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会計基準│結論の背景等│目次

 

(注)本内容は、企業会計審議会が平成22年6月30日に公表した「包括利益の表示に関する会計基準」から「結論の背景」「本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正」及び「参考」部分を抜粋し たものです。

なお、オリジナルとは異なる表現をしている部分があります。実務への適用に当っては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第25号

包括利益の表示に関する会計基準

(結論の背景・設例等

平成22年6月30日

企業会計基準委員会

目次

目的・会計基準は別に記載してあります。

結論の背景

経緯

目的

用語の定義

包括利益の計算の表示

その他の包括利益の内訳の開示

包括利益を表示する計算書

適用時期等

本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正

参考(設例等)


結論の背景

経緯

18. これまで我が国の会計基準では、包括利益の表示を定めていなかった。国際的な会計基準において「その他の包括利益」とされている項目の貸借対照表残高は、純資産の部の中の株主資本以外の項目として、「評価・換算差額等」に表示され(企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第8項)、それらの当期変動額は株主資本等変動計算書に表示される(企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」第8項)が、その当期変動額と当期純利益との合計額を表示する定めはなかった。

19. 国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準においては、包括利益の表示の定めが平成9年(1997年)に設けられており、それ以後、包括利益の表示が行われている。その後、国際会計基準審議会(IASB)で業績報告に関するプロジェクトが開始され、現在は米国財務会計基準審議会(FASB)との共同による財務諸表表示プロジェクトとして進められている。このプロジェクトにおけるIASBとFASBの予備的見解が、平成20年(2008年)10月に、ディスカッション・ペーパー「財務諸表の表示に関する予備的見解」として公表されている。また、平成22年(2010年)5月には、IASBとFASBからそれぞれ、公開草案「その他の包括利益の項目の表示(IAS第1号の修正案)」及び公開草案「Topic220包括利益:包括利益計算書」が公表されている。

20. 当委員会では、このような国際的な会計基準の動きに対応するため、平成20年4月に財務諸表表示専門委員会を設置して検討を進めてきた。平成21年7月に公表した「財務諸表の表示に関する論点の整理」(以下「論点整理」という。)の中で、財務諸表の表示に関する現行の国際的な会計基準との差異について、短期的に対応する項目と中長期的に対応する項目とに区分し、包括利益の表示については、当期純利益の表示の維持を前提とした上で、我が国においても導入を短期的に検討するという方向性を示し、各界からの意見を求めた。論点整理に対するコメントの大部分は、この方向性を支持するものであった。これを受けて、当委員会では、同専門委員会において、論点整理に対して寄せられたコメントを分析した上で検討を重ね、平成21年12月に「包括利益の表示に関する会計基準(案)」を公開草案として公表し、広く意見を求めた。その後、当該公開草案に対して寄せられた意見を参考にして審議を行い、その内容を一部修正した上で本会計基準を公表するに至ったものである。

目的

21. 包括利益を表示する目的は、期中に認識された取引及び経済的事象(資本取引を除く。)により生じた純資産の変動を報告することである。包括利益の表示によって提供される情報は、投資家等の財務諸表利用者が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが期待されるとともに、貸借対照表との連携(純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係1)を明示することを通じて、財務諸表の理解可能性と比較可能性を高め、また、国際的な会計基準とのコンバージェンスにも資するものと考えられる。

22. 包括利益の表示の導入は、包括利益を企業活動に関する最も重要な指標として位置づけることを意味するものではなく、当期純利益に関する情報と併せて利用することにより、企業活動の成果についての情報の全体的な有用性を高めることを目的とするものである。本会計基準は、市場関係者から広く認められている当期純利益に関する情報の有用性を前提としており、包括利益の表示によってその重要性を低めることを意図するものではない。また、本会計基準は、当期純利益の計算方法を変更するものではなく、当期純利益の計算は、従来のとおり他の会計基準の定めに従うこととなる。

用語の定義

23. 当委員会の討議資料「財務会計の概念フレームワーク」では、「包括利益とは、特定期間における純資産の変動額のうち、報告主体の所有者である株主、子会社の少数株主、及び将来それらになり得るオプションの所有者との直接的な取引によらない部分をいう。」と定義している。当委員会では、これを参考に本会計基準における包括利益の定義を検討した。IFRSでは、「所有者の立場としての所有者との取引による資本の変動以外の取引又は事象による一期間における資本の変動」と定義しているが、いずれも資本取引以外による純資産の変動として包括利益を定義するものであり、基本的には同様と考えられる。

24. 本会計基準においては、包括利益を構成する純資産の変動額は、あくまで財務諸表において認識されたものに限られることを明確にするため、「特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額」とした。また、企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主、新株予約権の所有者、子会社の少数株主を含むものとした。

25. 「企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分」とは、前述のとおり、資本取引に該当しない部分を意味するが、本会計基準の適用にあたっては、資本取引と損益取引のいずれにも解釈し得る取引については、具体的な会計処理を定めた会計基準に基づいて判断することとなる。例えば、新株予約権の失効による戻入益(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」第9項及び企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第38項(2))や、支配が継続している場合の子会社に対する親会社持分の変動によって生じた差額(企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第28項から第30項)については、現行の会計基準を斟酌すれば、持分所有者との直接的な取引によらない部分とされているものと解することとなる。なお、今後の基準設定において会計処理の見直しが行われた場合には、それに基づいて判断することとなる。

26. 企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、「企業会計基準第24号」という。)に基づく会計方針の変更及び誤謬の訂正に関する累積的影響額に係る期首の利益剰余金の修正額は、前期以前に帰属する純資産の変動額を当期に表示しているに過ぎないため当期の包括利益には含まれないと考えられる。子会社が連結子会社及び関連会社のいずれにも該当しなくなった場合における利益剰余金減少高(又は増加高)も、これに準じて取り扱うことが考えられる。

包括利益の計算の表示

27. 包括利益の計算は、当期純利益からの調整計算の形で示すこととしている。定義に従った計算過程とは異なるが、このような計算の表示の方が有用と考えられ、国際的な会計基準においても同様の方式が採られている。

28. 連結財務諸表における包括利益の計算の表示方法としては、次の2つの方法が考えられ、これらを比較検討した。

(1) 当期純利益に、親会社株主に係るその他の包括利益を加減して親会社株主に係る包括利益を計算し、これに少数株主に係る包括利益を加減する方法

(2) 少数株主損益調整前当期純利益に、その他の包括利益(親会社株主に係る部分と少数株主に係る部分の合計)を加減する方法

29. 前項の(1)の表示方法は、当期純利益の計算との連携がより明確であることや、連結株主資本等変動計算書や連結貸借対照表の数値との関連づけがしやすいといった利点がある。一方、(2)の表示方法は、包括利益に至る過程が明瞭であることや、その他の包括利益の内訳の表示について国際的な会計基準とのコンバージェンスを図ることができるといった利点がある。

両者を比較検討した結果、包括利益の表示を導入する目的(第21項参照)との関連性からは、(2)の利点の方がより重要と考えられることから、(2)の表示方法を採用することとした。(1)の表示方法は、その他の包括利益の各内訳項目を親会社株主に係る部分と少数株主に係る部分とに区分するため、(2)の表示方法よりも情報量は多くなるが、その内訳に関する情報は、連結株主資本等変動計算書から入手可能でもあるため、包括利益への調整の形で表示する必要性は低いと判断した。

その他の包括利益の内訳の開示

30. 国際的な会計基準では、その他の包括利益の内訳項目の分析を容易にする観点から、その他の包括利益に関連する税効果及び当期又は過去の期間にその他の包括利益に含められた項目の当期純利益への組替調整額の開示を求めている。本会計基準では、コンバージェンスの観点から同様の開示を注記事項として求めることとした。ただし、開示の簡素化及び迅速化の観点を考慮して、個別財務諸表(連結財務諸表を作成している場合に限る。)及び四半期財務諸表(四半期連結財務諸表又は四半期個別財務諸表)においては当該注記を省略することができることとした。

31. 組替調整額は、当期及び過去の期間にその他の包括利益に含まれていた項目が当期純利益に含められた金額に基づいて計算されるが、具体的には次のようになると考えられる。

(1) その他有価証券評価差額金に関する組替調整額は、当期に計上された売却損益及び減損損失等、当期純利益に含められた金額による。([設例1][設例2][設例3]参照)

(2) 繰延ヘッジ損益に関する組替調整額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金額による。なお、ヘッジ対象とされた予定取引で購入した資産の取得価額に加減された金額は、組替調整額に準じて開示することが適当と考えられる。([設例4]参照)

(3) 為替換算調整勘定に関する組替調整額は、子会社に対する持分の減少(全部売却及び清算を含む。)に伴って取り崩されて当期純利益に含められた金額による。([設例5]参照)

なお、土地再評価差額金は、再評価後の金額が土地の取得原価とされることから、売却損益及び減損損失等に相当する金額が当期純損益に計上されない取扱いとなっているため、その取崩額は組替調整額に該当せず、株主資本等変動計算書において利益剰余金への振替として表示される。

32. 持分法の適用における被投資会社のその他の包括利益に対する投資会社の持分相当額については、IFRSでは一括して区分表示することを求めていることから、それと同様の表示方法によることとした。当該持分相当額は、被投資会社において税効果を控除した後の金額であるが、被投資会社の税金は連結財務諸表には表示されないため、第8項による税効果の金額の注記の対象には含まれないことに留意する必要がある。なお、貸借対照表上のその他の包括利益累計額については、従来の取扱いに従い、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定等の各内訳項目に当該持分相当額を含めて表示することとしている。

包括利益を表示する計算書

33. 包括利益の表示の形式としては、@当期純利益を構成する項目とその他の包括利益の内訳を単一の計算書に表示する方法(1計算書方式)と、A当期純利益を構成する項目を表示する第1の計算書(従来の損益計算書と同じ)と、その他の包括利益の内訳を表示する第2の計算書からなる方法(2計算書方式)が考えられる。

34.  現行のIFRS及び米国会計基準では、1計算書方式と2計算書方式をともに認めている。

米国会計基準では、このほかに「株主持分変動計算書」に表示する方法も認められている。IFRSでは、平成19年(2007年)のIAS第1号の改訂の際に、1計算書方式への一本化が検討されたが、当期純利益と包括利益とを明確に区別する2計算書方式を選好する関係者が多かったことから、両者の選択を認めることとしている。

35. IASBとFASBが平成20年(2008年)10月に共同で公表したディスカッション・ペーパー(第19項参照)では、1計算書方式に一本化する提案が示されている。また、両審議会は、金融商品会計基準の見直しに合わせて、1計算書方式への一本化を財務諸表表示のプロジェクトの他の項目と切り離し、先行して行う方向で平成22年(2010年)5月に公開草案を公表している。

36. 論点整理及び公開草案に対するコメントでは、当期純利益を重視する観点から、1計算書方式では包括利益が強調されすぎる可能性がある等の理由で、当期純利益と包括利益が明確に区分される2計算書方式を支持する意見が多く見られた。一方、当委員会での審議の中では、一覧性、明瞭性、理解可能性等の点で利点があるとして1計算書方式を支持する意見も示された。

37. 検討の結果、本会計基準では、コメントの中で支持の多かった2計算書方式とともに、1計算書方式の選択も認めることとしている。これは、前述のような1計算書方式の利点に加え、以下の点を考慮したものである。

(1) 現行の国際的な会計基準では両方式とも認められていること

(2) 第35項に述べたIASBとFASBとの検討の方向性を踏まえると、短期的な対応としても1計算書方式を利用可能とすることがコンバージェンスに資すると考えられること

(3) 1計算書方式でも2計算書方式でも、包括利益の内訳として表示される内容は同様であるため、選択制にしても比較可能性を著しく損なうものではないと考えられること

適用時期等

38. 公開草案では、包括利益の表示の目的は個別財務諸表にも当てはまることから、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に同時に適用する提案をした。公開草案に寄せられたコメントでは、本会計基準の個別財務諸表への適用を最終的に判断するにあたって、平成21年6月に企業会計審議会から公表された「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」において、会計基準のコンバージェンスを加速するにあたって示された連結先行の考え方に関する検討を求める意見が多く寄せられた。当委員会では、このような意見を踏まえ、「上場会社の個別財務諸表の取扱い(連結先行の考え方)に関する検討会」を設けて検討を行った。そして、同検討会での検討を踏まえて、企業会計審議会で個別財務諸表に関する全般的な議論が開始されたところである。

39. このような状況の中、当委員会では、当該審議の状況も踏まえて対応することが適切であると考え、本会計基準の個別財務諸表への適用を求めるかどうかについては、本会計基準の公表から1年後を目途に判断することとした。本会計基準で求めている包括利益の表示のための情報は、現行の財務諸表からも集計することが可能と考えられる。このため、財務諸表利用者の情報ニーズやコンバージェンスの加速化を重視する観点から、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することとした。また、同様の観点から、対応が可能な企業がより早期に適用することも妨げないこととした。ただし、公開草案に寄せられたコメントを踏まえ、第8項及び第9項による注記については、組替調整額等の注記のためのデータが現行の財務諸表の作成過程において必ずしも作成されていないと考えられることから、さらに1年間の準備期間を設け、平成24年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することとした。

40. 平成21年12月に公表された企業会計基準第24号により、平成23年4月1日以後に表示方法の変更を行った場合には、過去の期間の財務諸表の組替えが求められている。

第12項に従った包括利益の表示の適用初年度においては、企業会計基準第24号は適用されないが、比較可能性の確保の観点から、その直前の年度における包括利益及びその他の包括利益の内訳項目の金額を注記することとした(第12項参照)。

一方、第8項及び第9項による注記について、平成24年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用する場合には、原則として、企業会計基準第24号が適用されることとなる。しかし、前項のとおり、組替調整額等の注記のためのデータが現行の財務諸表の作成過程において必ずしも作成されていないと考えられることから、第13項の適用初年度においては財務諸表の組替えは行わず、その直前の年度における第8項及び第9項の注記は求めないこととした(第13項参照)。

41. 第11項で認めている2つの表示方法のうち1計算書方式を採用する場合には、従来の損益計算書の内容は、損益及び包括利益計算書の一部となる。このため、連結財務諸表上は、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「損益計算書」の用語は、「損益計算書又は損益及び包括利益計算書」と読み替えることとしている。

なお、本会計基準は、法令等で使用されている損益計算書の呼称の変更を求めることを必ずしも意図したものではない。

42. また、本会計基準の個別財務諸表への適用については、本会計基準の公表から1年後を目途に判断することから、連結財務諸表上は、これまでに公表されている会計基準等で使用されている純資産の部の「評価・換算差額等」という用語は、「その他の包括利益累計額」と読み替え、当該会計基準等で定められている評価・換算差額等の取扱いは本会計基準が優先するものとしている。

本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正

43. 次の企業会計基準及び企業会計基準適用指針については、本会計基準及びその他の会計基準等の公表に伴う改正を別途行うことが予定されている。

・企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」

・企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」

・企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」

・企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」

・企業会計基準第14号「退職給付に係る会計基準」の一部改正(その2)

・企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」

・企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針

・企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」

・企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」

参考(設例等)

1 設例

以下の設例は、本会計基準で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。(以下、設例の単位は百万円とする。)

なお、この設例では、連結財務諸表を作成する前提として個別財務諸表での取扱いも示しているが、個別財務諸表への適用については、本会計基準の公表から1年後を目途に判断することとしている(第14項参照)。

 

[設例 1] 親会社がその他有価証券の一部を売却した場合

1. 前提条件

(1) P社はS1社株式の70%を保有し、S1社を連結子会社としている。

(2) P社及びS1社の法定実効税率は40%である。

(3) P社はその他有価証券としてA社株式及びB社株式を保有しており、X1年3月期に

A社株式(取得原価1,000)をすべて売却した。A社株式の期首の評価益は300であったが、売却時までに評価益は200減少し、投資有価証券売却益は100であった。S1社はその他有価証券を保有していない。なお、P社が保有するその他有価証券残高の増減内訳及び評価損益の増減内訳は次のとおりである。(ここでは理解を深めるため、評価損益の増減内訳を銘柄別に作成している。)

[その他有価証券残高の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却による減少

当期購入額

X1/3/31

取得原価

11,000

△1,000

10,000

時価

12,500

 

 

12,000

 

[その他有価証券の評価損益の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却による組替調整額減少

当期発生額

(差額)

X1/3/31

評価損益−A社株式

300

△100

△200

評価損益−B社株式

1,200

800

2,000

合計

1,500

(*1)△100

(*2)600

2,000

税効果額

600

△40

240

800

税効果調整後評価損益

900

△60

360

1,200

(*1) △100は、投資有価証券売却益100の計上による減少

(*2) 600=期末その他有価証券評価差額金(税効果考慮前)2,000−期首その他有価証券評価差額金戻入額(税効果考慮前)1,500−売却による組替調整額△100(税効果考慮前)

 

 

[会計処理]

@ X0年3月31日

A社株式及びB社株式の評価損益を計上

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券

1,500

その他有価証券評価差額金

1,500

その他有価証券評価差額金

600

繰延税金負債

600

 

A X0年4月1日(期首)

A社株式及びB社株式の評価損益を振戻し

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券評価差額金

1,500

その他有価証券

1,500

繰延税金負債

600

その他有価証券評価差額金

600

 

B A社株式の売却時

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金

1,100

その他有価証券

1,000

 

 

投資有価証券売却益

100

 

C X1年3月31日(期末)

B社株式の評価損益を計上

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券

2,000

その他有価証券評価差額金

2,000

その他有価証券評価差額金

800

繰延税金負債

800

 

(4) P社の連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書の抜粋は次のとおりである。

@ 連結貸借対照表(抜粋)

 
 

X0/3/31

X1/3/31

T 株主資本

 

 

1 資本金

11,000

11,000

2 利益剰余金

5,000

6,660

U その他包括利益累計額

 

 

1 その他有価証券評価差額金

900

1,200

V 少数株主持分

1,980

2,180

 

A 連結損益計算書(抜粋)

 
 

X0/4/1からX1/3/31

売上高

40,000

−−−−−

 

税金等調整前当期純利益

4,560

法人税等

1,700

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

少数株主利益

200

当期純利益

2,660

 

B 連結株主資本等変動計算書(抜粋)

X0/4/1からX1/3/31

 

 

株主資本

その他の包括利益累計額

少数株主持分

 

資本金

利益剰余金

その他有価証券評価差額金

当期首残高(注)

11,000

5,000

900

1,980

剰余金の配当

 

△1,000

 

 

当期純利益

 

2,660

 

 

株主資本以外の項目の当期変動額(純額)

 

 

(*3) 300

200

当期末残高

11,000

6,660

1,200

2,180

(注) 平成22年に改正された企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」の適用を前提としている。以下の設例においても同様。

(*3) その他有価証券の評価損益の増減内訳(1.前提条件(3)参照)の税効果調整後評価損益欄の当期発生額(差額)360+売却による組替調整額△60=300

 

以下、連結財務諸表の取扱いを示しているが、子会社がその他有価証券を保有していない本設例の場合、その他有価証券評価差額金については個別財務諸表も同様となる。

 

2. 連結包括利益計算書の作成

ここでは、2計算書方式により連結包括利益計算書を作成する場合の例を示している。なお、その他の包括利益の内訳項目は税効果調整後の金額で表示する場合の例である。

連結包括利益計算書

 

 

X0/4/1からX1/3/31

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

その他包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

(*4) 300

包括利益

3,160

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

(*5) 2,960

少数株主に係る包括利益

200

(*4) 本設例では、その他有価証券を保有しているのはP 社のみであるため、連結株主資本等変動計算書の株主資本以外の項目の当期変動額(純額)のその他有価証券評価差額金300(1.前提条件(4)B参照)と一致する。なお、その他有価証券の評価損益の増減内訳のうち税効果調整後評価損益の期首残高900 と期末残高1,200 の差額300 にも一致する(1.前提条件(3)参照)。

(*5) 当期純利益2,660 と連結株主資本等変動計算書の株主資本以外の項目の当期変動額(純額)のその他有価証券評価差額金300(1.前提条件(4)B参照)との合計2,960 と一致する。

 

3. その他の包括利益の内訳の注記例(連結)

ここでは、組替調整額と税効果を併せて開示する場合の例を示している。

 

その他有価証券評価差額金:

 

当期発生額

(*6)  600

組替調整額

(*7) △100

税効果調整前

500

税効果

(*8) △200

その他包括利益合計

300

(*6) 当期発生した評価損益(1.前提条件(3) その他有価証券の評価損益の増減内訳のうち当期発生額(差額)の合計欄参照)

(*7) 組替調整額(1.前提条件(3) その他有価証券の評価損益の増減内訳のうち売却による組替調整額の合計欄参照)

(*8) その他有価証券評価差額金に係る税効果の当期変動額200(=△40+240)(1.前提条件(3) その他有価証券の評価損益の増減内訳のうち税効果額欄参照)

 

[設例 2] 親会社及び子会社がその他有価証券の一部を売却した場合

1. 前提条件

(1) P社はS1社株式の70%を保有し、S1社を連結子会社としている。

(2) P社及びS1社の法定実効税率は40%である。

(3) P社はX1年3月期において、その他有価証券のうち、A社株式を売却したことにより、投資有価証券売却益150を計上している。また、その他有価証券のうち、B社株式について減損損失(投資有価証券評価損)50を計上している。なお、P社が保有するその他有価証券残高の増減内訳及び評価損益の増減内訳は次のとおりである。

[その他有価証券残高の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却等による減少

当期購入額

X1/3/31

取得原価

11,000

△1,500

500

10,000

時価

12,500

 

 

12,000

 

[その他有価証券 の評価損益の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却等による組替調整額

当期発生額

(差額)

X1/3/31

評価損益

1,500

(*1) △100

(*2) 600

2,000

税効果額

 

△40

240

800

税効果調整後評価損益

12,500

△60

360

1,200

(*1) △100=投資有価証券評価損50−投資有価証券売却益150

(*2) 600=期末評価損益2,000−期首評価損益1,500−売却等による組替調整額△100

 

(4) S1社はX1年3月期において、その他有価証券のうち、C社株式を売却し、投資有価証券売却益50を計上している。なお、P社がS1社を子会社としたときの時価と簿価は一致しており、S1社が保有するその他有価証券残高の増減内訳及び評価損益の増減内訳は次のとおりである。

[その他有価証券残高の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却等による減少

当期購入額

X1/3/31

取得原価

5,000

△500

 

4,500

時価

5,500

 

 

4,750

 

[その他有価証券 の評価損益の増減内訳]

 

 

X0/3/31

売却等による組替調整額

当期発生額

(差額)

X1/3/31

評価損益

500

(*3) △50

(*4) △200

250

税効果額

200

△20

△80

100

税効果調整後評価損益

300

△30

△120

150

うち親会社持分 (70%)

210

△21

△84

105

(*3) △50 は、投資有価証券売却益50 の計上による減少

(*4) △200=期末評価損益250−期首評価損益500−売却等による組替調整額△50

 

(5) P社において繰延ヘッジ損益60(税効果調整前100)が当期に発生している。

(6) P社の(連結及び個別)貸借対照表、(連結及び個別)損益計算書及び連結株主資本等変動計算書の抜粋、並びに株主資本以外の項目の当期変動額の内訳は次のとおりである。

@ 貸借対照表(抜粋)

 

 

 

連結

個別

X0/3/31

X1/3/31

X0/3/31

X1/3/31

T 株主資本

       

1 資本金

11,000

11,000

11,000

11,000

2 利益剰余金

5,000

6,560

5,000

6,100

U その他の包括利益累計額

 

 

 

 

1 その他有価証券評価差額金

1,110

(*5) 1,305

900

1,200

2 繰越ヘッジ損益

 

60

 

60

V 少数株主持分

1,980

2,235

 

 

(*5) 期末のその他有価証券の税効果調整後評価損益1,305(=P 社1,200+S1社105(親会社持分))と一致する((3)(4)参照)。

 

A 損益計算書(抜粋)

 

 

 

連結

個別

X0/4/1からX1/3/31

X0/4/1からX1/3/31

売上高

40,000

32,000

−−−−

 

 

税金等調整前当期純利益

4,560

3,600

法人税等

1,700

1,500

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

少数株主損益

300

当期純利益

2,560

2,100

 

B 連結株主資本等変動計算書(抜粋)

 

 

株主資本

その他の包括利益累計額

少数株主持分

 

資本金

利益剰余金

その他有価証券評価差額金

繰越ヘッジ損益

当期首残高

11,000

5,000

1,110

1,980

剰余金の配当

 

△1,000

 

 

 

当期純利益

 

2,560

 

 

 

株主資本以外の項目の当期変動額(純額)

 

 

(*6) 195

(*6) 60

255

当期末残高

11,000

6,560

1,305

60

2,235

(*6) 親会社株主に帰属する部分(C参照)

 

C 株主資本以外の項目の当期変動額の内訳

 

 

 

売却等による組替調整額

当期発生額(差額)

小計

少数株主利益

合計

(P社)

(S1社)

(P社)

(S1社)

その他有価証券評価差額金

△60

△21

360

△84

195

 

195

少数株主持分

 

△9

 

△36

△45

300

255

繰越ヘッジ損益

 

 

60

 

60

 

60

合計

△60

△30

420

△120

210

300

510

 

2. (連結及び個別)包括利益計算書の作成

ここでは、2 計算書方式により(連結及び個別)包括利益計算書を作成する場合の例を示している。なお、その他の包括利益の内訳項目は税効果調整後の金額で表示する場合の例である。

(連結及び個別)包括利益計算書

 

連結(X0/4/1からX1/3/31)

個別(X0/4/1からX1/3/31)

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

当期純利益

2,100

その他の包括利益:

 

その他の包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

(*7) 150

その他有価証券評価差額金

300

繰越ヘッジ損益

(*8) 60

繰越ヘッジ損益

60

その他の包括利益合計

210

その他の包括利益合計

360

包括利益

3,070

包括利益

2,460

 

 

 

 

(内訳)

 

 

 

親会社株式に係る包括利益

(*9) 2,815

 

 

少数株主に係る包括利益

(*10) 255

 

 

(*7) 株主資本以外の項目の当期変動額の内訳のその他有価証券評価差額金欄の195(1. 前提条件(6)Cの小計参照)と少数株主持分欄の△45(1.前提条件(6)Cの小計参照)の合計150と一致する。なお、その他有価証券の税効果調整後評価損益のP社及びS1社の期首残高の合計1,200(=P社900+S1社300)と期末残高の合計1,350(=P社1,200+S1社150)の差額150にも一致する(1.前提条件(3)(4)参照)。

(*8) 株主資本以外の項目の当期変動額の内訳の繰延ヘッジ損益欄の60(1.前提条件(6)Cの小計参照)と一致する。

(*9) 当期純利益2,560と株主資本以外の項目の当期変動額の内訳のその他有価証券評価差額金及び繰延ヘッジ損益の合算額255(=195+60) (1.前提条件(6)Cの小計を参照)との合計2,815と一致する。

(*10) 株主資本以外の項目の当期変動額の内訳の少数株主持分255(1.前提条件(6)Cの 合計参照)と一致する。

 

3. その他の包括利益の内訳の注記例(連結)

ここでは、組替調整額と税効果を別個に開示する場合の例を示している。

(1) 組替調整額の開示(連結)

 

その他有価証券評価差額金:

 

 

当期発生額

(*11) 400

 

組替調整額

(*12) △150

250

繰越ヘッジ損益:

 

 

当期発生額

(*13) 100

100

税効果調整前合計

 

350

税効果額

 

(*14) △140

その他の包括利益合計

 

210

(*11) 400=P社600+S1社△200(1.前提条件(3)(4)評価損益の増減内訳の当期発生額(差額)欄参照)

(*12) △150= P社△100+ S1社△50(1.前提条件(3)(4)評価損益の増減内訳の売却等による組替調整額欄参照)

(*13) 1.前提条件(5)参照

(*14) △140は、その他有価証券評価差額金に係る税効果の当期変動額100(下記(*15)参照)と繰延ヘッジ損益に係る税効果の当期変動額40(=100−60) (1.前提条件(5)参照)の合計

 

(2) 税効果の開示(連結)

 

 

税効果調整前

税効果

税効果調整後

その他有価証券評価差額金

250

(*15) △100

150

繰越ヘッジ損益

100

△40

60

その他包括利益合計

350

△140

210

(*15) △100 は、その他有価証券評価差額金に係る税効果額の当期変動額P 社分200(=800−600)とS 社分△100(=100−200)の合計 (1.前提条件(3)(4)参照)

 

[設例 3] 連結上、持分法適用関連会社に対して投資を有している場合

1. 前提条件

(1) [設例 2]の前提条件(連結貸借対照表及び連結株主資本等変動計算書を一部修正して(3)としている。)に加えて、P 社はS2社株式の20%を保有しており、S2社を関連会社として持分法を適用していたとする。

(2) 持分法適用後、S2社は、その他有価証券を取得しており、その他有価証券評価差額金(税効果調整後)の増減内訳は次のとおりである。

 

 

X0/3/31

売却等による組替調整額

当期発生額

(差額)

X1/3/31

その他有価証券評価差額金(税効果調整後)

800

300

1,100

うちP社持分(20%)

160

60

220

 

(3) P社の連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結株主資本等変動計算書の抜粋は次のとおりである。

@ 連結貸借対照表(抜粋)

 

 

X0/3/31

X1/3/31

T 株主資本

 

 

1 資本金

11,000

11,000

2 利益剰余金

5,000

6,560

U その他の包括利益類型額

 

 

1 その他有価証券評価差額金

(*1) 1,270

(*2) 1,525

2 繰越ヘッジ損益

 

60

V 少数株主持分

1,980

2,235

(*1) S2社株式について持分法を適用しているため、[設例 2]の1,110 と持分法により計上されたP 社持分160(=800×20%)との合計になる。

(*2) (*1)と同様に、[設例 2]の1,305と持分法により計上されたP社持分220(=1,100×20%)との合計になる。このため、その他の包括利益は、[設例 2]と比べて60(=220−160)増加することになり、持分法適用会社に対する持分相当額として連結損益及び包括利益計算書に区分表示されることになる。

 

A 連結損益計算書(抜粋)

 

 

X0/4/1からX1/3/31

売上高

40,000

−−−−

 

税金等調整前当期純利益

4,560

法人税等

1,700

少数株主利益調整前当期純利益

2,860

少数株主利益

300

当期純利益

2,560

 

B 連結株主資本等変動計算書(抜粋)

X0/4/1からX1/3/31

 

 

株主資本

その他の包括利益類型額

少数株主持分

資本金

利益剰余金

その他有価証券評価差額金

繰越ヘッジ損益

当期首残高

11,000

5,000

1,270

1,980

剰余金の配当

 

△1,000

 

 

 

当期純利益

 

2,560

 

 

 

株主資本以外の項目の当期変動額(純額)

 

 

(*3) 255

60

255

当期末残高

11,000

6,560

1,525

60

2,235

(*3) 255=195([設例 2] 参照)+60(持分法適用会社に係る部分)

 

2. 連結損益及び包括利益計算書の作成

ここでは、1 計算書方式により連結損益及び包括利益計算書を作成する場合の例を示している。なお、その他の包括利益の内訳項目は持分法適用会社に対する持分相当額を除き、税効果を控除する前の金額で表示する場合の例である。

連結損益及び包括利益計算書(X0/4/1からX1/3/31)

 

売上高

40,000

−−−−

 

税金等調整前当期純利益

4,560

法人税等

1,700

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

少数株主利益(控除)

300

当期純利益

2,560

 

 

少数株主利益(加算)

300

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

その他の包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

(*4) 250

繰越ヘッジ損益

(*4) 100

持分法適用会社に対する持分相当額

(*5) 60

その他の包括利益に係る税効果

(*4) △140

その他の包括利益合計

270

包括利益

3.130

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

(*6) 2,875

使用数株主に係る包括利益

255

(*4) 税効果を控除する前の金額及び税効果額については、[設例 2]の3.その他の包括利益の内訳の注記例(連結)の(2)税効果の開示(連結)を参照

(*5) 持分法適用会社の有価証券評価差額金(税効果調整後)の当期発生額(差額)のうちP社持分に係る部分(1.前提条件(2)参照)

(*6) 当期純利益2,560と連結株主資本等変動計算書のその他有価証券評価差額金及び繰延ヘッジ損益の株主資本以外の項目の当期変動額(純額)欄315(=255+60)(1.前提条件(3)B参照)との合計2,875と一致する。

 

3. その他の包括利益の内訳の注記例(連結)

ここでは、組替調整額と税効果を併せて開示する場合の例を示している。その他有価証券評価差額金及び繰延ヘッジ損益については、[設例 2]の3 参照。

 

その他有価証券評価差額金:

 

当期発生額

400

組替調整額

△150

税効果調整前

250

税効果額

△100

その他有価証券評価差額金

150

繰延ヘッジ損益:

 

当期発生額

100

税効果額

△40

繰延ヘッジ損益

60

持分法適用会社に対する持分相当額:

 

当期発生額

60

その他包括利益合計

270

 

 

[設例 4] ヘッジ会計により組替調整額等が生じた場合

1. 前提条件

[設例 2]の1.前提条件(5)に替えて以下の前提条件とする。その他の前提条件は[設例 2]と同様とする。

P社は、相場変動リスクのヘッジと、予定取引のヘッジを行っている。X1年3月期において、相場変動リスクのヘッジでは、ヘッジ対象の損益認識時に繰延ヘッジ損益の合計額60(税効果調整前100)を損益へ計上している。予定取引のヘッジでは、繰延ヘッジ損益の合計額30(税効果調整前50)をX1年3月期に購入した資産の取得原価から減算している。

また、相場変動リスクのヘッジと予定取引のヘッジの繰延ヘッジ損益の当期の変動額合計は60(税効果調整前100)、当期発生額は150(税効果調整前250)である。繰延ヘッジ損益の増減内訳は次のとおりである。

 

 

X0/3/31

ヘッジ会計による組替調整額

資産の取得原価調整額

当期発生額

(差額)

X1/3/31

繰延ヘッジ損益

△100

△50

250

100

税効果額

△40

△20

100

40

税効果調整後繰延ヘッジ損益

△60

△30

150

60

 

以下、連結財務諸表の取扱いを示しているが、本設例の場合、繰延ヘッジ損益については個別財務諸表も同様となる。

2. 連結包括利益計算書の作成

ここでは、2 計算書方式により連結包括利益計算書を作成する場合の例を示している。なお、その他の包括利益の内訳項目は税効果調整後の金額で表示する場合の例である。

連結包括利益計算書(X0/4/1からX1/3/31)

 

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

その他の包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

150

繰延ヘッジ損益

(*1) 60

その他包括利益合計

210

包括利益

3,070

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

(*2) 2,815

少数株主に係る包括利益

255

(*1) 繰延ヘッジ損益の当期変動額

(*2) 当期純利益[設例 2]2,560と連結株主資本等変動計算書のその他有価証券評価差額金の当期変動額[設例 2] 195、繰延ヘッジ損益の当期変動額(1.前提条件)60の合計2,815 と一致する。

 

3. その他の包括利益の内訳の注記例(連結)

ここでは、組替調整額と税効果を併せて開示する場合の例を示している。その他有価証券評価差額金については、[設例2]の3 参照。

 

その他有価証券評価差額金:

 

当期発生額

400

組替調整額

△150

税効果調整前

250

税効果額

△100

その他有価証券評価差額金

150

繰延ヘッジ損益:

 

当期発生額

(*3) 250

当期組替額

(*4) △100

資産の取得原価調整額

(*5) △50

税効果調整前

100

税効果額

(*6) △40

繰延ヘッジ損益

60

その他の包括利益合計

210

(*3) 1.前提条件の繰延ヘッジ損益の当期発生額(差額)欄(税効果調整前)参照

(*4) 1.前提条件の相場変動リスクのヘッジ会計による組替調整額欄(税効果調整前)参照

(*5) 1.前提条件の予定取引のヘッジに係る資産の取得原価調整額欄(税効果調整前)参照

(*6) 1.前提条件の税効果額欄参照

 

[設例 5] 在外子会社株式の売却により組替調整額が生じた場合

1. 前提条件

[設例 2]の前提条件に加えて、連結財務諸表上、P社は、複数の在外子会社(100%子会社)について為替換算調整勘定を計上している。このうち、S3社株式をX1年3月期に売却し、為替換算調整勘定100を子会社株式売却益に計上した(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」参照)。なお、X0年3月期末において当該売却取引の意思が明確であったことから、為替換算調整勘定に係る繰延税金負債40を計上していた(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」参照)。

また、為替換算調整勘定の増減内訳は次のとおりであり、税効果調整後の当期の変動額は140(=300−160)、税効果調整前の当期の変動額は100(=300−200)である。

 
 

X0/3/31

在外子会社株式売却による組替調整額

当期発生額

(差額)

X1/3/31

為替換算調整勘定

200

△100

200

300

税効果額

40

△40

税効果調整後為替調整勘定

160

△60

200

300

 

2. 連結包括利益計算書の作成

ここでは、2 計算書方式により連結包括利益計算書を作成する場合の例を示している。なお、その他の包括利益の内訳項目は税効果調整後の金額で表示する場合の例である。

連結包括利益計算書(X0/4/1からX1/3/31)

 

少数株主損益調整前当期純利益

2,860

 

 

その他の包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

150

繰越ヘッジ損益

60

為替換算調整勘定

(*1) 140

その他の包括利益合計

350

包括利益

3,210

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

(*2) 2,955

少数株主に係る包括利益

295

(*1) 為替換算調整勘定の当期変動額(税効果調整後)

(*2) 当期純利益[設例2]2,560 と連結株主資本等変動計算書のその他有価証券評価差額金の当期変動額[設例2]195、繰延ヘッジ損益の当期変動額[設例2]60、為替換算

調整勘定の当期変動額(1.前提条件)140 との合計2,955 と一致する。

 

3. その他の包括利益の内訳の注記例(連結)

ここでは、組替調整額と税効果を併せて開示する場合の例を示している。その他有価証券評価差額金及び繰延ヘッジ損益については、[設例2]の3 参照。

 

その他有価証券評価差額金:

 

当期発生額

400

組替調整額

△150

税効果調整前

250

税効果

△100

その他有価証券評価差額金

150

繰越ヘッジ損益:

 

当期発生額

100

税効果額

△40

繰越ヘッジ損益

60

為替換算調整勘定:

 

当期発生額

(*3) 200

組替調整額

(*4) △100

税効果調整前

100

税効果額

(*5) 40

為替換算調整勘定

140

その他の包括利益合計

350

(*3) 1.前提条件の為替換算調整勘定の当期発生額(差額)欄(税効果調整前)参照

(*4) 1.前提条件の在外子会社株式売却による組替調整額欄(税効果調整前)参照

(*5) 40=−為替換算調整勘定に係る税効果額の当期変動額△40(1.前提条件の税効果額欄参照)

 

2 包括利益の表示例

以下の表示例は、本会計基準で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。(以下、表示例の単位は百万円とする。)

連結財務諸表における表示例

 

【2 計算方式】

<連結損益計算書>

売上高

10,000

−−−−

 

税金等調整前当期純利益

2,200

法人税等

900

少数株主損益調整前当期純利益

1,300

少数株主利益

300

当期純利益

1,000

 

<連結包括利益計算書>

少数株主損益調整前当期純利益

1,300

その他包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

530

繰越ヘッジ損益

300

為替換算調整勘定

△180

持分法適用会社に対する持分相当額

50

その他包括利益合計

700

包括利益

2,000

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

1,600

少数株主に係る包括利益

400

 

【1 計算方式】

<連結損益及び包括利益計算書>

売上高

10,000

−−−−

 

税金等調整前当期純利益

2,200

法人税等

900

少数株主損益調整前当期純利益

1,300

少数株主利益(控除)

300

当期純利益

1,000

少数株主利益(加算)

300

少数株主損益調整前当期純利益

1,300

その他の包括利益:

 

その他有価証券評価差額金

530

繰越ヘッジ損益

300

為替換算調整勘定

△180

持分法適用会社に対する持分相当額

50

その他の包括利益合計

700

包括利益

2,000

 

 

(内訳)

 

親会社株主に係る包括利益

1,600

少数株主に係る包括利益

400

 

以上


INDEX

包括利益の表示に関する会計基準目次

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