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会計基準結論の背景適用指針|設例|目次

 

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成19年12月27日に公表した「工事契約に関する会計基準の適用指針」から「設例、参考」部分を抜粋したものです。

なお、オリジナルと異なる表現をしている部分があります。実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。

企業会計基準適用指針第18号

工事契約に関する会計基準の適用指針

(設例)

平成19年12年27日

企業会計基準委員会

目次

目的・適用指針・結論の背景は別に記載してあります。

設例

[設例1] 工事進行基準の会計処理 ― 見積りを変更した場合の会計処理

[設例2] 工事損失引当金の会計処理

[設例3] 為替相場の変動により工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い

参考(注記例)


設例

次の設例は、会計基準及び本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なる点に留意する必要がある。また、設例における勘定科目の名称は便宜的に示したものであり、取引の実態に即して決定することとなる。

 


[設例1] 工事進行基準の会計処理−見積りを変更した場合の会計処理

1.前提条件

@ 工事契約の施工者は、橋梁の建設についての契約を締結した。契約で取り決められた当初の工事収益総額は10,000百万円であり、施工者の工事原価総額の当初見積額は9,000百万円である。

A 橋梁の建設には3年を要する予定である。

B X1年度末において、施工者の工事原価総額の見積額は9,100百万円に増加した。

C X2年度において、顧客は契約内容を変更することとし、施工者は当該変更により工事原価は300百万円増加すると見積った。また、工事収益総額を10,500百万円とする契約条件の変更が取り決められた。

D 施工者は、決算日における工事進捗度を原価比例法により決定している。各年度で見積られた工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度は次のとおりである。

 

 

X1年度

X2年度

X3年度

契約締結時点での工事収益総額

10,000

10,000

10,000

変更額

500

500

工事収益総額

10,000

10,500

10,500

過年度に発生した工事原価の累計

2,275

6,768

当期に発生した工事原価

2,275

4,493

2,632

完成までに要する工事原価

6,825

2,632

工事原価総額

9,100

9,400

9,400

工事利益

900

1,100

1,100

決算日における工事進捗度

(*1)25%

(*2)72%

100%

(*1) X1年度末の工事進捗度 25%(=2,275百万円/9,100百万円×100%)

(*2) X2年度末の工事進捗度 72%(=6,768百万円/9,400百万円×100%)

2.会計処理

(1) X1年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,275

諸勘定

2,275

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

2,500

工事収益(*1)

2,500

(*1) 10,000百万円×25%=2,500百万円

 

(2) X2年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

4,493

諸勘定

4,493

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

5,060

工事収益(*2)

5,060

(*2) 10,500百万円×72%−2,500百万円=5,060百万円

(3) X3年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,632

諸勘定

2,632

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

2,940

工事収益(*3)

2,940

(*3) 10,500百万円 −(2,500百万円+5,060百万円)=2,940百万円

 


[設例2] 工事損失引当金の会計処理

1.前提条件

@ 工事契約の施工者は、橋梁の建設についての契約を締結した。契約で取り決められた当初の工事収益総額は10,000百万円である。施工者の工事原価総額の当初見積額は9,500百万円である。

A 橋梁の建設には3年を要する予定である。

B X1年度末及びX2年度末において、施工者の工事原価総額の見積額はそれぞれ9,600百万円及び10,500百万円に増加したが、工事契約金額の見直しは行われなかった。

C 施工者は、決算日における工事進捗度を原価比例法により算定している。各年度での見積られた工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度は次のとおりである。

 

(単位:百万円)

 

X1年度

X2年度

X3年度

工事収益総額

10,000

10,500

10,500

過年度に発生した工事原価の累計

2,400

7,560

当期に発生した工事原価

2,400

5,160

2,940

完成までに要する工事原価

7,200

2,940

工事原価総額

9,600

10,500

10,500

工事利益(損失△)

400

△500

△500

決算日における工事進捗度

(*1)25%

(*2)72%

100%

(*1) X1年度末の工事進捗度 25%(=2,400百万円/9,600百万円×100%)

(*2) X2年度末の工事進捗度 72%(=7,560百万円/10,500百万円×100%)

2.会計処理

(1) X1年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,400

諸勘定

2,400

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

2,500

工事収益(*1)

2,500

(*1) 10,000百万円×25%=2,500百万円

(2) X2年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

5,160

諸勘定

5,160

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

4,700

工事収益(*2)

4,700

(*2) 10,000百万円×72% −2,500百万円=4,700百万円

B 工事損失引当金の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

140

工事 損失引当金(*3)

140

(*3) (ア 見積工事損失 △500百万円(=10,000百万円−10,500百万円)−(イ X1年度計上利益 100百万円(=2,500百万円−2,400百万円)−(ウ X2年度計上損失 △460百万円(=4,700百万円−5,160百万円)

工事損失引当金繰入額△140百万円(=(ア−(イ−(ウ)

(2) X3年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,940

諸勘定

2,940

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

2,800

工事収益(*4)

2,800

(*4) 10,000百万円−(2,500百万円 +4,700百万円)=2,800百万円

B 工事損失引当金の取崩し

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事損失引当金

140

工事原価

140

 

 


[設例3] 為替相場の変動により工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い

1.前提条件

@ 工事契約の施工者(3月決算会社)は、橋梁の建設についての契約を締結した。契約で取り決められた当初の工事収益総額は100百万ドルであり、施工者の工事原価総額の当初見積額は9,500百万円である。

A 橋梁の建設には3年を要する予定であり、X4年3月に完成予定である。

B 対価の決済条件については、X2年6月及びX3年6月にそれぞれ35百万ドル、引渡しを行った日から2か月後に残額を決済するものとされている。

C 施工者は,決算日における工事進捗度を、原価比例法により算定している。各年度での見積られた工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度は次のとおりである。

 

 

X1年度

X2年度

X3年度

工事収益総額

(百万ドル)

100

100

100

過年度に発生した工事原価の累計

(百万円)

3,800

6,650

当期に発生した工事原価

(百万円)

3,800

2,850

2,850

完成までに要する工事原価

(百万円)

5,700

2,850

工事原価総額

(百万円)

9,500

9,500

9,500

決算日における工事進捗度

 

(*1)40%

(*2)70%

100%

(*1) X1年度末の工事進捗度 40%(=3,800 百万円/9,500 百万円×100%)

(*2) X2年度末の工事進捗度 70%(=6,650 百万円/9,500 百万円×100%)

D 各期の工事収益については、期中平均相場により換算している。

E 工事損失引当金の計上の要否の判断及び計上すべき工事損失引当金の額の算定とも、為替相場の変動による影響額が含まれる。なお、この際算定する工事収益総額のうち、将来分の工事収益については、決算日の為替相場を用いて換算している。

実行予算等の作成時の為替相場は1ドル=100円であり、各期の期中平均相場及び決算日の為替相場は次のとおりである。 (単位:円/$)

 

会計期間

期中平均相場

決算日の為替相場

X1年度

90

80

X2年度

100

110

X3年度

120

130

 

2.会計処理

(1) X1年度の会計処理

@ 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

3,800

諸勘定

3,800

 

A 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

3,600

工事収益(*1)

3,600

(*1) 100百ドル×40%×X1年度の期中平均相場90円/ドル=3,600百万円

B 工事損失引当金の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

900

工事損失引当金(*2)

900

(*2) 工事損失の発生が見込まれるか否かの判断

 

 

外貨

(百万ドル)

換算レート

(円)

円貨

(百万円)

工事収益総額

過年度の累計

 

当期分

40

90

3,600

将来分

60

80

4,800

100

 

8,400

工事原価総額

 

 

9,500

見積工事損失(△)

 

 

△1,100

工事損失引当金の算定

見積工事損失△1,100百万円−(3,600百万円−3,800百万円)=△900百万円

C 工事未収入金の期末為替換算

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

為替差損(*3)

400

工事未収入金

400

(*3) 40百万ドル×X1年度末の為替相場80円/ドル−3,600百万円=△400百万円

(2) X2年度の会計処理

@ 工事契約の対価の入金

X2年6月に35百万ドルが入金された。入金時の為替相場は95円である。

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金預金(*4)

3,325

工事未収入金(*5)

2,800

 

 

為替差益

525

(*4) 35百万ドル×入金時の為替相場95円/ドル=3,325百万円

(*5) 35百万ドル×X1年度末の為替相場80円/ドル=2,800百万円

 

A 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,850

諸勘定

2,850

 

B 工事収益の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

3,000

工事収益(*6)

3,000

(*6) (100百ドル×70%−40百万ドル)×X2年度の期中平均相場100円/ドル=3,000百万円

C 工事損失引当金の戻入

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事損失引当金(*7)

900

工事原価

900

(*7) 工事損失の発生が見込まれるか否かの判断

 

 

外貨

(百万ドル)

換算レート

(円)

円貨

(百万円)

工事収益総額

過年度の累計

40

 

3,600

当期分

30

100

3,000

将来分

30

110

3,300

100

 

9,900

工事原価総額

 

 

9,500

見積工事損失(△)

 

 

400

工事損失が見込まれないこととなったため、前年度に計上した工事損失引当金の戻入れを行う。

C 工事未収入金の期末為替換算

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

450

為替差益(*8)

450

(*8) 35百万ドル×X2年度末の為替相場110円/ドル−3,400百万円=450百万円

(3) X3年度の会計処理

@ 工事契約の対価の入金

X3年6月に35百万ドルが入金された。入金時の為替相場は115円である。

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金預金(*9)

4,025

工事未収入金(*10)

3,850

 

 

為替差益

175

(*9) 35百万ドル×入金時の為替相場115円/ドル=4,025百万円

(*10) 35百万ドル×X2年度末の為替相場110円/ドル=3,850百万円

A 工事原価の計上

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事原価

2,850

諸勘定

2,850

 

B 工事収益の計上

X4年3月に工事が完成し、引渡しを行った。

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

3,600

工事収益(*11)

3,600

(*11) (100百万ドル−70百万ドル)×X3年度の期中平均相場120円/ドル=3,600百万円

 

C 工事未収入金の期末為替換算

 

(単位:百万円)

借方

貸方

勘定科目

金額

勘定科目

金額

工事未収入金

300

為替差益(*12)

300

(*12) 30百万ドル×X3年度末の為替相場130円/ドル−3,600百万円=300百万円

 


参考(注記例)

1.工事契約に係る認識基準及び決算日における工事進捗度を見積るために用いた方法

(1) 過年度に着手した工事契約について、会計基準第25項の定めを適用しない場合

 

(重要な会計方針)

完成工事高及び完成工事原価の認識基準

当期末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事契約については工事進行基準を適用し、その他の工事契約については工事完成基準を適用している。工事進行基準を適用する工事の当期末における進捗度の見積りは、原価比例法によっている。

なお、平成21年3月31日以前に着手した工事契約のうち、長期大型の工事(工期Xか月超、請負金額X億円以上)に係る収益の計上については工事進行基準を適用し、その他の工事については工事完成基準を適用している。

 

(2) 過年度に着手した工事契約について、会計基準第25項の定めを適用する場合

 

(重要な会計方針)

完成工事高及び完成工事原価の認識基準

当期末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事契約については工事進行基準を適用し、その他の工事契約については、工事完成基準を適用している。なお、工事進行基準を適用する工事の当期末における進捗度の見積りは、原価比例法によっている。

 

2.当期の工事損失引当金繰入額

 

(損益計算書関係 売上原価の注記)

売上原価に含まれる工事損失引当金繰入額は、XX 百万円である。

 

3.工事損失引当金に対応する棚卸資産の金額

(1) 工事損失引当金が計上されている工事契約について、未成工事支出金等の棚卸資産を計上している場合

 

(貸借対照表関係 未成工事支出金及び工事損失引当金の注記)

損失の発生が見込まれる工事契約に係る未成工事支出金と工事損失引当金は、相殺せずに両建てで表示している。

損失の発生が見込まれる工事契約に係る未成工事支出金のうち、工事損失引当金に対応する額はXX百万円である。

 

 

(貸借対照表関係 未成工事支出金及び工事損失引当金の注記)

損失の発生が見込まれる工事契約に係る未成工事支出金と工事損失引当金は、相殺せずに両建てで表示している。

損失の発生が見込まれる工事契約に係る未成工事支出金のうち、工事損失引当金に対応する額はXX百万円である。

 

(2) 工事損失引当金が計上されている工事契約について、棚卸資産と工事損失引当金を相殺して純額で表示した場合

 

(貸借対照表関係 未成工事支出金及び工事損失引当金の注記)

損失の発生が見込まれる工事契約に係る未成工事支出金は、これに対応する工事損失引当金XX 百万円を相殺して表示している。

 

 

(貸借対照表関係 製品、仕掛品及び工事損失引当金の注記)

損失の発生が見込まれる工事契約に係る棚卸資産は、これに対応する工事損失引当金XX百万円(うち、製品に係る工事損失引当金XX百万円、仕掛品に係る工事損失引当金XX百万円)を相殺して表示している。

 

4.会計基準第25項の定めを適用した場合の適用初年度の注記

 

(損益計算書関係 特別利益の注記)

過年度工事利益は、企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」第25項に基づき、平成21年4月1日時点で存在するすべての工事契約について同会計基準を適用したことによる過年度の工事の進捗に見合う利益である。なお、過年度の工事の進捗に見合う工事収益の額及び工事原価の額は、それぞれXX百万円及びXX百万円である。

 

以上


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