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会計基準|結論の背景|適用指針設例目次

 

(注)本内容は、平成21年3月27日企業会計基準委員会が公表した「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」から「結論の背景」を抜粋したものです。「目的・会計基準」は別に記載してあります。なお、実務への適用にあたっては、念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第5号

貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準

(結論の背景)

平成17年12月9日

改正平成21年3月27日

企業会計基準委員会

目次

目的・会計基準は別に記載してあります。

結論の背景

経緯

貸借対照表の区分

純資産の部の表示

株主資本の区分

適用時期等


結論の背景

経 緯

13. これまで貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本の部に区分するものとされ、さらに資本の部は、会計上、株主の払込資本と利益の留保額(留保利益)に区分する考え方が反映されてきた。

14. 平成11年1月に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」として改正されている。)において、その他有価証券に係る評価差額は、損益計算書を経由せず資本の部に直接計上する考え方が導入された。同様に、平成11年10月に企業会計審議会から公表された改訂「外貨建取引等会計処理基準」において、在外子会社等の財務諸表の換算によって生じた換算差額(為替換算調整勘定)も連結貸借対照表の資本の部に直接計上することとされている。

15. 平成9年6月に企業会計審議会から公表された改訂「連結財務諸表原則」(以下「連結原則」という。)において、連結貸借対照表には、資産の部、負債の部、少数株主持分及び資本の部を設けるものとされ、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は少数株主持分として、負債の部の次に区分して記載するものとされている。これは、親会社説の考え方による連結原則の下において、資本の部は、原則として、親会社の株主に帰属するものを示すこと、少数株主持分は、返済義務のある負債ではないことによる。

この結果、少数株主持分は、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされている。

16. このように、近年、資本の部に対する考え方の変更や中間区分の設定が見られる中、当委員会から平成16年12月に公表された企業会計基準公開草案第3号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」では、ストック・オプションに対応する金額の貸借対照表上の表示について、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として計上するものとされていた。

しかしながら、このような項目の性格についてはいまだに論争が多く、概念上の整理が定着しているとはいえないこと及び個別財務諸表に新たに中間区分を設けることについては、慎重な検討が必要という意見も多いことから、当該公開草案では、「別途早急に貸借対照表における貸方項目の区分表示のあり方全般について検討を行うこととし、その検討の中でストック・オプションに対応する金額の表示区分について引き続き議論することとした。」とされていた。

このため、当委員会では、貸借対照表表示検討専門委員会を設置し、当該専門委員会での討議を含め、これらの問題に対する審議を行い、平成17年8月に、企業会計基準公開草案第6号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」を公表し、広く各界からの意見を求めた。当委員会では、寄せられた意見も参考にしてさらに審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、平成17年会計基準を公表した。

17. なお、我が国の会計基準を設定するにあたって、概念フレームワークを明文化する必要性が各方面から指摘されたのを受け、当委員会は、外部の研究者を中心としたワーキング・グループを組織して、その問題の検討を委託し、平成16年9月に討議資料「財務会計の概念フレームワーク」を公表している。この討議資料に示されているのは、当委員会の見解ではなく、当委員会に報告された当該ワーキング・グループの見解であるが、今後の基準設定の過程で有用性をテストされ、市場関係者等の意見を受けてさらに整備・改善されれば、いずれはデファクト・スタンダードとしての性格を持つことも期待されている。このため、平成17年会計基準を検討するにあたり、当委員会では、この討議資料の一部も素材に議論を重ねた。

17-2. 平成21年改正会計基準及びその適用指針の改正は、平成20年12月に公表された連結会計基準において、支配獲得時の子会社の資産及び負債の評価は全面時価評価法のみとされたことなどに対応して、技術的な改正を行ったものである。

貸借対照表の区分

18. これまで、貸借対照表上で区分されてきた資産、負債及び資本の定義は必ずしも明示されてはいないが、そこでいう資本については、一般に、財務諸表を報告する主体の所有者(株式会社の場合には株主)に帰属するものと理解されており、また、連結貸借対照表における資本に関しては、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主に帰属するもののみを反映させるという親会社説の考え方によることとされてきている。

19. また、資産は、一般に、過去の取引又は事象の結果として、財務諸表を報告する主体が支配している経済的資源、負債は、一般に、過去の取引又は事象の結果として、報告主体の資産やサービス等の経済的資源を放棄したり引渡したりする義務という特徴をそれぞれ有すると考えられている。このような理解を踏まえて、返済義務のあるものは負債の部に記載するが、少数株主持分や為替換算調整勘定のように返済義務のないものは負債の部に記載しないこととする取扱いが、連結財務諸表を中心に行われてきている(第14項及び第15項参照)。

20. このように、資本は報告主体の所有者に帰属するもの、負債は返済義務のあるものとそれぞれ明確にした上で貸借対照表の貸方項目を区分する場合、資本や負債に該当しない項目が生ずることがある。この場合には、独立した中間的な区分を設けることが考えられるが、中間区分自体の性格や中間区分と損益計算との関係などを巡る問題が指摘されている。また、国際的な会計基準においては、中間区分を解消する動きがみられる。

21. このような状況に鑑み、本会計基準では、まず、貸借対照表上、資産性又は負債性をもつものを資産の部又は負債の部に記載することとし、それらに該当しないものは資産と負債との差額として「純資産の部」に記載することとした(第4項参照)。この結果、報告主体の支払能力などの財政状態をより適切に表示することが可能となるものと考えられる。

なお、「純資産の部」という表記に対しては、平成17年会計基準の公開草案に対するコメントにおいて、「株主持分の部」とすべきという意見があった。しかしながら、持分には、単なる差額概念以上の意味が含まれる可能性があり、資産と負債との差額を表すには、純資産と表記することが内容をより適切に示すものと考えられる。

また、平成17年会計基準の公開草案に対するコメントの中には、資本と純資産とが相違することに対する懸念も見られた。これに対しては、以前であれば、株主に帰属する資本が差額としての純資産となるように資産及び負債が取り扱われてきたが、その他有価証券評価差額金を資本の部に直接計上する考え方(第14項参照)が導入されて以降、株主に帰属する資本と、資産と負債との差額である純資産とは、既に異なっているという見方がある。本会計基準では、資本と利益の連繋を重視し(第29項及び第30項参照)、資本については、株主に帰属するものであることを明確にすることとした。また、前項で示したように資産や負債を明確にすれば、これらの差額がそのまま資本となる保証はない。このため、本会計基準では、貸借対照表の区分において、資本とは必ずしも同じとはならない資産と負債との単なる差額を適切に示すように、これまでの「資本の部」という表記を「純資産の部」に代えることとした。

22. 前項までの考え方に基づき、本会計基準においては、新株予約権や少数株主持分を純資産の部に区分して記載することとした(第7項参照)。

(1) 新株予約権

新株予約権は、将来、権利行使され払込資本となる可能性がある一方、失効して払込資本とはならない可能性もある。このように、発行者側の新株予約権は、権利行使の有無が確定するまでの間、その性格が確定しないことから、これまで、仮勘定として負債の部に計上することとされていた。しかし、新株予約権は、返済義務のある負債ではなく、負債の部に表示することは適当ではないため、本会計基準では、純資産の部に記載することとした。

(2) 少数株主持分

少数株主持分は、子会社の資本のうち親会社に帰属していない部分であり、返済義務のある負債でもなく、また、連結財務諸表における親会社株主に帰属するものでもないため、これまで、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされていた。しかし、本会計基準では、独立した中間区分を設けないこととし、純資産の部に記載することとした。

23. さらに、本会計基準では、貸借対照表上、これまで損益計算の観点から資産又は負債として繰り延べられてきた項目についても、資産性又は負債性を有しない項目については、純資産の部に記載することが適当と考えている。このような項目には、ヘッジ会計の原則的な処理方法における繰延ヘッジ損益(ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べられるヘッジ手段に係る損益又は時価評価差額)が該当する(第8項参照)。

24. なお、この他にも、例えば、仮受金や未決算勘定、割賦未実現利益、修繕引当金など、損益計算の観点から資産又は負債として繰り延べられてきたのではないかと考えられる項目もある。しかしながら、仮受金や未決算勘定については、将来、収益に計上される可能性ではなく外部に返済される可能性を重視すれば負債に該当すること、割賦未実現利益や修繕引当金については、利益の繰り延べではなく資産の控除項目という見方もあることなどから、貸借対照表の表示を取り扱う本会計基準では、繰延ヘッジ損益以外の項目について、既存の会計基準と異なる取扱いを定めることはしないものとした。

25. 本会計基準では、第13項から第16項で示した経緯を踏まえ、貸借対照表の純資産の部の表示を定めることを目的としており、表記上、これまでの資本の部を純資産の部に代え(第21項参照)、その上で新株予約権や少数株主持分、繰延ヘッジ損益を当該純資産の部に記載することとした(第22項及び第23項参照)。

また、これまで資本の部には、払込資本や留保利益のほか、その他有価証券評価差額金など、払込資本でもなく損益計算書を経由した利益剰余金でもない項目が含まれて表記されていた。このため、本会計基準では、純資産のうち株主に帰属する部分を、「資本」とは表記せず、株主に帰属するものであることをより強調する観点から「株主資本」と称するものとした。

26. 貸借対照表の表示に関しては、「企業会計原則」などに定めがあるが、これらの会計基準と異なる取扱いを定めているものについては、本会計基準の取扱いが優先することとなり、自己株式の表示など本会計基準において特に定めのないものについては、該当する他の会計基準の定めによる(第1項参照)。

また、表示を除く会計処理については、既存の会計基準と異なる定めはしていないため、貸借対照表項目の認識及び消滅の認識、貸借対照表価額の算定などの会計処理については、既存の会計基準によることとなる(第1項参照)。

なお、繰延ヘッジ損益については、純資産の部に計上されることとなるため、その他有価証券評価差額金などと同様に、当該繰延ヘッジ損益に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除して計上することとなる(第8項なお書き参照)。

純資産の部の表示

27. かつて、資本の部は資本金、資本準備金、利益準備金及びその他の剰余金に区分されていたが、平成13 年における商法の改正により、資本金及び資本準備金の取崩によって、株主からの払込資本でありながら資本金、資本準備金では処理されないものが生ずることとなった。また、同改正に伴う自己株式の取得や処分規制の緩和により生ずることとなった自己株式処分差益も、同様の性格を有するものと考えられている。これらに対応するために、当委員会では、平成14年2月に企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」を公表し、資本性の剰余金を計上する資本剰余金の区分を設け、また、これに合わせ、利益性の剰余金を計上する利益剰余金の区分を設けた。

28. このような区分は、債権者保護の観点から資本の部を資本金、法定準備金、剰余金に区分してきた商法の考え方と、払込資本と留保利益に区分する企業会計の考え方の調整によるものと考えられる。もちろん、払込資本も留保利益も株主資本であることには変わりはなく、会計上はこの留保利益を含む株主資本の変動(増資や配当など)と、その株主資本が生み出す利益との区分が本質的に重要である。しかし、同じ株主資本でも株主が拠出した部分と利益の留保部分を分けることは、配当制限を離れた情報開示の面でも従来から強い要請があったと考えられる。このため、本会計基準でも従来の考え方を引き継ぎ、株主資本は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に区分するものとしている(第5項参照)。

29. 財務報告における情報開示の中で、特に重要なのは、投資の成果を表す利益の情報であると考えられている。報告主体の所有者に帰属する利益は、基本的に過去の成果であるが、企業価値を評価する際の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測やその改訂に広く用いられている。当該情報の主要な利用者であり受益者であるのは、報告主体の企業価値に関心を持つ当該報告主体の現在及び将来の所有者(株主)であると考えられるため、当期純利益とこれを生み出す株主資本は重視されることとなる。

30. 本会計基準では、貸借対照表上、これまでの資本の部を資産と負債との差額を示す純資産の部に代えたため、資産や負債に該当せず株主資本にも該当しないものも純資産の部に記載されることとなった。ただし、前項で示したように、株主資本を他の純資産に属する項目から区分することが適当であると考えられるため、本会計基準では、純資産を株主資本と株主資本以外の各項目に区分することとした(第4項参照)。この結果、損益計算書における当期純利益の額と貸借対照表における株主資本の資本取引を除く当期変動額は一致することとなる。

31. 本会計基準の検討においては、第4項及び第7項のように純資産を株主資本と株主資本以外の各項目に並列的に区分するのではなく、株主資本をより強調するように、純資産を株主資本とその他純資産に大きく区分し、その他純資産をさらに評価・換算差額等、新株予約権及び少数株主持分に区分するという考え方も示された。しかし、株主資本以外の各項目をその他純資産として一括りにする意義は薄いと考え、本会計基準では採用していない。

また、純資産の部の区分においては、財務分析における重要な指標であるROE(株主資本利益率又は自己資本利益率)の計算上、従来から、資本の部の合計額を分母として用いることが多く、また、この分母を株主資本と呼ぶことも多いため、株主資本、評価・換算差額等及び新株予約権を括った小計を示すべきではないかという指摘がある。しかしながら、ROE のみならず、自己資本比率や他の財務指標については、本来、利用目的に応じて用いられるべきものと考えられ、本会計基準の適用によっても、従来と同じ情報は示されており、これまでと同様の方法によるROE などの財務指標の算定が困難になるわけではないと考えられる。このため、本会計基準では、企業の財政状態及び経営成績を示す上で、株主資本、評価・換算差額等及び新株予約権を一括りとして意味をもたせることが必ずしも適当ではないと考え、これらを括ることとはしていない。

32. 新株予約権は、報告主体の所有者である株主とは異なる新株予約権者との直接的な取引によるものであり、また、少数株主持分は、子会社の資本のうち親会社に帰属していない部分であり、いずれも親会社株主に帰属するものではないため、株主資本とは区別することとした(第7項及び第22項参照)。

なお、本会計基準では、表示を除く会計処理については、従来と異なる定めはしていない(第1項及び第26項参照)。このため、従来どおり、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときの新株予約権は、当期の利益として処理し、子会社の時価発行増資等に伴い親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に生ずる差額は、原則として当期の損益として処理することとなる。

また、連結貸借対照表上、少数株主持分には、これまでと同様に連結子会社における評価・換算差額等の少数株主持分割合が含められる(第7項(2)なお書き参照)。さらに、少数株主持分を純資産の部に記載することとしても、連結財務諸表の作成については、従来どおり、親会社の株主に帰属するもののみを連結貸借対照表における株主資本に反映させる親会社説の考え方によることに留意する必要がある。

33. 本会計基準では、評価・換算差額等は、払込資本ではなく、かつ、未だ当期純利益に含められていないことから、株主資本とは区別し、株主資本以外の項目としている(第7項及び第8項参照)。

なお、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定などは、国際的な会計基準において、「その他包括利益累積額」として区分されている。本会計基準の検討においては、国際的な調和を図る観点などから、このような表記を用いてはどうかという考え方も示されたが、包括利益が開示されていない中で「その他包括利益累積額」という表記は適当ではないため、本会計基準では、その主な内容を示すよう「評価・換算差額等」として表記することとした。

また、平成17年会計基準の公開草案に対するコメントの中には、評価・換算差額等の各項目は株主資本に含める方が妥当ではないかという意見があった。これは、その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定などが、現行の会計基準において資本の部に直接計上されていることなどの理由によるものと考えられる。しかしながら、一般的に、資本取引を除く資本の変動と利益が一致するという関係は、会計情報の信頼性を高め、企業評価に役立つものと考えられている。本会計基準では、当期純利益が資本取引を除く株主資本の変動をもたらすという関係を重視し、評価・換算差額等を株主資本とは区別することとした。

株主資本の区分

34. 株主資本は、これまでと同様に、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に区分する。資本性の剰余金を計上する資本剰余金は、個別貸借対照表上はさらに、会社法で定める資本準備金とそれ以外のその他資本剰余金に区分する。これまで、その他資本剰余金は、資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金や自己株式の処分差益等がその内容を示す科目に区分して表示されていた。しかし、平成17 年会計基準の適用時期と同時に導入される株主資本等変動計算書があれば当期の変動状況は把握できることなどから、継続的にその他資本剰余金の残高を内容に応じて区別しておく必然性は乏しく、本会計基準では、個別貸借対照表上においても、その他資本剰余金の内訳を示さないものとした(第6項(1)参照)。

35. 利益性の剰余金を計上する利益剰余金は、個別貸借対照表上、利益準備金及びその他利益剰余金に区分する。これまで、利益剰余金は、利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益(又は当期未処理損失)に区分されていた。これは、任意積立金と当期未処分利益を括るだけの区分を設ける実益に乏しいことなどの理由による。しかしながら、会計上は任意積立金の区分を設ける必然性はなく、また、会社法上も利益準備金、任意積立金及びその他の各項目が示されれば足りると解されることから、本会計基準では、利益剰余金の区分を資本剰余金の区分と対称とすることとした。さらに、その他利益剰余金のうち、任意積立金のように、株主総会又は取締役会の決議に基づき設定される項目については、その内容を示す科目をもって表示し、それ以外については「繰越利益剰余金」として表示するものとした。後者は、今後、決算日後の利益処分としてではなく剰余金の配当を行うことができるようになることなどから、これまで利益処分の前後で使い分けられてきた「当期未処分利益」と「繰越利益」に代え、「繰越利益剰余金」と称したものである(第6項(2)参照)。

なお、その他利益剰余金又は繰越利益剰余金の金額が負となる場合には、マイナス残高として表示することとなる。

36. これまで、個別損益計算書においては、前期繰越利益に当期純利益やその他当期に生じた利益剰余金の変動額(一定の目的のために設定した積立金のその目的に従った取崩額、中間配当額、中間配当に伴う利益準備金の積立額等)を加減して当期未処分利益が表示されてきた。これを受けて個別貸借対照表では「当期未処分利益」が表示され、決算日後の利益処分を経て、利益処分計算書において当期未処分利益から利益処分額を控除し「次期繰越利益」が示されていた。今後は、平成17年会計基準の適用時期と同時に導入される株主資本等変動計算書により、前期末のその他利益剰余金に当期純利益や配当額などの当期の変動額を加減して当期末のその他利益剰余金が示されることとなる。

37. なお、資本剰余金には、(1)株主からの払込資本を表す払込剰余金のほか、(2)贈与により発生する剰余金(資本的支出に充てた国庫補助金等)や、(3)資本修正により発生する剰余金(貨幣価値変動に伴う固定資産の評価替等)を含むとの考えがある。現状では、(2)については実際上ほとんど採用されていないと思われ、(3)は我が国の現行の制度上生ずる余地がない。したがって、これらの論点については、本会計基準では検討の対象とはしていない。

適用時期等

38. 平成17年会計基準の適用時期について、公開草案では、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用することを提案していた。しかし、その後、会社法の計算書類に関する規定が、当該施行日以後終了する事業年度から適用されることが明らかとなったため、平成17年会計基準では一律に、会社法施行日以後終了する中間連結会計期間及び中間会計期間に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表並びに連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用するものとした。

なお、会社法施行日以後終了する連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用した場合でも、これは平成17年会計基準及び会社法の定めに基づくものであって、中間期において複数の会計処理が認められている中から選択適用する場合ではないため、いわゆる中間・年度の首尾一貫性が保持されていない場合には該当しないものと考えられる。

39. 平成17年会計基準の適用初年度においては、期間比較を容易にするように、これまでの資本の部の合計に相当する金額を注記することが適当である。なお、適用初年度においては、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことに留意する。

以上


INDEX

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