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目次

 

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成20年1月24日に公表した「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」から「設例」部分を抜粋したものです。

なお、オリジナルとは異なる表現をしている部分や記載を省略した部分があります。実務に適用するにあたっては念のために最新の適用指針等を確認してください。

企業会計基準適用指針第6号

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

(設例)

平成15年10月31日

改正平成20年 1月24日

企業会計基準委員会

目次

目的・適用指針・結論の背景は別に記載してあります。 

設例

[設例1] 資産のグルーピング

[設例1-1] 製造業−機能別の区分を基礎にした資産のグルーピング

[設例1-2] 製造業−製品別の区分を基礎にした資産のグルーピング

[設例1-3] 製造業−地域別の区分を基礎にした資産のグルーピング及び転用等

[設例1-4] 商業・サービス業−店舗営業及び持株会社

[設例1-5] 不動産業

[設例1-6] 連結の見地から資産のグルーピングを見直す場合

[設例2] 割引前将来キャッシュ・フローの総額の見積り(主要な資産の経済的残存使用年数が20 年を超える場合)

[設例3] 将来キャッシュ・フローの見積りに含められる範囲

[設例4] 建設仮勘定に関する減損損失の認識の判定及び測定

[設例5] 将来キャッシュ・フローの見積方法

[設例6] 使用価値の算定に用いられる割引率

[設例7] 共用資産の減損処理

[設例7-1] より大きな単位で共用資産をグルーピングする方法

[設例7-2] 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法

[設例8] のれんの減損処理 −より大きな単位でのれんをグルーピングする方法

[設例9] リース取引により使用している資産を含む資産グループに関する減損損失の認識の判定及び測定

[設例10] 再評価を行った土地について減損処理を行った場合の土地再評価差額金の取扱い

 


設例

以下の設例は、本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることとなることに留意する必要がある。

 

[設例1] 資産のグルーピング(第7項参照)

[設例1-1] 製造業−機能別の区分を基礎にした資産のグルーピング

(1)前提条件

甲社は、製品群A及びBを製造・販売し、商品群Dを販売している。

Y工場(所有)では、原材料Cを加工し、X工場に供給するとともに外部へも販売している。

X工場(所有)では、仕入れた原材料Cを中心に製造ラインAで製品群Aを製造し、本社(土地建物は外部から賃借)にある営業部を通じて販売している。また、X工場では、外部から仕入れた原材料により製造ラインBで製品群Bを製造し、外部へ直接販売している。

本社営業部では、製品群AをX工場から、商品群Dを外部から仕入れ、各々、小売店へ卸している。

甲社は、合理的な社内価格(内部振替価額)を用いて、Y工場、X工場製造ラインA及びB、営業部に分けて管理している。なお、製品群A及び製品群Bには多種の製品が含まれている。

 

図は省略してある。

 

(2)考え方

甲社は、管理会計上の区分を、工場等の機能別の単位としている。工場及びラインという資産に対応して継続的に収支の把握がなされているY工場、X工場製造ラインA及びB、営業部が、グルーピングの単位を決定する基礎となる。

ここで、甲社が、原材料Cの加工を含む製品群A事業部、製品群B事業部、商品群D事業部として管理しており、製品群A、製品群B、商品群Dのそれぞれの売上が相互補完的ではない場合、製品群A事業部(Y工場、X工場の製品群A製造ライン及び製品群A営業部から構成される)、製品群B事業部(X工場の製品群B製造ラインから構成される)、商品群D事業部が、グルーピングの単位となると考えられる。この場合、X工場の土地・建物は、製品群A事業部と製品群B事業部の共用資産として取り扱われると考えられる。

 

図は省略してある。

 

なお、Y工場は、X工場との取引において、管理会計上、外部からの収入価額に基づく適切な内部振替価額により原材料Cのキャッシュ・イン・フローを擬制しており、X工場の製品群A製造ラインから生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的でなければ(例えば、Y工場が独立的に原材料Cを外部に販売できたり、X工場が独立的に原材料Cを外部から調達できるような場合)、Y工場を切り離したときにX工場の製品群A製造ラインから生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼすものとしては取り扱わず、Y工場がグルーピングの単位となることが考えられる(第70項(2)なお書き参照)。

 

[設例1-2] 製造業−製品別の区分を基礎にした資産のグルーピング

(1) 前提条件

X社Y事業部は3工場を所有しており、まず部品Z製造工場にて製品群A、Bに共通の部品製造を行い、製造した全ての部品を製品群A製造工場及び製品群B製造工場でそれぞれ追加加工し、直接外部に販売している。

X社Y事業部では、製品群A製造工場及び製品群B製造工場では収支管理を行っているが、部品Z製造工場単独では継続的に収支の把握がなされていない。また、業績管理は事業部単位の他、各製品群単位で行っている。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

まず、X社Y事業部の管理会計上の単位は、収支管理を行っている製品群A製造工場及び製品群B製造工場、業績管理を行っている各製品群及びY事業部であるが、資産と対応する製品群A製造工場及び製品群B製造工場が資産のグルーピングの単位を決定する基礎となる。

製品群Aと製品群Bの性質や市場等が全く異なることなどにより、これらのキャッシュ・イン・フローが相互補完的でない場合は、製品群A製造工場及び製品群B製造工場がグルーピングの単位となると考えられる。なお、部品Z製造工場だけでは継続的に収支の把握が行われていないため、部品Z製造工場はグルーピングの単位を決定する基礎とはならず、製品群A製造工場と製品群B製造工場の将来キャッシュ・フローの生成に寄与する共用資産と考えられる。共用資産である部品Z製造工場に減損の兆候がある場合、各製品群の業績管理において部品Z製造工場の帳簿価額を各資産グループに配分していたり、各資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に密接に関連し、その寄与する度合いとの間に強い相関関係を持つ合理的な配賦基準が存在したりするときには、部品Z製造工場の帳簿価額を各資産グループに配分し、減損損失の認識の判定や測定をすることができる(第49項参照)。

これに対して、製品群Aと製品群Bのキャッシュ・イン・フローが相互補完的である場合には、これらが資産グループ(X社Y事業部全体)として取り扱われることとなる。

 

[設例1-3] 製造業−地域別の区分を基礎にした資産のグルーピング及び転用等

(1) 前提条件

Y社は大型機械装置Xを用いて、製品Xのみの製造・販売を営んでいる。Y社は都市部にある本社ビルのほか、A、B、Cの地域に各営業本部を設置している(全て賃借)。

また、工場(全て自社所有)も当該地域にそれぞれ存在し、大型機械装置X全て自社所有)をA工場に4台、B工場に3台、C工場に2台所有している。A、B、Cの各地域は地理的に離れているため、製品Xの物流は各地域それぞれが独立して行っている。Y社の収支の把握及び管理会計上の単位はA、B、C の各地域ごとである。

Y社は業績の悪化に伴い人員削減を行った結果、都市部の本社ビルの一部分を外部へ賃貸し、また、B工場の建物のうち30%をB営業本部の使用に転用した。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

まず、Y社の収支の把握及び管理会計上の単位は地域別であるため、資産のグルーピングを決定する基礎は@A地域(A工場、A営業本部)、AB地域(B工場、B営業本部)、BC地域(C工場、C営業本部)の地域別の単位となると考えられる。次に、Y社は製品Xのみの製造・販売を営んでいるが、各地域は地理的に離れており、製品Xの物流は、各地域それぞれが独立して行っているため、各地域別の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローは相互補完的でなく、各地域別の単位を切り離したときに他の地域から生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼさないと考えられるので、A、B、C の各地域別の単位が資産グループとなると考えられる。

なお、B工場は、Y社の経営管理上、B営業本部と同一の管理会計上の単位とされているため、B工場の一部をB営業本部で使用しても、資産のグルーピングは変わらない。

本社ビルの一部は、外部への賃貸という異なる用途への転用が行われているが、原則として、小さくとも物理的な1つの資産がグルーピングの単位を決定する基礎と考えられるため、賃貸部分をグルーピングの単位を決定する基礎として分割することはせず、すべてが従前どおり共用資産となると考えられる。

一方、従来は本社として使用されていたビルの多くの部分が賃貸され、製品Xの製造・販売から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的ではない場合、本社ビルは賃貸ビルとして新たにグルーピングの単位となることが考えられる。また、一部分であっても賃貸部分だけ仕様が異なること等のため、複数からなる資産と考えられる場合であって、当該部分を切り離しても製品Xの製造・販売から生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を与えず、当該キャッシュ・イン・フローと相互補完的ではないときには、当該賃貸部分が新たにグルーピングの単位となることが考えられる。

 

[設例1-4] 商業・サービス業−店舗営業及び持株会社

(1) 前提条件

商品販売業を営んでいるXY社(持株会社)は、100%子会社のX社とY社を有している。XY社は本社ビルを有するのみで、具体的な営業活動は行っておらず、X社とY社の管理業務を行っており、それぞれから適正な役務収入を得ている。

X社は現在、8店舗(支店)を展開している(すべて自社所有)。連結財務諸表における開示対象は「商業」の1セグメントであるが、「大法人向け」(ただし、A−D支店のみ)と「小売り」(全店あり)で事業部が分かれており、それぞれ内部管理上の単位となっている。さらに、X社は店舗(支店)単位で利益管理している。

Y社は小売り専業であり、店舗(支店)もY地域を中心に展開している。もともとY社は規模が小さいこともあり、現在、Y地域内に3つの店舗(支店)(A店以外自社所有)を有し、その単位で利益管理を行っている。

X社とY社の店舗(支店)網は、原則として、別々であるが、A店に関しては共同店舗として両社がX社所有の土地・建物を用いているため、Y社はX社からA店の一部を賃借している(賃借部分の内部造作や備品等はY社所有)。なお、A店〜J店はそれぞれ担当地域が決まっており、営業範囲はほとんど重複しない。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 個別財務諸表

個別財務諸表上では、X社は店舗単位及び事業部単位のマトリックス管理を行っているため、@各店舗単位、A各事業部単位、B各店舗内で各事業部単位でのグルーピングが考えられる。原則として、小さくとも物理的な1つの資産がグルーピングの単位を決定する基礎になると考えられ、また、営業範囲はほとんど重複しないことから、他の店舗から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的ではないと考えられるため、@各店舗単位がグルーピングの単位となると考えられる。

一方、Y社は小売り専業で、店舗単位で利益管理されており、また、営業範囲はほとんど重複しないことから、他の店舗から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的ではないと考えられるため、各店舗単位がグルーピングの単位となると考えられる。

また、XY社は具体的な営業活動を行っておらず、X社とY社の管理業務を行っているのみであるため、当該管理業務に関する管理会計上の単位でグルーピングがなされることが考えられる。しかし、原則として、物理的な1つの資産がグルーピングの最小の単位になると考えられるため、本社ビルを含むXY社全体がグルーピングの単位になると考えられる。

A 連結財務諸表

連結財務諸表上でも、XY社、X社及びY社の各店舗単位がグルーピングの単位と考えられる。ただし、連結管理会計上、持株会社XY社の本社ビルが、X社及びY社の各店舗という資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産として取り扱われている場合には、連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直され、共用資産になると考えられる。

また、X社とY社の共同店舗であるA店が、連結上一つのA店として管理されている場合には、連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直され、X社とY社のA店に関する将来キャッシュ・フローの合計がA店の将来キャッシュ・フローになると考えられる。この場合、X社とY社の賃貸料の受払いに伴う将来キャッシュ・フローは相殺消去されることとなる。

 

[設例1-5] 不動産業

(1) 前提条件

総合不動産業を営んでいるZ 社は、新規に取得したA土地を開発し、賃貸ビル、商業テナントビル及び文化施設を含む複合施設を建設した。賃貸ビル、商業テナントビル及び文化施設は同じ敷地内にあるが、それぞれ別棟となっている。

文化施設の収益性は単独では悪いが、賃貸ビルのイメージアップに伴う賃料収入の増加及び商業テナントビルの集客効果を見込んで、複合施設全体として回収可能との投資判断で建設に踏み切った。

Z社は、各棟ごとに収支計算を行っているが、当該複合施設全体を管理会計上の単位としている。なお、当該複合施設の近隣にはZ社の類似物件は存在しない。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

Z社は、それぞれ別棟となっている賃貸ビル、商業テナントビル及び文化施設の各棟ごとに収支計算を行っているため、各棟をグルーピングの単位とすることが考えられる。

ただし、Z社は、賃貸ビルのイメージアップに伴う賃料収入の増加及び商業テナントビルの集客効果を見込んで、文化施設を含む複合施設を建設しており、このため、収入が生じていても重要ではないと考えられる文化施設が、賃貸ビルと商業テナントビルの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産と考えられる場合には、文化施設はグルーピングの単位とはならず、共用資産になると考えられる。

また、Z社は、当該複合施設全体として回収が可能との投資判断で建設に踏み切っており、当初の投資意思決定の段階から当該複合施設全体を管理会計上の単位としている。このため、文化施設から生ずる収入にも一定の重要性があり、各棟のキャッシュ・イン・フローが相互補完的であって、いずれかの棟を切り離したときには他の棟から生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼす場合には、より大きな単位である当該複合施設全体を一つのグルーピングの単位とすることが考えられる。

 

[設例1-6] 連結の見地から資産のグルーピングを見直す場合(第10項参照)

(1) 前提条件

X社は製品群A及びBを2ヶ所の自社工場で製造している。同社は連結子会社(100%所有)として、部品製造子会社のY社、販売子会社のZ 社を所有している。

Y社は1ヶ所の本社兼工場において、製品群Aに使用される部品Pを製造しており、X 社及び外部に販売している。

X社はY社から仕入れた部品Pで製品群Aを、外部から仕入れた素材Qで製品群Bを製造し、製品群AはZ社へ、製品群BはX社が直接外部へ販売している。

Z社は製品群AをすべてX社から仕入れ、外部へ販売している。

X社は製品群Aと製品群Bの事業部に分けて管理しており、それぞれのキャッシュ・フローは相互補完的でない。また、連結上も製品群Aグループ(部品製造子会社のY社、X社の工場A及び販売子会社Z社から構成される)と製品群Bグループ(X社の工場Bから構成される)に分けて管理しており、それぞれのキャッシュ・フローは相互補完的でない。

X社の工場Aで減損の兆候が生じているが、連結グループとして、製品群Aグループには減損の兆候が生じていないものとする。

 

図は省略してある。

 

(2) 考え方

@ 個別財務諸表

X社では工場という資産と対応して継続的に収支の把握がなされているため、グルーピングの単位を決定する基礎は、@工場Aと、A工場Bとなると考えられる。また、それぞれのキャッシュ・フローは相互補完的ではないため、各工場が資産グループ、本社は共用資産として取り扱われると考えられる。帳簿価額、割引前将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が以下のとおりであるとすれば、個別財務諸表に計上される減損損失は120となる。

 

 

X社の工場A

帳簿価額

400

割引前将来キャッシュ・フロー

350

減損損失の認識

する

回収可能価額

280

減損損失

▲120

 

A 連結財務諸表

グルーピングの単位を決定する基礎は、@部品製造子会社のY社、AX社の工場A、BX社の工場B、C販売子会社のZ社となる。しかし、X社は連結上も製品群Aグループ及び製品群Bグループとして管理しているため、連結財務諸表上、@部品製造子会社のY社、AX社の工場A、C販売子会社のZ社は、製品群Aグループという1つのグルーピングの単位として見直されるものとする。

なお、連結財務諸表の作成にあたっては、連結会社間の取引に伴う消去等が行われ、その結果、個別財務諸表上の帳簿価額等の金額が修正される場合があるが、帳簿価額、割引前将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額は以下のとおりであるとする(Y社及びZ社には減損の兆候がないため、各社の個別財務諸表上、減損損失の認識の判定は行っていない。)。

 

 

個別財務諸表

連結財務諸表

Y社

X社の工場A

Z社

合計

帳簿価額

250

400

140

790

790

割引前将来キャッシュ・フロー

N/A

350

N/A

N/A

900

減損損失の認識

N/A

する

N/A

N/A

しない

回収可能価額

N/A

280

N/A

N/A

N/A

減損損失

N/A

▲120

N/A

▲120

N/A

 

連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が、製品群Aグループとして見直される場合、連結財務諸表では減損損失が計上されないこととなる。したがって連結財務諸表においては、連結修正として当該金額120を戻し入れることとなる(第75項なお書き参照)。

 

[設例2] 割引前将来キャッシュ・フローの総額の見積り(主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合)(第18項及び第38項参照)

(1) 前提条件

X社の保有する主要な資産A経済的残存使用年数25年)と主要な資産以外の構成資産Bからなる資産グループYにつき、今般、減損の兆候がみられたため、減損損失の認識の判定を行う。主要な資産Aの25年経過時点の正味売却価額は80とする。また、X社が用いる割引率は5%とする。

(2) 考え方

(ケース1)構成資産Bの経済的残存使用年数が10年の場合

 

図は省略してある。

 

今後10年間の割引前将来キャッシュ・フローは800、10年経過時点の構成資産Bの正味売却価額を4とする。また、10年経過後に、設備の増強は計画されていないが資産グループの現在の使用状況及び合理的な使用計画等を考慮し現在の価値を維持するための合理的な設備投資のための支出を70とし、構成資産B’を取得するものとする。 当該構成資産B’への合理的な設備投資を含めた10年経過時点以降の割引前将来キャッシュ・フロー(25年経過時点の構成資産B’の正味売却価額4を含む。)を以下のとおりとする。

 

年数等

10年経過後の設備投資

11〜20

21

22

23

24

25

25年経過後

主要な資産Aの売却

構成資産B'の売却

キャッシュ・フロー

△70

700

30

30

30

30

30

80

4

 

資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数(10年)が、主要な資産の経済的残存使用年数(25年)を超えない場合には、当該構成資産の経済的残存使用年数(10年)経過時点における当該構成資産の正味売却価額を、主要な資産の経済的残存使用年数までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する(第18項(3)参照)。

また、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて算定された20年経過時点における回収可能価額を、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する(第18項(2)参照)。

 

割引前将来キャッシュ・フロー

=(800+4−70+700)+30/1.05+30/(1.05)2+30/(1.05)3+30/(1.05)4+(30+80+4)/(1.05)5

=1,434+195

=1,629

 

(ケース2)構成資産Bの経済的残存使用年数が30年の場合

 

図は省略してある。

 

今後20年間の割引前将来キャッシュ・フローは1,500、25年経過時点の構成資産Bの回収可能価額(第33項参照)を10とする。また、当該資産グループの21年経過時点以降の割引前将来キャッシュ・フローは以下のとおりとする。

 

年数等

21

22

23

24

25

25年経過後

主要な資産Aの売却

構成資産Bによる回収

キャッシュ・フロー

30

30

30

30

30

80

10

 

資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数(30年)が、主要な資産の経済的残存使用年数(25年)を超える場合には、主要な資産の経済的残存使用年数(25年)経過時点における当該構成資産の回収可能価額(第33項参照)を、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに加算する(第18項(4)参照)。

 

割引前将来キャッシュ・フロー

=1,500+30/1.05+30/(1.05)2+30/(1.05)3+30/(1.05)4+(30+80+10)/(1.05)5

=1,500+200

=1,700

 

[設例3] 将来キャッシュ・フローの見積りに含められる範囲(第18項及び第38項参照)

(1) 前提条件

X社は、経済的残存使用年数の長い資産Aと経済的残存使用年数の短い資産Bを1つの資産グループとしている。現在において、資産Bは今後3年間の使用を見込んでいる。

当該資産グループについて、減損の兆候が把握された。

(2) 考え方

@ 主要な資産が資産Aの場合(ケース1)

X社では、3年経過後に資産Bに代えて資産Cを5年間使用するという合理的な計画があるものとする。

 

図は省略してある。

 

この場合、主要な資産Aの経済的残存使用年数は資産Bより長く、3年経過後に資産Cの使用という合理的な計画があることから、資産Cを使用することにより生ずる将来キャッシュ・フローを減損損失の認識の判定及び測定の際に使用する将来キャッシュ・フローに含める?/p>

また、8年経過後には合理的な計画がないが、資産グループの現在の価値を維持するための合理的な設備投資により同様の資産の使用が見込まれる場合には、それに関連する将来キャッシュ・フローを減損損失の認識の判定及び測定の際に使用する将来キャッシュ・フローに含めることができる?/p>

なお、将来キャッシュ・フローには、資産Aの経済的残存使用年数経過後の正味売却価額(減損損失の認識の判定における将来キャッシュ・フローにおいて資産Aの経済的 残存使用年数が20年を超える場合には20年経過時点の回収可能価額)も含まれる。

A 主要な資産が資産Bの場合(ケース2)

(ケース2-1)

X社では、3年経過後に主要な資産Bに代えて資産Cを5年間使用するという合理的な計画があるものとする。

当初3年間の割引前将来キャッシュ・フローを300、3年経過時の資産Aの正味売却価額を700、3年経過後の合理的な計画に従って算定した資産グループ(資産CとA)から生ずる5年間の将来キャッシュ・フロー(資産Cへの投資のための支出や使用後の正味売却価額を含む。以下同じ)の3年経過時点における現在価値を900とする。

 

図は省略してある。

 

資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数が、主要な資産の経済的残存使用年数(3年)を超える場合には、当該主要な資産の経済的残存使用年数(3年)経過時点における当該構成資産Aの回収可能価額を、主要な資産の経済的残存使用年数経過時点までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する(第18項(4)参照)。

この場合、主要な資産Bの経済的残存使用年数(3年)経過後、将来キャッシュ・フローに含める主要な資産以外の構成資産Aの回収可能価額は、原則として、3年経過時点の正味売却価額700となる(第33項参照)。このため、当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローは、3年経過時点までの将来キャッシュ・フロー300と、3年経過時点の資産Aの正味売却価額700の合計1,000となる。

ただし、このケースのように3年経過後に主要な資産になると考えられる資産Cの使用に係る合理的な計画が存在している場合には、3年経過時点の資産Aの正味売却価額に代えて、当該合理的な計画に従って算定した資産グループ(資産CとA)から生ずる将来キャッシュ・フローの3年経過時点における現在価値を将来キャッシュ・フローに含めることができる(第33項ただし書き参照)。したがって、当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローは、3年経過時点までの将来キャッシュ・フロー300と、3年経過後合理的な計画に従って算定した資産グループ(資産CとA)から生ずる5年間の将来キャッシュ・フローの3年経過時点における現在価値900の合計の1,200となる。

また、減損損失の認識の判定を行う際には、資産グループに係る減損処理の目的が主要な資産の減損損失を認識することにあると考えて、主要な資産以外の構成資産Aが償却資産の場合には、3年経過時点の資産Aの正味売却価額に代えて、当該資産Aの現在の帳簿価額から3年経過時点までの適切な減価額を控除した金額を将来キャッシュ・フローに含めることができる(第33項また書き参照)。

 

(ケース2-2)

X社では、3年間は資産Bを使用するが、その後の計画は未定であるものとする?/p>

 

図は省略してある。

 

主要な資産Bの経済的残存使用年数(3年)経過後の将来キャッシュ・フローを減損損失の認識の判定及び測定の際に使用する将来キャッシュ・フローに含めることはできない。この場合の将来キャッシュ・フローに含める主要な資産以外の構成資産Aの回収可能価額は、3年経過時点の正味売却価額となる(第33項参照)。

なお、減損損失の認識の判定を行う際には、資産グループに係る減損処理の目的が主要な資産の減損損失を認識することにあると考えて、資産Aが償却資産の場合には、3年経過時点の資産Aの正味売却価額に代えて、当該資産Aの現在の帳簿価額から3年経過時点までの適切な減価額を控除した金額を将来キャッシュ・フローに含めることができる(第33項また書き参照)。

 

[設例4] 建設仮勘定に関する減損損失の認識の判定及び測定(第27項及び第38項(4)参照)

(1) 前提条件

Y社は、現在営業用の建物を建設中であり、X1年度末貸借対照表には当該建物に係る建設仮勘定が計上されている。X2年度に当該建設中の建物に減損の兆候が存在し、今後完成までに要する支出および完成後に生ずる将来キャッシュ・フローを見積ったところ、以下のとおりであった?/p>
 
 

 

 

将来キャッシュ・フロー見積額

X2年度

X3年度

X4年度

X5年度以降

合計

ケース1

キャッシュ・イン・フロー

420

420

キャッシュ・アウト・フロー

100

100

50

100

350

ケース2

キャッシュ・イン・フロー

390

390

キャッシュ・アウト・フロー

100

100

50

100

350

 

(2) 考え方

減損損失の認識の判定及び測定の際に使用する建設仮勘定等の将来キャッシュ・フローは、合理的な使用計画に基づき、完成後に得られるであろうキャッシュ・イン・フローの見積額から完成まで及び完成後の利用や処分に要するキャッシュ・アウト・フローの合理的な見積額を控除して算定することになる。この考え方によれば、ケース1及び2の減損損失の認識の判定は以下のとおりと考えられる。

 
 

建設仮勘定の帳簿価額

 

(A)

将来キャッシュフロー総額

帳簿価額と将来キャッシュ・フローとの比較

(D)−(A)

判定

(D)

((B)+(C))

キャッシュ・アウト・フロー総額*

(B)

キャッシュ・イン・フロー総額

(C)

ケース1

50

70

△350

420

20

減損認識せず

ケース2

70

40

△350

390

△30

減損認識

※ 支出総額には、建設仮勘定計上時の支出額は含めていない?/p>

 

(ケース1)

当該建設仮勘定の将来キャッシュ・フローの総額は、建物の建設に要するX2年度からX4年度の支出額及びX5年度以降の完成後の利用等による支出額の合計額(△350)と完成後の建物から生ずるキャッシュ・イン・フローの合計額(420)との差額70であり、建設仮勘定の帳簿価額50を上回っている。したがって、ケース1では、減損損失の認識を行う必要はないと考えられる?/p>

(ケース2)

当該建設仮勘定の将来キャッシュ・フローの総額は、建物の建設に要するX2年度からX4年度の支出額及びX5年度以降の完成後の利用等による支出額の合計額(△350)と完成後の建物から生ずるキャッシュ・イン・フローの合計額(390)との差額40であり、建設仮勘定の帳簿価額70を下回っている。したがって、ケース2の建設仮勘定については、減損損失の認識を行う必要があると考えられる?/p>

なお、資産グループが複数の建設仮勘定から構成されている場合、資産グループについて認識された減損損失は、資産グループの帳簿価額から控除するが、減損損失の測定時には各建設仮勘定に配分せず、完成時にそれまでの総支出額の割合等の合理的な方法に基づいて配分することに留意する(第27項参照)。

 

[設例5] 将来キャッシュ・フローの見積方法(第39項参照)

(1) 前提条件

資産A及びBの将来キャッシュ・フローは、それぞれ以下のように考えられているものとする?/p>
 

資産A

  キャッシュ・フロー 生起し得る確立 キャッシュ・フロー×確立
  75 10% 7.5

最頻値

70 80% 56.0
  65 10% 6.5
   

期待値

70.0

資産B

  キャッシュ・フロー 生起し得る確立 キャッシュ・フロー×確立
  85 12% 10.0
  80 13% 10.0
  75 16% 12.0

最頻値

70 18% 13.0
  65 16% 10.0
  60 14% 8.0
  50 12% 6.0
   

期待値

70.0

 

(2) 考え方

将来キャッシュ・フローの見積りの方法には、@生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額(期待値)を見積る方法と、A生起する可能性の最も高い単一の金額(最頻値)を見積る方法がある。この設例において、資産A及び資産Bともに将来キャッシュ・フローの期待値は70となり、また、最頻値も両シナリオともに70となる。

なお、両資産を比較した場合、それぞれの見積値の分布は異なり、期待値は同じ結果となった場合でも、それぞれの資産の見積りから乖離するリスクは異なることとなると考えられる?/p>

通常、期待値をもって将来キャッシュ・フローを見積った場合でも、使用価値を算定するに際しては、当該将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを分子(将来キャッシュ・フロー)又は分母(割引率)のいずれかに反映させる必要がある?/p>

 

[設例6] 使用価値の算定に用いられる割引率(第45項参照)

(1) 前提条件

上場会社X社の保有する資産A取得価額1,000、減価償却後の残存価額10%、耐用年数15年、取得から5年経過)につき、今般、減損の兆候がみられたため、減損損失の認識の判定を行ったところ、割引前将来キャッシュ・フロー(680)が帳簿価額(700)を下回っていた?/p>

 

[今後10年間のキャッシュ・フローの見積り]

 

年数

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

キャッシュ・フロー

80

80

70

70

60

55

50

45

40

30

 

経済的残存使用年数(10年)経過後における正味売却価額

割引前キャッシュ・フロー総額

100

680

 

当該企業及び当該資産Aに関連するデータは、以下のとおり得られているものとする?/p>

・当該資産Aに類似の資産について、保有の意思決定の際に用いているハードル・レート:7%

・類似の資産の市場における平均的な利回り:2.7%(税引後)

・無リスクレート:1%

・X社が上場している市場の期待収益率:4.5%

・X社が上場している株式市場における株価指数の動きに対するX社株価の動きの比率を基準としたβ(ベータ)値:1.2

・X社の借入資本コスト:3%

・他人資本と自己資本の割合:7:3

・当該資産の大部分をノンリコースの借入で調達した場合の利率:6.5%

・実効税率:40%

(2)考え方

@ 当該企業における当該資産又は資産グループに固有のリスクを反映した収益率を使用した場合

X社は、類似の資産の保有の意思決定に際して継続的にハードル・レートを用いているため、これを基礎とし、必要な修正を加えた割引率を設定することが考えられる?/p>

ここで、経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報を反映した修正として、例えば、ハードル・レートについては、設定時に目標数値等が織り込まれており、当該上積部分が2%であったとすれば、当該2%を差し引いた5%を割引率として用いて使用価値を計算することが考えられる?/p>
 

使用価値=80/1.05+80/(1.05)2+70/(1.05)3・・・・ +(30+100)/(1.05)10=526

減損損失=700(帳簿価額)−526(使用価値)=174

 

A 当該企業に要求される資本コストを用いた場合

資本コストを用いる場合には、借入資本コストと自己資本コストを加重平均した資本コストを用いることとなる。この場合、借入資本コストは、前提条件から3%である。一方、自己資本コストは、例えば、資本資産評価モデル(CAPM)の考え方を採用した場合、以下のように算定されると考えられる?/p>

1%(無リスクレート)+1.2(β値)×(4.5%(株式市場の期待収益率)−1%(無リスクレート))=5.2%

他人資本と自己資本の割合は7:3であるから、税引前の加重平均した資本コスト(割引率)は、3%(借入資本コスト)×70%+(5.2%(自己資本コスト)×30%)/(1−0.4) =4.7%となると考えられる?/p>
 

使用価値=80/1.047+80/(1.047)2+70/(1.047)3・・・・ +(30+100)/(1.047)10=534

減損損失=700(帳簿価額)−534(使用価値)=166

 

B 当該資産又は資産グループに類似した資産又は資産グループに固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率を用いた場合

当該資産に類似の資産の市場における平均的な利回りが入手できる場合には、これを割引率に使うことも考えられる。この場合の割引率は、2.7%を実効税率40%で税引前に割り戻した4.5%を用いると考えられる?/p>
 

使用価値=80/1.045+80/(1.045)2+70/(1.045)3・・・・ +(30+100)/(1.045)10=539

減損損失=700(帳簿価額)−539(使用価値)=161

 

C 当該資産又は資産グループのみを裏付けとして大部分をノンリコースの借入で調達した場合の利率を用いた場合

当該資産のみを裏付けとして大部分をノンリコースの借入で調達した場合の利率を入手することができる場合には、これを割引率に用いることも考えられる?/p>
 

使用価値=80/1.065+80/(1.065)2+70/(1.065)3・・・・+(30+100)/(1.065)10=491

減損損失=700(帳簿価額)−491(使用価値)=209

 

使用価値の算定に際して用いられる割引率(第45項参照)としては、これらの他に、@〜Cを総合的に勘案したものを用いることも考えられる。

 

[設例7] 共用資産の減損処理

[設例7-1] より大きな単位で共用資産をグルーピングする方法(第48項参照)

(1) 前提条件

@ 資産グループA、B、Cの帳簿価額は、それぞれ100、150、210、共用資産の帳簿価額は100であった。

A 資産グループB、Cに減損の兆候があり、資産グループB、Cの割引前将来キャッシュ・フローは、それぞれ160、180であった。また、共用資産にも減損の兆候があり、資産グループA、B、C及び共用資産を含む、より大きな単位での割引前将来キャッシュ・フローは540であった。

B 資産グループCの回収可能価額は120であり、資産グループA、Bの回収可能価額はわからない。共用資産を含む、より大きな単位での回収可能価額は365であった。

(2) 資産グループごとの減損損失の認識の判定及び測定

資産グループBの割引前将来キャッシュ・フローは、帳簿価額を上回るため、減損損失は認識されない。資産グループCの割引前将来キャッシュ・フローは、その帳簿価額を下回っているため、減損損失を認識すべきであると判定される。このため、資産グループCの帳簿価額210を回収可能価額120まで減額し、減損損失90を当期の損失とする。

(3) 共用資産を含む、より大きな単位での減損損失の認識の判定及び測定

共用資産にも減損の兆候があるため、共用資産を含む、より大きな単位での割引前将来キャッシュ・フロー540と減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額560を比較し、減損損失を認識するかどうかを判定する。この結果、当該割引前将来キャッシュ・フローは、それらの帳簿価額の合計金額を下回っているため、減損損失を認識すべきであると判定され、それらの回収可能価額365まで減額する。この際、減損損失195のうち、資産グループCに係る減損損失90を控除した減損損失の増加額105は、原則として、共用資産に配分する。

以上をまとめると次の表のようになる。

 
 

小計

共用資産

共用資産を含む、より大きな単位での資産グループ

資産グループごとの減損損失の認識の判定及び測定

(1) 帳簿価額

100

150

210

460

100

560

(2) 割引前将来キャッシュ・フロー(注)

N/A

160

180

N/A

 

 

(3) 減損損失の認識

 

しない

する

 

 

 

(4) 回収可能価額

N/A

N/A

120

N/A

 

 

(5) 減損損失

N/A

N/A

▲90

▲90

 

 

(6) 資産グループごとの減損処理後帳簿価額

100

150

120

370

100

470

共用資産を含む、より大きな単位での減損損失の認識の判定及び測定

(1) 帳簿価額

100

150

210

460

100

560

(2) 割引前将来キャッシュ・フロー(注)

         

540

(3) 減損損失の認識

 

 

 

 

 

する

(4) 回収可能価額

         

365

(5) 減損損失

         

▲195

(6) 共用資産を加えることによる減損損失増加額

         

▲105

(注) 資産グループごとの割引前将来キャッシュ・フローと、共用資産を含む、より大きな単位での割引前将来キャッシュ・フローに差が生ずる場合がある。それは、共用資産の正味売却価額や重要ではないが共用資産から生ずる複数の資産グループに対する追加的な将来キャッシュ・フロー(例えば、文化施設([設例1-5]参照)や試験研究施設から生ずる雑収入)などから構成されるものと考えられる。

 

(4) 共用資産に配分される減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過した額の各資産グループへの配分

共用資産の正味売却価額が60と把握された場合には、共用資産に配分される減損損失105は、共用資産の帳簿価額100と正味売却価額60の差額40を超過することが明らかであるため、当該超過額65(=105−40)を合理的な基準により各資産グループに配分する。この場合、各資産グループの帳簿価額に基づいて比例配分すると、各資産グループへの配分額及び配分後の帳簿価額は、以下のようになる(第48項(5)A参照)。

 
 

各資産グループへの配分額

配分後の帳簿価額

資産グループA

▲65×(100÷370)=▲18

100−18= 82

資産グループB

▲65×(150÷370)=▲26

150−26=124

資産グループC

▲65×(120÷370)=▲21

120−21= 99

 

この場合、資産グループCの回収可能価額120を下回らないよう以下のように資産グループA及びBに配分することができると考えられる(第48項(5)Aただし書き参照)。

 
 

各資産グループへの配分額

配分後の帳簿価額

資産グループA

▲65×(100÷250)=▲26

100−26= 74

資産グループB

▲65×(150÷250)=▲39

150−39=111

 

なお、仮に資産グループA、Bの回収可能価額がそれぞれ80、90と把握された場合、超過額65は、各資産グループの帳簿価額と回収可能価額の差額の比率により配分することとなり、以下のようになる(第48項(5)@参照)。

 

 

各資産グループの帳簿価額と回収可能価額の差額

資産グループA

100− 80=20

資産グループB

150− 90=60

資産グループC

120−120= 0

 

 
 

各資産グループへの配分額

配分後の帳簿価額

資産グループA

▲65×(20÷80)=▲16

100−16= 84

資産グループB

▲65×(60÷80)=▲49

150−49=101

 

[設例7-2] 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法(第50項参照)

(1) 前提条件

資産グループA、B、Cの帳簿価額は、それぞれ100、150、210、共用資産の帳簿価額は100であった。共用資産の帳簿価額を各資産グループに配分する配賦割合は、それぞれ20%、30%、50%であった。

(2) 各資産グループへの配分

共用資産の帳簿価額を配賦割合に基づき配分すると、配分後の資産グループA、B、Cの帳簿価額は、それぞれ120、180、260となる。ここで配分後の資産グループB、Cに減損の兆候があった。

(3) 資産グループごとの減損損失の認識の判定及び測定

ここで共用資産の帳簿価額配分後の資産グループB、Cの割引前将来キャッシュ・フローは、それぞれ170、210であった。したがって、資産グループB、Cの割引前将来キャッシュ・フローは、その帳簿価額を下回っているため、減損損失を認識すべきであると判定される。

次に、共用資産配分後の資産グループB、Cの回収可能価額が、それぞれ100、140であった場合、資産グループB、Cの帳簿価額をそれぞれの回収可能価額まで減額し、減損損失を当期の損失とする。

以上をまとめると次の表のようになる。

 
 

小計

共用資産

合計

(1) 帳簿価額

100

150

210

460

100

560

(2) 共用資産の帳簿価額の配分

20

30

50

100

▲100

0

(3) 共用資産の帳簿価額の配分後の帳簿価額

120

180

260

560

0

560

(4) 割引前将来キャッシュ・フロー

N/A

170

210

N/A

 

 

(5) 減損損失の認識

 

する

する

 

 

 

(6) 回収可能価額

N/A

100

140

N/A

 

 

(7) 減損損失

N/A

▲80

▲120

▲200

 

 

(8) 資産グループごとの減損処理後帳簿価額

120

100

140

360

 

 

 

共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法を採用した場合、翌期以降の会計期間においても同じ方法を採用する必要がある(第49項(2)参照)ため、ここでは帳簿価額に基づき、減損損失を資産グループと共用資産に配分するものとする。この結果、以下のように、資産グループBに67、資産グループC に97、共用資産に36が配分される。

 

 

減損損失

資産グループへの配分

共用資産への配分

共用資産配分後の資産グループB

▲80

▲67

▲13

共用資産配分後の資産グループC

▲120

▲97

▲23

合計

▲200

 

▲36

 

[設例8] のれんの減損処理−より大きな単位でのれんをグルーピングする方法(第52項参照)

(1) 前提条件

@ のれんを認識した取引において事業Tと事業Uが取得されており、のれんの帳簿価額は200、のれんが認識された時点の事業T、事業Uの時価は、それぞれ450、670であった。事業Tと事業Uは内部管理上独立した業績報告が行われている。

A 事業Tに属する資産グループA、B、Cの帳簿価額は、それぞれ100、200、120であった。

B 事業Tに属する資産グループA、B、Cに減損の兆候があり、これらの割引前将来キャッシュ・フローは、それぞれ130、210、100であった。事業Tに属するのれんを含む、より大きな単位での割引前将来キャッシュ・フローは440であった。

C 事業Tに属する資産グループA、B、Cの回収可能価額は、それぞれ120、190、70、事業Tに属するのれんを含む、より大きな単位での回収可能価額は380であった。

(2) のれんの帳簿価額の分割

のれんの帳簿価額をのれんが認識された時点の事業T、事業Uの時価の比率で分割し、事業Tに配分されるのれんの帳簿価額は80、事業Uに配分されるのれんの帳簿価額は120となる。事業Tに配分されたのれんに減損の兆候があった。

(3) 事業Tに属する資産グループごとの減損損失の認識の判定及び測定

資産グループAとBの割引前将来キャッシュ・フローは、それぞれの帳簿価額を上回るため、減損損失は認識されない。資産グループCの割引前将来キャッシュ・フローは、その帳簿価額を下回っているため、減損損失を認識すべきであると判定される。このため、資産グループCの帳簿価額120を回収可能価額70まで減額し、減損損失50を当期の損失とする。

(4) 事業Tに属するのれんを含む、より大きな単位での減損損失の認識の判定及び測定

事業Tに属するのれんを含む、より大きな単位にも減損の兆候があるため、当該単位での割引前将来キャッシュ・フロー440と減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額500を比較し、減損損失を認識するかどうかを判定する。この結果、当該割引前将来キャッシュ・フローは、それらの帳簿価額の合計金額を下回っているため、減損損失を認識すべきであると判定され、それらの回収可能価額380まで減額する。

この際、減損損失120のうち、資産グループCに係る減損損失50を控除した減損損失の増加額70は、原則として、のれんに配分する。

以上(3)、(4)をまとめると次の表のようになる。

 
 

小計

のれん

のれんを含む、より大きな単位での資産グループ

事業Tに属する資産グループとの減損損失の認識の判定及び測定

(1) 帳簿価額

100

200

120

420

80

500

(2) 割引前将来キャッシュ・フロー

130

210

100

440

 

 

(3) 減損損失の認識

しない

しない

する

 

 

 

(4) 回収可能価額

120

190

70

380

 

 

(5) 減損損失

N/A

N/A

▲50

▲50

 

 

(6) 資産グループごとの減損処理後帳簿価額

100

200

70

370

80

450

事業Tに属するのれんを含む、より大きな単位での減損損失の認識の判定及び測定

(1) 帳簿価額

100

200

120

420

80

500

(2) 割引前将来キャッシュ・フロー

         

440

(3) 減損損失の認識

 

 

 

 

 

する

(4) 回収可能価額

         

380

(5) 減損損失

         

▲120

(6) のれんを加えることによる減損損失増加額

 

 

 

 

 

▲70

(7) 資産グループごとの減損処理後の帳簿価額

100

200

70

370

80

450

(8) のれんに係る減損損失

 

 

 

 

▲70

▲70

(9) 減損処理後の帳簿価額

100

200

70

370

10

380

 

[設例9] リース取引により使用している資産を含む資産グループに関する減損損失の認識の判定及び測定(第61項参照)

(1) 前提条件

A社は小売業を営んでおり、X店舗が1つの資産グループになるものとする。今般、減損の兆候がみられたため、減損損失の認識の判定及び測定を行う。当該X店舗の土地、建物(主要な資産とする。)及び什器備品を所有している場合には、これらの帳簿価額は、それぞれ300、500、200とし、当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローは900、回収可能価額は640とする。また、土地の正味売却価額は300とする。

(2) 考え方

@ X店舗の土地、建物及び什器備品を所有している場合

当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローは、その帳簿価額合計を下回っているため、減損損失を認識すると判定される。このため、当該資産グループの帳簿価額合計1,000を回収可能価額640まで減額し、減損損失360を当期の損失とする。

また、土地の正味売却価額は300と把握されており、当該正味売却価額を下回る結果とならないように、建物と什器備品に、これらの帳簿価額に基づいて減損損失を配分することとする(第105項参照)。これらをまとめると以下のようになる。

 

 

土地

建物

什器備品

合計

帳簿価額

300

500

200

1,000

割引前将来キャッシュ・フロー

 

 

 

900

減損損失の認識

 

 

 

する

回収可能価額

 

 

 

640

減損損失

N/A

▲257

▲103

▲360

減損処理後帳簿価額

300

243

97

640

 

A X店舗の土地及び建物は所有しているが、什器備品は所有権移転外ファイナンス・リース取引にて使用しており、当該リース取引について通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合

所有権移転外ファイナンス・リース取引にて使用している什器備品の帳簿価額とみなされる金額(原則として、未経過リース料の現在価値)は220とする。当該資産グループの将来キャッシュ・アウト・フローには、当該リース取引に係る将来の支払リース料が含まれない(第61項参照)。このような資産グループの割引前将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額は、それぞれ900、640となるものとする。

この場合、当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローは、土地及び建物の帳簿価額と当該リース取引にて使用している什器備品の帳簿価額とみなされる金額の合計1,020を下回っているため、減損損失を認識すると判定され、回収可能価額640まで減額し、減損損失380を当期の損失とする。

この際、土地の正味売却価額は300と把握されており、当該正味売却価額を下回る結果とならないように、建物と当該リース取引にて使用している什器備品に、これらの帳簿価額及び帳簿価額とみなされる金額に基づいて減損損失を配分することとする(第105項参照)。当該リース取引にて使用している什器備品に配分された減損損失116は負債に計上する(第60項参照)。これらをまとめると以下のようになる。

 

 

土地

建物

什器備品

合計

帳簿価額

300

500

N/A

800

帳簿価額及び当該リース取引にて使用している什器備品の帳簿価額とみなされる金額

300

500

220

1.020

割引前将来キャッシュ・フロー

     

900

減損損失の認識

 

 

 

する

回収可能価額

 

 

 

640

減損損失

N/A

▲264

▲116

▲380

減損処理後帳簿価額

300

236

N/A

536

 

B X店舗の建物及び什器備品は所有しているが、土地はオペレーティング・リース取引にて使用している場合

土地をオペレーティング・リース取引にて使用している場合(借地権は発生しないものとする。)、減損会計基準の対象となる当該資産グループの固定資産は、所有しているX店舗の建物及び什器備品である。また、当該資産グループの将来キャッシュ・アウト・フローには、当該リース取引に係る将来の支払リース料が含まれる(第61項参照)。

ここで、当該資産グループの割引前将来キャッシュ・フローを450とした場合、当該割引前将来キャッシュ・フローは、帳簿価額合計700を下回っているため、減損損失を認識すると判定される。また、回収可能価額を340とした場合、減損損失360が当期の損失とされ、建物と什器備品に、これらの帳簿価額に基づいて減損損失を配分することとする。これらをまとめると以下のようになる。

 

 

土地

建物

什器備品

合計

帳簿価額

N/A

500

200

700

割引前将来キャッシュ・フロー

     

450

減損損失の認識

 

 

 

する

回収可能価額

 

 

 

340

減損損失

N/A

▲257

▲103

▲360

減損処理後帳簿価額

N/A

243

97

340

 

[設例10] 再評価を行った土地について減損処理を行った場合の土地再評価差額金の取扱い(第64項参照)

(1) 前提条件

X社は、土地A、土地B及び土地Cいずれも取得原価100)について再評価を行っており、土地A及びBの再評価後の帳簿価額は180、土地Cの再評価後の帳簿価額は80になっている。

X2年3月31日に土地A、B及びCは減損損失を認識すべきであると判定され、回収可能価額はそれぞれ120、80、40であった。なお、税効果会計適用上の法定実効税率は40%とし、当該減損損失は、X社において、回収可能性のある将来減算一時差異として取り扱われているものとする。

 

 

土地の帳簿価額

減損処理額

減損処理額に係る税効果額

取得減価

再評価後

減損処理後

土地A

100

180

120

60

24

土地B

100

180

80

100

40

土地C

100

80

40

40

16

 

(2) 考え方

@ 土地A

再評価後の帳簿価額(180)に基づいて減損処理額(60=180−120)を算定する。減損処理後の土地の帳簿価額が、再評価の直前の帳簿価額以上である場合、減損処理した金額(60)に対応する土地再評価差額金(税効果控除後の36=80×(1−40%)×{60÷(180−100)})を、剰余金修正を通じて未処分利益に繰り入れる。

 

(仕訳)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

減損損失

60

土地

60

再評価に係る繰延税金負債

24

法人税等調整額

24

土地再評価差額金

36

土地再評価差額金取崩額

36

 

A 土地B

再評価後の帳簿価額(180)に基づいて減損処理額(100=180−80)を算定する。減損処理後の土地の帳簿価額が、再評価の直前の帳簿価額に満たない場合、土地再評価差額金の全額(税効果控除後の48=80×(1−40%))を、剰余金修正を通じて未処分利益に繰り入れる。

 

(仕訳)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

減損損失

100

土地

100

再評価に係る繰延税金負債

32

法人税等調整額

40

繰延税金資産

8

   

土地再評価差額金

48

土地再評価差額金取崩額

48

 

B 土地C

再評価後の帳簿価額(80)に基づいて減損処理額(40=80−40)を算定する。減損処理後の土地の帳簿価額が、再評価の直前の帳簿価額に満たない場合、土地再評価差額金全額(税効果控除後の12=(100−80)×(1−40%))を、剰余金修正を通じて取り崩す。

 

(仕訳)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

減損損失

40

土地

40

繰延税金資産

24

法人税等調整額

16

 

 

再評価に係る繰延税金資産

8

土地再評価差額金取崩額

12

土地再評価差額金

12

 


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