(注) 本内容は、平成19年4月25日企業会計基準委員会が公表した
企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」から抜粋したものです。
目次
[設例1]転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
[設例2]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理−取得の対価が自社の株式の場合−(一括法)
[設例3-1]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理−取得の対価が現金と自社の株式の場合@−(一括法)
[設例3-2]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理−取得の対価が現金と自社の株式の場合A−(一括法)
[設例4]外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
[設例1]転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1) 転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:500,000千円
払込金額:450,000千円(割引発行)
期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
利率:0%
(2) 決算日は3月31日である。
(3) X3年4月1日に、上記転換社債型新株予約権付社債のすべてについて新株予約権の行使の請求があり、新株を発行した。
(4) 新株予約権の行使に際して出資をなすべき1 株当たりの金額(転換価格)は50千円とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(5) 償却原価法の適用にあたっては、定額法によるものとする。
2. 会計処理
(1) 発行時(X1年4月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
450,000 |
社債 |
450,000 |
|
(2) 決算日(X2年3月31日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債利息 |
5,000 |
社債 |
5,000 |
|
(3) 決算日(X3年3月31日)
|
単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債利息 |
5,000 |
社債 |
5,000 |
|
(4) 新株予約権行使時(X3年4月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債 |
460,000 |
資本金 |
(注)460,000 |
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(注) 権利行使により増加する資本金の額は、新株予約権が行使された転換社債型新株予約権付社債の帳簿価額に基づき算定する。
[設例2]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理
−取得の対価が自社の株式の場合−(一括法)
1.前提条件
(1) 取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:100,000千円
払込金額:100,000千円
期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
利率:0%
(2) 発行者は、取得条項に基づき、(1)の転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の目的である自社の株式の数を交付することにより、(1)の転換社債型新株予約権付社債を取得することができる。
(3) 発行者が取得した際に(1)の転換社債型新株予約権付社債を消却することが募集事項で示されているものとする。
(4) 取得者(転換社債型新株予約権付社債権者)による新株予約権の行使、又は、発行者による転換社債型新株予約権付社債の取得に際して、出資をなすべき1
株当たりの金額(転換価格)は100,000千円とする。
(5) 発行者は、X3年5月1日に、取得条項に基づき、(1)の転換社債型新株予約権付社債を取得し、その対価として新株(市場価格に基づく価額は110,000千円とする。)を発行した。また、取得した転換社債型新株予約権付社債は、取得と同時に消却が行われた。
(6) 新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
2. 会計処理
(1) 発行時(X1年4月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100,000 |
社債 |
100,000 |
|
(2) 取得時(X3年5月1日)
|
単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債 |
(注1)100,000 |
資本金 |
100,000 |
|
(注1)
会社法上は、取得した転換社債型新株予約権付社債を帳簿価額100,000千円で計上し、これを資本金(上記1.(6)参照)とした上で、当該転換社債型新株予約権付社債の消却を行うこととなる。
なお、発行者が取得した際に上記1.(1)の転換社債型新株予約権付社債を消却することが募集事項等で示されていない場合の会計処理は次のようになる。
(1) 発行時(X1年4月1日)
|
単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100,000 |
社債 |
100,000 |
|
(2) 取得時(X3年5月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己社債 |
(注2)110,000 |
資本金 |
110,000 |
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(注2) 取得した転換社債型新株予約権付社債を取得の対価となる自社の株式の時価110,000千円で計上し、これを資本金とする。
[設例3-1]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理
−取得の対価が現金と自社の株式の場合@−(一括法)
1.前提条件
(1) 取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:100,000千円
払込金額:100,000千円
期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
利率:0%
(2) 発行者は、取得条項に基づき、現金と自社の株式を対価として、自社の株式の市場価格が転換価格を上回った場合は、(1)の転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の目的である自社の株式の数に基づき算定された時価をもって、転換価格以下の場合は、社債金額をもって、当該転換社債型新株予約権付社債を取得することができる。
(3) 取得者(転換社債型新株予約権付社債権者)による新株予約権の行使、又は、発行者による転換社債型新株予約権付社債の取得に際して、出資をなすべき1
株当たりの金額(転換価格)は100,000千円とする。
(4) 発行者は、X3年5月1日に、取得条項に基づき、(1)の転換社債型新株予約権付社債を取得し、その対価として現金(100,000千円)と新株(市場価格に基づく価額は10,000千円とする。)を交付した。
(5) 新株の交付に対応する額はすべて資本金とする。
2. 会計処理
(1) 発行時(X1年4月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100,000 |
社債 |
100,000 |
|
(2) 取得時(X3年5月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
自己社債 |
(注1)110,000 |
現金 |
100,000 |
|
|
資本金 |
(注2)10,000 |
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(注1) 取得の対価となる自社の株式の時価と現金の額の合計額に基づき、自己社債の取得に準じて処理する。
(注2) 取得の対価となる自社の株式の時価10,000千円が資本金の額となる(上記1.(5)参照)。
[設例3-2]取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理
−取得の対価が現金と自社の株式の場合A−(一括法)
1.前提条件
(1) 取得条項付の転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:100,000 千円
払込金額:100,000 千円
期間:X1 年4 月1 日からX11 年3 月31 日(10 年間)
利率:0%
(2) 発行者は、取得条項に基づき、現金と自社の株式を対価として、自社の株式の市場価格が転換価格を上回った場合は、(1)の転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の目的である自社の株式の数に基づき算定された時価をもって、転換価格以下の場合は、社債金額をもって、当該転換社債型新株予約権付社債を取得することができる。
(3) 発行者が取得した際に、対価である現金がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式がすべて新株予約権部分の取得に充てられることが募集事項で示されているものとする。また、発行者が取得した際に(1)の転換社債型新株予約権付社債を消却することが募集事項で示されているものとする。
(4) 取得者(転換社債型新株予約権付社債権者)による新株予約権の行使、又は、発行者による転換社債型新株予約権付社債の取得に際して、出資をなすべき1 株当たりの金額(転換価格)は100,000千円とする。
(5) 発行者は、X3年5月1日に、取得条項に基づき、(1)の転換社債型新株予約権付社債を取得し、その対価として現金(100,000千円)と新株(市場価格に基づく価額は10,000千円とする。)を交付した。また、取得した転換社債型新株予約権付社債は、取得と同時に消却が行われた。
2. 会計処理
(1) 発行時(X1年4月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
100,000 |
社債 |
100,000 |
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(2) 取得時(X3年5月1日)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債 |
(注1)100,000 |
現金 |
100,000 |
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(注1) 転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権が行使されたときに準じ、当該転換社債型新株予約権付社債の帳簿価額に基づいて処理する。
[設例4]外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1) 新株予約権付社債の発行に伴い払い込まれた金銭の総額は1,000千ドル(平価発行、期間10年)とする。
(2) 新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は500円とする。なお、新株予約権の行使により交付される株式数は、社債の額面金額を換算(固定)レート210円/ドルで円に換算した金額を、転換価格で除した数とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(3) 為替相場
発行日 212円/ドル
最初の決算日 220円/ドル
新株予約権行使時 215円/ドル
(4) 社債利息については考慮しないものとする。
2. 会計処理
(1) 発行時
|
単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
現金預金 |
212,000 |
社債 |
212,000 |
|
(2) 最初の決算日
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
為替差損 |
8,000 |
社債 |
(注1)8,000 |
|
(注1) 1,000 千ドル×(220 円/ドル−212 円/ドル)=8,000 千円
(3) 新株予約権行使時(当初に払い込まれた金銭の総額のうち100千ドル分の権利行使がなされたと仮定)
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単位:千円
借方 |
貸方 |
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
社債 |
(注2)22,000 |
資本金 |
(注3)21,500 |
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為替差益 |
500 |
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(注2) 権利行使に係る社債の帳簿価額
220,000千円×100千ドル/1,000千ドル=22,000千円
(注3) 権利行使により資本金に振り替える額
100千ドル×215円/ドル(権利行使時の為替相場)=21,500千円
INDEX
■仕訳処理目次
■社債
■普通社債
■新株予約権付社債(区分法)
■新株予約権付社債(一括法)
■転換社債型新株予約権付社債 |