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会計基準|結論の背景|適用指針設例目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成22年6月30日に公表した「1株当り当期純利益に関する会計基準」から「結論の背景」の部分を抜粋したものです。「目的」及び「会計基準」の部分は別に記載してあります。

なお、実務に適用するにあたっては念のために最新の会計基準等を確認してください。

企業会計基準第2号

1株当たり当期純利益に関する会計基準

(結論の背景)

平成14年9月25日

改正平成18年1月31日

最終改正平成22年6月30日

企業会計基準委員会

目次

結論の背景

範囲

用語の定義

1株当たり当期純利益

1株当たり当期純利益の算定

普通株式に係る当期純利益

普通株式の期中平均株式数

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

希薄化効果

潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定

ワラントが存在する場合

転換証券が存在する場合

株式併合又は株式分割が行われた場合

会計方針の変更又は過去の誤謬の訂正が行われた場合

開示

適用時期等


結論の背景

37. 本会計基準では、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定の目的は、普通株主に関する一会計期間における企業の成果を示すことにあるとしている(第3項参照)。これは、市場で流通する株式の多くは普通株式であり、また、同一企業の他の会計期間との経営成績の比較(時系列比較)及び他企業との経営成績の比較(企業間比較)等を向上させるための情報の開示を行うことが、投資家の的確な投資判断に資すると考えられることによる。

38. 本会計基準において潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定の目的は、必ずしも1株当たり当期純利益に対する将来の潜在的な変動性を示す警告指標とすることではなく、1株当たり当期純利益と同様に、原則として、過去の情報として開示することであり、これにより時系列比較等を通じ将来の普通株式の価値の算定に役立つものと位置付けている。これは、企業の成果を示す会計情報が、基本的に過去の情報であるという考え方に基づくものである。したがって、本会計基準では、国際的な会計基準の考え方と同様に、期末の時点のみの株式数及び時価又は将来予測の要素は考慮せずに、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定を行うことを意図している。

これに対し、特に潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定の目的は、警告指標とすべきではないかという意見もある。このため、1 株当たり当期純利益に対する将来の潜在的な変動性を理解できるように、1株当たり当期純利益又は潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定上の基礎の注記(第33項参照)には、当期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に含まれなかった潜在株式の概要を含むべきと考えられる。

範囲

39. 1株当たり当期純利益については、昭和57年の企業会計原則の改正に伴い、商法及び証券取引法(現在は、会社法及び金融商品取引法)に基づいて開示が要求されてきた。また、潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、証券取引法に基づいて開示が要求されてきた。

このような経緯を踏まえ、本会計基準では、どのような場合に算定し開示するか個々には定めず、財務諸表において、1株当たり当期純利益又は潜在株式調整後1株当たり当期純利益の開示が要求されているすべての場合に適用するものとしている(第4項参照)。

用語の定義

40. 本会計基準で対象とする普通株式(第5項参照)は、権利内容に制限のない標準となる株式であり、普通株主(第6項参照)は、株式数に応じ、配当請求権(剰余金の配当を受ける権利)、残余財産分配請求権(残余財産の分配を受ける権利)及び株主総会における議決権を有する。

41. 本会計基準で対象とする配当優先株式(第7項参照)には、配当請求権は普通株式より優先するが、残余財産分配請求権は劣後する混合株式も含むものとする。

42. 本会計基準で対象とするワラント(第10項参照)は、その保有者が普通株式を取得することのできる権利又はこれに準じる権利であるため、株式を発行する会社からみれば、普通株式を対象とした売建コール・オプションという性格を有する。

43. 本会計基準で対象とする転換証券(第11項参照)は、金融負債又は普通株式以外の株式の対価部分と普通株式への転換請求権又はこれに準じる権利の対価部分とに区分せず一体として処理する方法(一括法)により会計処理されたものに限られることとなる。

これは、転換証券が、金融負債又は普通株式以外の株式の対価部分と、普通株式への転換請求権又はこれに準じる権利の対価部分とに区分して処理する方法(区分法)により会計処理された場合には、区分して処理された普通株式への転換請求権又はこれに準じる権利は、ワラントと同様に取り扱われるためである。

1株当たり当期純利益

1株当たり当期純利益の算定

44. 普通株式と同等の株式が存在する場合、1株当たり当期純利益の算定上、それらを普通株式から区分して取り扱うことが困難であるため、1株当たり当期純利益を算定する際には、普通株式と同様に取り扱うこととした(第13項参照)。

普通株式に係る当期純利益

45. 1株当たり当期純利益の算定の目的は、普通株主に関する企業の成果を示すことにある(第3項参照)ため、普通株主に帰属しない優先配当額は、1株当たり当期純利益の算定上、損益計算書上の当期純利益から控除することが適当である(第15項参照)。

46. ある会計期間における優先配当が定められた額に達しない場合に、その不足額を累積して次の会計期間以降の利益からその累積した不足額を支払うかどうかにより、配当優先株式は累積型と非累積型とに分類される。普通株主に帰属しない金額に含まれる優先配当額は、累積型配当優先株式の場合、定められた優先配当額に達しないときの当該不足額が翌会計期間以降に優先的に支払われるため、社債に係る支払利息と同様に、当該会計期間に係る要支払額を算定し、また、非累積型配当優先株式の場合には、剰余金の配当の決議により決定する当該優先株主に帰属する額を基礎として算定することが適当であると考えられる。

なお、累積型配当優先株式において、定められた優先配当額に達しないときの過年度の不足額は、過年度の1株当たり当期純利益の算定において既に反映されている。このため、当期の1株当たり当期純利益の算定において、当該不足額は考慮せず、普通株主に帰属しない金額に含まれる優先配当額は、当該会計期間に係る要支払額となることに留意する必要がある。

47. 期末後の株主総会又は取締役会において剰余金の配当の議案が決議され優先配当額が決定される場合、1株当たり当期純利益の算定上、普通株主に帰属しない金額に含まれる非累積型配当優先株式の優先配当額は、決議された株主総会又は取締役会の日の属する会計期間の当期純利益から控除するのではなく、基準日の属する会計期間の剰余金の配当を基礎として算定し、当該会計期間の当期純利益から控除することが適当と考えられる(第16項(2)参照)。

なお、1 株当たり当期純利益を財務諸表に開示する際に剰余金の配当の議案がまだ決議されていない場合には、普通株主に帰属しない金額は、剰余金の配当の議案に基づき算定されることとなる。

48. 優先配当額を普通株主に帰属しない金額として損益計算書上の当期純利益から控除するのは、1株当たり当期純利益の算定の目的に照らして普通株主に係る当期純利益を算定するためである。したがって、別途積立金のような普通株主に帰属する積立金の変動は計数の変動のみであって損益計算書上の当期純利益から控除しない。また、優先配当積立金や役員退職慰労積立金のような普通株主に帰属しない積立金の変動であっても、1株当たり当期純利益の算定対象となる会計期間に係るものではない場合には、損益計算書上の当期純利益から控除する普通株主に帰属しない金額には該当しないことに留意する必要がある。

49. その他資本剰余金の処分による優先配当等は、基本的に株主資本の払戻の性格を持つため、1株当たり当期純利益の算定上、当期純利益から控除される普通株主に帰属しない金額には該当しないと考えられる。このため、本会計基準では、1株当たり当期純利益の算定上、当期純利益から控除される優先配当は、留保利益から行われるものに限っている(第8項参照)。

普通株式の期中平均株式数

50. 普通株式の期中平均株式数を算定するにあたっては、以下のいずれの方法も考えられるが、同様の結果となる。

(1) 期首における普通株式の発行済株式数に、期中に普通株式が発行された場合は当該発行時から期末までの期間に応じた普通株式の発行済株式数を加算し、期中平均自己株式数を控除して算定する方法

(2) 会計期間における日々の普通株式の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数の累計を平均して算定する方法

51. (削 除)

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

希薄化効果

52. 本会計基準では、潜在株式に係る権利の行使を仮定することにより算定した場合の潜在株式調整後1株当たり当期純利益が、1株当たり当期純利益を下回る場合に、当該潜在株式は希薄化効果を有するものとしており(第20項参照)、1株当たり当期純損失の場合には、潜在株式に係る権利の行使を仮定することにより算定した額が、当該1株当たり当期純損失を上回る場合でも、希薄化効果を有しないものとして取り扱う。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定

53. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定する際に用いる普通株式に係る当期純利益(第14項参照)及び普通株式の期中平均株式数(第17項参照)は、1株当たり当期純利益を算定する際に用いられたものと同じものである。

54. 国際的な会計基準では、継続事業からの税引後利益のように、当期純利益以外の利益指標によって希薄化効果の有無を判定している(この際に用いる利益はコントロール・ナンバーと呼ばれている。)が、本会計基準においては、当期純利益以外の利益指標によって希薄化効果の有無を判定するというような考え方を採用していない。これは、希薄化効果の意義(第20項参照)から、その有無は当期純利益によって判定することが適切であること、また、当期純利益以外に税金控除後の利益が存在しない我が国においては、現状、国際的な会計基準のような考え方を導入することが困難であると考えられることによる。

ワラントが存在する場合

55. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定するにあたり、第25項及び第26項で示した方法によって、ワラントの希薄化効果を反映させる方式(以下「自己株式方式」という。)では、普通株式の期中平均株価がワラントの行使価格を上回る場合に、当該ワラントがすべて行使されたと仮定することにより算定した潜在株式調整後1株当たり当期純利益は1株当たり当期純利益を下回るため、当該ワラントは希薄化効果を有することとなる(第24項参照)。

56. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定するにあたり、ワラントの希薄化効果を反映させる方式としては、以下が考えられる。

(1) 無調整方式(期末の株価が行使価格を上回る場合、ワラントが行使されたと仮定するが、行使による入金額の使途は考慮しない。)

(2) 自己株式方式(期中平均株価が行使価格を上回る場合、ワラントが行使されたと仮定し、また、行使による入金額は、自己株式の買受に用いたと仮定する。)

(3) 利益調整方式(期中平均株価が行使価格を上回る場合、ワラントが行使されたと仮定し、また、行使による入金額は、例えば、国債への投資又は負債の返済に用いたと仮定する。)

本会計基準では、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の目的が、1株当たり当期純利益と同様に、企業の成果を示すこと(第3項参照)であり、それは過去の情報として算定することであるため期末の時点のみの株式数及び時価を考慮することは適当ではないこと、行使による入金額の使途は一概には決められないため自己株式の買受に用いたと仮定することにも一定の合理性があること、また、自己株式方式は従来の方法に類似し比較的簡便で客観的であることから、国際的な会計基準と同様に、(2)の自己株式方式を採用している。

なお、平成14年会計基準以前の我が国における方法は、期中平均株価が行使価格を上回る場合、期末にワラントが行使され、期中平均株価で自己株式の買受を行うと仮定していたが、期中平均株価が行使価格を上回る場合に期中平均株価で自己株式の買受を行うと仮定するためには、期首にワラントが行使され、この入金額を用いて期中に平均的に自己株式を買い受けたと仮定することが、自己株式方式としては適当である。このため、本会計基準では、国際的な会計基準と同様に、期首にワラントが行使されたと仮定することとしている。

転換証券が存在する場合

57. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定するにあたり、第28項から第30項において示した方法によって、転換証券の希薄化効果を反映させる方式(以下「転換仮定方式」という。)では、1株当たりの当期純利益が転換証券に関する増加普通株式1株当たりの当期純利益調整額を上回る場合に、当該転換証券がすべて転換したと仮定することにより算定した潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、1株当たり当期純利益を下回るため、希薄化効果を有する(第27項参照)。

58. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定するにあたり、転換証券の希薄化効果を反映させる方式としては、以下が考えられる。

(1) 期末転換仮定方式(期末の株価が行使価格を上回る場合、転換証券が普通株式に転換されたと仮定する。)

(2) 転換仮定方式(1株当たり当期純利益が転換証券に関する増加普通株式1株当たりの当期純利益調整額を上回る場合、転換証券が期首に普通株式に転換されたと仮定する。この結果、転換証券は当期には存在しなかったものとみなす。)

(3) 修正転換仮定方式(1株当たり当期純利益が転換証券に関する増加普通株式1株当たりの当期純利益調整額を上回り、かつ、期末の株価が行使価格を上回る場合、転換証券が期首に普通株式に転換されたと仮定する。この結果、転換証券は当期には存在しなかったものとみなす。)

従来から我が国では、国際的な会計基準と同様に、(2)の転換仮定方式を採用しているが、転換仮定方式は、将来、転換の可能性が少ない場合でも転換を仮定しているため適切ではないという意見がある。このような意見に対しては、上述した(1)の期末転換仮定方式や(3)の修正転換仮定方式が考えられる。しかしながら、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定目的は、1株当たり当期純利益と同様に、企業の成果を示すこと(第3項参照)であり、それは過去の情報として算定し開示することであるため上記(1)及び(3)のように、期末の時点のみの時価を考慮することは適切ではないと考えられる。したがって、本会計基準では、従来どおり、(2)の転換仮定方式を採用することとしている。

59. 希薄化効果を有する転換証券が期首又は発行時においてすべて転換されたと仮定した場合に発行される普通株式数は、第30項に従って算定する方法の他、当期において転換証券が存在する期間について、転換されたと仮定した場合に発行される普通株式数を、当該期間に応じて算定する方法によって行っても同様の結果となる。

株式併合又は株式分割が行われた場合

59-2.当期に株式併合又は株式分割が行われた場合、行われた時点以降の期間に反映させる考え方と、遡及的に処理する考え方があるが、株式併合又は株式分割は期末に行われても既存の普通株主に一律に影響するものであるため、普通株主に関する企業の成果を示すためには、普通株式の期中平均株式数及び普通株式増加数を、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に、当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定して算定することが適当である(第30-2項及び第30-3項参照)。これは、株式併合又は株式分割の影響が、株価とともに1株当たり当期純利益にも反映されることによって、株価収益率(株価を1株当たり当期純利益で除した率)が適切に算定されるという見方とも整合する。

59-3.当期の貸借対照表日後に株式併合又は株式分割が行われた場合は、本来、開示後発事象に該当するものであるが、国際的な会計基準では、当期の貸借対照表日後に株式併合又は株式分割が行われた場合も、当期に株式併合又は株式分割が行われた場合と同様、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に、当該株式併合又は株式分割の影響を反映している。

前項のとおり、株価収益率が適切に算定されるという見方との整合性や、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点からも、株式併合又は株式分割が当期の貸借対照表日後に行われた場合に、その影響を反映することが適当であると考えられる。このため、平成22 年改正基準では、普通株式の期中平均株式数及び普通株式増加数を、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定して算定することとした(第30-2項及び第30-3項参照)。なお、これは開示後発事象の例外的な取扱いであるが、いつの時点までに行われた株式併合又は株式分割の影響を反映するかの判断については、開示後発事象の開示に関する現行の実務に委ねられることとなる。

会計方針の変更又は過去の誤謬の訂正が行われた場合

59-4.平成21年12月に公表された企業会計基準第24 号では、会計方針の変更又は過去の誤謬の訂正が行われた場合に、表示期間における遡及適用後又は修正再表示後の1株当たり情報に対する影響額を開示することを求めている。また、国際的な会計基準でも同様の取扱いが定められている。このため、本会計基準においても、遡及適用後又は修正再表示後の1株当たり情報の開示を求めることとした。

開示

60. 当期に株式併合又は株式分割が行われた場合、これは既存の普通株主に一律に影響するものであり、また、時系列比較を確保するため、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定した場合における1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益を開示することが適当である。同様に、株式併合又は株式分割が当期の貸借対照表日後に行われた場合も、表示期間の1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、当該株式併合又は株式分割を反映して開示することが適当である(第31項参照)。

61. (削 除)

適用時期等

62. 平成22年改正基準は、財務諸表の企業間比較及び時系列比較を確保する観点から、企業会計基準第24号と併せて適用することが適当と考えられるため、平成23年4月1日以後開始する事業年度から適用することとし、また早期適用は認めないこととした。

以上


INDEX

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