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会計基準|結論の背景|注記適用指針第12号適用指針第17号適用指針第19号目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成20年3月10日に公表した「金融商品に関する会計基準」から「結論の背景」部分を抜粋したものです。「目的・会計基準」は別に記載してあります。なお、オリジナルと異なる表現をしている部分があります。実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。

企業会計基準第10号

金融商品に関する会計基準

(結論の背景)

平成11年1月22日

企業会計審議会

改正平成18年8月11日

改正平成19年6月15日

最終改正平成20年3月10日

 企業会計基準委員会

目次

結論の背景

経緯

T.金融資産及び金融負債の範囲等

1.金融資産及び金融負債の範囲

2.時価

U.金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識

1.金融資産及び金融負債の発生の認識

2.金融資産の消滅の認識

(1) 基本的考え方

(2) 金融資産の譲渡に係る支配の移転

3.金融負債の消滅の認識

4.金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理

V.金融資産及び金融負債の評価基準に関する基本的考え方

W.金融資産及び金融負債の貸借対照表価額等

1.債権

2.有価証券

(1) 売買目的有価証券

(2) 満期保有目的の債券

(3) 子会社株式及び関連会社株式

子会社株式

関連会社株式

(4) その他有価証券

基本的な捉え方

時価評価の必要性

評価差額の取扱い

(評価差額の取扱いに関する基本的考え方)

(評価差額の一部の損益計算書への計上)

(5) 市場価格のない有価証券

(6) 時価が著しく下落した場合

3.運用を目的とする金銭の信託

4.デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務

5.金銭債務

X.貸倒見積高の算定

1.基本的考え方

2.貸倒見積高の算定方法

Y.ヘッジ会計

1.基本的考え方

2.ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象及びヘッジ手段

3.ヘッジ会計の要件

4.ヘッジ会計の方法

(1) 原則的処理方法

(2) ヘッジ対象に係る損益を認識する方法

(3) 金利スワップの取扱い

5.ヘッジ会計の終了等

Z.複合金融商品

1.払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品

2.その他の複合金融商品

[.注記事項

\.平成20 年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正


結論の背景

経緯

47. 企業会計審議会から平成2年5月に「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」が公表されるなど、先物取引、オプション取引及び市場性のある有価証券に係る時価情報の開示基準等が整備され、その後も、先物為替予約取引及びデリバティブ取引全般についての開示基準等の整備により、金融商品に係る時価情報の提供が広範に行われてきた。しかし、その後の証券・金融市場のグローバル化や企業の経営環境の変化等に対応して企業会計の透明性を一層高めていくためには、注記による時価情報の提供にとどまらず、金融商品そのものの時価評価に係る会計処理をはじめ、新たに開発された金融商品や取引手法等についての会計処理の基準の整備が必要とされる状況となった。

48. 企業会計審議会は、国際的動向も踏まえ、平成8年7月以降、金融商品部会(平成9年2月の部会改組以前は「特別部会・金融商品委員会」)において、金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識、金融商品の評価基準、貸倒見積高の算定方法、ヘッジ会計、複合金融商品等、金融商品に係る広範な問題についての審議を重ね、平成11年1月に「金融商品に係る会計基準」及び「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表した。

49. なお、平成9年及び平成10年における、諸般の課題に係る一連の会計基準等の整備は、@内外の広範な投資者の我が国証券市場への投資参加を促進し、A投資者が自己責任に基づきより適切な投資判断を行うこと及び企業自身がその実態に即したより適切な経営判断を行うことを可能にし、B連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構築するとの基本的認識に基づいて、21世紀に向けての活力と秩序ある証券市場の確立に貢献することを目指すものであり、平成11 年会計基準も、このような基本的認識に沿った会計基準の整備の一環をなしている。

50. 平成18年改正会計基準は、貸借対照表の純資産の部の表示を定めた企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)や会社法及び会社法への対応として公表された複数の会計基準等を踏まえ、これらとの関係で最小限必要な改正を行ったものである。

50-2. 平成19年改正会計基準は、これまで適当と考えられてきた企業会計上の有価証券の範囲を大きく変えないようにするために、技術的な改正を行った(第53項参照)。これは、金融商品取引法の施行によって同法で定める有価証券の範囲が拡大することに対応したものである。

50-3. 平成20年改正会計基準は、金融取引を巡る環境が変化する中で、金融商品の時価情報に対するニーズが拡大していること等を踏まえて、すべての金融商品についてその状況やその時価等に関する事項の開示の充実を図るために改正を行ったものである。

51. なお、金融市場の発展及び金融取引の開発はさらに進んでいくものと考えられることから、企業会計を取り巻く環境の変化に応じ、会計基準等の整備・改善について努力していく予定である。

T.金融資産及び金融負債の範囲等

1.金融資産及び金融負債の範囲

52. 本会計基準の適用対象となる金融資産及び金融負債については、適用範囲の明確化の観点から、米国基準等に見られる抽象的な定義によるのではなく、現金預金、金銭債権債務、有価証券、デリバティブ取引により生じる正味の債権債務等の具体的な資産負債項目をもって、その範囲を示すこととした。なお、デリバティブ取引に関しては、その価値は当該契約を構成する権利と義務の価値の純額に求められることから、デリバティブ取引により生じる正味の債権は金融資産となり、正味の債務は金融負債となる(第4 項及び第5 項参照)。このように金融資産及び金融負債の範囲を具体的に定めたことにより、国際的な基準における適用範囲との差異が生じるものではない。なお、金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称して金融商品ということにするが、金融商品には複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされているもの(複合金融商品)も含まれる。

53. 有価証券については、原則として、金融商品取引法に定義する有価証券に基づいて、本会計基準を適用するが、それ以外のもので、金融商品取引法上の有価証券に類似し企業会計上の有価証券として取り扱うことが適当と認められるものについても、本会計基準を適用することが適当である。なお、金融商品取引法上の有価証券であっても企業会計上の有価証券として取り扱うことが適当と認められないものについては、本会計基準上、有価証券としては取り扱わないこととする。また、商品先物のような現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引は、本来の金融商品とは異なる面を有するが、通常、差金決済により取引が行われることにより金融商品と類似する性格をもつと認められるものについては、本会計基準を適用することが適当である。

2.時価

54. 時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(市場価格)に基づく価額をいうこととした。また、例えば、デリバティブ取引等において、個々のデリバティブ取引について市場価格がない場合でも、当該デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときの当該合理的に算定された価額は、公正な評価額と認められる(第6 項参照)。

なお、金融商品の種類により種々の取引形態があるが、市場には公設の取引所及びこれに類する市場の他、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる。

U.金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識

1.金融資産及び金融負債の発生の認識

55. 商品等の売買又は役務の提供の対価に係る金銭債権債務は、一般に商品等の受渡し又は役務提供の完了によりその発生を認識するが、金融資産又は金融負債自体を対象とする取引については、当該取引の契約時から当該金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや契約の相手方の財政状態等に基づく信用リスクが契約当事者に生じるため、契約締結時においてその発生を認識することとした(第7 項参照)。

したがって、有価証券については原則として約定時に発生を認識し、デリバティブ取引については、契約上の決済時ではなく契約の締結時にその発生を認識しなければならない。

2.金融資産の消滅の認識

(1) 基本的考え方

56. 金融資産については、当該金融資産の契約上の権利を行使したとき、契約上の権利を喪失したとき又は契約上の権利に対する支配が他に移転したときに、その消滅を認識することとした(第8項参照)。例えば、債権者が貸付金等の債権に係る資金を回収したとき、保有者がオプション権を行使しないままに行使期間が満了したとき又は保有者が有価証券等を譲渡したときなどには、それらの金融資産の消滅を認識することとなる。

(2) 金融資産の譲渡に係る支配の移転

57. 金融資産を譲渡する場合には、譲渡後において譲渡人が譲渡資産や譲受人と一定の関係(例えば、リコース権(遡求権)、買戻特約等の保持や譲渡人による回収サービス業務の遂行)を有する場合がある。このような条件付きの金融資産の譲渡については、金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法(以下「リスク・経済価値アプローチ」という。)と、金融資産を構成する財務的要素(以下「財務構成要素」という。)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法(以下「財務構成要素アプローチ」という。)とが考えられる。証券・金融市場の発達により金融資産の流動化・証券化が進展すると、例えば、譲渡人が自己の所有する金融資産を譲渡した後も回収サービス業務を引き受ける等、金融資産を財務構成要素に分解して取引することが多くなるものと考えられる。このような場合、リスク・経済価値アプローチでは金融資産を財務構成要素に分解して支配の移転を認識することができないため、取引の実質的な経済効果が譲渡人の財務諸表に反映されないこととなる。

58. このため、本会計基準では、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによることとし、金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは次の三要件がすべて充たされた場合とすることとした(第9項参照)。

(1) 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること

譲渡人に倒産等の事態が生じても譲渡人やその債権者等が譲渡された金融資産に対して請求権等のいかなる権利も存在しないこと等、譲渡された金融資産が譲渡人の倒産等のリスクから確実に引き離されていることが必要である。したがって、譲渡人が実質的に譲渡を行わなかったこととなるような買戻権がある場合や譲渡人が倒産したときには譲渡が無効になると推定される場合は、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。なお、譲渡された金融資産が譲渡人及びその債権者の請求権の対象となる状態にあるかどうかは、法的観点から判断されることになる。

(2) 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること

譲受人が譲渡された金融資産を実質的に利用し、元本の返済、利息又は配当等により投下した資金等のほとんどすべてを回収できる等、譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。したがって、譲渡制限があっても支配の移転は認められるが、譲渡制限又は実質的な譲渡制限となる買戻条件の存在により、譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受することが制約される場合には、当該金融資産の支配が移転しているとは認められない。

なお、譲受人が特別目的会社の場合には、その発行する証券の保有者が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できることが必要である。

(3) 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

譲渡人が譲渡した金融資産を満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していることにより、金融資産を担保とした金銭貸借と実質的に同様の取引がある。現先取引や債券レポ取引といわれる取引のように買戻すことにより当該取引を完結することがあらかじめ合意されている取引については、その約定が売買契約であっても支配が移転しているとは認められない。このような取引については、売買取引ではなく金融取引として処理することが必要である。

3.金融負債の消滅の認識

59. 金融負債については、当該金融負債の契約上の義務を履行したとき、契約上の義務が消滅したとき又は契約上の第一次債務者の地位から免責されたときに、その消滅を認識することとした(第10項参照)。したがって、債務者は、債務を弁済したとき又は債務が免除されたときに、それらの金融負債の消滅を認識することとなる。

60. 第一次債務を引き受けた第三者が倒産等に陥ったときに二次的に責任を負うという条件の下で、債務者が金融負債の契約上の第一次債務者の地位から免責されることがある。この場合には、財務構成要素アプローチにより当該債務に係る金融負債の消滅を認識し、その債務に対する二次的な責任を金融負債として認識することとなると考えられる。

4.金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理

61. 金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、それらの帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理することとした(第11項参照)。

62. 金融資産又は金融負債の一部の消滅を認識する場合には、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分の時価と残存部分の時価の比率により、当該金融資産又は金融負債の帳簿価額を消滅部分と残存部分の帳簿価額に按分することとした(第12項参照)。

63. また、金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たに発生した金融資産又は金融負債は時価により計上することとした(第13項参照)。

V.金融資産及び金融負債の評価基準に関する基本的考え方

64. 金融資産については、一般的には、市場が存在すること等により客観的な価額として時価を把握できるとともに、当該価額により換金・決済等を行うことが可能である。

このような金融資産については、次のように考えられる。

(1) 金融資産の多様化、価格変動リスクの増大、取引の国際化等の状況の下で、投資者が自己責任に基づいて投資判断を行うために、金融資産の時価評価を導入して企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ、投資者に対して的確な財務情報を提供することが必要である。

(2) 金融資産に係る取引の実態を反映させる会計処理は、企業の側においても、取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要である。

(3) 我が国企業の国際的な事業活動の進展、国際市場での資金調達及び海外投資者の我が国証券市場での投資の活発化という状況の下で、財務諸表等の企業情報は、国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められている。また、デリバティブ取引等の金融取引の国際的レベルでの活性化を促すためにも、金融商品に係る我が国の会計基準の国際的調和化が重要な課題となっている。

65. また、金融資産の時価情報の開示は、時価情報の注記によって満足されるというものではない。したがって、客観的な時価の測定可能性が認められないものを除き、時価による自由な換金・決済等が可能な金融資産については、投資情報としても、企業の財務認識としても、さらに、国際的調和化の観点からも、これを時価評価し適切に財務諸表に反映することが必要であると考えられる。

66. しかし、金融資産の属性及び保有目的に鑑み、実質的に価格変動リスクを認める必要のない場合や直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約がある場合が考えられる。このような保有目的等をまったく考慮せずに時価評価を行うことが、必ずしも、企業の財政状態及び経営成績を適切に財務諸表に反映させることにならないと考えられることから、時価評価を基本としつつ保有目的に応じた処理方法を定めることが適当であると考えられる。

67. 一方、金融負債は、借入金のように一般的には市場がないか、社債のように市場があっても、自己の発行した社債を時価により自由に清算するには事業遂行上等の制約があると考えられることから、デリバティブ取引により生じる正味の債務を除き、債務額(ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額)をもって貸借対照表価額とし、時価評価の対象としないことが適当であると考えられる。

W.金融資産及び金融負債の貸借対照表価額等

1.債 権

68. 一般的に、金銭債権については、活発な市場がない場合が多い。このうち、受取手形や売掛金は、通常、短期的に決済されることが予定されており、帳簿価額が時価に近似しているものと考えられ、また、貸付金等の債権は、時価を容易に入手できない場合や売却することを意図していない場合が少なくないと考えられるので、金銭債権については、原則として時価評価は行わないこととした。一方、債権の取得においては、債権金額と取得価額とが異なる場合がある。この差異が金利の調整であると認められる場合には、金利相当額を適切に各期の財務諸表に反映させることが必要である。したがって、債権については、償却原価法を適用することとし、当該加減額は受取利息に含めて処理することとした。なお、債務者の財政状態及び経営成績の悪化等による債権の実質価額の減少については、別途、「X.貸倒見積高の算定」において取り扱うこととした(第14項、第27項及び第28項参照参照)。

2.有価証券

69. 有価証券については、保有目的等の観点から次のように分類し、それぞれ貸借対照表価額及び評価差額等の処理方法を定めた。

(1) 売買目的有価証券

70. 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)については、投資者にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での時価に求められると考えられる。したがって、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。また、売買目的有価証券は、売却することについて事業遂行上等の制約がなく、時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての財務活動の成果と考えられることから、その評価差額は当期の損益として処理することとした(第15項参照)。

(2) 満期保有目的の債券

71.企業が満期まで保有することを目的としていると認められる社債その他の債券(満期保有目的の債券)については、時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないことから、原則として、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第16項参照)。

72. なお、このような考え方を採用するにあたっては、満期時まで保有する目的であることを債券の取得時及び取得時以降に確認し得ることが必要であり、保有目的が変更された場合には、当該変更後の保有目的に係る評価基準により債券の帳簿価額を修正することが必要である。

(3) 子会社株式及び関連会社株式

子会社株式

73. 子会社株式については、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づき、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17項参照)。

なお、連結財務諸表においては、子会社純資産の実質価額が反映されることになる。

関連会社株式

74. 関連会社株式については、個別財務諸表において、従来、子会社株式以外の株式と同じく原価法又は低価法が評価基準として採用されてきた。しかし、関連会社株式は、他企業への影響力の行使を目的として保有する株式であることから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であり、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第17 項参照)。なお、連結財務諸表においては、持分法により評価される。

(4)その他有価証券

基本的な捉え方

75. 子会社株式や関連会社株式といった明確な性格を有する株式以外の有価証券であって、売買目的又は満期保有目的といった保有目的が明確に認められない有価証券は、業務上の関係を有する企業の株式等から市場動向によっては売却を想定している有価証券まで多様な性格を有しており、一義的にその属性を定めることは困難と考えられる。このような売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式のいずれにも分類できない有価証券(その他有価証券)については、個々の保有目的等に応じてその性格付けをさらに細分化してそれぞれの会計処理を定める方法も考えられる。しかしながら、その多様な性格に鑑み保有目的等を識別・細分化する客観的な基準を設けることが困難であるとともに、保有目的等自体も多義的であり、かつ、変遷していく面があること等から、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものとして一括して捉えることが適当である。

時価評価の必要性

76. その他有価証券については、前述の評価基準に関する基本的考え方に基づき、時価をもって貸借対照表価額とすることとした(第18 項参照)。ただし、第75 項に述べたように、その他有価証券は直ちに売却することを目的としているものではないことに鑑みると、その他有価証券に付すべき時価に市場における短期的な価格変動を反映させることは必ずしも求められないと考えられることから、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額をもって期末の時価とする方法を継続して適用することも認められると考えられる。

評価差額の取扱い

(評価差額の取扱いに関する基本的考え方)

77. その他有価証券の時価は投資者にとって有用な投資情報であるが、その他有価証券については、事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切ではないと考えられる。

78. また、国際的な動向を見ても、その他有価証券に類するものの評価差額については、当期の損益として処理することなく、資産と負債の差額である「純資産の部」に直接計上する方法や包括利益を通じて「純資産の部」に計上する方法が採用されている。

79. これらの点を考慮して、本会計基準においては、原則として、その他有価証券の評価差額を当期の損益として処理することなく、税効果を調整の上、純資産の部に記載する考え方を採用した(第18 項参照)。なお、評価差額については、毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとした。したがって、期中に売却した場合には、取得原価と売却価額との差額が売買損益として当期の損益に含まれることになる。

(評価差額の一部の損益計算書への計上)

80. その他有価証券のうち時価評価を行ったものの評価差額は、前述の考え方に基づき、当期の損益として処理されないこととなる。他方、企業会計上、保守主義の観点から、これまで低価法に基づく銘柄別の評価差額の損益計算書への計上が認められてきた。このような考え方を考慮し、時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄の評価差額は損益計算書に計上する方法によることもできることとした(第18項(2)参照)。この方法を適用した場合における損益計算書に計上する損失の計上方法については、その他有価証券の評価差額は毎期末の時価と取得原価との比較により算定することとの整合性から、洗い替え方式によることとした。

(5) 時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券

81. 時価をもって貸借対照表価額とする有価証券であっても、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第19 項参照)。

81-2. 時価をもって貸借対照表価額とする有価証券のうち、これまで、市場価格のないものは、例外的な取扱いとして取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとしていた。しかし、金融商品の時価情報に関する開示の充実を定めた平成20年改正会計基準では、当該開示の実効性を高めるために、時価が開示されないこととなる金融商品は、時価を把握することが極めて困難と認められるものに限定されたことから、時価をもって貸借対照表価額とする有価証券に関して、その例外的な取扱いは、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券に限定することとした。

82. なお、市場は幅広く定義されているので、例えば、証券投資信託の受益証券で基準価格が公表されていないものであっても、当該証券投資信託の運用する金融資産又は金融負債の時価に基づき取引されるものについては、市場価格のある有価証券に該当し、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券には該当しないと考えられる。

(6) 時価が著しく下落した場合

83. 従来、取引所の相場のある有価証券について、その時価が著しく下落したときには、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とすることとされている。また、取引所の相場のない株式については、その実質価額が著しく低下したときには相当の減額をすることとされている。このような考え方は、取得原価評価における時価の下落等に対する対応方法として妥当であると認められる。本会計基準においても、市場価格の有無に係わらせて、従来の考え方を踏襲することとした(第20項及び第21項参照)。

84. また、その他有価証券の時価評価について洗い替え方式を採っていることから、その時価が著しく下落したときには、取得原価まで回復する見込があると認められる場合を除き、当該銘柄の帳簿価額を時価により付け替えて取得原価を修正することが必要である。この場合には、当該評価差額を当期の損失として処理することとした(第20項から第22項参照)。

3.運用を目的とする金銭の信託

85. 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)については、企業が当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債を運用目的で間接的に保有しているものと考えられる。加えて、金銭の信託契約の満了時に、当該金銭の信託に係る信託財産又はそれを時価により換金した現金により支払を受ける場合、投資者及び企業双方にとって意義を有するのは信託財産の時価であると考えられる。また、信託財産の価値を、例えば保有期間中の配当収入と元本部分の価値に分けて捉えることもあるが、両者の合計は時価そのものであり、分けて捉える必要はないと考えられる。したがって、運用を目的とする金銭の信託の貸借対照表価額には、信託財産を構成する金融資産及び金融負債のうち時価評価が適切であるものについて、その時価を反映することが必要と考えられる。

86. このため、運用を目的とする金銭の信託については、当該金銭の信託に係る信託財産を構成する金融資産及び金融負債に付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とすることとした。この際、運用を目的とする金銭の信託に係る信託財産については委託者の事業遂行上等の観点からの売買・換金の制約がないことから、当該信託財産を構成する金融資産及び金融負債については時価評価を行い、評価差額は当期の損益に反映させることとした(第24 項参照)。

87. なお、特定金銭信託又は指定金外信託等については、一般に運用を目的とするものと考えられるので、有価証券の管理目的等運用以外の目的であることが明確である場合を除き、運用を目的とする金銭の信託と推定される。

4.デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務

88. デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得又は損失を被るものであり、投資者及び企業双方にとって意義を有する価値は当該正味の債権又は債務の時価に求められると考えられる。したがって、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務については、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。

また、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務の時価の変動は、企業にとって財務活動の成果であると考えられることから、その評価差額は、後述するヘッジに係るものを除き、当期の損益として処理することとした(第25項参照)。

89. なお、デリバティブ取引については、一般に、市場価格又はこれに基づく合理的な価額により時価が求められるが、デリバティブ取引の対象となる金融商品に市場価格がないこと等により時価を把握することが極めて困難と認められる場合には、取得価額をもって貸借対照表価額とすることができる。

5.金銭債務

90. 旧商法では、金銭債務の貸借対照表価額は債務額とすることとしていたことから、平成11年会計基準では、社債は社債金額をもってその貸借対照表価額とし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合には、当該差額に相当する金額を、資産(繰延資産)又は負債として計上し、償還期に至るまで毎期一定の方法により償却することとしてきた。

ただし、会計上は、金銭債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、この差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとなる。金銭債務についても、その収入額と債務額とが異なる場合、当該差額は一般に金利の調整という性格を有しているため、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることが適当と考えられる。

会社法では、債務額以外の適正な価格をもって負債の貸借対照表価額とすることができることとされたことから、平成18 年改正会計基準では、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とすることとした(第26項参照)。

X.貸倒見積高の算定

1.基本的考え方

91. 本会計基準では、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を、@経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(一般債権)、A経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)及びB経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)に区分し、その区分ごとに貸倒見積高の算定方法を示すこととした(第27項及び第28項参照)。

2.貸倒見積高の算定方法

92. 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定することができる。また、債務者が既に経営破綻等に陥っている場合には、個々の債権ごとに担保等により回収できない部分を貸倒見積高とすることが必要となる(第28項(1)及び(3)参照)。

93. これに対し、貸倒懸念債権については、一般債権と破産更生債権等の中間に位置し、個々の債権の実態に最も適合する算定方法を採用することが必要である。このため、貸倒懸念債権に係る貸倒見積高の算定方法としては、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を考慮する方法の他、元利金の将来のキャッシュ・フローを見積ることが可能な場合、元利金のキャッシュ・フローの予想額を当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と当該債権の帳簿価額の差額を貸倒見積高とする方法を示し、債務者の状況や債務返済計画等が変わらない限り、いずれかの方法を継続して適用することとした(第28項(2)参照)。

94. なお、例えば、劣後債券、劣後受益権及び資産担保型証券のように債権の内容が特殊なものである場合には、当該債権の内容に応じて適切な貸倒見積高を算定する必要がある。

95. また、貸倒引当金の対象となる債権には未収利息が含まれるが、契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払が行われていない状態にある場合や、それ以外でも債務者が実質的に経営破綻の状態にあると認められる場合には、未収利息を収益として認識することは適当でないと考えられることから、このような状態に至った場合には、すでに計上している未収利息を取り消すとともに、それ以後の期間に係る未収利息は計上してはならないこととした。

Y.ヘッジ会計

1.基本的考え方

96. ヘッジ取引とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動を相殺するか、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避することにより、ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動、金利変動及び為替変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいう。

97. ヘッジ手段であるデリバティブ取引については、原則的な処理方法によれば時価評価され損益が認識されることとなるが、ヘッジ対象の資産に係る相場変動等が損益に反映されない場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されないこととなる。このため、ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるヘッジ会計が必要と考えられる。

98. 本会計基準においては、ヘッジ会計を導入することとし、先物取引に係るヘッジ会計の考え方を示した企業会計審議会の「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」を踏まえ、デリバティブ取引をヘッジ手段として利用しているヘッジ取引全般に対応し得るよう、ヘッジ会計に係る処理を包括的に定めることとした。なお、デリバティブ取引以外にヘッジ手段として有効であると認められる現物資産があり得る場合には、本会計基準の考え方に沿って、ヘッジ会計を適用する余地があると考えられる。

99. また、多数の金融資産又は金融負債を保有してる金融機関等においては、それぞれの相場変動等によるリスクの減殺効果をヘッジ対象とヘッジ手段に区別して捉えることが困難あるいは適当でない場合がある。このような場合に、リスクの減殺効果をより適切に財務諸表に反映する高度なヘッジ手法を用いていると認められるときには、本会計基準の趣旨を踏まえ、当該ヘッジ手法の効果を財務諸表に反映させる処理を行うことができる。

2.ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象及びヘッジ手段

100. ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象には、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債のうち、相場等の変動が評価に反映されていないもの及び相場等の変動が評価に反映されていてもその評価差額が損益として処理されないものの他、相場等の変動を損益として処理することができるものであっても、当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものはヘッジ対象となる(第30項参照)。

101. また、ヘッジ対象には、この他、予定取引(未履行の確定契約を含む。)により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる(第30 項参照)。ただし、予定取引については、主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、その実行される可能性が極めて高い取引に限定することとした。

102. なお、他に適当なヘッジ手段がなく、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いるいわゆるクロスヘッジもヘッジ会計の対象となる。

3.ヘッジ会計の要件

103. ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、基本的には、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段のそれぞれに生じる損益が互いに相殺される関係にあること若しくはヘッジ手段によりヘッジ対象の資産又は負債のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係にあることが前提になる。

104. さらに、ヘッジ会計を適用できるか否かの具体的な判定にあたっては、企業の利益操作の防止等の観点から、「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書等について」における事前テストと事後テストというヘッジ会計の適用基準の考え方を踏まえ、ヘッジ取引時にはヘッジ取引が企業のリスク管理方針に基づくものであり、それ以降は上記の前提の効果について定期的に確認しなければならないという具体的な要件を定めている(第31項参照)。

4.ヘッジ会計の方法

(1) 原則的処理方法

105. 平成11 年会計基準では、ヘッジ会計は、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法によることを原則としていたが、当該ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、純資産会計基準により、税効果を調整の上、純資産の部に記載することとなる(第32項参照)。

(2) ヘッジ対象に係る損益を認識する方法

106. ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることができる場合には、当該資産又は負債に係る損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する考え方がある。諸外国の会計基準では、このような考え方に基づく処理も採用されていることを考慮し、これを認めることとした(第32項参照)。

(3) 金利スワップの取扱い

107. 金利スワップを利用したヘッジ取引には、例えば固定利付債務の支払利息を変動利息に、あるいは、変動利付債務の支払利息を固定利息に実質的に変換するなど、原価評価されている資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されているものがある。当該資産又は負債と金利スワップがヘッジ会計の要件を充たしているものについては、本来、金利スワップの評価差額を貸借対照表に計上する処理を行うが、金利スワップの想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が金利変換の対象となる資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、両者を一体として、実質的に変換された条件による債権又は債務と考え、金利スワップの評価差額を繰り延べる処理に代えて、当該金利スワップに係る金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することも認めることとした。

5.ヘッジ会計の終了等

108. ヘッジ対象が消滅したときには、その時点でヘッジ会計が終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を当期の損益として処理することとした。また、ヘッジ対象である予定取引が行われないことが明らかになったときにおいても同様に処理することとした(第34項参照)。

109. これに対し、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額に関し、見合いのヘッジ対象に係る含み益の減少によりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積り、当期の損失として処理することとした(第33項参照)。

110. なお、ヘッジ会計の要件が充たされなくなったとき以後のヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べることはできないこととなる。

Z.複合金融商品

111. 複合金融商品については、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区別して、それぞれ処理方法を定めることとした。

1.払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品

112. 新株予約権付社債のように契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的である。個々の複合金融商品の様態及び取引実態において、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債は払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分が同時に各々存在し得ることから、その取引の実態を適切に表示するため、それぞれの部分を区分して処理することが必要である。しかし、募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236条第1項 第2号及び第3号)をあらかじめ明確にしている転換社債型新株予約権付社債については、以前の転換社債と経済的実質が同一であり、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいと考えられる。

113. こうした考え方に基づき、以前の転換社債と経済的実質が同一である転換社債型新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分せず一体とした処理又は転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債の処理に準じた処理をすることとし(ただし、取得者側については前者のみ認められる。)、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債については社債部分と新株予約権部分を区分して処理することとした(第36項から第39項参照)。

114. 新株予約権付社債の発行者が、新株予約権付社債を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分して処理する場合の新株予約権の対価部分の取扱いについて、新株予約権が行使され、新株を発行したときには、当該対価は株式発行の対価としての性格が認められることになることから資本金又は資本金及び資本準備金に振り替えられることとなる。また、権利行使の有無が確定するまでの間は、その性格が確定しないことから、これまでは仮勘定として負債の部に計上することとしてきたが、純資産会計基準により、純資産の部に計上することとなる(第38項参照)。

115. なお、平成13 年11 月に公布された「商法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第128号)施行前に発行した新株引受権付社債の会計処理については、権利が行使されたときに新株引受権の対価部分が資本準備金に振り替えられる点を除き、新株予約権付社債の取扱いに準ずる。

2.その他の複合金融商品

116. 上記以外の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コスト・オプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。

117. このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在し得るが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生する。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分せず一体として処理することとした(第40 項参照)。ただし、通貨オプションが組み合わされた円建借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要である。

118. なお、金融機関のように、経営上、複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を継続して区分して管理しており、投資情報としても区分して処理することが経営の実態を表す上で有用な場合には、区分して処理することも認められるものとする。

[.注記事項

119. 金融商品については、平成2年5月に企業会計審議会第一部会から公表されている「先物・オプション等の会計基準に関する意見書等について」等に基づき、これまで有価証券やデリバディブ取引の時価等の開示が行われてきている。しかし、その後の証券化の拡大や金融商品の多様化等、金融取引を巡る環境が変化する中で、それ以外の金融商品についても時価情報に対するニーズが拡大しており、また、国際的な会計基準でも、時価に関する情報開示は拡大している。

120. 本会計基準では、金融資産について、時価評価を基本としつつもその属性及び保有目的に鑑み、そのすべてについて時価評価を行っているわけではなく、また、時価をもって貸借対照表価額としても評価差額を当期の損益としない会計処理も定めている(第65 項及び第66項参照)。金融負債については、原則として時価評価の対象としないことが適当であるとしている(第67項参照)。これらの取扱いは、企業の経営成績を適切に財務諸表に反映させるという観点から行われていると考えられる。これらをさらに見直すことについては、企業活動の成果と金融商品の保有目的との関係の整理(これには、金融負債の評価における企業自身の信用リスクの取扱いなどが含まれる。)や金融商品以外の資産及び負債(非金融商品)における取扱いとの関係など、なお検討を要する問題が残されている。

一方、損益計算とは離れて、市場価格がない場合でも、時価を把握することが極めて困難と認められるものを除き、金融商品の時価を開示することは、投資者に対して有用な財務情報を提供することになるという意見も多い。また、金融商品の状況やリスク管理体制は企業によって異なるものの、企業が現に有する金融商品に係るリスクの測定状況等の情報があれば、当該情報の開示を促すことに加え、会計基準等によって企業の側において金融商品のリスク管理等を一層徹底するインセンティブを高めるためにも金融商品の時価等を開示することに意義があるという意見もある。さらに、国際的な会計基準では、金融商品に係る時価やリスクに関して広く開示が求められている。したがって、このような点に鑑み、平成20年改正会計基準では、金融商品の状況やその時価等に関する事項の開示の充実を図ることとした。

\.平成20年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正

121. 平成20年改正会計基準の公表に伴い、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。

(1) 企業会計基準第5 号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第14項 平成11年1月に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」として改正されている。)において、その他有価証券に係る評価差額は、損益計算書を経由せず資本の部に直接計上する考え方が導入された。(以下 略)

(2) 企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」

@ 第47項

子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられた場合、被結合企業の株主は、「金融商品に係る会計基準」企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)に準じて処理する。(以下 略)

A 第98項(1)

関連会社株式は、関連会社への影響力の行使を目的として保有することから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うこととされている(「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)V 四2(3)A)(金融商品会計基準第74項)。(以下 略)

B 第115項 第2段落

なお、金融商品会計基準では、金融資産の交換について直接取り扱ってはいないが、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによること(金融商品会計意見書 V 二2(2))(金融商品会計基準第57項及び第58項)とされている。(以下 略)

C 第123項

金融商品会計基準では、被結合企業の株主の個別財務諸表上、子会社株式は金融資産としており、当該金融商品会計基準による会計処理との関係では、企業結合により、保有していた子会社株式の消滅を認識し、対価として受け取る結合企業の株式は、新たな資産又は残存部分として取り扱われる(金融商品会計基準第二 二3 第11項から第13項)。(以下 略)

D 第126項

関連会社株式は、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うこととされている(金融商品会計意見書 V 四2(3)A)(金融商品会計基準第74項)。(以下 略)

E 第131項 第2段落

この場合、企業結合によって持分比率が減少しても、被結合企業の株主は、当該被結合企業を含む結合後企業の株式(その他有価証券)の保有を通じた投資を行っている。それは、売買目的有価証券(金融投資)と子会社株式及び関連会社株式(事業投資)との中間的な性格を有するものとしてとらえられており(金融商品会計意見書 V 四2(4)@)(金融商品会計基準第75項)、当該企業結合によって、企業が事前に考えていた当該投資の成果が期待されていたような結果になったとは必ずしも言えないため、交換損益を認識しないことが考えられる。

(3) 企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」第42項

ワラントや新株予約権の会計処理等に関する既存の会計基準は、これらが失効した場合に、対応する部分を利益に計上することを求めている(「金融商品に係る会計基準」第六 一1(1))(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第38項)。(以下 略)

(4) 企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第16項

トレーディング目的で保有する棚卸資産として分類するための留意点や保有目的の変更の処理は、「金融商品に係る会計基準」企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)における売買目的有価証券に関する取扱いに準じる。

(5) 企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」

@ 第6項(1)

(1)「金融商品に係る会計基準」企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)における金融資産

A 第15項 第2段落

また、「市場価格」とは、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(「金融商品に係る会計基準」第一 二参照)(金融商品会計基準第6 項)と考えられるが、固定資産については、市場価格が観察可能な場合は多くないため、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標が容易に入手できる場合(容易に入手できる評価額や指標を合理的に調整したものも含まれる。)には、これらを、減損の兆候を把握するための市場価格とみなして使用する(第90 項参照)。

B 第94項 第2段落

なお、個別財務諸表において、取得原価をもって貸借対照表価額とされている子会社株式及び関連会社株式にも、のれん相当額は含まれているが、それは別途、把握されておらず、したがって償却もされていない。このため、当該のれん相当額は減損会計基準及び本適用指針でいうのれんには含まれず、当該株式は「金融商品に係る会計基準」金融商品会計基準に従って会計処理されることとなる。

(6) 企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」第13項(3)

繰延ヘッジ損益(ヘッジ手段が時価評価されている場合において、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べられるヘッジ手段に係る損益又は評価差額(「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第五 四 1企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第32項))を純資産の部に記載することとなっても、純資産会計基準の適用による表示の変更と、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べる方法とは矛盾するものではない。(以下 略)

(7) 企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」

@ 第1項

本適用指針は、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)における「第六 Z.複合金融商品」のうち、「 2.その他の複合金融商品の会計処理」を適用する際の指針を定める。

A 第14項

金融商品会計基準では、複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区分して、それぞれ処理方法を定めている。このうち、後者、すなわち、契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理するとしている(金融商品会計基準第六 二第40項)。

これは、このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在し得るが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生することによる。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、一体として処理するとしている(「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)V 七 2)(金融商品会計基準第117項)

B 第15項

ただし、金融商品会計意見書金融商品会計基準では、通貨オプションが組み合わされた円建て借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要であるとしている。

C 第16項

金融商品会計意見書金融商品会計基準の考え方を受けて、これまでの金融商品会計実務指針では、決済期日に金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加する場合(当該金融負債の金利が契約当初の市場金利の2 倍以上になる場合を含む。)に、当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶものと解し、それは、組込デリバティブのリスクが、契約内容に照らして当初元本に及ぶ可能性の有無を判断することを意味し、可能性の程度を評価するものではないこととしていた。

D 第23項

前述したように、金融商品会計意見書及び金融商品会計基準では、その他の複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生するため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、当該複合金融商品を一体として処理することとしているが、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合には、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分処理するものとしている。これは、相場変動等による組込デリバティブの損失の可能性を当期の損益に適切に反映するためと考えられる。

(8) 実務対応報告第1号「旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」

@ 目的

平成13年11月28日に公布された「商法等の一部を改正する法律(平成13年法律第128号)」(以下「平成13年改正旧商法という。」により、新株予約権及び新株予約権付社債の概念が導入された。新株引受権付社債及び転換社債に関する会計処理については、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)及び「金融商品に係る会計基準」(以下合わせて改正前金融商品会計基準」という。また、これを改正した企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」を以下「金融商品会計基準」という。)並びに平成12年1月31日に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)において明らかにされているが、(以下 略)

A Q1のA 3.(1)

改正前金融商品会計基準は、新株引受権を単独で発行した場合の会計処理については明示していないが、上記2の整理と新株引受権付社債の会計処理(金融商品会計基準第六 一)を勘案すれば、新株予約権を以下のように会計処理することが適当であると考えられる。(以下 略)

B Q1のA 3.(2)

改正前金融商品会計基準は、新株引受権を単独で取得した場合の会計処理については明示していないが、(以下 略)

C Q1のA 3.(3)

新株予約権が権利行使期限到来前に消却された場合には、その効力が生じたときに消滅を認識する(金融商品会計基準第二 二第10項)。

D Q2 のA 3.(1)

改正前金融商品会計基準第六 一 1 では、新株引受権付社債の会計処理について、分離型あるいは非分離型を区別することなく、発行者側及び取得者側ともに社債の対価部分と新株引受権の対価部分に区分して処理する方法(区分法)を適用するものとしている。

E Q2 のA 3.(1)なお書き

なお、代用払込が認められる新株予約権付社債の発行価額又は取得価額を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する場合には、金融商品会計基準注解(注15)のいずれかの方法による準じて処理することができる。(以下 略)

F Q2 のA 3.(2)@

改正前金融商品会計基準第六 一 2では、転換社債の発行者側の会計処理については、転換社債の発行価額を社債の対価部分と転換権の対価部分に区分せず普通社債の発行に準じて処理する(一括法)又は新株引受権付社債に準じて処理する(区分法)としている。

また、取得者側の会計処理については、転換社債の取得価額を社債の対価部分と転換権の対価部分に区分せず普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替えるものとしている。

転換社債の会計処理として一括法を認める理由は、転換社債については転換権が行使されると社債は消滅し、社債の償還権と転換権が同時にそれぞれ存在し得ないことから、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいと考えられること(金融商品会計基準意見書V 七 1)に求められる。この考え方は、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことがあらかじめ社債要項等で明確にされているもの、すなわち、以前の転換社債と経済的実質が同一と考えられるものについても適用されると考えられるので、以下のように会計処理することが適当である。(以下 略)

G Q3 のA

社債と新株予約権は別々に証券が発行されるので発行後には個別に流通することになるが、社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合には発行時において両者は実質的に一体のものとみられるため、その経済的実質は以前の分離型新株引受権付社債と同一であるものと考えられる。改正前金融商品会計基準第六 一 1では、新株引受権付社債について区分法を適用するものとしているので、その会計処理はそれぞれの発行価額を合計した上で区分法(Q2 のA3(1)参照)により行うことが適当であると考えられる。(以下 略)

H Q4のA

本実務対応報告は、会社法施行日前に発行の決議があった、旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債について適用する。

なお、平成13年改正旧商法の附則第7 条は、平成13年改正旧商法施行前の決議に基づき平成14年4月1日以降に発行される転換社債及び新株引受権付社債に関しては、平成13年改正旧商法施行後もなお従前の例によるとしているので、その会計処理は、改正前金融商品会計基準第六 一並びに金融商品会計実務指針第186項及び第187項を適用して行う。

(9) 実務対応報告第6号「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」

@ 前文

金融商品に関する会計処理は、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)として改正されている。)及び平成12年1月31日(最終改正平成14年9月17日)に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)1 に基づいて行われている。(以下 略)

1この他、平成12年9月14日(最終改正平成14年9月17日)に日本公認会計士協会 会計制度委員会から公表された「金融商品会計に関するQ&A」(以下「金融商品会計Q&A」という。)がある。

A 2(1)

債権者がその債権を債務者に現物出資した場合、債権と債務が同一の債務者に帰属し当該債権は混同により消滅する(民法520条参照)ため、支配が他に移転したかどうかを検討するまでもなく金融資産の消滅の認識要件を満たすものと考えられる(金融商品会計基準 第二 二 1参照第8項及び第9項)。したがって、債権者は当該債権の消滅を認識するとともに、消滅した債権の帳簿価額とその対価としての受取額との差額を、当期の損益として処理することとなる(金融商品会計基準 第二 二 3 参照第11項)。(以下 略)

B 2(2)

デット・エクイティ・スワップにより、債権者が取得する株式は、通常、債権とは異種の資産と考えられることから、新たな資産と考えられる(金融商品実務指針第36項参照)。この場合には、債権者が取得する株式の取得時の時価が対価としての受取額(譲渡金額)となり、消滅した債権の帳簿価額と取得した株式の時価の差額を当期の損益として処理し、当該株式は時価で計上されることとなる(金融商品会計基準 第二 二3第11項から第13項、金融商品実務指針第29項及び第37項参照)。(以下 略)

C 2(3)

取得時の時価は、取得した株式に市場価格がある場合には、「市場価格に基づく価額」であり、取得した株式に市場価格がない場合には、「合理的に算定された価額」である(金融商品会計基準 第一 二第6項、金融商品実務指針第47項参照)。(以下 略)

(10)実務対応報告第8号「コマーシャル・ペーパーの無券面化に伴う発行者の会計処理及び表示についての実務上の取扱い」

1. 貸借対照表

発行した電子CPについては、原則として社債金額償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とし(「金融商品に係る会計基準」第三 五参照)(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第26項)、流動負債において「短期社債」又は従来の手形CPと同様に「コマーシャル・ペーパー」等の当該負債を示す名称を付した科目をもって掲記する。なお、その金額に重要性がない場合には、流動負債において「その他」に含めて表示することができる。

2. 損益計算書

「短期社債利息」又は従来の手形CPと同様に「コマーシャル・ペーパー利息」等の当該費用を示す名称を付した科目をもって区分掲記し、その金額に重要性がない場合には、「その他」に含めて表示する。なお、いずれの場合でも、社債金債務額よりも低い価額で発行したことによる差額は、「社債発行差金」又は従来の手形CPと同様に「前払費用」として計上した場合には、発行日から償還期限までを計算期間として当該発行差額を定額法により按分する(「金融商品に係る会計基準」第三 五金融商品会計基準第26項、及び「金融商品会計に関する実務指針」第126項参照)。

(11)実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」

@ 目的 第2段落

株式の貸借対照表価額は、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)及び「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)として改正されている。)並びに平成12年1月31日(最終改正平成14年9月17日)に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)2において定められている。これらにおける株式の貸借対照表価額の定めは、普通株式を念頭においたものと考えられる。

2この他、平成12年9月14日(最終改正平成14年9月17日)に日本公認会計士協会 会計制度委員会から公表された「金融商品会計に関するQ&A」(以下「金融商品会計Q&A」という。)がある。

A Q1 のA

形式的には株式であっても、発行会社が一定の時期に一定額で償還すると定めている種類株式や、発行会社や保有者が一定額で償還する権利を有し取得時点において一定の時期に償還されることが確実に見込まれる種類株式は、経済的には清算時の弁済順位を除き、債券と同様の性格を持つと考えられるため、その貸借対照表価額は債券の貸借対照表価額(金融商品会計基準 第三 二参照第15項、第16項、第18項から第20項、第22項及び第23項)と同様に取り扱うことが適当である。

B Q2 のA(1)

市場価格のある種類株式は、当該市場価格に基づく価額(ただし、子会社及び関連会社が発行した種類株式は、取得原価)をもって貸借対照表価額とされる(金融商品会計基準 第三 二 1、3 及び4参照第15項、第17項及び第18項、並びに金融商品実務指針第63項)。また、売買目的有価証券以外の市場価格のある種類株式について、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)される(金融商品会計基準 第三 二 6第20項及び金融商品実務指針第91項参照)。

市場には、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる(金融商品会計基準 注解(注2)参照)ため、取引所及び店頭において取引が行われていなくても、流通性を確保する上で十分に整備されている取引システム(例えば、金融機関・証券会社間の市場、ディーラー間の市場、電子媒体取引市場)で成立する取引価格が存在する(金融商品実務指針第51項参照)場合には、当該種類株式は市場価格のある株式として取り扱われる。(以下 略)

C Q2 のA(2)

市場価格のない種類株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とされ、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)される(金融商品会計基準第三 二 6第21項及び金融商品実務指針第92項参照)。

これは、その他有価証券に分類される市場で売買されない株式は、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価(合理的に算定された価額)とはしないものとし、当該株式は時価のない有価証券として取り扱われている(金融商品会計基準 第三 二 5(2)及び金融商品実務指針第63項ただし書き参照)ことによる。株式がこのように取り扱われている理由としては、一般に将来キャッシュ・フローが約定されている債券と異なり、市場価格のない株式については、現状、市場価格に準じた客観的な時価(合理的に算定された価額を得ることは極めて難しいと考えられていること、また、理論的と考えられる価額を算定することができたとしても、市場で売買されていない場合には、当該価額による自由な換金・決済等が可能であるとは言い難いことが挙げられる(この点については、金融商品会計意見書 V 三参照金融商品会計基準第66項を参照のこと。)

(12) 実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」

@ 1(2) なお書き

なお、排出クレジットに関しては、「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第一 一企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第4項において例示された資産の形態と類似性がないことや、排出クレジットを保有する者は現金を受け取る契約上(国別登録簿利用規程上)の権利がない(この点については、「金融商品会計に関する実務指針」第4項参照のこと。)ことから、金融資産には該当しないものと考えられる。(以下 略)

A 2(1)

企業の投資は、一般に金融投資と事業投資に大別される(この点については、「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」V三及び四金融商品会計基準第64項から第90項、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」六を参照のこと。)。(以下 略)

(13) 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」

目的

(省 略)しかしながら、監査委員会報告第56号の公表後、「退職給付に係る会計基準」、「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」として改正されている。)、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「企業結合に係る会計基準」が公表されるなど、我が国の会計基準は、国際財務報告基準(IFRSs)や米国会計基準といった国際的な会計基準と同等の水準まで整備がなされてきている。さらに、平成16年10月以降、当委員会では、国際会計基準審議会(IASB)との間で会計基準のコンバージェンスに向けた作業に取り組んでいる。(以下 略)

以上


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