ホーム

会社法

会計基準

仕訳処理

実務メモ

財務分析

税額表

会社書式

法令集

 

会計基準結論の背景|適用指針|設例目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成23年3月25日に公表した「1株当り当期純利益に関する会計基準の適用指針」から「目的・適用指針・結論の背景」の部分を抜粋したものです。

なお、オリジナルとは異なる表現をしている部分があります。実務に適用するにあたっては念のために最新の会計基準等を確認してください。

企業会計基準適用指針第4号

1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針

(目的・会計基準・結論の背景)

平成14年09月25日

改正平成18年1月31日

改正平成22年06月30日

最終改正平成23年3月25日

企業会計基準委員会

目次

目的

適用指針

範囲

用語の定義

1株当たり当期純利益

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

1株当たり純資産額の算定

中間財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

開示

適用時期等

議決

結論の背景

経緯

1株当たり当期純利益

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

1株当たり純資産額の算定

中間財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

開示


目的

1. 本適用指針は、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)の実務上の指針を定めるものである。また、本適用指針は、会計基準で取り扱わなかった配当優先株式以外の種類株式の取扱い及び企業会計原則で取り扱われている1株当たり純資産額の算定方法についても定めている。

適用指針

範囲

2. 本適用指針は、会計基準における適用範囲に加え、財務諸表において、1株当たり純資産額を開示するすべての場合に適用する。

なお、財務諸表以外の箇所において、1株当たり当期純利益若しくは潜在株式調整後1株当たり当期純利益又は1株当たり純資産額を開示する場合にも、その算定方法については、本適用指針を適用することが望ましい。

用語の定義

3. 本適用指針における用語の定義(第4項から第6項参照)は、会計基準における用語の定義に追加して用いる。

4. 「条件付発行可能普通株式」とは、特定の条件(ただし、単に時間の経過により条件が達成される場合を除く。)を満たした場合に普通株式を発行することとなる証券又は契約をいう。

5. 「条件付発行可能潜在株式」とは、特定の条件(ただし、単に時間の経過により条件が達成される場合を除く。)を満たした場合に潜在株式を発行することとなる証券又は契約をいい、例えば、行使制限条項が付された新株予約権が含まれる。

6. 「優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式」とは、普通株式より配当請求権が優先的ではなく、かつ、普通株式の配当請求権とは異なる内容の配当請求権に基づく金額が、あらかじめ定められた方法により算定可能な株式をいい、例えば、配当請求権に基づく金額があらかじめ定められた方法により算定可能な非参加型の子会社連動株式(いわゆるトラッキング・ストック)や非転換型の配当劣後株式(後配株式)が含まれる。

1株当たり当期純利益

1株当たり当期純利益の算定

7. 損益計算書上、当期純損失の場合にも、当期純利益の場合と同様に、1株当たり当期純損失を算定する(会計基準第12項また書き)ため、当該1株当たり当期純損失は、普通株式に係る当期純損失を普通株式の期中平均株式数で除して算定することとなる。

この場合、普通株式に係る当期純損失は、普通株式に係る当期純利益と同様に、損益計算書上の当期純損失から普通株主に帰属しない金額(第11項参照)を控除して算定する。

1株当たり当期純損失=普通株式に係る当期純損失÷普通株式の期中平均株式数

=(損益計算書上の当期純損失−普通株主に帰属しない金額)÷(普通株式の期中平均発行済株式数−普通株式の期中平均自己株式数 )

普通株式及び普通株式と同等の株式に係る1株当たり当期純利益の算定

8. 普通株式の株式数と合計して1株当たり当期純利益を算定することとなる普通株式と同等の株式(会計基準第13項)は、普通株式より配当請求権が優先的ではなく、かつ、普通株式の配当請求権とは異なる内容の配当請求権に基づく金額を、あらかじめ定められた方法により算定できない株式をいい、例えば、以下が含まれる(ただし、いずれの場合も、優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式(第6項参照)を除く。)。

(1) 普通株式より配当請求権が優先的ではないが、残余財産分配請求権は普通株式より優先的である株式

(2) 普通株式より配当請求権が優先的ではなく、残余財産分配請求権は普通株式より劣後的である株式

(3) 株主総会における議決権が制限されているため普通株式ではないが、普通株式より配当請求権が優先的ではない株式(例えば、議決権制限株式)

この場合には、普通株式の数と普通株式と同等の株式の数を合計して1株当たり当期純利益を算定する。したがって、この場合の1株当たり当期純利益は、損益計算書上の当期純利益から普通株主及び普通株主と同等の株主に帰属しない金額を控除した普通株式及び普通株式と同等の株式に係る当期純利益を、普通株式及び普通株式と同等の株式の期中平均株式数で除して算定することとなる。

普通株式及び普通株式と同等の株式に係る1株当たり当期純利益=普通株式及び普通株式と同等の株式に係る当期純利益÷普通株式及び普通株式と同等の株式の期中平均株式数

=(損益計算書上の当期純利益−普通株主及び普通株主と同等の株主に帰属しない金額)÷(普通株式及び普通株式と同等の株式の期中平均株式数 )

普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益の算定

9. 第11項(3)にいう参加可能額を損益計算書上の当期純利益から控除した場合には、非転換型の参加型株式に係る当期純利益を、当該株式の期中平均株式数で除して算定した金額も、普通株式に係る1株当たり当期純利益とともに、普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益として算定し開示する[設例8]。ただし、当該非転換型の参加型株式が、証券取引所へ上場(これに準じるものを含む。)されていない場合で、重要性が乏しいときには、当該株式に係る1株当たり当期純利益を算定し開示しないことができる。

10. 優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式(第6項参照)が存在する場合には、当該株式に係る当期純利益を、当該株式の期中平均株式数で除して算定した金額も、第9項と同様、普通株式に係る1株当たり当期純利益とともに、普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益として算定し開示する。ただし、当該優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式が、証券取引所へ上場(これに準じるものを含む。)されていない場合で、重要性が乏しいときには、当該株式に係る1株当たり当期純利益を算定し開示しないことができる。

普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益=普通株式以外の株式に係る当期純利益÷普通株式以外の株式の期中平均株式数

普通株式に係る当期純利益

11. 1株当たり当期純利益を算定する際の普通株式に係る当期純利益は、損益計算書上の当期純利益から普通株主に帰属しない金額を控除して算定する(会計基準第14項)。普通株主に帰属しない金額には、例えば、以下が含まれる。

(1) 優先配当額(会計基準第16項)

(2) 配当優先株式に係る消却(償還)差額

(3) 普通株主以外の株主が損益計算書上の当期純利益から当期の配当後の配当に参加できる額(以下「参加可能額」という。)(第12項参照)

12. 第11項(3)にいう参加可能額は、非転換型の参加型株式が発行されており、あらかじめ定められた方法で算定できる場合に限る。この際、当該参加可能額は、当該会計期間に係る剰余金の配当を仮定して算定する。また、この場合には、普通株式以外の株式の1株当たり当期純利益も開示する(第9項参照)[設例8]。

なお、転換型の参加型株式が発行されている場合には、1株当たり当期純利益の算定上、転換仮定方式(会計基準第30項)に準じて算定された株式数を、普通株式数に加える

普通株式の期中平均株式数

13. 普通株式の期中平均株式数を算定する際、期中に普通株式が発行された場合、発行時から期末までの期間に応じた普通株式数(会計基準第50項(1))は、当該発行時から期末までの日数に応じた普通株式数を算定する方法の他、合理的な基礎に基づいて算定された当該平均株式数、例えば、当該発行時から期末までの月数に応じた普通株式数を算定する方法を用いることができる。同様に、例えば、会計期間における月末の普通株式の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数の累計を平均して算定する方法(会計基準第50項(2))を用いることもできる。

14. 条件付発行可能普通株式は、特定の条件(ただし、単に時間の経過により条件が達成される場合を除く。)を満たしたときに、普通株式数に含める。

15. 条件付発行可能潜在株式は、特定の条件(ただし、単に時間の経過により条件が達成される場合を除く。)を満たした潜在株式が、実際に権利が行使されたときに、普通株式数に含める。

16. 当期に株式併合又は株式分割(発行済普通株式数のみ変化する場合であり、同一種類の株式が交付される株式無償割当て等、株式分割と同様の効果を有する事象の他、時価より低い払込金額にて株主への割当てが行われた場合に含まれる株式分割相当部分を含む。以下同じ。)が行われた場合、普通株式の期中平均株式数の算定にあたっては、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に当該株式併合又は株式分割が行われたと仮定する(会計基準第30-2項)[設例9][設例10]。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定

17. 潜在株式が希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、普通株式に係る当期純利益に当期純利益調整額を加えた合計金額を、普通株式の期中平均株式数に普通株式増加数を加えた合計株式数で除して算定する(会計基準第21項)。本適用指針では、以下のような潜在株式が存在する場合の当期純利益調整額及び普通株式増加数の算定について記載している。

(1) ワラントが存在する場合(第19項から第23項参照)

(2) 転換証券が存在する場合(第24項から第27項参照)

(3) 条件付発行可能普通株式が存在する場合(第28項及び第29項参照)

(4) 条件付発行可能潜在株式が存在する場合(第30項から第32項参照)

18. 潜在株式が複数存在する場合、潜在株式を各々の発行単位に分け、希薄化効果の大きな潜在株式から順に勘案し、最大希薄化効果のある潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定する(会計基準第22項)[設例1]。

ワラントが存在する場合

19. 各々のワラントが希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定(会計基準第21項)にあたっては、自己株式方式により算定された普通株式増加数を、普通株式の期中平均株式数に加える(会計基準第25項及び第26項)[設例2]。

20. 自己株式方式において普通株式増加数を算定する際、希薄化効果を有するワラントで期中に消滅、消却又は行使された部分(会計基準第26項なお書き)及び期中に発行された部分(会計基準第26項(1))については、期首又は発行時から当該消滅時、消却時若しくは行使時又は期末までの日数に応じた普通株式数を算定する方法の他、合理的な基礎に基づいて算定された当該平均株式数、例えば、当該発行時から期末までの月数に応じた普通株式数を算定する方法を用いることができる。

21. 自己株式方式において、ワラントの行使により払い込まれると仮定された場合の入金額を用いて、普通株式を買い受けたと仮定した普通株式数を算定する場合の平均株価(会計基準第26項(2))は、各営業日の株価の平均の他、合理的な基礎に基づいて算定された平均株価、例えば、当期にワラントが存在する期間の各週又は各月の末日の株価の平均を用いることができる。これらの場合の株価は、市場において公表されている取引価格の終値を優先適用する(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第60項)。

22. 希薄化効果を有するワラントは、未だ行使期間が開始していなくとも、普通株式増加数の算定上、既に行使期間が開始したものとして取り扱う。したがって、いわゆるストック・オプションのうち一定期間の勤務後に権利が確定するものも、希薄化効果を有する場合には、行使期間が開始していなくとも、普通株式増加数の算定上、付与された時点から既に行使期間が開始したものとして取り扱う。この場合、ストック・オプションの権利の行使により払い込まれると仮定された場合の入金額に、ストック・オプションの公正な評価額のうち、将来企業に提供されるサービスに係る分を含めることとなる[設例2-2]。

23. ワラントには、平成14年の商法改正施行前にその発行が決議された新株引受権も含まれる。

転換証券が存在する場合

24. 各々の転換証券が希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定(会計基準第21項)にあたっては、転換仮定方式により算定された当期純利益調整額を普通株式に係る当期純利益に加え、また、普通株式増加数を普通株式の期中平均株式数に加える(会計基準第28項から第30項)[設例3][設例4]。

25. 転換仮定方式における当期純利益調整額(会計基準第29項(1))の算定においては、以下の点も考慮する。

(1) 利払いに係る事務手数料等の費用で重要性の乏しいものは、当該算定に含めないことができる。

(2) 転換負債に係る当期の支払利息等の金額に課税されたと仮定した場合の税額相当額は、法定実効税率を用いて算定する。

26. 転換仮定方式において普通株式増加数を算定する際、希薄化効果を有する転換証券が期中に発行され、発行時においてすべて転換されたと仮定した場合に発行される普通株式数(会計基準第30項(2))は、当該発行時から期末までの日数に応じた普通株式数を算定する方法の他、合理的な基礎に基づいて算定された当該平均株式数、例えば、当該発行時から期末までの月数に応じた普通株式数を算定する方法を用いることができる。また、会計基準第30項(1)のなお書き及びまた書きも同様に行うことができる。

27. 転換証券には、平成14年の商法改正施行前にその発行が決議され、一括法にて処理されている転換社債も含まれる。

条件付発行可能普通株式が存在する場合

28. 各々の条件付発行可能普通株式が希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定(会計基準第21項)にあたっては、普通株式増加数(第29項参照)を普通株式の期中平均株式数に加える[設例5]。

29. 第28項にいう普通株式増加数は、希薄化効果を有する条件付発行可能普通株式が期末までにはその条件を満たさないが、期末を条件期間末としたときに当該条件を満たす場合には、会計基準第26項(1)及び第30項に準じて算定する。

条件付発行可能潜在株式が存在する場合

30. 各々の条件付発行可能潜在株式が希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定(会計基準第21項)にあたっては、当期純利益調整額(第31項参照)を普通株式に係る当期純利益に加え、普通株式増加数(第32項参照)を普通株式の期中平均株式数に加える[設例6]。

31. 第30項にいう当期純利益調整額は、希薄化効果を有する条件付発行可能潜在株式が、期末までに条件を満たさないが、期末を条件期間末としたときに当該条件を満たす場合に発行されると仮定した転換証券について、会計基準第29項に準じて算定する。

32. 第30項にいう普通株式増加数は、下記の(1)及び(2)によって算定された普通株式数の合計とする。

(1) 希薄化効果を有する条件付発行可能潜在株式が期末までに条件を満たした場合であっても、当該潜在株式に係る権利が未だ行使されていない場合には、潜在株式に含め、会計基準第24項から第30項に準じて算定した普通株式数

(2) 希薄化効果を有する条件付発行可能潜在株式が期末までにはその条件を満たさないが、期末を条件期間末としたときに当該条件を満たす場合には、潜在株式に含め、会計基準第24項から第30項に準じて算定した普通株式数

子会社又は関連会社の発行する潜在株式が存在する場合

33. 子会社又は関連会社(以下「子会社等」という。)の発行する子会社等の潜在株式に係る権利の行使を仮定することにより、親会社の持分比率が変動し、その結果、連結上の当期純利益が減少する場合、当該潜在株式は潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたって考慮する[設例7]。

なお、子会社等が、親会社の普通株式に転換等可能な潜在株式を発行し、その権利の行使を仮定することにより希薄化する場合には、連結上の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたり、親会社の潜在株式に含める。

親会社が発行する子会社等の潜在株式が存在する場合

33-2. 親会社が発行する子会社等の普通株式に転換等の可能な潜在株式について、その権利の行使を仮定することにより、親会社の持分比率が変動し、その結果、連結上の当期純利益が減少する場合、当該潜在株式は、連結上の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたって考慮する。

1株当たり純資産額の算定

34. 1株当たり純資産額は、普通株式に係る期末の純資産額(第35項参照)を、期末の普通株式(普通株式と同等の株式(第8項参照)を含む。以下同じ。)の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数で除して算定する。なお、連結財務諸表において1株当たり純資産額を算定する際に控除する自己株式数には、1株当たり当期純利益の算定と同様(会計基準第17項)、子会社及び関連会社が保有する親会社等(子会社においては親会社、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社)の発行する普通株式数のうち、親会社等の持分に相当する株式数を含めるものとする。

35. 第34項にいう普通株式に係る期末の純資産額は、貸借対照表の純資産の部の合計額から以下の金額を控除して算定する[設例11]。

(1) 新株式申込証拠金

(2) 自己株式申込証拠金

(3) 普通株式よりも配当請求権又は残余財産分配請求権が優先的な株式の払込金額(当該優先的な株式に係る資本金及び資本剰余金の合計額)

(4) 当該会計期間に係る剰余金の配当であって普通株主に関連しない金額

(5) 新株予約権

(6) 少数株主持分(連結財務諸表の場合)

1株当たり純資産額=普通株式に係る期末の純資産額÷(期末の普通株式の発行済株式数−期末の普通株式の自己株式数 )

=(貸借対照表の純資産の部の合計額−控除する金額)÷(期末の普通株式の発行済株式数−期末の普通株式の自己株式数 )

36. 普通株式よりも配当請求権及び残余財産分配請求権が優先的ではなく、かつ、普通株式の配当請求権及び残余財産分配請求権とは異なる内容の権利に基づく金額が、あらかじめ定められた方法により算定可能な株式が存在する場合には、当該株式に係る期末の純資産額を当該株式の期末の株式数で除して算定した金額も、普通株式に係る1株当たり純資産額とともに、普通株式以外の株式に係る1株当たり純資産額として算定し開示する[設例12]。ただし、当該株式が、証券取引所へ上場(これに準じるものを含む。)されていない場合で、重要性が乏しいときには、当該株式に係る1株当たり純資産額は、算定し開示しないことができる。

普通株式以外の株式に係る1株当たり純資産額=普通株式以外の株式に係る期末の純資産額÷普通株式以外の株式の期末の株式数

36-2. 企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に従い、会計方針の変更又は過去の誤謬の訂正により財務諸表に遡及適用又は修正再表示を行った場合は、表示期間の1株当たり純資産額を、遡及適用後又は修正再表示後の金額により算定する。

中間財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

37. 1株当たり中間純利益及び潜在株式調整後1株当たり中間純利益の算定は、中間会計期間を一会計期間とみて、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に準ずるものとする[設例13]。また、中間期の1株当たり純資産額は、期末の1株当たり純資産額の算定に準ずるものとする。

37-2. 1株当たり四半期純利益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定は、中間会計期間と同様、四半期累計期間を一会計期間とみて、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に準ずるものとする。また、四半期会計期間が四半期損益及び包括利益計算書又は四半期損益計算書の開示対象期間に含まれる場合、四半期会計期間に係る1株当たり四半期純利益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の算定については、四半期累計期間に係るものと同様に取り扱う。

開示

38. 開示する1株当たり当期純利益又は潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定上の基礎(会計基準第33項)には、以下の事項が含まれる。なお、他に同様の開示を財務諸表において行っている場合には、その旨の記載をもって代えることができる。

(1) 損益計算書上の当期純利益、1株当たり当期純利益の算定に用いられた普通株式に係る当期純利益及びこれらの差額(普通株主に帰属しない金額(第11項参照))の主要な内訳

(2) 1株当たり当期純利益の算定に用いられた普通株式及び普通株式と同等の株式の期中平均株式数(第8項参照)の種類別の内訳

(3) 潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に用いられた当期純利益調整額(会計基準第21項)の主要な内訳

(4) 潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に用いられた普通株式増加数(会計基準第21項)の主要な内訳

(5) 希薄化効果を有しないため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に含まれなかった潜在株式の概要

39. 希薄化効果を有しないため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に含まれなかった潜在株式の概要(第38項(5)参照)には、その旨、潜在株式の種類、潜在株式の数が含まれる。なお、他に同様の開示を財務諸表において行っている場合には、その旨の記載をもって代えることができる。

また、ここで開示の対象となる株式には、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に含まれなかった条件付発行可能普通株式及び条件付発行可能潜在株式も含むものとする。

40. 財務諸表において、1株当たり純資産額を開示する場合には、当該金額の算定上の基礎として以下の事項を注記することが望ましい。なお、他に同様の開示を財務諸表において行っている場合には、その旨の記載をもって代えることができる。

(1) 貸借対照表上の純資産の部の合計額と1株当たり純資産額の算定に用いられた普通株式に係る期末の純資産額の差額(貸借対照表の純資産の部の合計額から控除する金額(第35項参照))の主要な内訳

(2) 1株当たり純資産額の算定に用いられた期末の普通株式の数の種類別の内訳

41. 当期に株式併合又は株式分割が行われた場合には、その旨及び表示期間の1株当たり純資産額を会計基準第30-2項及び第30-3項に従い算定している旨を注記する。また、当期の貸借対照表日後に株式併合又は株式分割が行われた場合も、同様の注記を行う。

42. (削除)

適用時期等

43. 平成18年改正の本適用指針(以下「平成18年改正適用指針」という。)の適用時期に関する取扱いは、同時に改正した会計基準と同様とする。

なお、平成18年改正適用指針の適用前の1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益並びに1株当たり純資産額の算定については、平成14年公表の本適用指針(以下「平成14年適用指針」という。)による。

43-2. 平成22年改正の本適用指針(以下「平成22年改正適用指針」という。)の適用時期に関する取扱いは、平成22年改正の会計基準と同様とする。

43-3. 平成22年改正適用指針の適用については、平成22年改正の会計基準と同様、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。

43-4. 平成23年改正の本適用指針(以下「平成23年改正適用指針」という。)は、平成23年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。

議決

44. 平成14年適用指針は、第97回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。

44-2. 平成22年改正適用指針は、第204回企業会計基準委員会に出席した委員9名全員の賛成により承認された。

44-3. 平成23年改正適用指針は、第221回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。

結論の背景

経緯

45. 1株当たり当期純利益と同様に、1株当たり純資産額についても、昭和57年の企業会計原則の改正に伴い、証券取引法に基づいて開示が要求されてきた。これらは従来、1株当たり情報として開示されており、また、平成14年9月公表の企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」において1株当たり当期純利益の算定方法が定められたことに伴い、1株当たり純資産額の算定方法についても見直す必要が生じたため、平成14年適用指針にて、これを定めた。なお、平成14年適用指針の適用により、実務対応報告第3号「潜在株式調整後1株当たり当期純利益に関する当面の取扱い」は廃止されている。

また、平成18年には、会社法の公布等に伴い会計基準が改正されたこと、また、平成17年12月に企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」が公表されたことに伴い、平成14年適用指針についても所要の改正を行った。

今般、平成22年改正の会計基準が公表されたことに伴う改正や、ストック・オプションが存在する場合の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定上の取扱いなどについての改正を行っている。

なお、本適用指針では、1株当たり当期純利益と同様に、どのような場合に算定し開示するかを個々には定めず、財務諸表において、1株当たり純資産額の開示が要求されているすべての場合に適用するものとしている(第2項参照)。

45-2. 平成23年改正適用指針では、平成23年の企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」の改正に伴い、四半期損益計算書の開示対象期間を見直したこと及び四半期の1株当たり純資産額の開示を求めないこととしたことに伴う所要の改正を行った(第37-2項及び第63-2項参照)。

1株当たり当期純利益

普通株式及び普通株式と同等の株式に係る1株当たり当期純利益の算定

46. 会計基準では、1株当たり当期純利益の算定上、普通株式と同等の株式が存在する場合には、これらを普通株式から区分して取り扱うことが困難であるため、1株当たり当期純利益を算定する際には、普通株式と同様に取り扱うこととしている(会計基準第13項及び第44項)。この場合、普通株式と同等の株式とは、まず、1株当たり当期純利益の算定上、普通株式と配当優先株式は区別されている(会計基準第15項及び第16項)ことから、普通株式より配当請求権が優先的ではない株式が該当すると考えられる。また、優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式が存在する場合には、当該株式に係る1株当たり当期純利益を算定し開示する(第10項参照)ことから、これに該当しない株式となる。したがって、本適用指針では、普通株式と同等の株式とは、普通株式より配当請求権が優先的ではなく、かつ、普通株式の配当請求権とは異なる内容の配当請求権に基づく金額を、あらかじめ定められた方法により算定できない株式をいうとしている(第8項参照)。

普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益の算定

47. 配当優先株式を含む参加型の株式は、普通株式とともに配当可能利益の分配を受けるため、1株当たり当期純利益を算定する場合、損益計算書上の当期純利益から参加可能額を控除することが適当であると考えられる(第12項参照)。この場合、当期純利益は普通株主と普通株主以外の株主に各々帰属すると考えられるため、当該参加可能額を含む普通株式以外の株式に係る当期純利益を、普通株式以外の株式の期中平均株式数で除して算定した金額も、普通株式の1株当たり当期純利益とともに、普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益として算定し開示することが適当である(第9項参照)。これは、国際的な会計基準で採用している2種方式(ツークラス法)と呼ばれている方法に相当する。

同様に、優先的ではないが異なる配当請求権を有する株式(第6項参照)が存在する場合にも、普通株式に係る1株当たり当期純利益とともに、普通株式以外の株式に係る1株当たり当期純利益として算定し開示することが適当である(第10項参照)。

48. 転換型の参加型株式については、1株当たり当期純利益の算定上、以下の方法によることが考えられる。

(1) 非参加型の転換証券と同様に扱う方法

(2) 非転換型の参加型株式と同様に扱う方法

(3) 転換後の普通株式と同様に扱う方法

非転換型の参加型株式は、第12項のように1株当たり当期純利益の算定上、考慮されていることから、転換型の参加型株式を(1)のように非参加型として1株当たり当期純利益の算定上、考慮しないことは適当ではない。また、転換型の参加型株式を(2)のように非転換型の参加型株式と同様に扱う方法では、転換に関する希薄化効果を反映できない。したがって、転換型の参加型株式は、転換後の普通株式と同様の性格を有する面を重視して、本適用指針では、国際的な会計基準の考え方と同様に、(3)の方法によることとした(第12項なお書き参照)。

普通株式に係る当期純利益

49. 定められた額の優先配当を有する配当優先株式の償還差額は、社債のように、優先配当額の大小に依存する側面があるため、優先配当と同様に、1株当たり当期純利益の算定上、損益計算書上の当期純利益から控除することが考えられる。一方、配当優先株式の償還差額は、普通株主にも帰属する資本取引であるため、1株当たり当期純利益の算定上も、損益計算書上の当期純利益から控除しないことが考えられる。本適用指針では、国際的な会計基準と同様に、前者の考え方を採り入れている(第11項(2)参照)。

50. 参加可能額の算定は、非累積型配当優先株式の優先配当額の算定(会計基準第16項(2))のように、当該会計期間に係る剰余金の配当を仮定して行うことが適当であると考えられる(第11項(3)参照)。この場合、当期純利益の帰属を算定するにすぎないため、実際の剰余金の配当の際に利益準備金の計上が必要であっても、これを考慮する必要はない。

51. 連結ベースでの普通株主に帰属しない金額は、親会社の普通株主に帰属しない金額であるため、基本的に子会社の優先配当額等については、1株当たり当期純利益の算定上、親会社負担分を考慮することが妥当と考えられる。

普通株式の期中平均株式数

52. 時価より低い払込金額にて株主への割当てが行われた場合には、既存の普通株主に一律に影響する株式分割相当部分が含まれる。したがって、そのような株式分割相当部分も、普通株式の期中平均株式数の算定にあたっては、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に行われたと仮定する(第16項参照)。

ただし、時価より低い払込金額にて第三者への割当てが行われた場合には、既存の普通株主に一律には影響しないため、時価と払込金額の差が株式分割相当部分に該当するわけではない。

このため、時価より低い払込金額の場合でも、第三者への割当てのときには、普通株式の期中平均株式数の算定にあたって考慮しないことに留意する必要がある。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

ワラントが存在する場合

53. ワラントには、いわゆるストック・オプションも含まれるが、これは、通常、付与後に特定の条件を満たした場合、その権利が確定する。特定の条件には、一定期間の勤務の他、一定の利益水準や株価水準の達成などが考えられる。前者のように、一定期間の勤務後に権利が確定する場合には、通常の新株予約権と同様に、行使期間が開始していなくとも、普通株式増加数の算定上、付与された時点から既に行使期間が開始したものとして取り扱うこととなる(第22項参照)。これに対して、後者のように、単に時間の経過ではなく、特定の利益水準や株価水準の達成などの条件が付されている場合には、条件付発行可能潜在株式として取り扱うこととなる(第30項参照)。

53-2. ストック・オプションを付与し、これに応じて企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上され、対応する金額は、ストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上される(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」第4項)。各会計期間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、当期に発生したと認められる額であるため、当期までに費用計上されていない額、すなわち、将来企業に提供されるサービスに係る分について、権利を確定するためには、将来払い込まなければならない額とみなすことが適当であると考えられる。

したがって、前項のように、一定期間の勤務後に権利が確定する場合に、行使期間が開始していなくとも、普通株式増加数の算定上、付与された時点から既に行使期間が開始したものとして取り扱う場合には、ストック・オプションの権利の行使により払い込まれると仮定された場合の入金額には、ストック・オプションの公正な評価額のうち、将来企業に提供されるサービスに係る分を含めることとした(第22項参照)。この場合、普通株式の期中平均株価が、将来企業に提供されるサービスに係る公正な評価単価を含めたストック・オプションの行使価格を上回る場合に、希薄化効果を有することとなる。

転換証券が存在する場合

54. 本適用指針で対象とする転換証券は、一括法により会計処理されたものである(会計基準第43項)。一括法により会計処理することが認められている新株予約権付社債は、通常、転換社債型新株予約権付社債と呼ばれている。

条件付発行可能普通株式が存在する場合

55. 条件付発行可能普通株式が、期末までに条件を満たさない場合でも、希薄化効果を有する限り、潜在株式調整後1株当たり当期純利益に反映させる必要がある。この場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は過去の情報として算定し開示するという位置付け(会計基準第38項)から、当期の状況のみを勘案することが適当である。したがって、条件付発行可能普通株式を潜在株式調整後1株当たり当期純利益に反映させるにあたっては、当期の状況が条件期間末まで変化がないことを仮定することとした(第29項参照)。

なお、同様の理由により、期末後、当期の状況と異なる状況となっても、条件付発行可能普通株式に関して、当期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の修正又はこれに関する後発事象とする必要はない。

条件付発行可能潜在株式が存在する場合

56. 条件付発行可能潜在株式が、期末までに条件を満たさない場合でも、希薄化効果を有する限り、潜在株式調整後1株当たり当期純利益に反映させる必要がある。例えば、ワラントの権利行使を行うためには一定の利益水準を達成するという条件が付されている場合、期末までに当該条件を満たさないが、期末を条件期間末としたときに当該条件を満たす場合には、潜在株式に含め、普通株式増加数を算定する(第32項(2)参照)。

なお、いわゆるストック・オプションのうち一定期間の勤務後に権利が確定するものは、条件付発行可能潜在株式に該当せず、通常の新株予約権と同様に、行使期間が開始していなくとも、普通株式増加数の算定上、付与された時点から既に行使期間が開始したものとして取り扱うことに留意する必要がある。(第22項及び第53項参照)。

57. 条件付発行可能普通株式と同様に、条件付発行可能潜在株式を潜在株式調整後1株当たり当期純利益に反映させるにあたっては、当期の状況が条件期間末まで変化がないことを仮定することとしている。また、条件付発行可能普通株式と同様に、期末後、当期の状況と異なる状況となっても、条件付発行可能潜在株式に関して、当期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の修正又はこれに関する後発事象とする必要はない(第55項参照)。

1株当たり純資産額の算定

58. 1株当たり純資産額の算定及び開示の目的は、普通株主に関する企業の財政状態を示すことにあると考えられるため、普通株主に関連しない金額は、1株当たり純資産額の算定上、期末の純資産額には含めないことが適当である。

このため、1株当たり純資産額の算定における普通株式に係る期末の純資産額は、純資産会計基準が公表されたことに伴い、貸借対照表の純資産の部の合計額を基礎とすることとなるが、改正適用指針では、これまでと同様に、普通株主に関連しない新株予約権及び少数株主持分の金額を控除して算定することとした。

59. 純資産会計基準により純資産の部の評価・換算差額等に区分されることとなったその他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定などの項目は、これまで1株当たり純資産額の算定上、株主資本の項目とともに普通株式に係る期末の純資産額に含めていたことから、平成18年改正適用指針でも、従来と同様に、普通株式に係る期末の純資産額に含めることとした。

また、純資産会計基準において、これまで資産又は負債とされてきた繰延ヘッジ損益は評価・換算差額等に区分されることとされている。繰延ヘッジ損益には、ヘッジ対象の相場変動を相殺するものも含まれるが、その性格等にかかわらず、平成18年改正適用指針では1株当たり純資産額の算定上、評価・換算差額等の項目として、普通株式に係る期末の純資産額に含めることとした。

60. 普通株式よりも配当請求権又は残余財産分配請求権が優先的な株式に係る金額は、当該株式の払込金額(第35項(3)参照)及び優先配当額(第35項(4)参照)以外に、本来、留保利益や評価・換算差額等の一部も該当する。しかしながら、通常、留保利益や評価・換算差額等のうち優先的な株式に係る金額を算定することは困難であるため、定められた方法により優先的な株式に係る金額を算定することができない限り、留保利益や評価・換算差額等の一部を期末の純資産額から控除する必要はないと考えられる。

なお、普通株式に係る期末の純資産額を算定するに際して純資産の部の合計額から控除する当該会計期間に係る剰余金の配当であって普通株主に関連しない金額(第35項(4)参照)には、期末日までに株主総会等で決議された未払金額のみならず、期末日後に決議される剰余金の配当のうち基準日が当期に属するものがある場合、当該剰余金の配当の議案に基づく金額が含まれることに留意する必要がある。

61. その他資本剰余金の処分による優先配当等は、基本的に株主資本の払戻の性格を持つため、1株当たり当期純利益の算定上、当期純利益から控除される普通株主に帰属しない金額には該当しないと考えられる(会計基準第49項)。しかしながら、1株当たり純資産額の算定上、その他資本剰余金の処分による優先配当等の剰余金の配当は、普通株主に係る期末の純資産額にはあたらない。このため、優先配当等は、留保利益からのみならず、その他資本剰余金の処分による場合にも、1株当たり純資産額の算定上、普通株主に係る期末の純資産額には含めるべきではないものと考えられる。

中間財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い

62. 本適用指針では、1株当たり中間純利益及び潜在株式調整後1株当たり中間純利益の算定において、中間会計期間を一会計期間とみて事業年度における算定に準ずることとしている(第37項参照)。このため、普通株主に帰属しない金額に含まれる累積型配当優先株式に係る優先配当額は、期首から中間会計期間末日までの期間の特定の日を基準日とする配当を行うかどうかにかかわらず、中間会計期間に係る要支払額となり、また、非累積型配当優先株式に係る優先配当額は、期首から中間会計期間末日までの期間の特定の日を基準日とする配当を行う場合には当該金額、配当を行わない場合にはゼロとなるものと考えられる。

63. 事業年度における潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において、中間会計期間において算定された普通株式増加数を前提に加重平均する考え方もある。しかし、年度の財務諸表の作成にあたっては、中間会計期間を含む事業年度全体を対象として、年度末の情報に基づいて改めて会計処理が行われ、その結果、年度決算では、中間決算の基礎となった金額とは異なる金額が計上される場合もある(中間連結財務諸表等の作成基準の設定に関する意見書六5)。したがって、潜在株式調整後1株当たり中間純利益は、中間会計期間を一会計期間とみて算定し、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、年度末の情報に基づいて改めて算定されることとなる。

63-2. 企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」第107項では、1株当たり四半期純損益は、普通株式に係る四半期純損益を普通株式の期中平均株式数で除して算定するため、四半期会計期間が四半期損益及び包括利益計算書又は四半期損益計算書の開示対象期間に含まれる場合、各四半期会計期間の1株当たり四半期純損益の合計は、年度の期首からの累計期間の1株当たり四半期純損益に必ずしも合致しないとされている。これは、四半期財務諸表においても、中間財務諸表と同様、四半期会計期間又は四半期累計期間をそれぞれ一会計期間とみて1株当たり四半期純利益を算定することによるものであるが、本適用指針上も、四半期財務諸表における取扱いを明らかにするため、1株当たり四半期純利益及び潜在株式調整後1株当たり四半期純利益は中間財務諸表と同様に取り扱うこととした(第37-2項参照)。

開示

64. 希薄化効果を有しないため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の開示は行わない場合(会計基準第23項(2))でも、1株当たり当期純利益の算定上の基礎として、第38項の(1)、(2)及び(5)の注記を行うこととなることに留意する必要がある。

65. 純資産会計基準の公表により、貸借対照表上の純資産の部の合計額と1株当たり純資産額の算定に用いられる純資産額との間に従来より差額が生ずることになったことなどから、1株当たり純資産額の開示についても、1株当たり当期純利益と同様に、1株当たり純資産額の算定上の基礎(第40項参照)を注記することが望ましい。

以上

 


INDEX

1株当たり当期利益に関する会計基準目次

ホーム会社法会計基準仕訳処理実務メモ財務分析税額表会社書式法令集

免 責リンクポリシープライバシーポリシー