P社の持分の減少額16(被結合企業S1社に係る帳簿価額による株主資本額100に減少した株主P社の持分比率16%を乗じた額)との間に生ずる差額16については、持分変動差額として取り扱う(第249項参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

100

子会社株式(*7)

32

 

 

小数株主持分(*8)

36

 

 

利益剰余金(*9)

16

 

 

持分変動差額

16

(*7) 企業結合によるS2社株式の取得原価(=S1社株式の帳簿価額)64−S2社株式の新規取得に要した額32

(*8) 被結合企業S1社に係る少数株主持分36=S1社の諸資産の適正な帳簿価額100×36%

(*9) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)の認識

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合前のP社の抜粋連結財務諸表

諸資産(S1社100+S2社600)

700

小数株主持分(S1社20+S2社240)

260

 

 

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合後のP社の抜粋連結財務諸表

諸資産(S1社100+S2社600)

700

小数株主持分(S1社36+S2社216)

252

のれん

8

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

 

 

持分変動差額

16

 

 

S2社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例29-3] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合

−結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合(1)

(1) 前提条件

P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、純資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併をさせる。この結果、S1社の株主は次の対価を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%から61.2%(=(80株×60%+5株×80%)/(80株+5株)となる))。

・新株発行 5株(時価50)

・現金 150

なお、P社の子会社である吸収合併消滅会社S1社と吸収合併存続会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

S1社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

S2社個別貸借対照表

現金

150

資本金

400

諸資産

450

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(S2社)(*1)

0

子会社株式(S1社)(*1)

64

現金(*1)

120

交換利益(*1)

56

(*1) P社がS2社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。当該価額がS1社の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合、原則として、当該差額を交換利益として認識し、S2社の株式の取得価額はゼロとする(第252項参照)。

 

A 吸収合併消滅会社 S1社の株主P社の連結財務諸表

ア  吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理

・ P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

100

払込資本(*3)

0

のれん(*3)

50

現金

150

(*2) 共通支配下の取引により、移転前に付された適正な帳簿価額による(第251項(1)参照)。

(*3) S1社の適正な帳簿価額による株主資本の額から合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額を控除した額がマイナスとなる場合は、払込資本をゼロとし、のれんを計上する(第251項(2)@参照)。

 

イ  吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理

・ P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

諸資産

100

利益剰余金

20

 

 

 

ウ  吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

子会社株式

64

利益剰余金

4

小数株主持分

20

 

・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

400

子会社株式

240

利益剰余金

80

小数株主持分

240

 

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

64

資本金

80

小数株主持分

20

利益剰余金

4

 

・子会社株式(S1社株式)の交換利益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

交換利益(*4)

56

利益剰余金(*5)

16

 

 

のれん(*6)

40

(*4) 個別上、認識された交換利益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第253項参照)。

(*5) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)の認識

(*6) S2社で認識されたのれん50のうち持分80%分40の消去(20%は少数株主との取引により生じたのれんとなる。)

 

・子会社株式(S2社株式)の追加取得(60%→61.2%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*7)

7

子会社株式(S社)(*8)

9

のれん

2

   

(*7) 減少した少数株主持分7=600×(40%−38.8%)

(*8) 子会社株式(S2社株式)を追加取得したとみなされる額9=800×(61.2%−60%)

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

0

子会社株式(*9)

△9

 

 

持分変動差額(*10)

9

(*9) 子会社株式の取得原価0−子会社株式を追加取得したとみなされる額9=△9

(*10) (200−150)×18.8%=9

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S2社)

150

少数株主持分(S1社20+S2社240)

260

諸資産(S1社100+S2社450)

550

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

120

少数株主持分(S2社)

233

諸資産(S1社100+S2社450)

550

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

のれん

12

持分変動差額

9

 

S2社の資本の図、消滅するS1社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例29-4] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合

−結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合(2)

(1) 前提条件

P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、純資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併をさせる。この結果、S1社の株主は次の対価を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%から62.2%(=(80株×60%+10株×80%)/(80株+10株)となる。))。

・S2社株式(自己株式) 10株(S2社の適正な帳簿価額60、時価100)

・X社株式(他社の株式) 10株(S2社の適正な帳簿価額10、時価20)

・現金 80

なお、P社の子会社である吸収合併消滅会社S1社と吸収合併存続会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

S1社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

S2社個別貸借対照表

現金

80

資本金

460

その他有価証券

20

利益剰余金

200

諸資産

510

その他有価証券評価差額金

10

 

 

自己株式

△60

合計

610

合計

610

 

また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240とする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(S2社)(*1)

0

子会社株式(S1社)(*2)

64

その他有価証券(X社)(*2)

16

交換利益(*2)

8

現金(*2)

64

その他有価証券評価差額金(*2)

8

(*1) 子会社の自己株式を受け入れても、新株発行による株式受入れと同様に考えるため、移転前に付された適正な帳簿価額では計上しない。

(*2) P社がS2社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。当該価額がS1社の株式の適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識し、取得するS2社株式の取得価額はゼロとする(第252項参照)。

 

A 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表

ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*3)

100

自己株式(*4)

60

自己株式処分差損(*4)

50

その他有価証券(*3)

20

その他有価証券評価差額金(*3)

10

現金

80

(*3) S1社より受け入れる資産及び負債は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第251項(1)参照)。

(*4) S1社の適正な帳簿価額による株主資本の額から合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額(その他有価証券評価差額金は控除する)を控除した額がプラスである場合、当該差額を払込資本とする(第251項(2)@参照)が、自己株式を処分しているため、交付した自己株式の移転前に付された適正な帳簿価額を控除して自己株式処分差額を算出する。

 

イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理

・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

諸資産

100

利益剰余金

20

 

 

 

ウ 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

子会社株式

64

利益剰余金

4

小数株主持分

20

 

・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

460

子会社株式

240

利益剰余金

80

小数株主持分

240

 

 

自己株式

60

 

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

64

資本金

80

少数株主持分

20

利益剰余金

4

 

・子会社株式(S1社株式)の交換利益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

交換利益(*5)

8

利益剰余金(*6)

8

(*5) 個別上、認識された交換利益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第253項参照)。

(*6) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)のうち、8を認識

 

・子会社株式(S2社株式)の追加取得(60%→62.2%)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*7)

13

子会社株式(S2社)(*8)

18

のれん

5

 

 

(*7) 子会社株式(S2社株式)の追加取得により減少した少数株主持分13=600×(40%−37.8%)

(*8) 子会社株式(S2社株式)を追加取得したとみなされる額18=800×(62.2%−60%)

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

0

自己株式処分差損(*9)

50

自己株式(*9)

60

子会社株式(*10)

△18

 

 

少数株主持分(*11)

4

 

 

利益剰余金(*12)

8

 

 

持分変動差額

16

(*9) 合併の受入時に計上された金額

(*10) S2社株式の取得原価0−S社株式の追加取得に要した額18=△18

(*11) S1社の純資産の受入れによる増加資本の額10×37.8%=4

(*12) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)のうち、未計上の8を認識

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合前のP社の抜粋連結財務諸表

現金(S2社)

80

小数株主持分(S1社20+S2社240)

260

その他有価証券(S2社)

20

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

諸資産(S1社100+S2社510)

610

その他有価証券評価差額金

10

 

 

 

S1社及びS2社に係る企業結合後のP社の抜粋連結財務諸表

現金(P社)

64

小数株主持分(S2社)

231

その他有価証券(P社)

16

利益剰余金(S1社16+S2社120)

136

諸資産(S1社100+S2社510)

610

その他有価証券評価差額金

8

のれん

5

持分変動差額

16

 

 

S2社の資本の図、消滅するS1社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例29-5] 子会社とその子会社との合併(子会社と孫会社との合併)

(1) 前提条件

@ P社が100%子会社のS1社を100で設立し、その後、S1社がS2社の株式の80%を取得原価100で一括取得した。

A S1社がS2社を取得した時点のS2社の個別貸借対照表は、次のとおりである。

 

S2社個別貸借対照表

諸資産(*1)

30

資本金

30

合計

30

合計

30

(*1) 諸資産のうち、土地は10(簿価)であり、S1社がS2社を取得した日の当該土地の時価(S1社の連結財務諸表上の帳簿価額)は30であった(評価差額20)。

なお、S1社がS2社の株式の80%を取得したときに発生したのれん60(=100−(30+20)×80%)は合併期日の前日時点では償却済みであるものとする。

 

B S1社(P社の100%子会社、発行済株式数200株、時価200)は、S2社(時価100)(S1社が株式の80%保有(S1社における帳簿価額100))を吸収合併した。

C S1社は、合併にあたり、S2社の少数株主に新株を20株交付した。S1社は、合併による増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。

D P社、S1社及び子会社S2社の合併期日の前日の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

子会社株式(S1社)

100

資本金

100

合計

100

合計

100

 

 

S1社個別貸借対照表

諸資産

60

資本金

100

子会社株式(S2社)

100

利益剰余金

60

合計

160

合計

160

 

 

S2社個別貸借対照表

諸資産

60

資本金

30

 

 

利益剰余金

30

合計

60

合計

60

 

 

図は省略してある。

 

(2)考え方

@ 合併直前のP社の連結財務諸表上の会計処理

・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

100

子会社株式(S1社)

100

 

・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*2)

20

評価差額

20

資本金

30

子会社株式(S2社)

100

利益剰余金(*3)

60

少数株主持分(*5)

16

利益剰余金(*4)

6

   

評価差額金

20

   

(*2) S1社がS2社を取得した日の土地の評価差額20

(*3) S1社がS2社を取得した時に生じたのれんの償却額60

(*4) 取得後利益剰余金のうち、少数株主への振替分6=30×20%

(*5) (S2社資本金30+S2社利益剰余金30+土地の評価差額20)×20%=16

 

 

企業結合日直前のP社の連結財務諸表

諸資産(*6)

140

小数株主持分

16

 

 

資本金

100

 

 

利益剰余金(*7)

24

合計

140

合計

140

(*6) S1社諸資産60+S2社諸資産60+評価差額20=140

(*7) S1社利益剰余金60+S2社利益剰余金30−のれん償却額60−少数株主振替分6=24

 

A 合併の会計処理

・子会社S1社における吸収合併の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産80%(*8)

64

子会社株式(S2社)

100

抱合せ株式消滅差損(*9)

36

   

諸資産(20%)(*8)(*10)

16

資本剰余金(*10)

16

(*8) 子会社S1社が孫会社S2社から受け入れる資産及び負債は、子会社にとっての連結財務諸表上の帳簿価額(80=60+20)によることになる(第207項参照)。

(*9) 受け入れた資産と負債の差額のうち株主資本のS1社持分相当額と、S1社が合併直前に保有していたS2社株式の適正な帳簿価額との差額を、特別損益に計上する(第206項(4)参照)。

(*10) S1社が合併の対価としてS2社の少数株主にS1社の株式を交付する取引は、企業集団の最上位の親会社であるP社との取引ではないため、S1社の増加すべき株主資本の額は、連結財務諸表上の帳簿価額(80=60+20)に持分比率(20%)を乗じて算定する(第206項(4)参照)。

 

 

企業結合後のS1社の個別貸借対照表

諸資産

140

資本金

100

 

 

資本剰余金

16

 

 

利益剰余金

60

 

 

利益剰余金(抱合せ株式消滅差損)

△36

合計

140

合計

140

 

B 合併後のP社の連結財務諸表上の会計処理

・ S1社の合算

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

140

資本金

100

 

 

資本剰余金

16

 

 

利益剰余金

60

 

 

利益剰余金(抱合せ株式消滅差損)

△36

 

・S1社における合併仕訳の消去

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式(S2社)

100

諸資産

80

資本剰余金

16

抱合せ株式消滅差損

36

 

・S1社株式に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

100

子会社株式(S1社)

100

 

・S2社の合併期日の前日の個別貸借対照表の合算

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

60

資本金

30

 

 

利益剰余金

30

 

・S2社株式に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

20

評価差額金

20

資本金

30

子会社株式(S2社)

100

利益剰余金

60

小数株主持分

16

利益剰余金

6

 

 

評価差額

20

 

 

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

小数株主持分(*11)

9

持分変動差額

9

持分変動差額

5.5

小数株主持分(*12)

5.5

(*11) S2社の少数株主持分への振替9=(S2社の株主資本の帳簿価額60+評価差額20)×(20%−9.09%)

(*12) S1社に対する少数株主持分の減少5.5=(S1社の株主資本の帳簿価額160−S2社株式の帳簿価額100)×9.09%

S1社は最上位の親会社ではないため、S1社によるS2社の少数株主との取引は、P社の連結財務諸表上も、帳簿価額を基礎とした会計処理を行うことになる。よって、S2社の時価(持分)である11(=100×(90.91%−80%))について、少数株主との取引に準じたのれん2(=11−80×(90.91%−80%))を認識することはせず、また、S1社の持分の減少に係る持分変動差額5.5[={(200−100×80%)−(160−100)}×(100%−90.91%)]を認識することはしない。この差額3.5(=5.5−2)は、少数株主持分の変動額3.5(=9−5.5)と同額となる。

 

企業結合後のP社の連結財務諸表

諸資産(*13)

140

小数株主持分

12.5

 

 

資本金

100

 

 

利益剰余金(*14)

24

 

 

持分変動差額

3.5

合計

140

合計

140

(*13) S1社諸資産60+S2社諸資産60+土地の評価差額20=140

(*14) S1社利益剰余金60+S2社利益剰余金30−のれん償却額60−S2社の企業結合前の少数株主振替分6=24

合併後の連結財務諸表では、合併前の連結財務諸表と比較して、少数株主持分が変動し、持分変動差額が生じることとなる。

 

S1社の資本の図は省略してある。

 

[設例30] 被結合企業の株主に係る会計処理−受取対価が結合企業の株式のみの場合

(1) 前提条件

A社の40%関連会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、30%関連会社Y社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、X社の株主はY社の株式20株を受け取る。

この結果、合併後のY社(株式数100株)に対する持分比率は、A社が32%(32株)、A社以外の旧X社の株主が12%(12株)、A社以外の旧Y社の株主が56%(56株)となるものとする。なお、A社の関連会社である吸収合併消滅会社X社と吸収合併存続会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

X社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

Y社個別貸借対照表

諸資産

600

資本金

400

 

 

利益剰余金

200

合計

600

合計

600

 

また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は32、Y社の株式の適正な帳簿価額は120であった。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社の株主A社の個別財務諸表上の会計処理(第277項(1)参照)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式Y

32

関連会社株式X

32

 

A 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表

ア 吸収合併存続会社Y社の個別財務諸表上の会計処理(第277項(2)参照)

・A社の関連会社Y社が関連会社X社を合併(パーチェス法)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産

150

払込資本

200

のれん

50

 

 

 

イ 吸収合併消滅会社X社の個別財務諸表上の会計処理

・A社の関連会社X社は関連会社Y社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金

80

諸資産

100

利益剰余金

20

 

 

 

ウ 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・関連会社株式(X社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

8

利益剰余金

8

 

・関連会社株式(Y社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

60

利益剰余金

60

 

・Y社株式の取得によるのれんの算定(30%から32%へ)

合併により、Y社に対するA社の持分が30%から32%に増加した。追加取得に準じて会計処理するため、持分法適用上、部分時価評価法の原則法の適用により、のれん4(=吸収合併存続会社Y社に対して追加投資したとみなされる額16 (*1)−追加取得によるA社の持分の増加額12(*2))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*1) 追加投資したとみなされる額16=合併前のY社の時価800×2%

(*2) 追加取得によるA社の持分の増加額12=合併前のX社の追加取得時の資産及び負債の帳簿価額による株主資本600×2%

 

・持分変動差額の認識(40%から32%へ)

合併により、吸収合併存続会社Y社の株主A社の連結上、被結合企業X社に対する持分が交換されたとみなされる額16 (*3)と、被結合企業X社に係る株主A社の持分の減少額8(*4)との間に生ずる差額8については、持分変動差額として取り扱う。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

8

持分変動差額

8

(*3) 被結合企業X社に対する持分が交換されたとみなされる額16(上記の結合企業に対する追加投資額と同額となる。)=交換された被結合企業X社の時価200×減少した株主A社の持分比率8%

(*4) 被結合企業X社に係る株主A社の持分の減少額8=被結合企業X社に係る帳簿価額による株主資本100×減少した株主A社の持分比率8%

 

 

X社及びY社に係る企業結合直前のA社の抜粋連結財務諸表

関連会社株式(X社40+Y社180)

220

利益剰余金(X社8+Y社60)

68

 

 

X社及びY社に係る企業結合直後のA社の抜粋連結財務諸表

関連会社株式

228

利益剰余金(X社8+Y社60)

68

 

 

持分変動差額

8

 

Y社の資本の図は省略してある。

 

[設例31] 被結合企業の株主に係る会計処理−受取対価が現金等の財産と結合企業の株式の場合

(1) 前提条件

A社の80%子会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、40%関連会社Y社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、諸資産の時価は700、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併を行う。この結果、X社の株主は次の対価を受け取る(合併後のY社に対する持分比率は、A社が40%から44.4%(=(80株×40%+10株×80%)/(80株+10株)となる。))。

・Y社株式(自己株式) 10株(Y社の適正な帳簿価額60、時価100)

・B社株式(他社の株式)10株(Y社の適正な帳簿価額10、時価20)

・現金 80

なお、A社の子会社である吸収合併消滅会社X社と、A社の関連会社である吸収合併存続会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

 

X社個別貸借対照表

諸資産

100

資本金

80

 

 

利益剰余金

20

合計

100

合計

100

 

 

Y社個別貸借対照表

現金

80

資本金

460

その他有価証券

20

利益剰余金

200

諸資産

510

その他有価証券評価差額金

10

 

 

自己株式

△60

合計

610

合計

610

 

また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は64、Y社の株式の適正な帳簿価額は160であったものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 吸収合併消滅会社の株主A社の個別財務諸表上の会計処理(第282項(2)参照)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式(Y社)(*1)

0

子会社株式(X社)

64

その他有価証券(B社)(*2)

16

交換利益(*1)

16

現金(*2)

64

 

 

(*1) A社で受け取った現金等の財産が、引き換えられたX社株式の適正な帳簿価額を上回るため、当該差額を交換利益として記載する(Y社株式の取得原価はゼロとする。)。

(*2) 共通支配下の取引には該当しないため、A社で受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。

 

A 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表(第282項(2)参照)

ア 吸収合併存続会社Y社の個別財務諸表上の会計処理

・A社の関連会社Y社が子会社X社を合併(取得)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

諸資産(*3)

150

自己株式(*5)

60

   

自己株式処分差益(*5)

40

 

 

その他有価証券(*5)

20

のれん

50

現金(*5)

80

その他有価証券評価差額金(*4)

10

その他有価証券処分益(*4)

10

(*3) 受け入れる資産の時価

(*4) 取得の対価に用いた有価証券評価差額を実現益として計上。なお、次の持分法の適用にあたっては、その他有価証券処分益に係る未実現利益の消去及び持分法による投資損益とする処理については、省略している。

(*5) 交付した株式の時価100、有価証券の時価20、現金80の計200を取得原価とする。

 

イ 吸収合併消滅会社X社の個別財務諸表上の会計処理

・A社の子会社X社は関連会社Y社との合併により消滅

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

80

諸資産

100

利益剰余金

20

   

 

ウ 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表上の会計処理

<連結修正仕訳>

・子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

払込資本

80

子会社株式

64

利益剰余金

4

小数株主持分

20

 

・関連会社株式(Y社株式)に関する開始仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

80

利益剰余金

80

 

・子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳の振戻し

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

子会社株式

64

払込資本

80

小数株主持分

20

利益剰余金

4

 

・子会社株式(X社株式)の交換損益の修正

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

交換利益(*6)

7

利益剰余金(*7)

7

(*6) 個別財務諸表上、認識された交換利益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて、投資会社の持分相当額7(16×44.4%)を消去

(*7) X社を連結していたことにより生じていた親会社A社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)のうち、7を認識

 

・X社株式に関する取得後剰余金の認識

X社を連結していたことにより生じていた親会社A社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20−4)のうち、9を認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

9

利益剰余金

9

 

・Y社株式の追加取得(40%→44.4%)によるのれんの算定

A社がY社の4.4%を追加取得するため、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん4(借方)(=結合企業に対して投資したとみなされる額35(*8)−これに対応する企業結合直前の結合企業の資本31(*9))を算定する。

 

(仕訳なし)

(*8) Y社の事業の時価800×4.4%=35

(*9) Y社の諸資産の時価700×4.4%=31

 

・持分変動差額の認識

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

関連会社株式

35

持分変動差額(*10)

35

(*10) (200−100)×35.6%(80%−44.4%)=35

 

 

X社及びY社に係る企業結合前のA社の抜粋連結財務諸表

諸資産(X社)

100

小数株主持分(X社)

20

関連会社株式

240

利益剰余金(X社16+Y社80)

96

 

 

X社及びY社に係る企業結合後のA社の抜粋連結財務諸表

現金

64

利益剰余金(X社16+Y社80)

96

その他有価証券

16

持分変動差額

35

関連会社株式

284

交換利益

9

 

 

Y社の資本の図は省略してある。

 

 

[設例32] 取得とされた吸収合併の取得企業(吸収合併存続会社)の税効果会計

1. 非適格合併の場合の税効果会計

(1) 前提条件

Y社はA社を吸収合併した。この合併は取得と判定された。

@ 取得原価 1,000

A 被取得企業の識別可能資産aの時価(取得原価の配分額)800

B 資産aの税務上の取得価額 1,000(=取得企業における税務上の取得原価)

C 法定実効税率 40%

D 取得企業の繰延税金資産は全額回収可能と見込まれる。

E 税務上の適格合併に該当しない。

 

(2) 取得企業における税効果会計の考え方

取得企業は、企業結合日において、被取得企業から受け入れた資産及び負債等に関して生じた一時差異等(識別可能資産aに対する取得原価の配分額800と当該資産の税務上の取得価額1,000との差額200(将来減算一時差異))について税効果80を認識するが、のれん120については税効果を認識しない(第71項及び第72項参照)。

被取得企業における繰延税金資産の計上額にかかわらず、取得企業における繰延税金資産の回収可能性の判断に基づき、繰延税金資産を計上する(第75項参照)。

企業結合日における仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資産a

800

株主資本

1,000

繰延税金資産

80

 

 

のれん

120

 

 

 

なお、本設例では、企業結合日において繰延税金資産は全額回収可能と見込んでいるが、企業結合年度末において回収可能性を見直し、回収見込額を修正した場合には企業結合日における繰延税金資産及びのれんの額を修正して計上するものとする(第73項参照)。

また、企業結合日における繰延税金資産の回収可能性は、企業結合日後1 年以内(原則として、1年を経過する日以後最初に到来する決算期)に確定させるため、企業結合年度の翌年度において回収見込額を修正した場合は、明らかに企業結合年度におけるものと考えられるときを除き、当該年度(企業結合年度の翌年度)の損益(法人税等調整額)に計上する(第73項参照)。

 

2. 適格合併の場合の税効果会計

(1) 前提条件

Y社はA社を吸収合併した。この合併は取得と判定された。

@ 取得原価 1,000

A 被取得企業の識別可能資産aの時価(取得原価の配分額)800

B 資産aの税務上の帳簿価額 700(=被取得企業における税務上の帳簿価額であり、取得企業における税務上の引継価額)

C 被取得企業における税務上の繰越欠損金 200

D 法定実効税率 40%

E 取得企業の繰延税金資産は全額回収可能と見込まれる。

F 税務上の適格合併に該当する。

 

(2) 取得企業における税効果会計の考え方

取得企業は、企業結合日において、被取得企業から受け入れた資産及び負債等に関して生じた一時差異等(識別可能資産aに対する取得原価の配分額800と当該資産の税務上の引継価額700との差額100(将来加算一時差異)及び被取得企業から引き継いだ税務上の繰越欠損金200)について税効果を認識するが、のれん160については税効果を認識しない(第71項及び第72項参照)。

被取得企業における繰延税金資産の計上額にかかわらず、取得企業における繰延税金資産の回収可能性の判断に基づき、繰延税金資産を計上する(第75項参照)。

企業結合日における仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資産a

800

株主資本

1,000

繰延税金資産

80

繰延税金負債

40

のれん

160

 

 

 

なお、企業結合日後の繰延税金資産の回収可能性の見直し及び確定の手続は上記1.(2)と同様である。

 

[設例33] 取得とされた株式移転における株式移転設立完全親会社の税効果会計

(1) 前提条件

@ 株式移転により、A社(取得企業)とB社(被取得企業)は株式移転設立完全親会社C社を設立した。

A 法定実効税率は40%とする。

B A社株式の時価を基礎に株式の交換比率を考慮して算定したB社株式の時価は600であった。

C 株式移転日直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

A社(取得企業)個別貸借対照表

土地(*1)

500

株主資本

540

繰延税金資産

40

 

 

合計

540

合計

540

(*1) 税務上の簿価は600とする。

 

 

B社(被取得企業)個別貸借対照表

土地(*2)

300

株主資本

380

繰延税金資産

80

 

 

合計

380

合計

380

(*2) 税務上の簿価は500とする。

 

(2) C社(株式移転設立完全親会社)の処理

@ 株式移転時の会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式(*3)

540

払込資本

540

B社株式(*4)

600

払込資本

600

(*3) A社株式の取得原価は、株式移転日の前日における取得企業(A社)の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定する(第121項(1)参照)。なお、 税務上の簿価は600 である。

(*4) B社株式の取得原価は、C社が交付した株式の時価により算定する(第121項(2)参照)。なお、税務上の簿価は500 である。

 

株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社株式を継続して保有するのであれば、取得時点から生じている一時差異について、税効果を認識しない。ただし、当該株式移転完全子会社株式について予測可能な期間に売却する予定がある場合(一部売却で売却後も子会社又は関連会社となる予定の場合は売却により解消する部分の一時差異に限る)、又は売却その他の事由によって当該株式移転完全子会社株式がその他有価証券として分類されることとなった場合で、かつ、回収可能性があると判断された場合には、当該一時差異に対する税効果を計上する(第123項(第115項)及び第404項参照)。

A 期末の会計処理

 

(仕訳なし)

 

 

[設例34] (削除)

[設例35] 共通支配下の取引における吸収合併存続会社の税効果会計

(1) 前提条件

@ P社(親会社)はS社(子会社(P社の持株比率80%))を合併した(吸収合併存続会社はP社とする。)。

A P社は株式(時価500)をS社の少数株主に交付した。

B 法定実効税率は40%とする。

C 合併期日前日の個別貸借対照表は次のとおりである。

 

P社個別貸借対照表

諸資産

1,200

資本金

2,000

S社株式

800

 

 

合計

2,000

合計

2,000

 

 

S社個別貸借対照表

棚卸資産(*1)

1,800

資本金

1,000

繰延税金資産

200

利益剰余金

1,000

合計

2,000

合計

2,000

(*1) 税務上の簿価は2,300とする。

 

(2) P社の会計処理

@ 企業結合日における会計処理

P社が、S社に係る資産及び負債の合併期日の前日に付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合には、繰延税金資産についても、P社における回収可能性の有無にかかわらず合併期日の前日に付された適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ(第206項(1)参照)。

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

棚卸資産(*2)

1,440

S社株式

800

繰延税金資産

160

抱合株式消滅差益

800

棚卸資産(*2)

360

払込資本

500

繰延税金資産

40

 

 

のれん

100

 

 

(*2) 資産を2分割しているのは会計処理の説明のためである。

 

なお、取得した諸資産に係る一時差異に対する繰延税金資産の回収可能性は、通常と同様に、期末において見直される。

 

A 回収可能性がある場合の期末における会計処理

 

(仕訳なし)

 

B 回収可能性がない場合の期末における会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

法人税等調整額

200

繰延税金資産

200

 

 

[設例36]事業分離日の属する事業年度の前期末の分離元企業における繰延税金資産の回収可能性(投資が継続する場合)

1. 残存事業に係る将来所得の見積額が残存事業に係る将来減算一時差異の額を上回る場合

(1) 前提条件

@ a事業及びb事業を営む分離元企業X社が、翌事業年度に会社分割によりa事業を移転する。事業分離後もX社のa事業に関する投資は継続し、会計上の移転損益は認識されない。

A 分離元企業X社の実際の将来所得の見積額(残存事業bに係る将来減算一時差異の解消見込額考慮前)は、税務上の移転損益を含め150とする。

B 分離元企業X社の将来減算一時差異は200(うちa事業100、b事業100)とする。

C 事業分離が行われないと仮定した場合の分離元企業X社の将来所得の見積額(将来減算一時差異の解消見込額考慮前)は190(うちa事業80、b事業110)とする。

D a事業及びb事業の将来減算一時差異はすべて翌事業年度に解消するものとし、将来所得の見積額は事業分離が行われないと仮定した場合の翌事業年度の見積額とする。

(2)事業分離日の属する事業年度の前期末における繰延税金資産の回収可能性の判断

@ 移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項(2)参照)

移転する事業に係る課税所得等と相殺し切れなかった将来減算一時差異20(=100−80)が生じている。したがって、残存事業bに係る将来所得の見積額110と残存事業bに係る将来減算一時差異100を相殺した残余10を移転事業aに係る将来所得の見積額80に加算した額90を基礎として、移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性を判断する。

A 残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項なお書き参照)

残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性については、事業分離がないと仮定した場合の残存事業bに係る将来所得の見積額110にかかわらず、事業分離をする分離元企業X社の将来の所得の見積額150を基礎として判断する。

B X社全体の繰延税金資産の回収可能性の判断

@及びAの結果、分離元企業X社は、X社全体の将来減算一時差異200のうち190(=a事業90+b事業100)の将来減算一時差異に係る繰延税金資産が回収可能と判断される。

 

 

将来減算

一時差異

将来所得

回収可能

見込額

備考

移転事業a(*)

100

80

90

 

(残存事業b)(*)

(100)

(110)

残余10をa事業に充てる。

実際の残存事業b

100

150

100

将来所得は移転損益を含む。

X社合計

200

190

 

(*) 移転事業a欄及び残存事業b欄の金額は事業分離がないと仮定した場合の金額である。

 

2. 残存事業に係る将来所得の見積額が残存事業に係る将来減算一時差異の額を下回る場合

(1) 前提条件

@ a事業及びb事業を営む分離元企業X社が、翌事業年度に会社分割によりa事業を移転する。事業分離後もX社のa事業に関する投資は継続し、会計上の移転損益は認識されない。

A 分離元企業X社の実際の将来の所得見積額(残存事業bに係る将来減算一時差異の解消見込額考慮前)は、税務上の移転損益を含め10とする。

B 分離元企業X社の将来減算一時差異は200(うちa事業100、b事業100)とする。

C 事業分離が行われないと仮定した場合の分離元企業X社の将来所得の見積額(将来減算一時差異の解消見込額考慮前)は120(うちa事業130、b事業△10)とする。

D a事業及びb事業の将来減算一時差異はすべて翌年度に解消するものとし、将来所得の見積額は事業分離が行われないと仮定した場合の翌年度の見積額とする。

(2) 事業分離日の属する事業年度の前期末における繰延税金資産の回収可能性の判断

@ 移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項(2)参照)

移転する事業に係る課税所得等と相殺し切れなかった将来減算一時差異は生じていない。

したがって、移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性は、移転事業aに係る将来所得の見積額130を基礎として判断する。

A 残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項なお書き参照)

残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性については、事業分離がないと仮定した場合の残存事業bに係る将来所得の見積額△10にかかわらず、事業分離をする分離元企業X社の将来所得の見積額10を基礎として判断する。

B X社全体の繰延税金資産の回収可能性の判断

@及びAの結果、分離元企業X社については、X社全体の将来減算一時差異200のうち110(=a事業100+b事業10)の将来減算一時差異に係る繰延税金資産が回収可能と判断される。

 

 

将来減算

一時差異

将来所得

回収可能

見込額

備考

移転事業a(*)

100

130

100

 

(残存事業b)(*)

(100)

(△10)

残余なし。

実際の残存事業b

100

10

10

将来所得は移転損益を含む。

X社合計

200

110

 

(*) 移転事業a欄及び残存事業b欄の金額は事業分離がないと仮定した場合の金額である。

 

 

[設例37]事業分離日の分離元企業における税効果会計の適用(投資が継続する場合)

(1) 前提条件

@ 吸収分割により、分離元企業P社(親会社)はp事業を分離先企業S社(P社の100%子会社)に移転し、対価としてS社株式を受け取った。当該取引は共通支配下の取引であり、P社において移転損益は認識されない(投資が継続する)。

A 税務上、当該会社分割は適格分社型分割に該当するものとする。このため、P社におけるS社株式の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の税務上の帳簿価額に基づくため、分離先企業株式に関して、移転したp事業に係る資産及び負債について生じていた一時差異と同額の一時差異が生ずる。

B 法定実効税率は40%とする。

C P社における移転前の貸借対照表、S社に移転するp事業の内容等は次のとおりである。

 

P社における移転前の貸借対照表

現金

100

繰延税金負債(評価差額分)

40

有価証券(*1)

200

資本金

200

棚卸資産(*2)

50

利益剰余金

170

繰延税金資産(棚卸資産分)

20

その他有価証券評価差額金

60

S社株式

100

 

 

合計

470

合計

470

・説明の便宜上、繰延税金資産と繰延税金負債は両建て表示している。

(*1) 会計上の帳簿価額及び税務上の帳簿価額は100とする。

(*2) 税務上の帳簿価額は100とする。

 

 

S社における移転前の貸借対照表

現金

100

資本金

100

合計

100

合計

100

 

 

P社における移転前の連結貸借対照表

現金

200

繰延税金負債(評価差額分)

40

有価証券

200

資本金

200

棚卸資産

50

利益剰余金

170

繰延税金資産(棚卸資産分)

20

その他有価証券評価差額金

60

合計

470

合計

470

 

S社に移転するp事業(評価・換算差額等及び繰延税金資産及び負債を含めて記載している。)

 

有価証券

200

繰延税金負債(評価差額分)

40

 

 

その他有価証券評価差額金

60

棚卸資産

50

   

繰延税金資産(棚卸資産分)

20

   

 

(2) P社におけるp事業移転に関する会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

S社株式

100

有価証券

200

その他有価証券評価差額金

60

 

 

繰延税金負債(評価差額分)

40

 

 

 

S社株式

50

棚卸資産

50

繰延税金資産(S社株式分)

20

繰延税金資産(棚卸資産分)

20

・仕訳を分割しているのは、会計処理の理解のためである。

・P社が取得するS社株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(移転事業に係る繰延税金資産及び負債を含まない(第108項(2)参照)。)により算定する(第226項参照)。

 

(3) S社におけるp事業受入に関する会計処理

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

有価証券

200

繰延税金負債

40

 

 

払込資本

100

 

 

その他有価証券評価差額金

60

 

棚卸資産

50

払込資本

70

繰延税金資産

20

 

 

・仕訳を分割しているのは、会計処理の理解のためである。

・共通支配下の取引のため、P社における適正な帳簿価額により資産及び負債(繰延税金資産及び負債を含む(第87項(1)参照)。)並びに評価・換算差額等を受入れる(第227項参照)。

・移転事業に係る株主資本相当額を払込資本の増加として処理する(第227項参照)。

 

(4) P社における連結修正仕訳

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

資本金(*3)

100

S社株式(*3)

100

払込資本(*4)

100

S社株式(*4)

100

払込資本(*4)

70

S社株式(*4)

50

 

 

繰延税金資産(S社株式分)(*4)

20

(*3) 開始仕訳

(*4) 資本連結上の投資原価は移転する事業の移転直前の適正な帳簿価額(当該事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を含む(第402項参照)。)であるとし、その投資原価とS社の資本を消去する。

 

(5) p事業移転後のP社の連結貸借対照表

 

P社における移転後の連結貸借対照表

現金

200

繰延税金負債(評価差額分)

40

有価証券

200

資本金

200

棚卸資産

50

利益剰余金

170

繰延税金資産(棚卸資産分)

20

その他有価証券評価差額金

60

合計

470

合計

470

 

付録:フローチャート

共同支配企業の形成の判定(第175項関係)は省略してある。

以上


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