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連結財務諸表に関する会計基準目次

(注)本内容は、企業会計審議会が平成9年6月6日に公表した「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」から「連結財務諸表原則」部分を除いたものです。

なお、実務への適用にあたっては、念のためオリジナルの原則等を確認して下さい。

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書

平成九年六月六日

企業会計審議会

目次

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書

第一部 連結ベースのディスクロージャーの充実等について

一 基本的考え方

二 連結情報の充実

三 ディスクロージャーの効率化

四 連結情報に係る公認会計士等の監査の充実

第二部 連結財務諸表原則の改訂について

一 基本的考え方

二 改訂連結原則の要点及び考え方

実施時期等


一 我が国における連結財務諸表制度は、昭和五十年六月に当審議会が公表した「連結財務諸表の制度化に関する意見書」に基づき、昭和五十二年四月以後開始する事業年度から導入され、今日までに二十年余が経過している。

この間、連結財務諸表の提出期限の特例(事業年度終了後四か月)の廃止、有価証券報告書の添付書類であった連結財務諸表の有価証券報告書本体への組入れ、セグメント情報の開示の導入及び監査対象化、関連当事者との取引や連結ベースの研究開発活動等の開示項目の充実、連結子会社の範囲に関するいわゆる十%ルールの撤廃に伴う連結範囲の拡大等、随時、連結財務諸表制度に係る数々の充実・見直しが図られてきた。

二 近年、子会社等を通じての経済活動の拡大及び海外における資金調達活動の活発化など、我が国企業の多角化・国際化が急速に進展し、また、我が国証券市場への海外投資家の参入が増加するなど、我が国企業を取り巻く環境は著しく変化している。

このような環境の変化に伴い、企業の側において連結経営を重視する傾向が強まるとともに、投資者の側からは、企業集団の抱えるリスクとリターンを的確に判断するため、連結情報に対するニーズが一段と高まってきている。このような状況を反映して、我が国の連結情報に係るディスクロージャーの現状については、なお多くの問題点が指摘されてきた。

三 当審議会は、このような状況に鑑みて、平成七年十月以降、連結財務諸表を巡る諸問題について審議を行い、本年二月、「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書案(公開草案)」を公表して、広く各界からの意見を求めた。

当審議会は、寄せられた意見を参考にしつつ更に審議を重ね、当該意見書案を一部修正して、これを「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」として公表することとした。

本意見書は、「第一部 連結ベースのディスクロージャーの充実等について」及び「第二部連結財務諸表原則の改訂について」から構成されている。

第一部では、従来の個別情報を中心としたディスクロージャーから、連結情報を中心とするディスクロージャーへ転換を図ることとし、連結ベースでのディスクロージャーの一層の充実を求めている。

第二部では、議決権の所有割合以外の要素も加味した支配力基準を導入して連結の範囲を拡大するとともに、連結財務諸表の作成手続を整備するなど、連結情報充実の観点から連結財務諸表原則(以下、「連結原則」という。)を改訂している。

四 このような連結財務諸表制度の改革は、

1 内外の広範な投資者の我が国証券市場への投資参加を促進し、

2 投資者が、自己責任に基づきより適切な投資判断を行い、また、企業自身もその実態に即したより適切な経営判断を行うことを可能にし、

3 連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構築しようとするものであり、二十一世紀に向けての、活力あり、かつ、秩序ある証券市場の確立に貢献しうると考えるものである。

第一部 連結ベースのディスクロージャーの充実等について

一 基本的考え方

1 証券取引法に基づくディスクロージャー制度においては、これまで個別情報を中心としており、連結情報は個別情報に対して副次的なものとして位置づけられてきた。しかし、多角化・国際化した企業に対する投資判断を的確に行ううえで、企業集団に係る情報が一層重視されてきているため、連結情報を中心とするディスクロージャー制度への転換を図るとともに、その一環として、セグメント情報を一層充実することが必要である。

なお、国際的には、従来より連結中心のディスクロージャーが行われているところである。

2 他方、連結情報を充実させることによってその有用性が乏しくなると考えられる個別情報については、可能な範囲で簡素化するなど、ディスクロージャーの効率化を図ることが適当である。

二 連結情報の充実

1 連結情報重視のディスクロージャーを推進するため、有価証券報告書及び有価証券届出書における記載順序を、従来の個別・連結の順序から連結・個別の順序へ変更するとともに、次のような具体的な措置を講ずることが適当である。

(1) 現在、個別ベースで記載されている「営業の状況」や「設備の状況」等について、連結ベースで記載する。

(2) 企業集団の概況(主な事業内容等についての記載)・業績(売上高及び損益情報についての分析的な記載)等について、事業の種類別等のセグメントごとにディスクローズするなど、セグメント情報を充実する。

なお、事業の種類が単一である等の理由により、事業の種類別セグメント情報をディスクローズしていない会社については、主な部門別の売上高等をディスクローズする。

(3) 現在記載されている連結子会社の状況のほか、連結子会社以外の主要な関係会社の状況についてもディスクローズすることにより、企業集団等の構成状況に関する情報を充実する。

2 オフバランス情報、リスク情報等については、企業集団全体としてのディスクロージャーが求められていることから、偶発債務及び重要な後発事象等、経営に重大な影響を及ぼすおそれのある情報については、連結ベースでディスクローズすることが適当である。

3 現在、資金収支の状況については、連結ベースのディスクロージャーが求められていないが、連結情報重視の観点から、連結ベ−スでのキャッシュ・フロ−計算書を導入することが適当である。

4 現在、連結財務諸表は決算日ごとに作成されているが、連結情報重視の観点から、その提供頻度を高め、半期報告書に中間連結財務諸表を導入することが適当である。

5 現在、証券取引法に基づく臨時報告書は、有価証券報告書の提出会社に一定の重要な事象が発生した場合に提出することとされているが、その連結子会社等に重要な事象が発生した場合においても、適時、適切なディスクロージャーを求めるべく、連結ベースでの臨時報告書の提出事由を設定するよう措置を講ずることが適当である。

6 持株会社については、その業績は特に傘下の子会社の業績に左右されることになるため、企業集団に係る情報及びセグメント別の情報が一段と重要となる。このため、主要な子会社の損益情報等、開示事項について更に検討を加え、必要な措置を講ずることが適当である。

7 連結子会社がない会社においては、連結財務諸表が作成されないため、関連会社に多額の損益が生じている場合であっても、その情報がディスクローズされない。このため、連結財務諸表を作成していない会社については、個別財務諸表において、関連会社に持分法を適用した場合の投資損益等を注記するよう措置を講ずることが適当である。

三 ディスクロージャーの効率化

1 従来、個別情報を中心としたディスクロージャーが行われてきたことに鑑み、適切な個別情報のディスクロージャーについて、なお配慮することが必要である。しかし、連結情報を充実させることに伴い、その有用性が乏しくなると考えられる個別情報等については、可能な範囲で簡素化し、ディスクロージャーの効率化を図ることが適当である。

当面、次のような具体的な措置を講ずることが適当である。

(1) 有用性が乏しいと判断される個別情報、例えば、製品別の生産能力や生産実績等について、記載を簡素化する。

(2) 附属明細表のうち、連結財務諸表の作成に当たり相殺消去される事項に係る関係会社有価証券明細表、関係会社出資金明細表等を廃止する。その他の附属明細表についても、商法上の附属明細書の記載内容との調整を行い、記載を簡素化する。

(3) 連結キャッシュ・フロー計算書の導入に伴い、個別ベースでの資金収支表を廃止する。

(4) 関連当事者との取引について、公認会計士又は監査法人による監査の対象とすることを前提として、重要性基準の見直し等を行う。

2 連結情報を中心とするディスクロージャー及び企業分析等の進展状況を踏まえ、今後、個別情報の一層の簡素化について更に検討していくことが適当である。

3 現行の連結財務諸表の表示科目は、国際的にみてもかなり細分化されており、投資情報として一覧性に欠けるとの指摘がある。また、連結子会社数の増加に伴い、現行の科目区分によって連結作業を行うことは、実務的にも困難になってきている。

これらの点を考慮し、投資情報としての有用性を損なわない範囲で、表示科目を統合することが適当である。

四 連結情報に係る公認会計士等の監査の充実

連結キャッシュ・フロー計算書及び中間連結財務諸表のほか、関連当事者との取引など、投資判断に重要な影響を及ぼす連結情報については、公認会計士又は監査法人による監査の対象とすることが適当である。

第二部 連結財務諸表原則の改訂について

一 基本的考え方

1 現行の連結原則については、連結の範囲につき持株基準が採用されていることのほか、税効果会計の適用が任意とされていること、親子会社間の会計処理の統一に関するルールが明確になっていないこと、資本連結の手続が明確になっていないこと等の問題点が指摘されている。

このため、連結情報を中心とするディスクロージャー制度へ移行するに当たって、連結財務諸表が企業集団に関するより適切な投資情報を投資者に提供するものとなるよう、現行の連結原則の全面的な見直しを行なった。

2 連結財務諸表の作成については、親会社説と経済的単一体説の二つの考え方がある。いずれの説においても、単一の指揮下にある企業集団全体の資産・負債と収益・費用を連結財務諸表に表示するという点では変わりはないが、資本に関しては、親会社説は、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主持分のみを反映させるのに対して、経済的単一体説は、連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づけて、企業集団を構成する全ての会社の株主持分を反映させるものであるという点で異なっている。

この度の連結原則の改訂に当たり、いずれの考え方によるべきかを検討した結果、本改訂連結原則では、従来どおり親会社説の考え方によることとしている。これは、連結財務諸表が提供する情報は主として親会社の投資者を対象とするものであると考えられるとともに、親会社説による処理方法が企業集団の経営を巡る現実感覚をより適切に反映すると考えられることによる。

二 改訂連結原則の要点及び考え方

現行の連結原則と対比しつつ、改訂連結原則(以下、「改訂原則」という。)の要点及び考え方を示すと、以下のとおりである。

1 連結の範囲等

(1) 子会社の範囲

現行の連結原則では、子会社の判定基準として、親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかにより判定を行う持株基準が採用されているが、国際的には、実質的な支配関係の有無に基づいて子会社の判定を行う支配力基準が広く採用されている。

現在我が国で採用されている持株基準も支配力基準の一つと解されるが、議決権の所有割合が百分の五十以下であっても、その会社を事実上支配しているケースもあり、そのような被支配会社を連結の範囲に含まない連結財務諸表は、企業集団に係る情報としての有用性に欠けることになる。

このような見地から、子会社の判定基準として、議決権の所有割合以外の要素を加味した支配力基準を導入し、他の会社(会社に準ずる事業体を含む。)の意思決定機関を支配しているかどうかという観点から、基準を設定することとする。

(2) 関連会社の範囲

現行の連結原則では、連結会社(親会社及び連結された子会社)が、子会社以外の他の会社の議決権の百分の二十以上を所有し、かつ、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合には、当該他の会社は関連会社に該当することとされている。

この取扱いによると、財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができると認められる場合であっても、議決権の所有割合が百分の二十未満であるときは、関連会社に該当せず、持分法が適用されないこととなる。

このため、関連会社の判定基準として、影響力基準を導入し、親会社及び子会社が、子会社以外の他の会社(会社に準ずる事業体を含む。)の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができるかどうかという観点から、基準を設定することとする。

(3) 合弁会社に対する比例連結の適用の是非

現行の連結原則によると、共同支配の実態にある合弁会社(関連会社)については、他の関連会社と同様、原則として持分法が適用されることになるが、この度の連結原則の改訂に当たっては、個別貸借対照表及び個別損益計算書の各項目を持分比率に応じて連結する比例連結を認めるかどうかという問題も検討した。

この点については、混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を一律に持分比率で按分して連結財務諸表に計上することは不適切であるとの指摘がなされていること等を考慮して、比例連結は導入せず、現行の取扱いを踏襲することとする。

2 少数株主持分の表示方法

親会社説をとる場合でも、少数株主持分については、これを負債の部に表示する方法と、負債の部と資本の部の中間に表示する方法とが考えられる。

現行の連結原則では、少数株主持分は負債の部に表示することとされているが、少数株主持分は、返済義務のある負債ではなく、連結固有の項目であることを考慮して、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとする。

なお、少数株主持分を負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示する方法によっても、少数株主損益は、連結損益計算書において損失又は利益として表示し、当期純利益は親会社の株主に帰属する利益の額として計算される。

3 税効果会計の適用

(1) 税効果会計は、会計上と税務上の収益又は費用(益金又は損金)の認識時点の相違や、会計上と税務上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税等を適切に期間配分するための会計処理であり、国際的にも広く採用されている。

税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、会計上の利益と課税所得とに差異があるときは、その差異の影響が財務諸表に反映されない。このため、法人税等の額が税引前当期純利益と期間的に対応せず、その影響が重要な場合には財務諸表の比較性を損なうことになる。

(2) 現行の連結原則では税効果会計の適用は任意とされており、税効果会計を適用している企業においても、連結会社間に係る未実現損益の消去等、連結手続上の修正項目のみを対象として部分的に適用しているものと、個別ベースでの税効果会計を含めて全面的に適用しているものとが見られる。しかし、連結手続上の修正項目のみを対象として税効果会計を部分的に適用した場合には、極めて限られた効果しか得られない。このような観点から、税効果会計を全面的に適用することを原則とする。

(3) 税効果会計の方法には、繰延法と資産負債法とがあるが、資産負債法は、税率変更等に応じて繰延税金資産又は繰延税金負債が回収額又は支払額をより適切に示す方法であり、国際的にも主流となっていることから、資産負債法によることとする。

(4) 税効果会計は、本来、連結財務諸表のみでなく、個別財務諸表においても適用されるべきものである。このため、個別財務諸表における税効果会計の適用について、今後、商法との調整を進めることが必要と考える。

4 親子会社間の会計処理の統一

(1) 現行の連結原則では、子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、「できるだけ」親会社に統一することとされている。

親会社と各子会社は、それぞれの置かれた環境の下で経営活動を行っているため、連結会計において親会社と各子会社の会計処理を画一的に統一することは、かえって連結財務諸表が企業集団の財政状態及び経営成績を適切に表示しなくなるということも考えられる。他方、同一の環境下にあるにもかかわらず、同一の性質の取引等について連結会社間で会計処理が異なっている場合には、その個別財務諸表を基礎とした連結財務諸表が企業集団の財政状態及び経営成績の適切な表示を損なうことは否定できない。

このような見地から、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については、「原則として」会計処理を統一することが適当である。

(2) 会計処理の統一に当たっては、より合理的な会計処理の原則及び手続を選択すべきであり、子会社の会計処理を親会社の会計処理に合わせる場合のほか、親会社の会計処理を子会社の会計処理に合わせる場合も考えられる。

なお、実務上の事情を考慮して、財政状態及び経営成績の表示に重要な影響がないと考えられるもの(例えば、たな卸資産の評価方法である先入先出法、平均法等)については、敢えて統一を求めるものではない。

5 資本連結の手続の明確化

資本連結とは、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去し、消去差額が生じた場合には当該差額を連結調整勘定として計上するとともに、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を少数株主持分に振り替える一連の手続をいう。

資本連結については、企業集団内で行われる資本関連取引の複雑化に伴い、現行の連結原則上明確な定めのない取引が増加してきており、また、国際的にみても、資本連結の考え方に変化が現われている。このようなことから、現行の資本連結に関する基準を全面的に見直し、以下のとおり、資本連結の手続の明確化を図ることとする。

(1) 支配獲得時における資本連結の手続

@ 子会社の資産及び負債の評価

子会社の資産及び負債は、公正な評価額(以下、「時価」という。)により評価することとする。

この場合、時価により評価する資産及び負債の範囲については、親会社の持分に相当する部分に限定する方法(以下、「部分時価評価法」という。)と少数株主持分に相当する部分を含めてすべてを時価評価する方法(以下、「全面時価評価法」という。)とが考えられる。前者の考え方は、親会社が株式を取得した際の親会社の持分を重視する考え方であり、後者の考え方は、親会社が子会社を支配した結果、子会社が企業集団に含まれることになった事実を重視する考え方である。

現行の連結原則の下では、投資消去差額の原因分析を通じて、結果的には部分時価評価法と同様な処理が行われてきたが、国際的な動向をも考慮し、従来の部分時価評価法に加えて、全面時価評価法による処理も併せて認めることとする。

A 投資と資本の相殺消去

親会社の投資と子会社の資本の相殺消去は、子会社の資産及び負債の評価の時点に対応する子会社の資本を用いて行うこととする。子会社の資産及び負債の帳簿価額と時価評価額との差額は、子会社における評価替剰余金としての性格を有するが、当該差額は親会社の投資と子会社の資本の相殺消去及び少数株主持分ヘの振り替えによって全て消去される。

全面時価評価法を採用する場合には、取得日ごとの子会社の資本を用いて相殺消去を行わず、支配獲得日における資本を用いて一括して相殺消去を行う。なお、この処理は、相殺消去の対象となる投資にすでに持分法を適用している場合であっても同様であり、持分法評価額を投資の帳簿価額とみなして相殺消去を行うことになる。

B 連結調整勘定の計上

上記の処理を行った結果生ずる投資と資本の消去差額は、連結調整勘定として計上される。改訂原則では、子会社の資産及び負債を時価評価した後に投資と資本の相殺消去を行うため、消去差額である連結調整勘定は、事実上、のれんの性格を有する。なお、相殺消去の対象となる投資に持分法を適用していた場合には、持分法評価額に含まれていた連結調整勘定も含めて、連結調整勘定が新たに計算されることになる。

連結調整勘定の計上に関しては、少数株主持分に相当する部分についても、親会社の持分について計上した額から推定した額を計上すべきであるとする考え方もあるが、推定計算により少数株主持分について連結調整勘定を計上することにはなお問題が残されているため、改訂原則では、のれんの計上は有償取得に限るべきであるという立場から、この考え方は採用していない。

(2) 支配獲得後における資本連結の手続

@ 子会社株式を追加取得した場合の処理

子会社株式を追加取得した場合には、子会社の資本に対する親会社の持分は増加し、小数株主持分は減少する。

この場合には、追加取得した株式に対応する持分を少数株主持分から減額し、追加取得により増加した親会社の持分(追加取得持分)を追加投資額と相殺消去するとともに、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額は、連結調整勘定として処理することとする。

なお、部分時価評価法を採用している場合には、追加取得持分は、追加取得日における子会社の資産及び負債のうち、追加取得持分に相当する部分を当該日の時価により評価して計算することとする。

A 子会社株式を一部売却した場合の処理

子会社株式を一部売却した場合であって、親会社と子会社の支配関係が継続しているときは、子会社の資本に対する親会社の持分は減少し、小数株主持分は増加する。

この場合は、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、少数株主持分を増額するとともに、売却による親会社の持分の減少額(売却持分)と投資の減少額との間に生じた差額は、子会社株式の売却損益の修正として処理することとする。また、連結調整勘定についても、その未償却額のうち売却した株式に対応する額を子会社株式の売却損益の修正として処理することとする。

なお、部分時価評価法を採用している場合には、増額する少数株主持分は、子会社の個別貸借対照表上の資本の額に基づき計算し、売却持分に含まれる評価差額は、それに対応する子会社の資産及び負債と相殺することとする。

B 子会社の時価発行増資等に伴い親会社の持分が増減した場合の処理

子会社の時価発行増資等において、親会社の引受割合が従来の持分比率と異なり、かつ、発行価格が従来の一株当たりの純資産と異なる場合には、親会社の払込額と当該増資等による親会社の持分の増減額との間に差額が生ずる。この差額は当該増資等に伴う持分比率の変化によって、親会社の持分の一部が少数株主持分に、又は少数株主持分が親会社の持分に振り替わることから生ずるものである。

改訂原則では、連結財務諸表上の払込資本は、親会社の株主の払込資本のみであり、子会社の払込資本は連結上の払込資本を構成しないと解釈していることから、親会社の増減資によらないこのような差額は、連結剰余金を構成することになる。

この場合、当該差額は、損益として処理することを原則とするが、子会社の時価発行増資等による持分変動は企業集団の業績とは無関係であるとの意見があることに鑑み、発生の頻度、金額の異常性等を勘案して、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる場合には、連結剰余金に直接加減することができることとする。

6 資本連結以外の連結手続の明確化

(1) 未実現損益の消去方法等

@ 少数株主が存在する子会社から親会社への売上取引に係る未実現損益の消去方法

現行実務上、全額消去・持分按分負担方式(未実現損益を全額消去し、親会社の持分と少数株主持分とにそれぞれの持分比率に応じて負担させる方法)、全額消去・親会社負担方式(未実現損益を全額消去し、かつ、その金額を全て親会社の持分に負担させる方法)及び部分消去・親会社負担方式(親会社の持分比率に相当する未実現損益のみを消去し、親会社の持分にこれを負担させる方法)の三つの方法が見られるが、全額消去・持分按分負担方式に統一することとする。

A 減価償却資産に含まれる未実現損益の消去に伴う減価償却費の修正計算方法

現行の連結原則注解では、減価償却資産に含まれる未実現損益の消去に伴う減価償却費の修正計算方法について、毎期修正する方法のほかに、固定資産の除却時又は連結会社以外の会社への売却時に一括して修正する方法も認めているが、毎期修正する方法に統一することとする。

B 連結会社間でたな卸資産等を時価により売買することにより生ずる内部損失の消去方法

現行の連結原則注解では、連結会社間でたな卸資産を時価により売買することにより生ずる内部損失について、消去する方法と消去しない方法の双方を認めているが、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分については、消去しないこととする。なお、たな卸資産以外の資産についても、これに準じて取扱うこととする。

(2) 連結調整勘定の償却

連結調整勘定の主要部分はのれんと考えられるため、連結調整勘定は、本来、その効果の発現する期間にわたって償却し、投資の実態を適切に反映させる必要がある。

しかし、実務上、特に長期的視野に立って投資が行われている場合には、通常、その効果の発現する期間の見積りは困難であり、償却期間が長期化するおそれがある。

このため、一定の期間を設けて、企業がその期間内において、子会社の実態に基づいた適切な償却期間を決定することが重要である。改訂原則においては、国際的な動向を勘案して、原則としてその計上後二十年以内に、定額法その他合理的な方法により償却することとする。

7 連結財務諸表における表示区分

(1) 連結調整勘定の当期償却額及び持分法による投資損益の表示区分

現行の連結原則では、連結調整勘定の当期償却額は税金等調整前当期純利益に加減して表示することとされているが、連結調整勘定の主要な部分はのれんと考えられるため、連結調整勘定の当期償却額は、販売費及び一般管理費(負債の部に計上された連結調整勘定については営業外収益)の区分に表示することとする。

また、持分法による投資損益についても、税金等調整前当期純利益に加減して表示することとされているが、投資に係る損益であるため、一括して営業外損益の区分に表示し、経常損益に反映させることとする。

(2) 利益準備金の取扱い

現行の連結原則では、利益準備金は資本の部に区分して表示することとされているが、連結財務諸表は、商法上の配当可能利益の算定を直接の目的としているものではないため、個別財務諸表上の処分不可能な利益剰余金である利益準備金を連結財務諸表上表示する必要性が乏しく、表示科目の統合の観点からも、利益の留保額を連結剰余金として一括して表示することが適当と考えられる。

このため、連結財務諸表上、利益準備金の表示区分を廃止し、利益の留保額(利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益)を連結剰余金として一括して表示することとする。

(3) 自己株式等の取扱い

自己株式及び子会社が所有する親会社の株式は、株主に対する資本の払戻しとしての性格を有していると考えられるため、資本に対する控除項目として表示するという現行の取扱いによることとする。

(4) 事業税の表示区分

現在、事業税は、営業費用の一項目として表示することとされているが、利益に関連する金額を課税標準とする事業税については、法人税及び住民税と同様、税金等調整前当期純利益から控除して表示することとする。なお、個別財務諸表における事業税の表示区分についても同様の問題があり、この点について、今後検討する必要がある。

実施時期等

一 当審議会としては、引き続き、連結キャッシュ・フロー計算書及び中間連結財務諸表の作成基準等について審議することとする。

二 我が国の連結財務諸表制度の評価を高めていくためには、同制度の改革を可及的すみやかに進めていくことが必要である。

ただし、見直しの対象が多岐にわたっており、今後、企業側の受入準備、関係方面の準備作業が必要であり、これらを考慮して、平成十年四月一日以後開始する事業年度から段階的に実施されるよう措置することが適当である。

具体的には、連結ベースでの偶発債務の注記、連結財務諸表の表示科目の統合等については平成十年四月一日以後開始する事業年度から実施し、平成十一年四月一日以後開始する事業年度から本格的に実施されるよう措置することが適当である。なお、税効果会計や連結財務諸表を作成していない会社の持分法損益の注記等の実施に当っては、準備期間について十分配慮することが必要である。

三 子会社及び関連会社の範囲、税効果会計、親子会社間の会計処理の統一並びに資本連結の手続に関する基準を適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係省令により手当てするとともに、日本公認会計士協会が関係者と協議のうえ適切に措置することが必要と考える。


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