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会計基準|結論の背景|適用指針設例目次

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成19年3月30日に公表した「リース取引に係る会計基準」から「結論の背景」部分を抜粋したものです。なお、実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。

企業会計基準第13号

リース取引に係る会計基準

(結論の背景)

改正平成19年3月30日

企業会計基準委員会

平成5年6月17日

企業会計審議会第一部会

目次

結論の背景

経緯

用語の定義及びリース取引の分類

会計処理

ファイナンス・リース取引の会計処理

(基本的な考え方)

(借手におけるリース資産の償却)

(貸手における会計処理)

開示

ファイナンス・リース取引の表示及び注記

(借手側)

(貸手側)

適用時期等


結論の背景

経緯

28. 我が国のリース取引に関する会計基準としては、平成5年6月に企業会計審議会第一部会から改正前会計基準が公表されている。改正前会計基準では、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととされており、その理由として、「リース取引に係る会計基準に関する意見書」(企業会計審議会第一部会平成5年6月17日)では、「我が国の現行の企業会計実務においては、リース取引は、その取引契約に係る法的形式に従って、賃貸借取引として処理されている。しかしながら、リース取引の中には、その経済的実態が、当該物件を売買した場合と同様の状態にあると認められるものがかなり増加してきている。かかるリース取引について、これを賃貸借取引として処理することは、その取引実態を財務諸表に的確に反映するものとはいいがたく、このため、リース取引に関する会計処理及び開示方法を総合的に見直し、公正妥当な会計基準を設定することが、広く各方面から求められてきている。」と記載されている。

29. 改正前会計基準では、法的には賃貸借取引であるリース取引について、経済的実態に着目し通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を採用しており、これはファイナンス・リース取引と資産の割賦売買取引との会計処理の比較可能性を考慮したものと考えられる。また、改正前会計基準は、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類する点や、借手がリース資産を固定資産として計上する点など、国際会計基準及び米国会計基準と平仄を合わせるものであった。

30. 一方、改正前会計基準では、ファイナンス・リース取引のうち所有権移転外ファイナンス・リース取引については、一定の注記を要件として通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(以下「例外処理」という。)を採用することを認めてきた。現状では大半の企業において、この例外処理が採用されている。

31. 企業会計基準委員会(以下「当委員会」という。)では、この例外処理の再検討について、平成13年11月にテーマ協議会から提言を受け、平成14年7月より審議を開始した。改正前会計基準に対する当委員会の問題意識は、主として次の点であった。

(1) 会計上の情報開示の観点からは、ファイナンス・リース取引については、借手において資産及び負債を認識する必要性がある。特に、いわゆるレンタルと異なり、使用の有無にかかわらず借手はリース料の支払義務を負い、キャッシュ・フローは固定されているため、借手は債務を計上すべきである。

(2) 本来、代替的な処理が認められるのは、異なった経済的実態に異なる会計処理を適用することで、事実をより適切に伝えられる場合であるが、例外処理がほぼすべてを占める現状は、会計基準の趣旨を否定するような特異な状況であり、早急に是正される必要がある。

32. 審議の過程では、主として、我が国のリース取引は資金を融通する金融ではなく物を融通する物融であり、諸外国のファイナンス・リースと異なり賃貸借としての性質が強いことを理由とし、例外処理を存続すべきとの意見も表明された。また、リース契約を通じたビジネスの手法が確定決算主義をとる税制と密接に関係してきたため、会計上の情報開示の観点のみでは結論を得ることが難しい課題であった。

33. 当委員会では、4年にわたりこのテーマを審議してきたが、その間、平成16年3月に「所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理に関する検討の中間報告」を公表し、また、平成18年7月に試案「リース取引に関する会計基準(案)」、平成18年12月に企業会計基準公開草案第17号「リース取引に関する会計基準(案)」を公表している。

審議の過程では、関係各方面からの意見聴取も行い、我が国のリース取引の実態を踏まえ議論を行ってきたが、今般、改正前会計基準において認められていた例外処理を廃止するとの結論に至り、基準を改正することとした。

34. また、当委員会では国際会計基準審議会との間で行っている会計基準のコンバージェンスに向けた共同プロジェクトにおいて、リース会計を短期的な検討項目として位置付けており、この基準の改正が行われることにより、現状の国際会計基準第17号「リース」と平仄が合い、国際的な会計基準間のコンバージェンスに寄与することとなる。

なお、国際会計基準審議会では、平成18年7月に現状のリース会計に係る国際会計基準の改正を議題に加えている。そこでは、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区別をすることなく、リース契約に係る使用権を資産計上していくことを基礎に検討がなされる予定である。これは、米国財務会計基準審議会との共同プロジェクトとされているが、最終的な基準の公表までには、相当程度の期間を要すると見込まれる。

用語の定義及びリース取引の分類

35. 用語の定義のうち第4項から第6項については、改正前会計基準における定義を変更していない。また、リース取引の分類についても、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類した上で、ファイナンス・リース取引について、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引に分類する改正前会計基準の方法を変更していない(第8項参照)。

36. 第5項にいう「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引に準ずるリース取引」とは、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し相当の違約金を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引をいう。

また、「借手が、当該契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」とは、当該リース物件を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受することをいい、「当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」とは、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することをいう。

37. 本会計基準では、リース取引開始日において、ファイナンス・リース取引の借手であればリース資産及びリース債務、あるいは貸手であればリース債権又はリース投資資産を計上するものとしている(第10項及び第13項参照)。この「リース取引開始日」とは、借手が、リース物件を使用収益する権利を行使することができることとなった日をいうものとしている(第7項参照)。一般的には、当該リース物件に係る借受証に記載された借受日がそれに該当する場合が多いものと考えられる。

会計処理

ファイナンス・リース取引の会計処理

(基本的な考え方)

38. 改正前会計基準では、ファイナンス・リース取引について、原則として通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととしており、この基本的な考え方は本会計基準でも変更していない(第9項参照)。なお、ファイナンス・リース取引は、リース物件の取得と資金調達が一体として行われ、通常は利用期間と資金調達の期間が一致するため、通常の売買取引と類似性を有するものの、まったく同じ会計処理になるわけではない。また、ファイナンス・リース取引のうち所有権移転外ファイナンス・リース取引については、次の点で、所有権移転ファイナンス・リース取引と異なる性質を有する。

(1) 経済的にはリース物件の売買及び融資と類似の性格を有する一方で、法的には賃貸借の性格を有し、また、役務提供が組み込まれる場合が多く、複合的な性格を有する。

(2) リース物件の耐用年数とリース期間は異なる場合が多く、また、リース物件の返還が行われるため、物件そのものの売買というよりは、使用する権利の売買の性格を有する。

(3) 借手が資産の使用に必要なコスト(リース物件の取得価額、金利相当額、維持管理費用相当額、役務提供相当額など)を、通常、契約期間にわたる定額のキャッシュ・フローとして確定する。

したがって、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引では、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を具体的に適用するにあたり、リース資産の減価償却費の算定(第12項及び第39項参照)等で異なる点が生じる。

(借手におけるリース資産の償却)

39. 所有権移転ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得と同様の取引と考えられるため、自己所有の固定資産と同一の方法により減価償却費を算定することとした。

一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得とは異なりリース物件を使用できる期間がリース期間に限定されるという特徴があるため、原則として、リース資産の償却期間はリース期間とし、残存価額はゼロとしている(第12項参照)。また、償却方法については、次の観点から、企業の実態に応じ、自己所有の固定資産と異なる償却方法を選択することができるものとした。

(1) 所有権移転外ファイナンス・リース取引は、前項に記載のとおり、リース物件の取得とは異なる性質も有すること

(2) 我が国では、これまで自己所有の固定資産について残存価額を10 パーセントとして定率法の償却率を計算する方法が広く採用されてきており、所有権移転外ファイナンス・リース取引に、自己所有の固定資産と同一の償却方法を適用することが困難であること

(貸手における会計処理)

40. 所有権移転ファイナンス・リース取引の場合は、貸手は、借手からのリース料と割安購入選択権の行使価額で回収するが、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合はリース料と見積残存価額の価値により回収を図る点で差異がある。この差異を踏まえ、所有権移転ファイナンス・リース取引で生じる資産はリース債権に計上し、所有権移転外ファイナンス・リース取引で生じる資産はリース投資資産に計上することとした。この場合のリース投資資産は、将来のリース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産である。

41. リース債権は金融商品と考えられ、また、リース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分については、金融商品的な性格を有すると考えられる。したがって、これらについては、貸倒見積高の算定等などにおいて、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の定めに従う。

開示

ファイナンス・リース取引の表示及び注記

(借手側)

42. ファイナンス・リース取引により生じたリース資産については、リース資産の合計額を表す観点や、実務上の過重負担の回避などを考慮し、有形固定資産、無形固定資産の別に、一括してリース資産として表示することを原則とした(第16項参照)。ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めることも認めることとした。なお、例えば、所有権移転ファイナンス・リース取引には有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含める方法を適用し、所有権移転外ファイナンス・リース取引には、有形固定資産、無形固定資産の別に一括してリース資産として表示する方法を適用することも認められる。

43. 借手における注記としては、リース資産の内容と減価償却の方法を記載することとした(第19項参照)。リース資産の内容について、勘定科目別に金額を注記することも考えられるが、コスト・ベネフィットの観点から主な資産の種類等を記載することで足りることとした。

(貸手側)

44. 貸手におけるリース債権及びリース投資資産については、一般的な流動固定の区分基準に従い、当該企業の営業の主目的で生じたものであるか否かにより、流動資産に表示するか、固定資産に表示するかを区分することとした(第18項参照)。

45. 貸手における注記としては、リース投資資産に含まれるリース料債権部分と見積残存価額部分では性格が異なるため、各々の金額を記載することとした。また、リース料債権部分と見積残存価額部分(各々、利息相当額控除前)とリース投資資産残高との関係を明らかにするために、受取利息相当額を注記することとした。さらに、リース債権及びリース投資資産については、当該企業の主目的たる営業取引により生じたものである場合には流動資産に表示されること、また、通常は回収が長期にわたることから、リース債権及びリース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における 1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額をそれぞれ注記することとした(第20項及び第21項参照)。

適用時期等

46. 本会計基準は平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用することとしているが、実務面での本会計基準の円滑な適用を図るため、四半期財務諸表に関しては、本会計基準は、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から適用することとしている。

47. 第23項ただし書きに定める財務諸表に係る早期適用を行う場合、その中間連結会計期間及び中間会計期間には適用しないことができることとし、この場合に、通常必要とされる中間・年度の会計処理の首尾一貫性の注記は要しないものとした。これは、当該中間連結会計期間及び中間会計期間において、改正前会計基準で必要とされていた注記がなされ、比較可能性が確保されているためである。

以上


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