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会計基準注記|結論の背景|目次

 

(注)本会計基準は、企業会計基準委員会が公表した「企業結合に関する会計基準」から「結論の背景部分」を抜粋したものです。「目的・会計基準」の部分は別に記載してあります。なお、実務への適用にあたっては、念のためオリジナルの当該会計基準等を確認してください。

企業会計基準第21号

企業結合に関する会計基準

(結論の背景)

平成15年10月31日

企業会計審議会

改正平成20年12月26日

企業会計基準委員会

目次

目的・会計基準は別に記載してあります。

結論の背景

平成15年会計基準公表の経緯

会計基準改正の必要性

基本的な考え方

取得と持分の結合の考え方

持分の継続

共同支配企業の形成

取得の会計処理

取得企業の決定方法

取得原価の算定

取得原価の配分方法

のれんの会計処理

負ののれんの会計処理

逆取得における個別財務諸表上の会計処理

共同支配企業の形成の会計処理

共通支配下の取引等の会計処理

共通支配下の取引

少数株主との取引

開示

適用時期等

平成20年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正


結論の背景

平成15年会計基準公表の経緯

60. 連結経営の定着といった企業行動の変化や取引の複雑化・高度化といった近年の経済実態の変化、我が国の会計基準を国際的水準に調和させる必要性などから、企業会計審議会では、会計基準の整備を精力的に進めてきた。

61. 平成12年5月に企業会計審議会の審議事項に取り上げられた企業結合会計に関する審議は、平成12年9月から開始され、当時の商法改正、諸外国の会計処理基準の現状及び動向、我が国の会計実務、財務諸表利用者のニーズ等を考慮しつつ精力的に進められてきた。そこでの審議は、何よりも我が国の実態に適合し、かつ、その考え方が国際的に理解される企業結合会計の基準を設定する必要があるという基本認識に立つものであった。

62. 企業会計審議会では、このような審議を踏まえ、平成13年7月に「企業結合に係る会計処理基準に関する論点整理」を公表し、その後、この論点整理に対して寄せられた意見を参考にしつつ、また、国際的調和を重視する観点から、海外で行われていた企業結合会計の見直しに係る議論を適宜検討の対象に加えながら、我が国の企業結合会計のあるべき姿についてさらに審議を進め、平成15年8月に「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書(公開草案)」を公表し、広く各界の意見を求めた。企業会計審議会は、寄せられた意見を参考にしつつさらに審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、これを平成15年10月に「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」として公表した。

会計基準改正の必要性

63. 近年、我が国では、企業が外部環境の構造的な変化に対応するため企業結合を活発に行うようになってきており、企業組織再編成を支援するための法制の整備も進められている。

我が国における会計基準としては、企業会計審議会が平成9年6月に改訂した「連結財務諸表原則」(以下「平成9年連結原則」という。)により、連結財務諸表に関する会計基準が整備され、また、平成15年会計基準により、企業結合全般に適用される会計基準が整備された。一方、国際的な会計基準では、企業結合の経済的実態に応じて、いわゆるパーチェス法(被結合企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法)と持分プーリング法(すべての結合当事企業の資産、負債及び資本を、それぞれの適切な帳簿価額で引き継ぐ方法)の両者を使い分ける取扱いから、持分プーリング法を廃止する取扱いに変更されるなど、我が国の取扱いとは異なる点が認められる。

64. 当委員会では、平成19年8月に国際会計基準審議会(IASB)と共同で公表したいわゆる東京合意に基づき、平成20年までの短期コンバージェンス・プロジェクトとして掲げた以下の項目を中心に審議を行った。

(1) 持分プーリング法の廃止及び取得企業の決定方法

(2) 株式の交換の場合における取得原価の算定方法

(3) 段階取得における取得原価の会計処理

(4) 負ののれんの会計処理

(5) 企業結合により受け入れた研究開発の途中段階の成果の会計処理等

これまで、平成19年12月に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」及び「研究開発費に関する論点の整理」を公表し、また、平成20年6月に「企業結合に関する会計基準(案)」を始めとした企業結合(連結を含む。)に関する一連の会計基準に係る公開草案を公表し、それらに対して一般から寄せられた意見を参考にしつつ審議を重ねてきた。

平成20年改正会計基準は、公開草案の内容を一部修正した上で公表するものである。

65. なお、企業結合の重要性は今後も高まっていく可能性が高いことから、企業結合の経済的実態を正しく認識できる会計処理方法を確立するという観点や適切な投資情報のディスクロージャーを実現するという観点から、引き続き会計基準等の整備・改善について努力していく予定である。

基本的な考え方

66. 企業結合とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう(第5項参照)。本会計基準では、企業結合に該当する取引を対象とするため、共同支配企業とよばれる企業体を形成する取引及び共通支配下の取引等も本会計基準の適用対象となる。また、企業結合は、一般的には連結会計基準にいう他の企業の支配の獲得も含むため、現金を対価とする子会社株式の取得の場合についても、連結会計基準に定めのない企業結合に関する事項については、本会計基準の適用対象となる。

なお、複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うことに留意する(第5項参照)。通常、複数の取引が1事業年度内に完了する場合には一体として取り扱うことが適当であると考えられるが、1つの企業結合を構成しているかどうかは状況によって異なるため、当初取引時における当事者間の意図や当該取引の目的等を勘案し、実態に応じて判断することとなる。

67. 企業結合には「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実態を有するものが存在し、それぞれの実態に対応する適切な会計処理方法を適用する必要があるとの考え方がある。この考え方によれば、まず「取得」に対しては、ある企業が他の企業の支配を獲得することになるという経済的実態を重視し、パーチェス法により会計処理することになる。これは、企業結合の多くは、実質的にはいずれかの結合当事企業による新規の投資と同じであり、交付する現金及び株式等の投資額を取得価額として他の結合当事企業から受け入れる資産及び負債を評価することが、現行の一般的な会計処理と整合するからである。

68. 他方、企業結合の中には、いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する支配を獲得したとは合理的に判断できない「持分の結合」がある。「持分の結合」とは、いずれの企業(又は事業)の株主(又は持分保有者)も他の企業(又は事業)を支配したとは認められず、結合後企業のリスクや便益を引き続き相互に共有することを達成するため、それぞれの事業のすべて又は事実上のすべてを統合して1つの報告単位となることをいい、この「持分の結合」に対する会計処理としては、対応する資産及び負債を帳簿価額で引き継ぐ会計処理が適用される。この考え方は、いずれの結合当事企業の持分も継続が断たれておらず、いずれの結合当事企業も支配を獲得していないと判断される限り、企業結合によって投資のリスクが変質しても、その変質によっては個々の投資のリターンは実現していないとみるものであり、現在、ある種の非貨幣財同士の交換を会計処理する際にも適用されている実現概念に通ずる基本的な考え方でもある。

69. 平成15年会計基準では、第67項及び前項のように、「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実態を有する企業結合について、別々の会計処理方法を適用するという考え方に立っていた。ただし、持分の継続、非継続自体は相対的な概念であり、具体的に明確な事実として観察することは困難な場合が多いことから、平成15年会計基準では、持分の継続を「対価の種類」と「支配」という2つの観点から判断することとしていた。具体的には、@企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること、A結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと、B議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと、という3つの要件をすべて満たせば持分は継続していると判断し、そのような企業結合に対しては持分プーリング法を適用することとしていた。これは、取得企業を識別できない場合を持分の結合と判定する方法とは異なり、異なる経済的実態を有する取得と持分の結合のうち、持分の結合を積極的に識別し、それ以外の企業結合を取得と判定するアプローチであった。

70. 「取得」又は「持分の結合」のいずれの経済的実態を有するかどうかという観点から、すべての企業結合の会計処理方法を平成15年会計基準において整理したことの意義は、平成20年改正会計基準においても尊重している。しかしながら、「持分の結合」に該当する場合の会計処理方法の1つである持分プーリング法については、我が国の会計基準と国際的な会計基準の間の差異の象徴的な存在として取り上げられることが多く、我が国の会計基準に対する国際的な評価の面で大きな障害になっているともいわれている。また、我が国の会計基準に対する国際的な評価のいかんは、直接海外市場で資金調達をする企業のみならず、広く我が国の資本市場や日本企業に影響を及ぼすと考えられる。そこで、平成20年改正会計基準ではそれらの影響も比較衡量して、会計基準のコンバージェンスを推進する観点から、従来「持分の結合」に該当した企業結合のうち、共同支配企業の形成以外の企業結合については取得となるものとして、パーチェス法により会計処理を行うこととした(第17項参照)。この結果、持分プーリング法は廃止されることとなった。

71. また、平成15年会計基準では、共同支配企業の形成の会計処理方法についても定めていた。共同支配企業は我が国においては合弁会社とよばれる場合もあり、その形成は、共同新設分割による新会社の設立、同一事業を専業とする子会社同士の合併など様々な形式がとられる。平成20年改正会計基準では、企業結合の会計処理として持分プーリング法を適用しないこととしたものの、持分の結合の考え方は存在しているため、それに該当する共同支配企業の形成の会計処理までをも否定するものではない。また、共同支配企業の形成については、国際的な会計処理においてもこれと同様のものが求められている。このため、共同支配企業の形成に係る共同支配企業の会計処理方法については、平成20年改正会計基準においても、平成15年会計基準の取扱いを変更していない。

72. なお、結合当事企業が結合後企業に拠出するという想定が根拠とされることも多いフレッシュ・スタート法(すべての結合当事企業の資産及び負債を企業結合時の時価に評価替えする方法)についても、平成15年会計基準では諸外国の動向等を踏まえて慎重に検討された。そこでは、フレッシュ・スタート法の採用に合理性が認められるためには、新設合併のようにすべての結合当事企業がいったん解散し、すべての株主の持分が清算された上で、新たに設立された企業へ拠出するという経済的実態が必要であると考えられること、また、諸外国における企業結合の会計処理をめぐる議論において選択肢の1つとして言及されてはいるものの、その方法を適用することが適切と考えられる事象やその根拠等が必ずしも明確ではない現況等を勘案し、企業結合の会計処理方法としてフレッシュ・スタート法を採用しないこととした。平成20年改正会計基準でもこの考え方を引き継いでいるが、今後、フレッシュ・スタート法が諸外国において企業結合の会計処理方法として採用された場合などには、フレッシュ・スタート法の要否を検討する必要性が生じることも考えられる。

取得と持分の結合の考え方

持分の継続

73. 従来から、企業結合には「取得」と「持分の結合」があり、それぞれ異なる経済的実態を有するといわれてきた。企業結合が取得と判断されれば、取得企業の資産及び負債はその帳簿価額で企業結合後もそのまま引き継がれるのに対して、被取得企業の資産及び負債は時価に評価替えされる。他方、企業結合が持分の結合と判断されるのであれば、すべての結合当事企業の資産及び負債はその帳簿価額で企業結合後もそのまま引き継がれる。このような相違が生じるのは、持分の継続が断たれた側では、投資家はそこでいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行ったと考えられるのに対して、持分が継続している側では、これまでの投資がそのまま継続していると考えられるからに他ならない。取得の場合には、取得企業の持分は継続しているが、被取得企業の持分はその継続を断たれたとみなされている。他方、持分の結合の場合には、すべての結合当事企業の持分は継続しているとみなされている。このように、持分の継続・非継続により取得と持分の結合は識別され、それぞれに対して異なる会計処理が使い分けられてきた。

74. これを企業の損益計算の観点からいえば、次のようになる。持分の継続が断たれてしまえば、そこで投資家はいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行い、それを取得企業に現物で出資したと考えられる。したがって、再投資額が結合後企業にとっての新たな投資原価となるが、それは企業結合時点での資産及び負債の時価に他ならない。そのような投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である。これに対して、持分が継続しているならば、そこでは投資の清算と再投資は行われていないのであるから、結合後企業にとっては企業結合前の帳簿価額がそのまま投資原価となる。この投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である。このように、持分の継続・非継続は、企業にとっては投資原価の回収計算の違いを意味している。

75. 取得と持分の結合は、このように異なる経済的実態を有していると考えられるため、本来、それぞれを映し出すのに適した会計処理を使い分けることが必要となる。いずれかの結合当事企業において持分の継続が断たれていると判断されるならば対応する資産及び負債を時価で引き継ぐ方法が、また、すべての結合当事企業において持分が継続していると判断されるならば対応する資産及び負債を帳簿価額で引き継ぐ方法が、企業にとっての投資原価の回収計算すなわち損益計算の観点から優れている。平成20年改正会計基準においては、持分プーリング法を採らないこととしたものの、このような考え方については踏襲している。

共同支配企業の形成

76. 平成15年会計基準では、共同支配企業の形成を対象としないことも考慮したが、その場合、共同支配企業か否かという企業形態の違いにより対象範囲を区別することになり、そこに裁量の働く余地が残ることになると考え、共同支配企業の形成も企業結合の定義に含め、それ以外の企業結合と一貫した考え方を適用することとしていた。平成20年改正会計基準でもこの考え方を踏襲しており、持分の結合にあたる共同支配企業の形成については、移転する資産及び負債を帳簿価額で引き継ぐこととしている(第38項参照)。また、このような会計処理は、国際的な会計基準においても同様に認められているものである。

なお、共同支配企業の形成か否かの判定については、共同支配となる契約等を締結していることが必要とされている。したがって、結合当事企業の一方が支配を獲得していると判定されれば、この企業結合は本会計基準にいう共同支配企業の形成には該当しない取得とみなし、支配を獲得していると判定された企業を取得企業としてパーチェス法を適用することになる。

取得の会計処理

取得企業の決定方法

77. 平成15年会計基準では、取得企業の決定は、取得と持分の結合とを識別する規準と整合した形で行うこととしていた。すなわち、対価の種類で取得と判定された場合には当該対価を支出した企業を取得企業とし、議決権比率の判定で取得と判定された場合には議決権比率が大きいと判定された結合当事企業を取得企業とし、さらに、議決権比率以外の要件の判定で取得と判定された場合には当該要件によって支配を獲得したとされた結合当事企業を取得企業とするものとされていた。しかしながら、今般、持分プーリング法を廃止したことに伴い、従来の識別規準では取得企業を決定することが困難な場合も想定されることから、平成20年改正会計基準では、すでに持分プーリング法が廃止されている国際的な会計基準の考え方を踏まえて、取得企業の決定方法を見直すこととした。

78. まず、取得企業を決定するための基礎として支配概念を用いることは、連結会計基準における支配概念を用いることと整合的であるため、連結会計基準に従って、他の結合当事企業を支配することとなる結合当事企業が明確である場合には、原則として、当該結合当事企業が取得企業となる。ただし、単に株式交換によって親子関係が形成される場合には、結合企業が被取得企業となるような、いわゆる逆取得(次項参照)となることもある。したがって、連結会計基準によってもどの結合当事企業が取得企業となるか明確ではない場合においては、その他の諸要素を考慮して取得企業を決定するものとした(第18項参照)。

79. 連結会計基準によってどの結合当事企業が取得企業となるか明確ではない場合であって、主な対価の種類が株式のときには、通常は当該株式を交付する企業が取得企業となる。しかし、吸収合併の場合において、法律上存続する会社(存続会社)が議決権のある株式を交付するものの、企業結合会計上、法律上消滅する会社(消滅会社)が取得企業に該当し、株式を交付した存続会社が被取得企業に該当するような場合があり、このような事象は、株式を交付した会社と企業結合会計上の取得企業が一致しないという意味で逆取得とよばれる。また、株式交換において、完全子会社が取得企業となる場合も逆取得に該当する。したがって、対価の種類が株式である企業結合の場合には、原則として当該株式を交付する企業が取得企業であるとするものの、結合後企業における議決権比率の構成や一定の株主の存在など、複数の要素を総合的に勘案して取得企業を決定するものとした(第20項参照)。

80. また、対価の種類が議決権のある株式である企業結合が取得と判定された場合には、平成15年会計基準では、議決権比率が大きいと判定された結合当事企業を取得企業としていた。しかしながら、一般に組織再編は様々な形態をとることが考えられ、議決権比率ではなくその他の支配関係を示す一定の事実によって支配を獲得したと判断することが適当である場合も想定されること、また、国際的な会計基準の考え方と平仄を合わせることも会計基準のコンバージェンスの観点から有益であるため、これらを優先順位のある判断規準とはせず、複数の要素を総合的に勘案して取得企業を決定することとした。なお、取得企業を決定するに至った主な根拠については、注記により開示することが適当と考えられる(第49項(1)参照)。

81. 平成15年会計基準においては、主な対価の種類が株式の場合であって、議決権比率で取得企業を決定できないときには、重要な経営事項の意思決定機関の構成員数など、支配関係を示す一定の事実の存在により取得企業を決定することが示されていた。平成20年改正会計基準では、国際的な会計基準も踏まえつつ再検討を行い、これらに加え、議決権比率を勘案するうえで当該議決権の内容や自社株式オプションなどの潜在的な議決権を考慮することや、最も大きな議決権比率を有する株主の存在、取締役等を選解任できる株主の存在についても判断要素とすることとした。また、取締役会等重要な経営事項に関する意思決定機関の構成についても、単に過半数を占めているかどうかではなく、当該機関を支配するかどうかで判断することとした。

82. さらに、相対的な規模が著しく大きい企業は、通常、取得企業とされるものとした(第21項参照)。これは、国際的な会計基準においても取得企業の決定における要素の1つとされていること、また、この判断要素を設けた場合、特に結合当事企業が3社以上である場合において役立つときがあると考えられることによるものである。

83. 結合当事企業が3社以上である企業結合においては、前述したような判断要素に加えて、いずれの企業がその企業結合を最初に提案したのかについても要素として追加することとした(第22項参照)。これは、従来から米国会計基準において要素の1つとして考えられていたものであり、多くの企業が結合するような場合には、前述したような要素のみでは取得企業の決定が困難なことが想定されるためである。

取得原価の算定

基本原則

84. 取得とされた企業結合における取得原価の算定は、一般的な交換取引において資産の取得原価を算定する際に適用されている一般的な考え方によることが整合的である。一般的な交換取引においては、その交換のために支払った対価となる財の時価は、通常、受け入れた資産の時価と等価であると考えられており、取得原価は対価の形態にかかわらず、支払対価となる財の時価で算定される。すなわち、交換のための支払対価が現金の場合には現金支出額で測定されるが、支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と受け入れた資産の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で測定されるのが一般的である。したがって、公開企業が自己の株式を交付して非公開企業を取得した場合には、通常、その公開企業株式の時価の方が非公開企業の時価よりも高い信頼性をもって測定できることから、取得原価は公開企業株式の時価を基礎にして算定されることになる。

株式の交換の場合の算定方法

85. 株式の交換による取得の場合において、市場価格のある取得企業等の株式が取得の対価として交付されるときは、いつの時点での株価をもって取得原価を算定すべきか、すなわち主要な交換条件が合意されて公表された時点での株価と、実際に被取得企業の支配を獲得した日の株価のいずれで測定すべきかという論点がある。平成15年会計基準では、結合当事企業は、お互いの本来の事業価値等を適切に反映した結果として、企業結合の主要条件、とりわけ交換比率の合意に至っているのが通常であり、また、そのような合意内容が公表された後の株価変動には被取得企業の本来の事業価値とは必ずしも関係しない影響が混在している可能性もあると考えられることから、原則として、企業結合の主要条件が合意されて公表された日(合意公表日)前の合理的な期間における株価を基礎にして算定することとしていた。

86. しかしながら、平成15年会計基準においても、取得原価の算定の基本原則として「被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取引時点の取得の対価となる財の時価を算定し、それらを合算したものとする。」(平成15年会計基準 三 2. (2)A)とされており、株式以外の財産を引き渡した場合は取引時点、すなわち企業結合日の時価で測定すると考えられるが、株式の交付の場合のみ合意公表日での株価で測定するのは整合的でないという見方がある。また、合意公表日と企業結合日との間に重要な変化があった場合には、合意公表日後においてその条件が見直される可能性も残されており、合意公表日では未だ取得原価は確定していないとも考えられる。さらには、合意公表日を支持する意見として、企業結合の主要条件に関する合意の公表は、取得企業が株式を発行するという義務を負うことが挙げられるが、合意公表をしたとしても、その後、株主総会の承認やその他の手続が必要であることを踏まえると、取得企業は必ずしも合意公表日において、そのような義務に拘束されているとはいえないという意見もある。

87. このように、株式の交換による取得の場合における交付した株式の測定日については2つの異なる考え方があるが、平成20年改正会計基準では、国際的な会計基準とのコンバージェンスに配慮する必要があることから、被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、企業結合日における株価を基礎にして算定するものとした(第24項参照)。

段階取得の会計処理

88. 平成15年会計基準では、段階取得における取得原価を、取得企業が被取得企業に対する支配を獲得するに至った個々の取引ごとに支払対価となる財の時価を算定し、それらを合算したものとしていた。これは、個々の交換取引はあくまでその時点での等価交換取引であり、取得が複数の交換取引により達成された場合、取得原価は個々の交換取引ごとに算定した原価の合計額とすることが経済的実態を適切に反映するとの考え方によるものである。

89. 一方、企業が他の企業を支配することとなるという事実は、当該企業の株式を単に追加取得することとは大きく異なるものであるため、被取得企業の取得原価は、過去から所有している株式の原価の合計額ではなく、当該企業を取得するために必要な額とすべきであるという見方がある。すなわち、取得に相当する企業結合が行われた場合には、支配を獲得したことにより、過去に所有していた投資の実態又は本質が変わったものとみなし、その時点でいったん投資が清算され、改めて投資を行ったと考えられるため、企業結合時点での時価を新たな投資原価とすべきとするものである。

90. 平成20年改正会計基準では、第88項で示したこれまでの考え方も有力である一方、前項の考え方を採っている国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、連結財務諸表上、段階取得における被取得企業の取得原価は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって算定することとし、当該被取得企業の取得原価と支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理するものとした(第25項(2)参照)。

平成20年改正会計基準の公開草案では、取得企業の連結財務諸表のみならず、個別財務諸表においても当該差額を損益として処理するものとしていたが、これに対するコメントとして、段階取得によって支配を獲得しても、過去に所有していた投資の実態又は本質が変わったものとみなせない場合も多く、投資は継続していると考える方が適当であるという意見が寄せられた。一方、連結財務諸表における取扱いとしては、国際的な会計基準とのコンバージェンスを重視した公開草案の定めに肯定的な意見も寄せられた。これらのコメントを踏まえたその後の審議においては、支配の獲得によって過去に所有していた投資の実態又は本質が変わったとの認識には必ずしも至っていないことから個別財務諸表上の取扱いは変更しないものの、連結財務諸表においては、もっぱら東京合意に基づく短期コンバージェンス・プロジェクトを完了させることを重視した。すなわち、平成20年改正会計基準では、段階取得における被取得企業の取得原価は、個別財務諸表においては従来どおり支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって算定するが、連結財務諸表においては支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって算定することとした。したがって、株式を追加的に取得した場合のみならず、合併などにおいても、取得企業の個別財務諸表では当該原価の合計額をもって取得原価となるが、連結財務諸表では企業結合日における当該時価を基礎として取得原価を算定するため、個別財務諸表上の取得原価と連結財務諸表上の取得原価の差額は、連結財務諸表における当期の損益として処理することとなる。

91. 審議の過程では、次の2つの理由により、段階取得の場合に個別財務諸表と連結財務諸表で会計処理を変えるべきではないという意見があった。

(1) 組織再編の方法により経済的実体に差異がないのであれば、会計処理は異なるべきではないとする基本的な考え方が企業結合会計基準の基礎をなしている。この考え方を個別財務諸表と連結財務諸表の会計処理について敷衍すれば、段階取得の場合に個別財務諸表と連結財務諸表で会計処理を変えることは、個別財務諸表と連結財務諸表とで投資原価やその後の期間損益計算が異なることになり、企業結合会計基準の基本的な考え方とは整合しない。

(2) 当委員会では個別財務諸表と連結財務諸表の関係について十分に議論が行われておらず、現時点でこのような会計処理を定めることは、これからの会計基準の開発の方向性に一定の枠を与える懸念がある。

92. しかしながら、段階取得における平成20年改正会計基準の取扱いは、関連会社株式について、個別財務諸表では企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)に従って取得原価をもって貸借対照表価額とするものの、連結財務諸表では持分法会計基準に従って持分法により評価することに類似していると考えられる。ただし、企業結合を巡る国内外の環境の相違にも関連するものとも考えられるため、今後、必要に応じて見直すことが適当である。

93. また、平成20年改正会計基準の公開草案では、被取得企業が取得企業の関連会社であった場合には、その後支配を獲得するに至っても事業投資という性格は変わらず、当該被取得企業に対する投資は継続していると考えられるため、これまでと同様に、支配を獲得する直前の被取得企業に対する投資に係る適正な帳簿価額と支配を獲得することとなった取引の支払対価となる財の時価との合計額をもって取得原価とすることとしていた。これは、事業分離により分離先企業が関連会社となる場合、移転された事業に関する投資は継続しているとみるとする事業分離等会計基準の考え方とも整合することも理由としていた。しかしながら、この取扱いに対するコメントとして、事業分離により分離先企業が関連会社となる場合における分離元企業の会計処理を見直す前であっても、連結財務諸表では国際的な会計基準とのコンバージェンスを重視すべきであるという意見も寄せられたことを踏まえ、その後、慎重に審議を行った。

事業分離により分離先企業が関連会社となる場合にどのような会計処理を行うかについて、事業分離等会計基準では、次のいずれを重視するかという問題であるとしている(事業分離等会計基準第100項)。

(1) 移転された事業に対する分離元企業の事業投資という性格は継続しており、当該事業投資のリスクから解放されていないため、移転損益を認識しない(現行の会計基準における取扱い)。

(2) 移転された事業に対する分離元企業の支配の喪失により、その投資に対するリスクから解放され、移転損益を認識する。

事業分離等会計基準では、(2)の考え方も有力であるが、関連会社株式は子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資とする金融商品会計基準の取扱いや、持分法は連結(完全連結)のいわば簡便的な会計処理であるととらえられている連結会計基準や持分法会計基準の取扱いから、分離先企業が子会社となる場合と同様に、(1)の考え方が他の会計基準と整合的であるとしている。しかし、平成20年改正会計基準では、他の会計基準等を含む体系への影響について引き続き検討するものの、前項で示した個別財務諸表と連結財務諸表における取扱いを勘案し、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から、段階取得における被取得企業が取得企業の関連会社であった場合の投資について、第90項で示した会計処理と同様に取り扱うこととした。

取得に要した支出額の会計処理

94. 取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は、発生時の事業年度の費用として処理することとした(第26項参照)。これは、取得はあくまで等価交換取引であるとの考え方を重視し、取得企業が等価交換の判断要素として考慮した支出額に限って取得原価に含めることとしたためである。

条件付取得対価の会計処理

95. 企業結合契約の中には、企業結合契約を締結した後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、追加的に株式が交付されたり現金又は他の資産が引き渡されたりする条項が含まれているものがある。このように、企業結合契約において定められるものであって、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付又は引き渡される取得対価は、条件付取得対価とよばれる。

96. 被取得企業が企業結合契約締結後の特定年度において特定の利益水準を維持又は達成したときに、取得企業が株式を追加で交付する条項があるなど、条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識することとした(第27項(1)参照)。

97. 他方、取得企業が交付した特定の株式又は社債の市場価格が特定の日又は期間における特定の価格を下回っているときに、当初合意した価額を維持するために株式又は社債を追加で交付する条項があるなど、条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合がある。このように当初合意された価額が維持される場合には、条件付取得対価の交付により取得原価を追加的に認識するのは適切ではないため、その交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、追加で交付可能となった条件付取得対価をその時点の時価に基づき認識するとともに、企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正することとした。また、当該修正により生じた時価が社債金額より高い場合のその差額(プレミアム)の減少額、又は時価が社債金額より低い場合のその差額(ディスカウント)の増加額を将来にわたって規則的に償却することとした(第27項(2)参照)。

取得原価の配分方法

基本原則

98. 取得企業は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債の時価を基礎として、それらに対して取得原価を配分することとなる(第28項参照)。これは、取得とされた企業結合に特有な処理ではなく、企業結合以外の交換取引により複数の資産及び負債を一括して受け入れた又は引き受けた場合に一般的に適用されているものである。すなわち、交換取引により複数の資産及び負債を一括して受け入れた又は引き受けた場合には、まず、支払対価総額を算定し、次にその支払対価総額を、一括して受け入れた又は引き受けた個々の資産及び負債の時価を基礎として、それらの個々の資産及び負債に対して配分するのと同様である。その際、取得とされた企業結合の特徴の1つとして、取得原価としての支払対価総額と、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額との間に差額が生じる場合があり、この差額がのれん又は負ののれんである。

なお、のれん(又は負ののれん)の計上に関しては、少数株主持分に相当する部分についても、親会社の持分について計上した額から推定した額などによって計上すべきであるとする考え方(全部のれん方式)もあるが、推定計算などの方法により少数株主持分についてのれん(又は負ののれん)を計上することにはなお問題が残されていると考えられる。また、平成9年連結原則においても、のれん(又は負ののれん)の計上は有償取得に限るべきであるという立場(購入のれん方式)から、この考え方は採用されていない。そこで、本会計基準においても、この立場を踏襲することとしている。

識別可能資産及び負債の範囲

99. 被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なものは、識別可能資産及び負債とよばれる。この識別可能資産及び負債の範囲については、被取得企業の企業結合日前の貸借対照表において計上されていたかどうかにかかわらず、企業がそれらに対して対価を支払って取得した場合、原則として、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるものに限定することとした。

なお、取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、むしろ、その費用又は損失を負債として認識した方がその後の投資原価の回収計算を適切に行い得ると考えられる(第30項参照)。

100. これまで無形資産については、詳細な会計基準が定められていない等の理由により、識別可能なものであっても「取得原価を当該無形資産等に配分することができる」(平成15年会計基準 三 2. (3))ものとされていた。しかしながら、識別可能な無形資産と判断された以上、その会計上の取扱いについては選択肢を残すべきではないと考えられる。そのため、平成20年改正会計基準では、当該無形資産が識別可能なものであれば、原則として識別して資産計上することを求めることとした(第28項及び第29項参照)。したがって、例えば、当該無形資産を受け入れることが企業結合の目的の1つとされていた場合など、その無形資産が企業結合における対価計算の基礎に含められていたような場合には、当該無形資産を計上することとなる。

101. また、平成15年会計基準では、取得企業が取得対価の一部を研究開発費等(ソフトウェアを含む。)に配分した場合には、当該金額を配分時に費用処理することとされていた。これは、「研究開発費等に係る会計基準」(平成10年3月 企業会計審議会)に照らした取扱いと考えられる。他方、国際的な会計基準においては、研究開発費の取扱いとの整合性よりも、企業結合により受け入れた他の資産の取扱いとの整合性をより重視して、識別可能性の要件を満たす限り、その企業結合日における時価に基づいて資産として計上することが求められている。後者の取扱いは、価値のある成果を受け入れたという実態を財務諸表に反映することになると考えられるため、企業結合の取得対価の一部を研究開発費等に配分して費用処理する会計処理を廃止することとした。この結果、会計基準の国際的なコンバージェンスを推進することになると考えられる。

識別可能資産及び負債の時価の算定方法

102. 識別可能資産及び負債の時価について、平成20年改正会計基準では、平成15年会計基準と同様に、企業結合日時点での時価を基礎にして算定することとした(第28項参照)。時価は、強制売買取引や清算取引ではなく、いわゆる独立第三者間取引に基づく公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額であるが、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価となる。したがって、対象資産及び負債に関して観察可能な市場価格がある場合には、その市場価格が通常最も客観的な評価額であり、企業結合日時点の時価となると考えられる。そのような典型例としては、市場性のある有価証券が考えられる。

103. 他方、対象資産及び負債に関して観察可能な市場価格がない場合の方が現実には圧倒的に多く、そのような場合にも、その時価を何らかの方法により見積る必要があるが、これは取得とされた企業結合の場合に特有なものではなく、通常の交換取引において受け入れた場合と同様である。このような観察可能な市場価格がない資産及び負債の時価を見積る際には、独立第三者間取引に基づく公正な評価額を算定する目的との整合性を確保するため、原則として、市場参加者が利用するであろう情報や前提などが入手可能である限り、それらに基礎を置くこととし、そのような情報等が入手できない場合には、見積りを行う企業が利用可能な独自の情報や前提などに基礎を置き、その合理的な基礎に基づき見積られた価額は合理的に算定された時価であると考えることとした。その典型例としては、大規模工場用地や近郊が開発されていない郊外地に代表される固定資産が考えられる。また、時価が一義的には定まりにくい土地をはじめとした固定資産等が識別可能資産に含まれている場合において、負ののれんが多額に生じることが見込まれるときには、その金額を当該固定資産等に合理的に配分した評価額も、ここでいう合理的に算定された時価であると考えることとした。

暫定的に決定した会計処理の確定手続

104. 識別可能資産及び負債を特定し、それらに対して取得原価を配分する作業は、企業結合日以後の決算前に完了すべきであるが、それが困難な状況も考えられる。そのため、企業結合条件の交渉過程において、通常、ある程度の調査を行っている場合が多く、また、1年を超えた後に企業結合日時点での状況に基づいて企業結合日時点での識別可能資産及び負債を特定し、しかもそれらの企業結合日時点での時価を見積ることは非常に困難であることなど実務面での制約等を考慮し、配分する作業は企業結合日以後1年以内に完了するものとし、完了前の決算においては暫定的に決定した会計処理を行うこととした(第28項参照)。したがって、企業結合日が、例えば年度決算の直前となる場合は、配分する作業が完了した時点で初めて会計処理を行うのではなく、その年度決算の時点で入手可能な合理的な情報等に基づき暫定的な会計処理を行った上で、その後、追加的に入手した情報等に基づき配分額を確定させることとした。

のれんの会計処理

105. のれんの会計処理方法としては、その効果の及ぶ期間にわたり「規則的な償却を行う」方法と、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法が考えられる。「規則的な償却を行う」方法によれば、企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になる。また、のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している。さらに、企業結合により生じたのれんは時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるため、企業結合により計上したのれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができる。のれんの効果の及ぶ期間及びその減価のパターンは合理的に予測可能なものではないという点に関しては、価値が減価した部分の金額を継続的に把握することは困難であり、かつ煩雑であると考えられるため、ある事業年度において減価が全く認識されない可能性がある方法よりも、一定の期間にわたり規則的な償却を行う方が合理的であると考えられる。また、のれんのうち価値の減価しない部分の存在も考えられるが、その部分だけを合理的に分離することは困難であり、分離不能な部分を含め「規則的な償却を行う」方法には一定の合理性があると考えられる。

106. 一方、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法は、のれんが超過収益力を表わすとみると、競争の進展によって通常はその価値が減価するにもかかわらず、競争の進展に伴うのれんの価値の減価の過程を無視することになる。また、超過収益力が維持されている場合においても、それは企業結合後の追加的な投資や企業の追加的努力によって補完されているにもかかわらず、のれんを償却しないことは、上述のとおり追加投資による自己創設のれんを計上することと実質的に等しくなるという問題点がある。実務的な問題としては、減損処理を実施するためには、のれんの価値の評価方法を確立する必要があるが、そのために対処すべき課題も多い。

107. 平成15年会計基準では、こうした議論を踏まえ「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法に対し、「規則的な償却を行う」方法に一定の合理性があることや、子会社化して連結する場合と資産及び負債を直接受け入れ当該企業を消滅させた場合との経済的な同一性に着目し、正の値であるのれんと投資消去差額の会計処理との整合性を図るなどの観点から、規則的な償却を採用した。また、その償却期間についても、平成9年連結原則の連結調整勘定の償却に係る考え方を踏襲し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって償却することとした(第32項参照)。

108. なお、のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」(平成14年8月 企業会計審議会)の適用対象資産となることから、規則的な償却を行う場合においても、「固定資産の減損に係る会計基準」に従った減損処理が行われることになる。このような「規則的な償却を行う」方法と、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法との選択適用については、利益操作の手段として用いられる可能性もあることから認めないこととした。

109. また、のれんを規則償却とした場合、例えば、株式の交換による企業結合のプロセスにおいて、買収対価(発行株式金額)の過大評価や過払いが生じている可能性がある場合に、のれん等が過大に計上される状況が考えられる。このように取得原価のうち、のれんやのれん以外の無形資産に配分された金額が相対的に多額になるときには、企業結合年度においても「固定資産の減損に係る会計基準」の適用上、減損の兆候が存在すると判定される場合もある。被取得企業の時価総額を超えて多額のプレミアムが支払われた場合や、取得時に明らかに識別可能なオークション又は入札プロセスが存在していた場合も同様に取り扱われることがある。

負ののれんの会計処理

110. 負ののれんの会計処理方法としては、想定される負ののれんの発生原因を特定し、その発生原因に対応した会計処理を行う方法や、正の値であるのれんの会計処理方法との対称性を重視し、規則的な償却を行う方法が考えられる。

想定される発生原因に対応した会計処理を行う方法には、企業結合によって受け入れた非流動資産に負ののれんを比例的に配分し、残額が生じれば繰延利益若しくは発生時の利益として計上する方法、又は、全額を認識不能な項目やバーゲン・パーチェスとみなし発生時の利益として計上する方法等が含まれる。

非流動資産に比例的に配分する方法の基となる考え方には、負ののれんの発生は、パーチェス法の適用時における識別可能資産の取得原価を決定する上での不備によるものとみなし、この過程で測定を誤る可能性の高い資産から比例的に控除することが妥当であるとみるものがある。一方、発生時に利益計上する方法は、識別可能資産の時価の算定が適切に行われていることを前提にした上で、負ののれんの発生原因を認識不能な項目やバーゲン・パーチェスであると位置付け、現実には異常かつ発生の可能性が低いことから、異常利益としての処理が妥当であると考えるものである。また、異常利益として処理することを求める(経常的な利益とはならない)ことは、時価の算定を適切に行うインセンティブになるという効果もあるといわれている。

111. 平成15年会計基準では、想定された発生原因に合理性を見出すことは困難な場合が多いとして、取得後短期間で発生することが予想される費用又は損失について、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、その発生原因が明らかなことから、取得原価の配分の過程で負債として認識されるものと考え、残額については、承継した資産の取得原価の総額を調整する要素とみて、正の値であるのれんと対称的に、規則的な償却を行うこととしていた。

一方、現行の国際的な会計基準では、負ののれんは発生原因が特定できないものを含む算定上の差額としてすべて一時に利益認識することとしている。これは、のれんは資産として計上されるべき要件を満たしているものの、負ののれんは負債として計上されるべき要件を満たしていないことによる帰結と考えられる。

平成20年改正会計基準では、平成20年までの短期コンバージェンス・プロジェクトとして国際的な会計基準の考え方を斟酌した結果、従来の取扱いを見直し、負ののれんが生じると見込まれる場合には、まず、取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(第30項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直すこととした。次に、この見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る場合には、当該不足額を発生した事業年度の利益として処理することとした(第33項参照)。

逆取得における個別財務諸表上の会計処理

112. 吸収合併などの企業結合において、存続会社など株式を交付した企業が取得企業とならない場合、すなわち逆取得の場合には、取得企業の個別財務諸表上、会社法の規定などとの関係から複数の処理方法が考えられる状況が存在し得る。そのため、このような逆取得における個別財務諸表上の会計処理を明らかにした。

113. 企業結合が吸収合併の形式をとる場合において、消滅会社が取得企業となるときは、これまでと同様に、存続会社の個別財務諸表上、取得企業(消滅会社)の資産及び負債を合併直前の適正な帳簿価額で引き継ぐこととした(第34項参照)。

114. 企業結合が現物出資又は吸収分割による子会社化の形式をとる場合、被取得企業に移転された事業に対する取得企業の投資はその企業結合の前後で継続していることから、取得企業の個別財務諸表では、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて、被取得企業株式(子会社株式)の取得原価を算定することとした(第35項参照)。

115. 企業結合が株式交換の形式をとる場合において、完全子会社が取得企業となるときには、完全親会社の個別財務諸表では、これまでと同様に、株式交換直前における当該完全子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定することとした(第36項参照)。

なお、株式移転による共同持株会社の設立の形式をとる企業結合が取得となる場合、完全親会社の個別財務諸表においては、他の被取得企業株式と同様に取得企業株式も完全子会社株式として扱われる。このとき、完全親会社の連結財務諸表では、企業結合日においていずれかの完全子会社が取得企業となり、当該取得企業(完全子会社)の資産及び負債が企業結合直前の適正な帳簿価額で受け入れられることになるため、完全親会社の個別財務諸表上においても、株式移転直前における取得企業(完全子会社)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定することになる。

共同支配企業の形成の会計処理

116. 本会計基準にいう共同支配企業の形成は持分の結合であり、共同支配企業は、資産及び負債を企業結合直前に付されていた適正な帳簿価額により計上することとなる(第38項参照)。平成15年会計基準では、共同支配企業の形成の会計処理は、資本の内訳の引継方法及び企業結合年度の連結財務諸表の作成に係る定めを除き、持分プーリング法と同一の処理方法としており、これを持分プーリング法に準じた処理方法とよんでいた。しかし、平成20年改正会計基準では、持分プーリング法を廃止することとしたことから、持分プーリング法に準じた処理方法という呼称も使用しないこととした。

なお、平成15年会計基準では、共同支配投資企業が共同支配企業の形成にあたり事業を移転した場合には、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて当該共同支配企業に対する投資の取得原価を算定することとし、共同支配企業の資本のうち共同支配投資企業の持分比率に対応する部分との差額は処理しないこととしていた。しかしながら、平成20 年改正会計基準では、事業分離等会計基準における分離元企業及び結合当事企業の株主に係る会計処理との整合性を重視して、国際的な会計基準と同様に、連結財務諸表上、共同支配投資企業は共同支配企業に対する投資について通常の持分法を適用することに変更した(第39項(2)参照)。このため、今後、当該差額は処理されることとなる。

117. また、平成9年連結原則では、共同支配の実態にある合弁会社(関連会社)については、個別財務諸表の各項目を持分比率に応じて連結する比例連結を認めるかどうかという問題も検討されたが、混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を一律に持分比率で按分して連結財務諸表に計上することは不適切であるとの指摘がなされていること等を考慮して、比例連結は導入しないこととしていた。本会計基準でも、こうした従来の取扱いを踏襲し、共同支配企業に対しては持分法を適用することとしている。

共通支配下の取引等の会計処理

118. 本会計基準が対象としている企業結合は、その定義からも明らかなように経済的に独立した企業同士の取引に限定することなく、法的に独立した企業同士の取引を対象としているため、企業集団内における合併、吸収分割、現物出資等の取引(共通支配下の取引)が含まれることとなる。子会社の判定基準として支配力基準が導入されてから、我が国においては企業集団内における組織再編が活発に行われることになったが、このような組織再編に係る取引は、基本的に連結財務諸表には影響しない取引であるため、個別財務諸表への影響も経済的に独立した企業間の企業結合とは区別すべきであるという観点から、共通支配下の取引として個別財務諸表上の取扱いを示す必要があると考えた。なお、企業集団内における組織再編のうち企業結合に該当しない取引、例えば、株式移転による持株会社の設立や新設分割による子会社の設立については、共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するのが適当である。

また、株式交換等により少数株主から子会社株式を受け取る取引(少数株主との取引)は、企業結合に該当しない取引ではあるが、平成15年会計基準では、連結財務諸表上の取扱いが平成9年連結原則において示されているに留まっていたため、個別財務諸表上の取扱いを含めた全般的な会計処理を示す必要があると考え、共通支配下の取引及び少数株主との取引について、それぞれの会計処理方法を定めていた。平成20年改正会計基準でも、この取扱いを踏襲している(第41項から第46項参照)。

共通支配下の取引

119. 共通支配下の取引とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合であり、共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えた。このため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の適正な帳簿価額により計上することとした。

ただし、親会社と子会社が企業結合する場合において、連結財務諸表の作成にあたり、子会社の純資産等の帳簿価額を修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額により計上しなければならないこととした。

少数株主との取引

120. 少数株主との取引は、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引である。それは企業集団内の取引ではなく、親会社の立場からは外部取引と考えられる。したがって、親会社が子会社株式を少数株主から追加取得したときは、個別財務諸表上、子会社株式の取得原価は、当該株式の時価又は支出した対価となる財の時価で測定される。また、連結財務諸表上は、その金額と減少する少数株主持分の金額との差額をのれんとして処理することになる。

しかし、親会社が自社の株式を対価として子会社株式を追加取得した場合、子会社株式の取得原価と増加資本の額の処理には、なお検討を要する論点が残されている。なぜならば、連結財務諸表上、支配獲得時に子会社の資産及び負債を全面的に評価替えしている限り、自社の株式を対価とする追加取得では、その前後において資産及び負債に変化はなく、追加的なのれんを計上してその後の利益に影響させる意味もないという考えがあり得るからである。その観点からすれば、個別財務諸表上は、連結財務諸表上の少数株主持分の金額相当額を、子会社株式の取得原価として追加計上することになる。

株式の交換による受入れを、現金による子会社株式の受入れとその現金の拠出との組み合わせであると考えれば、子会社株式の取得原価も、増加資本の額も、いずれも対価として交付した株式の時価で決められる。しかし、それですべてが解決するのであれば、そもそも共通支配下の企業結合を独立の問題として取り上げる必要はない。本会計基準では、概念上の検討を将来の課題として残し、専ら現行の実務に与える混乱を最小にする観点から、自社の株式を対価として追加取得した子会社株式をその時点の時価で評価して同額を増加資本とするとともに、連結財務諸表上は、その金額と消滅する少数株主持分の金額との差額を連結会計基準における子会社株式の追加取得に準じて処理することとした。

開示

121. 平成20年改正会計基準では、財務諸表の有用性を高める観点から、次の場合に応じて注記事項を定めることとした。

(1) 取得とされた企業結合

(2) 連結財務諸表を作成しない場合

(3) 共通支配下の取引等

(4) 子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないとき

(5) 共同支配投資企業

(6) 重要な後発事象等

なお、この定めは、本会計基準の適用範囲を超えて、企業結合前後の比較可能性を高める追加的な情報を任意で開示することを妨げるものではない。

122. 平成15年会計基準では、持分プーリング法を適用した企業結合に関する注記事項が定められていたが、持分プーリング法を廃止したことに伴い、平成20年改正会計基準では、持分プーリング法を適用した企業結合に係る注記事項は定めていない。また、本改正に合わせて、その他の注記事項についても国際的な会計基準の動向や記載の必要性を再度検討し、注記内容の整理を行った。

123. 個々の企業結合は結合後企業又はその株主の業績に重要な影響を与えないとされる場合であっても、1事業年度の企業結合を合算すると連結財務諸表又は個別財務諸表に重要な影響を与えるときがある。そのような場合には、個々の企業結合が重要な場合と同様、投資意思決定情報として有用性が高いことから、平成20年改正会計基準では、財務諸表作成者の事務負担を考慮しつつ、国際的な会計基準における開示規定を参考にして、一定の開示を求めることとした(第49項、第52項及び第54項参照)。

124. 連結財務諸表を作成しない場合の逆取得となる企業結合について、平成15年会計基準では、パーチェス法を適用したとした場合に貸借対照表及び損益計算書に及ぼす影響の概算額を企業結合年度において注記することとされ、企業結合年度後の取扱いについては、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」において定められていたが、平成20年改正会計基準では、企業結合年度後の取扱いも併せて定めることとした(第50項参照)。また、子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないときの注記事項についても同様に、親会社が子会社を吸収合併したものとした場合との比較可能性を確保するための注記を求めることとした(第53項参照)。

なお、第50項及び第53項の個別貸借対照表及び個別損益計算書に及ぼす影響額は、第49項(5)の「企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額」のような仮定情報とは異なり、会計基準に定めのある手法に基づき作成される情報である。

125. また、平成20年改正会計基準では、段階取得による企業結合が行われた場合の会計処理として、個別財務諸表上は、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額を被取得企業の取得原価とする従来の取扱いを継続する一方、連結財務諸表上は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって算定した被取得企業の取得原価と支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額を、当期の段階取得に係る損益として処理することとされた(第25項参照)。そこで、連結財務諸表を作成しない企業(個別財務諸表しか作成していない企業)が他の企業を合併する場合など、個別財務諸表から当該差額を把握することができないときには、連結財務諸表を作成する企業との比較可能性の確保の観点から、連結財務諸表を作成しない場合の段階取得に係る注記を求めることとした(第51項参照)。

126. 平成15年会計基準では、重要な後発事象の注記として、貸借対照表日後に完了した企業結合を対象としているが、平成20年改正会計基準では、貸借対照表日後に主要条件が合意された企業結合についても重要な投資判断情報であるため、後発事象として注記することとした(第55項参照)。

また、企業結合が貸借対照表日までに完了しておらず、第55項前段の重要な後発事象に該当しないものについても、第55項前段で示された注記事項に準じた開示を行うこととした。

適用時期等

127. 平成15年会計基準については、関係各方面の準備作業や企業側の受入準備が必要であり、これらを考慮して、平成18年4月1日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当である。

128. 平成20年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うこととなるが、この場合であっても、企業結合は一般に毎期継続して行われるものではないこと、また、平成20年改正会計基準の適用前に実施された企業結合に係る従前の取扱いは平成20年改正会計基準の適用後においても継続することとされたこと、さらには、企業結合が行われたときにはその概要等の注記が求められていること(例えば、第49項参照)から、会計方針の変更による影響額の注記は要しないものとした(第58項参照)。

129. 平成20年改正会計基準の適用初年度において、事業年度の企業結合に関する会計処理が当該事業年度を構成する中間又は四半期会計期間における会計処理と異なることとなる場合であっても、いわゆる中間又は四半期・年度の首尾一貫性が保持されていない場合には該当しない。

ただし、平成20年改正会計基準の適用日の前後において、経済的に同一の事象と考えられる企業結合が同一事業年度(又は同一中間若しくは四半期会計期間)内に行われており、かつ、適用される会計処理が異なる場合には、会計処理の相違が重要なものについて、その旨及びその内容を追加情報として財務諸表に注記することが適当である。

平成20年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正

130. 平成20年改正会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、(1)から(7)の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。なお、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告については、本会計基準及びその他の会計基準等の公表に伴う改正を別途行うことが予定されているため、本会計基準による修正の対象とはしていない。

・企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」

・企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」

・企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」

・企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」

・企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」

・実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」

・実務対応報告第21号「有限責任事業組合及び合同会社に対する出資者の会計処理に関する実務上の取扱い」

(1) 企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」

@ 第3項

なお、(2)又は(3)に該当する取引であっても、企業結合に係る会計基準企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)等、他の会計基準の範囲に含まれる取引については、本会計基準は適用されない。

A 第31項

自社株式オプションや自社の株式を対価として取得するものが事業にあたる場合には、企業結合に係る会計基準企業結合会計基準が適用され、本会計基準の適用対象とはならない(第3項)。

(2) 企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」

第24項

「企業結合に係る会計基準」(平成15年10月31日企業会計審議会)(平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)において、新たに共同支配投資企業と共同支配企業が定められたことを踏まえ、IAS 第24号と同様に関連当事者に該当することを明記することとし、共同支配投資企業はその他の関係会社、共同支配企業は関連会社に含まれることを明らかにしている(第5項(5)参照)。

(3) 企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」

第36項

企業会計審議会から公表された「企業結合に係る会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。なお、平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)三4(1)@イでは、共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上するとされている。当該定めは企業又はある企業を構成する事業の移転を前提としたものであるが、当該定めについて「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「企業結合会計意見書」という。なお、平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)三5(1)では、共通支配下の取引を企業集団内における純資産等の移転取引としての内部取引と考えたため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないようにするための定めである旨の説明がなされている。(以下 略)

(4) 企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」

第11項

重要な関連会社の要約財務情報(会計基準第11項(2))は、持分法投資損益(共同支配企業の場合は、持分法に準ずる処理を適用した場合の投資損益。以下同じ。)の算定に用いた財務情報をもとに、主な貸借対照表項目及び損益計算書項目を開示する。(以下 略)

(5) 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」

目的

しかしながら、監査委員会報告第56号の公表後、「退職給付に係る会計基準」、「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」として改正されている。)、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「企業結合に係る会計基準」(平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)が公表されるなど、我が国の会計基準は、国際財務報告基準(IFRSs)や米国会計基準といった国際的な会計基準と同等の水準まで整備がなされてきている。さらに、平成16年10月以降、当委員会では、国際会計基準審議会(IASB)との間で会計基準のコンバージェンスに向けた作業に取り組んでいる。

(6) 実務対応報告第23 号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」

Q5のA2

委託者兼当初受益者が複数である場合には、Q4 のAに準じて処理することとなる。

このため、当該事業の信託を設定した場合、各委託者兼当初受益者は、受託者に対しそれぞれの事業を移転し、受益権を受け取ることとなり、共同新設分割における分離元企業の会計処理(事業分離等会計基準第17項、第20項及び第23項、「企業結合に係る会計基準」三3(7)企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第39項)に準じることが適当である。(以下 略)

以上


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