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会計基準結論の背景注記|適用指針第12号|適用指針第17号適用指針第19号目次

(注)本内容は、平成20年3月10日企業会計基準委員会が公表したものです。なお、オリジナルとは異なる表現をしている部分があります。実務への適用にあたっては、念のためオリジナルの当該指針等を確認してください。

企業会計基準適用指針第12号

その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理

(目的・適用指針・結論の背景・設例)

平成18年3月30日

(平成20年3月10日)

企業会計基準委員会

 

 

本適用指針は、平成20年3月10日までに公表された次の会計基準等による修正が反映されている。

・企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(平成20年3月10日改正)

目次

目的

適用指針

範囲

組込デリバティブの区分処理

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例

損益を調整する複合金融商品の処理

区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示

組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理

適用時期等

議決

結論の背景

経緯

組込デリバティブの区分処理

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例

損益を調整する複合金融商品の処理

適用時期等

設例

[設例1] 複合金融商品(通貨オプション付定期預金)の会計処理(区分処理)

[設例2] 物価連動国債における償却原価法の適用


目的

1. 本適用指針は、 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準という。)における「Z.複合金融商品」のうち、「2.その他の複合金融商品」を適用する際の指針を定める

適用指針

範囲

2. 本適用指針は、金融商品会計基準が適用される場合において、その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に適用する。

組込デリバティブの区分処理

3. 複合金融商品に組み込まれたデリバティブは、次のすべての要件を満たした場合、組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し、評価差額を当期の損益として処理する。なお、組込デリバティブの対象である現物の金融資産又は金融負債は、金融商品会計基準に従って処理する。[設例1]

(1) 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があること

(2) 組込デリバティブと同一条件の独立したデリバティブが、デリバティブの特徴を満たすこと

(3) 当該複合金融商品について、時価の変動による評価差額が当期の損益に反映されないこと

4. 第3項の要件(1)又は(3)を満たさない場合でも、管理上、組込デリバティブを区分しているときは、区分処理することができる。

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと

5. 第3項(1)の組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶとは、利付金融資産又は金融負債の場合、原則として、組込デリバティブのリスクにより現物の金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加若しくは当該金融負債の金利が債務者にとって契約当初の市場金利の2倍以上になる可能性があることをいう。金利が契約当初の市場金利の2倍以上になるとは、例えば、固定金利の場合、その当初金利の5%に対して実際の支払金利が10%以上となり、変動金利の場合、その当初計算式「LIBOR+0.5」に対して実際の支払金利が当初計算式に2を乗じたもの「(LIBOR+0.5)×2」を適用して計算される金額以上となる場合をいう。

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例

6. 次のような場合、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある。

(1) 預金、債券、貸付金、借入金及びこれらに類する契約の中に、以下のようなデリバティブ(その経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にないもの)が組み込まれたもの

@ 元本又は金利が株式相場又は株価指数に係るデリバティブ

A 元本又は金利が現物商品相場又は現物商品指数に係るデリバティブ

B 元本又は金利が外国為替相場に係るデリバティブ

C 元本又は金利が気象条件に関する指標に係るデリバティブ(ウェザー・デリバティブ)

D 元本又は金利が第三者の信用リスクに係るデリバティブ(クレジット・デリバティブ)(ただし、(3)また書きの場合を除く。)

ただし、当初元本が円建てで確定し、金利のみが為替相場に連動しかつマイナスとならない逆デュアル・カレンシー債など、金融資産の受取利息の範囲で上記各デリバティブに係るオプションを購入する場合又は受取利息がマイナスとならないフロアーが付いている場合の複合金融商品については、契約上、当初元本を毀損しないため、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はない。

(2) 他社株転換社債

(3) 預金、債券、貸付金、借入金及びこれらに類する契約の中に、以下のようなデリバティブ(その経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるもの)が組み込まれ、契約上、フロアーが付いていないため受取利息がマイナスとなる可能性があるもの、又は、オプションを売却しているもの等が組み込まれ当初元本を毀損する可能性があるもの

@ 当該契約と同一通貨である金利に係るデリバティブ

A 当該契約と同一通貨である物価指数に係るデリバティブ

B 当該契約と同一通貨である債務者自身の信用リスクに係るデリバティブ

ただし、契約上、当初元本を毀損する可能性があっても、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないものとして取り扱う。

また、第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている複合金融商品が、実質的に参照先である第三者の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができる場合において、当該組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産に及ぶ可能性はないものとして取り扱う。

(4) 重要な損失をもたらす行使価格の付いた期前償還権付債券、貸付金、借入金及びこれらに類する契約

損益を調整する複合金融商品の処理

7. デリバティブで得た収益を毎期の利払いに含めず、後で一括して授受するスキーム又は複数年に1回しか利払いがないスキーム等、損益を調整する複合金融商品については、区分処理する。

区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示

8. 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額は、組み込まれた金融資産又は金融負債から生じた損益とは区分して表示する。

組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理

9. 第3項により区分処理を行うべき複合金融商品について、当該複合金融商品の時価は測定できるが、組込デリバティブを合理的に区分して測定することができない場合には、当該複合金融商品全体を時価評価し、評価差額を当期の損益に計上する。

適用時期等

10. 本適用指針は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。ただし、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。

11. 本適用指針を適用することにより、これまでの会計処理を変更することとなる場合には、次のように取り扱うものとする。

(1) 組込デリバティブを、組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理(第3項に示す会計処理)を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末におけるそれぞれの貸借対照表価額の合計額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)により処理する。

(2) 複合金融商品全体を時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理(第9項に示す会計処理)を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末における貸借対照表価額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する。

なお、この場合には、本適用指針が適用される時点において、売買目的有価証券(金融商品会計実務指針第269 項にいう売買目的有価証券に準じて取り扱うものを含む。)に変更することにより、従前同様、評価差額を当期の損益に計上することができる。

12. 本適用指針を公表するにあたり、金融商品会計実務指針第188項から第194項、第354項から第356項及び設例27の削除を検討することが適当である。

議決

13. 本適用指針は、第101回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。

結論の背景

経緯

14. 金融商品会計基準では、複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区分して、それぞれ処理方法を定めている。このうち、後者、すなわち、契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理するとしている(金融商品会計基準第40項)。

これは、このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は、それぞれ独立して存在し得るが、複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生することによる。このため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、一体として処理するとしている(金融商品会計基準第117項)。

15. ただし、金融商品会計基準では、通貨オプションが組み合わされた円建て借入金のように、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要であるとしている。

16. 金融商品会計基準の考え方を受けて、これまでの金融商品会計実務指針では、決済期日に金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加する場合(当該金融負債の金利が契約当初の市場金利の2倍以上になる場合を含む。)に、当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶものと解し、それは、組込デリバティブのリスクが、契約内容に照らして当初元本に及ぶ可能性の有無を判断することを意味し、可能性の程度を評価するものではないこととしていた。

17. このような取扱いは、金融商品会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針として、その役割を果たしてきたものと考えられるが、物価連動国債など、公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品に対しては、必ずしも適切な会計処理を示しているとはいえないのではないかという意見も多い。このため、当委員会では、金融商品専門委員会における討議を含め、その他の複合金融商品の会計処理に関する審議を行い、当該会計処理に関する適用指針をとりまとめた。

組込デリバティブの区分処理

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと

18. 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこととは、利付金融資産又は金融負債の場合、デリバティブを組み込むことによって、利付金融資産の場合には実際のキャッシュ・フローが組込デリバティブを除いた現物の金融資産のそれよりも減少するとき、また、利付金融負債の場合には実際のキャッシュ・フローが増加するときに、決済期日に当初元本が減少又は増加していなくとも当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶという考え方がある。また、利付金融資産の場合には、当該金融資産の存続期間にわたる割引前のネット・キャッシュ・イン・フローが、当該金融資産の当初投資額より小さくなるときにリスクが及ぶという考え方もある。

これらの考え方に対して、これまでの金融商品会計実務指針では、決済期日に金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加する場合(当該金融負債の金利が契約当初の市場金利の2倍以上になる場合を含む。)にはじめて、当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶものと解することとされており、本適用指針では、これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした(第5項参照)。

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例

(組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にない場合)

19. 利付金融資産又は金融負債に、株式相場や外国為替相場などに係るデリバティブが組み込まれた場合、当該組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にないため、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある。ただし、これらのデリバティブであっても当初元本が確保されるような性格のデリバティブ取引を組み込む場合には、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はない。

したがって、これまでの金融商品会計実務指針では、組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクの緊密な関係の有無をもって組込デリバティブの区分処理を行う判断規準とはしていなかった。むしろ、第18項に示したとおり、複合金融商品の契約内容が契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理の判断規準としていた。また、当該判断規準は、契約内容に照らした組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を意味し、可能性の程度を評価するものではないこととされていた(第16項参照)。

20. 本適用指針では、契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理を判断するというこれまでの金融商品会計実務指針の基本的な考え方を引き継ぐものとした。また、組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にない場合には、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本に及ぶかどうかをもって判断し、可能性の程度を評価するものとはしていない(第6項(1)参照)。

(他社株転換社債)

21. 他社株転換社債は、第三者の発行する株式(上場株式又は店頭公開株)に転換する権利を付した社債であり、その典型例は、転換期日又は転換期間に株価が転換価格を上回った場合、社債発行者は社債金額を社債権者に現金で支払い、株価が転換価格を下回った場合、当該第三者の株式を給付する契約内容となっている。したがって、当該社債の発行者が他社株への転換権をもつことから、社債権者にとって当該他社株転換権のリスクが当初元本に及ぶ可能性がある。なお、契約により、社債権者にのみ他社株への転換権がある場合、社債発行者にとって当該リスクが当初元本(社債金額)に及ぶ可能性がある。さらに、社債発行者にも社債権者にも他社株への転換権がある場合には、両者にとって当該リスクが当初元本に及ぶ可能性がある。

本適用指針では、他社株転換社債については、これまでの金融商品会計実務指針の取扱いを引き継いでいる(第6項(2)参照)。

(組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にある場合)

22. 利付金融資産又は金融負債に、金利に係るデリバティブが組み込まれた場合、当該組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にあり、通常、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はない。ただし、これまでの金融商品会計実務指針では、当初元本を減少させるオプションを売却しているような場合など、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性があるものについては、区分処理を行う必要がある要件の1つに該当するものとされていた。また、当該組込デリバティブのリスクが契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かについては、契約内容に照らした組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を意味し、可能性の程度を評価するものではないこととされていた(第16項参照)。

23. 前述したように、金融商品会計基準では、その他の複合金融商品からもたらされるキャッシュ・フローは正味で発生するため、資金の運用・調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から、原則として、当該複合金融商品を一体として処理することとしているが、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合には、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分処理するものとしている。これは、相場変動等による組込デリバティブの損失の可能性を当期の損益に適切に反映するためと考えられる。

24. このような理解に基づけば、これまでの金融商品会計実務指針のように、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にあり、通常、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないとしながら、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を契約内容に照らして判断することは、必要以上に区分処理を行うこととなるのではないかという指摘がある。

25. これまでの金融商品会計実務指針は、これまで一定の役割を果たしてきたと考えられるものの、物価連動国債など金融商品会計実務指針の公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品の属性等を考慮し、本適用指針では、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある場合で、過去の実績や合理的な見通しなどから、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はないものとして取り扱うこととした(第6項(3)参照)。

26. さらに、本適用指針では、その他の複合金融商品において、利付金融資産又は金融負債である預金、債券、貸付金、借入金及びこれらに類する契約の中に組み込まれた金利スワップなどの金利に係るデリバティブの他、その経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある組込デリバティブについて検討し、物価指数や一定の信用リスクに係るデリバティブもそれに含むものとした(第6項(3)参照)。

(1) 物価指数に係るデリバティブ

区分処理を必要としない変動利付金融資産又は金融負債においては、一般に、変動金利部分に物価水準の変動も含まれていることから、利付金融資産又は金融負債に物価指数に係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる。

(2) 一定の信用リスクに係るデリバティブ

利付金融資産又は金融負債には、債務者の信用リスクが含まれているため、当該債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる。

また、第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にないが、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品を発行している場合のように、当該複合金融商品が実質的に当該参照先の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができるときには、債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合に準じて取り扱うものとした。

27. このように、本適用指針では、利付金融資産又は金融負債に金利、物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれた場合には、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるものとし(第26項参照)、この場合には、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性があるかどうかについて、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の程度を評価して判断するものとした(第25項参照)。

この際、政府によって平成16年から発行されている物価連動国債(10年債)は、これまでの消費者物価指数の動向等を踏まえると、一般に、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる。

また、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込むことによって組成された複合金融商品(例えば、クレジット・リンク債やシンセティック債務担保証券)については、当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合(これには、例えば、格付機関による格付けに基づいて満期保有目的の債券として設定した適格要件を満たしている場合や、これと同等程度の客観的な信頼性を確保し得る方法により判断されている場合を含む。)、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる。このため、当該複合金融商品も区分して処理する必要はないこととなる。なお、当該複合金融商品を、満期保有目的の債券やその他有価証券として処理した場合において、もはや信用リスクが高くないとはいえなくなったときには、その時点の時価を新たな取得原価として第3項又は第9項に示す会計処理を適用する。この場合、当該時点における評価差額については、その全額を当期の損益とするが、本適用指針適用後、第3項を適用することとなる場合には、信用リスクに起因する評価差額のみを当期の損益とすることができる。

28. 前項で示した物価連動国債について、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものとして区分処理せず、その他有価証券とした場合には、他の債券と同様に、まず償却原価法を適用し、その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する(金融商品会計実務指針第74項)こととなる。償却原価法を適用する際、物価連動国債の元本及びクーポン受取額を合理的に予測することが必要となり、これには、例えば、期末時点における残存期間が同程度の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いて償却原価法(利息法又は定額法)を行い、同じ手法によって想定元金額及び償還金額を毎期見直す方法(見積りの変更であるため、当該年度以降の再計算に含める。)の他、取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法なども含まれると考えられる。[設例2]

なお、物価連動国債は、償還金額及び総受取利息金額のいずれも確定していないため、満期保有目的の債券として計上することはできない。

損益を調整する複合金融商品の処理

29. これまでの金融商品会計実務指針では、損益を調整する複合金融商品については、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がない場合であっても、区分処理することとされており、本適用指針では、これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした。すなわち、利付金融資産又は金融負債の中に金利、物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合には、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるため、通常、償却原価法などを通じて毎期の損益は適切に計上されることとなるが、組込デリバティブ(現物の利付金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものを含む。)にレバレッジがかかっていることなどにより損益を調整する複合金融商品は、区分処理することとなる(第7項参照)。

適用時期等

30. 本適用指針は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。このため、例えば、本適用指針を平成18年4月1日に開始する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の貸借対照表日である平成18年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる(第11項参照)。

なお、これまで第9項に示す会計処理を行っていた場合において、本適用指針が適用される時点において売買目的有価証券に変更することとしたとき(第11項(2)なお書き参照)を除き、本適用指針の適用を理由として、有価証券の保有目的区分を変更することはできない。

また、これまで第3項に示す会計処理を行っていた場合において、管理上、組込デリバティブを区分しているときは、引き続き区分処理することができる(第4項参照)。

31. 本適用指針は、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。

この場合でも、正当な理由による会計方針の変更に該当するため、所定の注記が必要となることに留意する。

この早期適用により、例えば、本適用指針を平成18年3月31日に終了する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の貸借対照表日である平成17年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる(第11項参照)。

 

設例

以下の設例は、本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。

[設例1]複合金融商品(通貨オプション付定期預金)の会計処理(区分処理)

1 前提条件

(1) A社(3月決算)はX0年10月1日に、次の条件で通貨オプション付定期預金を設定した。

@ 預入金額:10,000

A 利率:年4%(年1回後払い、売建オプション・プレミアムが含まれているので通常の預金金利より高くなっている。オプション・プレミアム相当額は、1年間で200と仮定する。)

B 期 間:X0年10月1日からX1年9月30日(1年間)

C 満期日における払戻金額:

(ア)米国ドル為替レートが100以上の場合:10,000

(イ)米国ドル為替レートが100未満の場合:

10,000−10,000×(100−満期日における米国ドル為替レート)/100

上記の前提条件より、当該通貨オプションの価値の変動によって、当初元本の返済額が設定額より下回る可能性、すなわち、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産に及ぶ可能性がある。

(2) 通貨オプションの価値及び為替レート

@ X0年10月1日における通貨オプションの価値:200

A X1年3月31日における通貨オプションの価値:1,000

B X1年9月30日における為替レート :US$1=80

2 会計処理

(1) X0年10月1日:定期預金の開始

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

定期預金

10,000

現金預金

10,000

未収入金

200

売建通貨オプション

200

・通貨オプションの価値は、厳密には1年後における200の現在価値であるが、ここでは簡便的に200とした。

 

(2) X1年3月31日:決算日

@ 通貨オプションの時価評価

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

為替差損

800

売建通貨オプション

800

・通貨オプションの損益計上額=1,000(期末時オプション時価)−200(当初オプション料)=800

A 未収利息の計上

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

未収利息

100

受取利息

100

・未収利息=(10,000×4%−200(売建オプション料未収計上額))×6/12=100

(3) X1年9月30日:定期預金の満期日

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金預金

8,400

定期預金

10,000

売建通貨オプション

1,000

未収利息

100

為替差損

1,000

未収入金

200

 

 

受取利息

100

・定期預金の払戻金額=10,000−10,000×(100−80)/100=8,000

・満期日における約定利息(実質受取利息+売建オプション料相当額)に係る入金額=10,000×4%=400

・受取利息=400−200(売建オプション料未収計上額)−100(X1年3月31日未収利息計上額)=100

 

[設例2] 物価連動国債における償却原価法の適用

1 前提条件

(1) B社(3月末決算)はX0年4月1日に、次の条件で物価連動国債を購入し、その他有価証券として計上した。償却原価法は、定額法を採用している。

@ 取得価額:100,000(額面金額)

A クーポン利子率:年4%

B 利払日:毎年3月末、年1回後払い

C 満期日:X10年3月31日(10年満期)

D 償還金額:償還日の想定元金額(額面金額×償還日における消費者物価指数(CPI)に基づく連動係数)

(2) X1年3月31日及びX2年3月31日において、次の状況となった。

 

 

X1年3月31日

X2年3月31日

@ 物価連動国債の時価

105,000

120,000

A 物価連動国債の予想利回り

4%

5%

B 同じ残存期間の通常の国債の利回り

5%

8%

 

2 想定元金額及び各期末の受取利息額の算定(1年後)

償却原価法を適用するにあたり、本設例においては、期末時点における残存期間が同様の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いることとする。

 

年次

CPI

償還金額/想定元金額(*1)

受取利息額(想定元金額×4%)

キャッシュ・フロー

摘要

発行時

100.0

100,000

 

 

 

1年後

101.0

101,000

4,040

4,040

実績値

2年後

102.0

102,010

4,080

4,080

予測値

 

 

(省略)

 

 

 

10年後

110.5

110,462

4,418

114,880

予測値

(*1) N 年後の想定元金額=額面金額×{100×(1+CPI1)×(1+CPI2) ×・・・×(1+CPIN)}/100

CPIN とはN 年後のCPI上昇率(%)のことである。

2年目以降は、見込まれるCPI上昇率1%(=5%−4%)から各年次の想定元金額を決定する。

1 年後の想定元金額 101,000=100,000×(100×1.01)/100

2 年後の想定元金額 102,010=100,000×{(100×1.01)×1.01}/100

10 年後の想定元金額 110,462=100,000×{(100×1.01)×1.019}/100

 

3 想定元金額及び各期末の受取利息額の見直し(2年後)

 

年次

CPI

償還金額/想定元金額(*2)

受取利息額(想定元金額×4%)

キャッシュ・フロー

摘要

発行時

100.0

100,000

 

 

 

1年後

101.0

101,000

4,040

4,040

実績値

2年後

104.0

104,030

4,161

4,161

実績値

3年後

107.2

107.151

4,286

4,286

予測値

 

 

(省略)

 

 

 

10年後

131.8

131,782

5,271

137,053

予測値

(*2) 3年目以降は、見込まれるCPI 上昇率 3%(=8%−5%)から各年次の想定元金額を決定する。

3年後の想定元金額 107,151=100,000×{(100×1.01×1.03)×1.03}/100

10年後の想定元金額131,782=100,000×{(100×1.01×1.03)×1.038}/100

 

4 会計処理

(1) X1年3月31日(決算日)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券

1,046

有価証券利息

(*3) 1,046

その他有価証券

3,954

その他有価証券評価差額金

(*4) 3,954

(*3) 金利調整差額の償却額 1,046(=(110,462−100,000)/10 年)

(*4) その他有価証券評価差額金 3,954(=105,000−101,046)

 

なお、利息法による場合、金利調整差額の償却額は1,000(=100,000(1年目期首の想定元金額)×5.04%(1年目の実績値に基づくキャッシュ・フローの予測による実効利子率)−4,040(受取利息額))、その他有価証券評価差額金は4,000(=105,000−101,000)となる。

また、取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法によるときには、金利調整差額の償却額は1,000(=101,000(1年目末の想定元金額)−100,000)、その他有価証券評価差額金は4,000(=105,000−101,000)となる(取得価額が取得時の想定元金額と一致していない場合には、期末時点における想定元金額に、取得価額と取得時の想定元金額との差額を利息法(継続適用を条件として定額法も可)により加減した金額を当期末の償却原価とみなす方法によることなども認められると考えられる。)。

(2) X2年3月3日(決算日)

 

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

その他有価証券

3,415

有価証券利息

(*5) 3,415

その他有価証券

15,539

その他有価証券評価差額金

(*6) 15,539

(*5) 金利調整差額の償却額 3,415(=(131,782−101,046)/9年)(2年目以降は、実績値に基づき予測値を修正した上で再計算を行う。その場合に、予測値と実績値との差額については、当該期間の見積りの修正であるため、過年度に遡及して修正せずに、当該年度以降の再計算に含める。)

(*6) その他有価証券評価差額金 15,539(=120,000−(101,046+3,415))

 

なお、利息法による場合、金利調整差額の償却額は3,030(=101,000(2年目期首の想定元金額)×7.12%(2年目の実績値に基づくキャッシュ・フローの予測による実効利子率)−4,161(受取利息額))、その他有価証券評価差額金は15,970(=120,000−(101,000+3,030))となる。

また、取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法によるときには、金利調整差額の償却額は3,030(=104,030(2年目末の想定元金額)−101,000)、その他有価証券評価差額金は15,970(=120,000−104,030)となる。

 

以上


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