(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成23年3月25日に公表したものです。なお、オリジナルと異なる表現をしている部分があります。実務への適用にあたっては念のためにオリジナルの基準等を確認してください。
企業会計基準適用指針第21号
資産除去債務に関する会計基準の適用指針
(目的・適用指針・結論の背景・設例) |
平成20年3月31日
改正平成23年3月25日
企業会計基準委員会
目次
目的
適用指針
会計処理
資産除去債務の負債計上
資産除去債務の算定
資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分
開示
適用時期等
議決
結論の背景
会計処理
資産除去債務の負債計上
資産除去債務の算定
資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分
開示
設例
[設例1]資産除去債務の会計処理
[設例2]資産除去債務の算定
[設例3]資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の会計処理
[設例4]資産除去債務が使用の都度発生する場合の費用配分
[設例5]資産除去債務の見積りの変更
[設例6]賃借建物に係る原状回復費用の処理
[設例7-1]資産除去債務に関する注記
[設例7-2]資産除去債務に関する注記(多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合)
[設例8]合理的な見積りができないため資産除去債務を計上していない場合の注記
目的
1. 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)が平成20年3月31日に公表されている。本適用指針は、当該会計基準を適用する際の指針を定めるものである。
適用指針
会計処理
資産除去債務の負債計上
(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合)
2. 会計基準第5項に定める資産除去債務を合理的に見積ることができない場合とは、決算日現在入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいう。このような場合には、会計基準第16項(5)に定める注記を行わなければならない。
資産除去債務の算定
(割引前将来キャッシュ・フローの見積りにあたっての留意点)
3. 企業は、次の情報を基礎として、自己の支出見積りとしての有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積る。
(1) 対象となる有形固定資産の除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積り(2)対象となる有形固定資産を取得した際に、取引価額から控除された当該資産に係る除去費用の算定の基礎となった数値
(3) 過去において類似の資産について発生した除去費用の実績
(4) 当該有形固定資産への投資の意思決定を行う際に見積られた除去費用
(5) 有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)を行う業者など第三者からの情報企業は、(1)から(5)により見積られた金額に、インフレ率や見積値から乖離するリスクを勘案する。また、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づき、技術革新などによる影響額を見積ることができる場合には、これを反映させる。[設例2]
なお、多数の有形固定資産について同種の資産除去債務が生じている場合には、個々の有形固定資産に係る資産除去債務の重要性の判断に基づき、有形固定資産をその種類や場所等に基づいて集約し、概括的に見積ることができる。
4. 将来キャッシュ・フローの見積りには、法人税等の影響額を含めない。
(資産除去債務の算定に際して用いられる割引率)
5. 将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されるため、資産除去債務の算定に際して用いられる割引率は、将来キャッシュ・フローが発生すると予想される時点までの期間に対応する貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の割引率とする(会計基準第6項(2))。
資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分
(資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の留意点)
6. 資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える(会計基準第7項)。
ただし、資産除去債務の対象が複数の有形固定資産から構成され、そのうち一部の資産については全体の除去以前により短い周期で除去され、再び取得される場合がある。この場合には、当該資産について、より短い周期での除去に係る法律上の義務及びそれに準ずるものはないものの、除去に係る法律上の義務等を有し資産除去債務の対象となる主たる資産があることから、主たる資産の除去に伴い当該構成資産が同時に除去されるものとみて、複数の有形固定資産の資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用を主たる資産の帳簿価額に加えることとする。[設例3]
7. 主たる資産の帳簿価額の増加額として資産計上された当該構成資産の除去費用は、減価償却を通じて、当該主たる資産の耐用年数にわたり各期に費用配分する。
(特別の法令等により除去に係る費用を適切に計上する方法がある場合)
8. 特別の法令等により、有形固定資産の除去に係るサービス(除去サービス)の費消を当該有形固定資産の使用に応じて各期間で適切に費用計上する方法がある場合には、当該費用計上方法を用いることができる。
ただし、この場合でも、会計基準の定めに基づき、当該有形固定資産の資産除去債務を負債に計上し、これに対応する除去費用を関連する有形固定資産の帳簿価額に加える方法で資産として計上しなければならない。また、当該費用計上方法については、注記する必要がある。
(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合)
9. 建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる。[設例6]
開示
(資産除去債務に関する注記)
10. 「資産除去債務の内容についての簡潔な説明」(会計基準第16項(1))においては、資産除去債務の発生原因となっている法的規制又は契約等の概要(法令等の条項及び契約条件等)を簡潔に記載する。[設例7-1]
なお、多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合には、有形固定資産の種類や場所等に基づいて、会計基準第16項で求められている注記をまとめて記載することができる。[設例7-2]
(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の注記)
11. 資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の「その旨及びその理由」の注記(会計基準第16項(5))にあたっては、「資産除去債務の内容についての簡潔な説明」(会計基準第16項(1))と関連付けて記載することが必要である。[設例8]
(資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い)
12. 資産除去債務を実際に履行した場合、その支出額についてはキャッシュ・フロー計算書上「投資活動によるキャッシュ・フロー」の項目として取り扱う。
13. 重要な資産除去債務を計上したときは、キャッシュ・フロー計算書に「重要な非資金取引」として注記を行う。
適用時期等
14. 平成20年公表の本適用指針(以下「平成20年適用指針」という。)の適用時期は、会計基準と同様とする。
15. 建物等賃借契約に関連して支出している敷金について第9項の処理を行う場合には、適用初年度の期首において、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額のうち前期以前の負担に属する金額を、当期の損失(原則として特別損失)として計上する。
15-2. 平成23年改正の本適用指針(以下「平成23年改正適用指針」という。)は、平成23年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
議決
16. 平成20年適用指針は、第149回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
16-2. 平成23年改正適用指針は、第221回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
結論の背景
会計処理
資産除去債務の負債計上
(資産除去債務を合理的に見積ることができない場合)
17. 資産除去債務の履行時期や除去の方法が明確にならないことなどにより、その金額が確定しない場合でも、履行時期の範囲及び蓋然性について合理的に見積るための情報が入手可能なときは、資産除去債務を合理的に見積ることができる場合に該当する。例えば、キャッシュ・フローの発生額は確定していないが、キャッシュ・フローの発生確率の分布が推定可能であるために当該発生額の見積りが可能な場合には、資産除去債務を合理的に見積って、負債として計上することが必要と考えられる(第2項参照)。
資産除去債務の算定
(割引前将来キャッシュ・フローの見積りにあたっての留意点)
18. 将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づき見積られる必要があるため、本適用指針では、実務上、その見積りにあたって必要と考えられる留意点を示している(第3項及び第4項参照)。
19. 有害物質等に汚染された有形固定資産については、法令等によりその平均的な処理作業が定められ、その工程が明確にされているため、ほぼ画一的に将来キャッシュ・フローを見積ることができる場合がある。このような場合において、将来キャッシュ・フローの発生時期の見積りに必要な情報が得られるときには、インフレーション等を考慮し当該発生時期における将来キャッシュ・フローを見積った上で、現在価値に割引くこととなる(第3項(1)参照)。
20. 有害物質等が含まれる固定資産を売買する場合、法令に基づき売り手に告知義務が課され、売買金額から除去費用相当額が控除される場合がある。新たに取得した有形固定資産あるいは類似の資産について、除去費用が明らかとなっている場合には、当該金額を基礎とすることができるものとした(第3項(2)参照)。
21. 除去について平均的な処理作業に要する価格が明らかでない場合、過去において類似の資産について発生した除去費用の実績を基礎として将来キャッシュ・フローを見積ることが考えられる。また、各地域に分散した多数の同種の資産について将来キャッシュ・フローを見積る場合、毎期末時点で、発生実績などに基づき、除去が予想される固定資産の面積等を見積り、過去の実績から算定された面積当たりの除去費用を乗じて見積ることが考えられる(第3項(3)参照)。
22. 資産除去債務の測定値の属性を自己の支出見積りとしたことから、除去サービスを行う業者など、第三者へ見積りを依頼することまでは求めないこととした。ただし、合理的で説明可能な仮定及び予測を置くに際し、第三者からの情報を適宜利用することが考えられる(第3項(5)参照)。
(資産除去債務の算定に際して用いられる割引率)
23. 資産除去債務の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの割引率とする。したがって、この場合には、原則として将来キャッシュ・フローが発生するまでの期間に対応した利付国債の流通利回りなどを参考に割引率を決定することとなる。
なお、割引前将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることに対応して、割引率も税引前の数値を用いる必要がある(第5項参照)。
資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分
(資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の留意点)
24. 資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合、一般に、除去に係る法的義務等を有し、資産除去債務の対象となる主たる資産のほかに、単独では除去に係る法的義務等を有さず、より短い周期で更新される資産が含まれる。
当初取得した主たる資産とは別により短い周期で更新される資産は、主たる資産を含む有形固定資産全体の除去より短い周期で除去され、同様の資産が再度取得されることにより有形固定資産全体としての機能が維持されることになるが、その除去時点ではより短い周期で更新される資産も含めた有形固定資産全体を一括して除去することが必要となる。しかしながら、これらの資産に係る資産除去債務を個々の資産ごとに捉えることとすると、主たる資産の除去時点で存在するより短い周期で更新される資産の帳簿価額には、主たる資産の当初取得時点において、資産除去債務に対応する除去費用が計上されていないこととなる。
このため、複数の有形固定資産から構成される場合、当初取得時に一括して見積られた資産除去債務とそれに対応する除去費用には、より短い周期で除去される資産に係る除去費用も含め、主たる資産の除去に係る支出とみて、主たる資産の帳簿価額に加えることとした(第6項参照)。
このとき、主たる資産を除去するまでの間に行われる、より短い周期で実施される資産の除去及び再取得に係る支出は資産除去債務の対象とせず、主たる資産の除去と同時に行われる資産の除去に係る支出を対象とすることに留意する必要がある。
25. なお、個々の資産が除去に係る法的義務等を有するときには、当該複数の有形固定資産に対し、一括して資産除去債務を見積るのではなく、個々の有形固定資産について見積り、対応する除去費用を個々の有形固定資産の帳簿価額に加える必要がある。
(特別の法令等により除去に係る費用を適切に計上する方法がある場合)
26. 会計基準では、引当金処理の場合には有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないという問題があることから、国際的な会計基準とのコンバージェンス等の観点も考慮し、資産負債の両建処理を求めることとしている。この両建処理においては、対象となる有形固定資産の帳簿価額に加算された金額は当該有形固定資産と同一の方法で減価償却し、割引前のキャッシュ・フローとの差額については、時の経過による資産除去債務の調整額として利息法により費用配分する方法が通常の処理方法となる。
しかしながら、特別の法令等により、除去サービスの費消の態様を考慮して当該有形固定資産の使用に応じて各期間に適切に費用計上する会計方針を採用する場合、会計基準の通常の処理方法による費用配分に照らし、会計上、合理的な費用配分と考えられる場合がある。
このため、本適用指針では、そのような場合には、特別の法令等に従った費用配分方法を採用することができるものとした(第8項参照)。
ただし、その場合でも、貸借対照表における両建処理を妥当とする根拠が否定されるものではないため、通常の処理方法による負債計上額に対する不足額があるときは、当該不足額が資産除去債務に計上されることとなる。
(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合の取扱い)
27. 資産除去債務とそれに対応する除去費用の会計処理と敷金の会計処理は、本来個別に行われる必要があると考えられる。しかしながら、建物等の賃借契約において敷金を支出している場合、賃借建物等に関連する資産除去債務とこれに対応する除去費用を負債及び資産として両建処理すると、敷金と資産除去債務に対応する除去費用が二重に資産計上されるという見方もある。本適用指針では、資産除去債務に係る実務負担を考慮し、賃借契約に関連する敷金が資産に計上されている場合には、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上する方法によることができることとした(第9項参照)。
この処理による場合、当期の負担に属する金額は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間など合理的な償却期間に基づいて算定することが適当と考えられる。
なお、当該償却期間等を算定することが困難で、決算日現在で入手可能なすべての証拠を勘案して最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合には、会計基準第16項(5)に定める開示を行う必要がある。
開示
(資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い)
28. キャッシュ・フロー計算書上、資産除去債務の履行については、「営業活動によるキャッシュ・フロー」として取り扱う方法と、「投資活動によるキャッシュ・フロー」として取り扱う方法が考えられる。現行の実務における資産の除去に関するキャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」として処理していることも多いと考えられ、また、投資活動による支出は一般的には固定資産の取得時に発生するものであるため、除去時の支出を投資活動による支出とすることは適切ではないとの見方もある。
しかし、会計基準では、資産除去債務に対応する除去費用を有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理するものとしていること(会計基準第7項)を考慮すると、固定資産の取得による支出と同様に、投資活動による支出と見ることが整合的と考えられる。また、固定資産の除去に伴う支出を固定資産の売却収入の控除項目と考えれば、投資活動によるキャッシュ・フローとみることができることから、資産除去債務の履行に係る支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」に含めることとした(第12項参照)。
29. 固定資産の取得に伴う資産除去債務の認識は、資金の移動を伴わずに資産及び負債を計上するものであり、資産除去債務が将来の支出となることから、重要性がある場合、「重要な非資金取引」として注記することとなる(第13項参照)。
30. (削除)
30-2. 平成23年改正適用指針では、平成23年の企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」の改正に伴い、四半期財務諸表における注記を定めた第30項を削除した。
設例
次の設例は、会計基準及び本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
[設例1]資産除去債務の会計処理
1. 前提条件
Y社は、20X1年4月1日に設備Aを取得し、使用を開始した。当該設備の取得原価は10,000、耐用年数は5年であり、Y社には当該設備を使用後に除去する法的義務がある。
Y社が当該設備を除去するときの支出は1,000と見積られている。
20X6年3月31日に設備Aが除去された。当該設備の除去に係る支出は1,050であった。
資産除去債務は取得時にのみ発生するものとし、Y社は当該設備について残存価額0で定額法により減価償却を行っている。割引率は3.0%とする。Y社の決算日は3月31日であるものとする。
2. 会計処理
(1) 20X1年4月1日
|
設備Aの取得と関連する資産除去債務の計上
借方 |
貸方 |
有形固定資産(設備A) |
10,863 |
現金預金 |
10,000 |
|
|
資産除去債務(*1) |
863 |
(*1)将来キャッシュ・フロー見積額1,000/(1.03)5=863
|
(2) 20X2年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
26 |
資産除去債務(*2) |
26 |
(*2)20X1年4月1日における資産除去債務863×3.0%=26
|
|
設備Aと資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*3) |
2,173 |
減価償却累計額 |
2,173 |
(*3)設備Aの減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863/5年=2,173
|
(3) 20X3年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
27 |
資産除去債務(*4) |
27 |
(*4)20X2年3月31日における資産除去債務(863+26)×3.0%=27
|
|
設備Aと資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*5) |
2,173 |
減価償却累計額 |
2,173 |
(*5)設備Aの減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863/5年=2,173
|
(4) 20X4年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
27 |
資産除去債務(*6) |
27 |
(*6)20X3年3月31日における資産除去債務(863+26+27)×3.0%=27
|
|
設備Aと資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*7) |
2,173 |
減価償却累計額 |
2,173 |
(*7)設備Aの減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863/5年=2,173
|
(5) 20X5年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
28 |
資産除去債務(*8) |
28 |
(*8)20X4年3月31日における資産除去債務(863+26+27+27)×3.0%=28
|
|
設備Aと資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*9) |
2,173 |
減価償却累計額 |
2,173 |
(*9)設備Aの減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863/5年=2,173
|
(6) 20X6年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
29 |
資産除去債務(*10) |
29 |
(*10)20X5年3月31日における資産除去債務(863+26+27+27+28)×3.0%=29
|
|
設備Aと資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*11) |
2,171 |
減価償却累計額 |
2,171 |
(*11)設備Aの減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863-173×4=2,171
|
|
設備Aの除去及び資産除去債務の履行
設備Aを使用終了に伴い除去することとする。除去に係る支出が当初の見積りを上回ったため、差額を費用計上する。
借方 |
貸方 |
減価償却累計額 |
10,863 |
有形固定資産(設備A) |
10,863 |
資産除去債務(*12) |
1,000 |
現金預金 |
1,050 |
費用(履行差額) |
50 |
|
|
(*12)20X6年3月31日における資産除去債務863+26+27+27+28+29=1,000
|
[設例2]資産除去債務の算定
1.前提条件
資源採掘業を営むY社は、20X1年4月1日に採掘を目的として土地所有者Zより土地Aを借り受け、資源採掘施設Bを建設し操業を開始した。Y社は資源の予測埋蔵量に基づく採掘計画により、土地Aについて10年にわたる事業用定期借地権契約を締結した。Y社は当該契約に基づき、契約期間満了となる10年後に施設Bを解体し除去するとともに、採掘跡地を埋め戻して土地Aを返還しなければならない。過去、Y社は資源採掘施設の解体等を専門業者に請け負わせ、跡地の埋戻しは自らが行った実績がある。
Y社は、施設Bの解体等に係る割引前の将来キャッシュ・フローの見積金額に期待値を使用し、また、埋戻しに係る割引前の将来キャッシュ・フローの見積金額には最頻値を使用する。
なお、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクは、個々の将来キャッシュ・フローの見積りに反映させる。
Y社の決算日は3月31日である。
2.見積りの過程
(1) 資源採掘施設Bの解体に係る予想労務費は、現在において解体業に従事する者を雇うのに要する平均的な賃金を基礎とする。Y社は、生起し得る複数の将来キャッシュ・フロー(見積値から乖離するリスクを反映済み)及びその発生確率を次のように予測し、加重平均する。
|
インフレ率補正前
予測キャッシュ・フロー
|
発生確率 |
期待値 |
700 |
30% |
210 |
1,100 |
50% |
550 |
1,200 |
20% |
240 |
|
|
1,000 |
|
(2) Y社は、解体業者が施設Bの解体にかける間接費及び設備費用を、労務費の80%と仮定する。
(3) 解体業者は、労務費及び間接費等に利益を加える。Y社は、解体業者が資源採掘施設を解体し除去する際に稼得する利益は、過去の実績から労務費及び間接費等の合計額の20%であると仮定する。
(4) Y社は、20X1年3月に自社で行った半分程度の規模の採掘跡地の埋戻しに要した社内の人件費及び間接費等の実績440に基づき、土地Aの埋戻しに係る人件費及び間接費等を2倍の880と予測する。また、Y社は当該埋戻しにも使用する予定の汎用的な工機の買替えを2年後に予定しているため、これによる人件費及び間接費等の削減の仮定をおき、さらに見積値から乖離するリスクを考慮して、人件費及び間接費等の合計を870(インフレ率補正前)と見積る。
(5) 20X1年4月1日現在における利付国債(残存期間10年)の流通利回りは3%である。
(6) Y社は、10年間のインフレ率は年平均2%となると予測する。
3.20X1年4月1日現在において当初認識される資産除去債務
|
施設Bの解体に係る予測労務費 |
1,000 |
施設Bの解体に係る予測間接費等(1,000×80%) |
800 |
解体業者の利益加算((1,000+800)×20%) |
360 |
埋戻しに係る予測人件費及び予測間接費等 |
870 |
インフレ率補正前の将来キャッシュ・フロー |
3,030 |
インフレ率(10年にわたり2%と仮定)補正後の将来キャッシュ・フロー(*1) |
3,694 |
利付国債(残存期間10年)の流通利回り3%による割引現在価値(=当初認識される資産除去債務)(*2) |
2,749 |
(*1)3,030×(1.02)10=3,694
(*2)3,694/(1.03)10=2,749
|
[設例3]資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の会計処理
1.前提条件
Y社は、2X01年4月1日に設備Aと設備Bを取得し、一体として使用を開始した。設備Aの取得原価は15,000、耐用年数は9年であり、設備Bの取得原価は9,000、耐用年数は3年である。
設備Aはその使用後、除去する法的義務があり、設備Bは設備Aの除去に際し同時に除去される。ただし、設備Bは設備Aよりも短い周期で更新され、その際の設備Bのみの除去についての法的義務はない。Y社が設備Aを除去するときの支出は700、設備Bを除去するときの支出は300と見積られている。
2X10年3月31日に設備Aと設備Bが除去された。当該設備の除去に係る支出は1,000であった。Y社はこれらの設備について残存価額0で定額法により減価償却を行っている。
Y社の決算日は3月31日である。なお、ここでは簡便化のため、時間価値の考慮(割引)はしていない。
2.会計処理
(1) 2X01年4月1日
|
設備A、Bの取得と関連する資産除去債務の計上
設備Aには関連する除去債務があり、また、設備Aの除去に伴い設備Bが同時に除去されるため、設備A、Bの当初取得時に資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用は設備Aの帳簿価額を増加させる方法で資産として計上する。
借方 |
貸方 |
有形固定資産(設備A)(*1) |
16,000 |
現金預金 |
24,000 |
有形固定資産(設備B) |
9,000 |
資産除去債務 |
1,000 |
(*1)設備Aの取得原価15,000+設備AとBの除去費用資産計上額700+300=16,000
|
・
・
・
(2) 2X04年3月31日
|
設備Bの更新
設備Aを除去するまでの間に行われる、より短い周期での設備Bの除去及び再取得に係る支出は資産除去債務の対象にならない。
借方 |
貸方 |
減価償却累計額 |
9,000 |
有形固定資産(旧設備B) |
9,000 |
固定資産除却損 |
300 |
現金預金 |
9,300 |
有形固定資産(新設備B) |
9,000
|
|
|
|
・
・
・
(3) 2X10年3月31日
|
設備Aの除去
設備Aの除去に際し設備Bも除去される。
借方 |
貸方 |
減価償却累計額(設備A) |
16,000
|
有形固定資産(設備A)
|
16,000
|
減価償却累計額(設備B) |
9,000
|
有形固定資産(設備B)
|
9,000
|
資産除去債務 |
1,000
|
現金預金
|
1,000
|
|
[設例4]資産除去債務が使用の都度発生する場合の費用配分
1.前提条件
X社は20X1年4月1日に設備Aを取得し、使用を開始した。当該設備の取得原価は10,000、耐用年数は10年であり、X社には当該設備の使用後に除去する法的義務がある。X社が当該設備を除去するときの支出は3,000と見積られており、そのうち2,000は設備Aの取得時点で発生し、1,000については、設備Aがその通常の使用における稼働時間に応じて立地している土地を汚染するため、毎期10分の1(100)ずつ発生する。
X社は、当該設備について残存価額0で定額法により減価償却を行っている。X社は、会計基準第8項なお書きに定める方法により会計処理を行うものとする。
X社の決算日は3月31日である。なお、ここでは簡便化のため、時間価値の考慮(割引)はしていない。
2.会計処理
(1) 20X1年4月1日
|
設備Aの取得時点で発生する資産除去債務2,000を負債として計上する。同時にそれに対応する除去費用2,000と設備Aの取得原価10,000の合計である12,000を資産計上する。
なお、資産の使用の都度発生する資産除去債務1,000は、当該設備の取得時には負債に計上しない。
借方 |
貸方 |
有形固定資産 |
12,000 |
現金預金 |
10,000 |
|
|
資産除去債務 |
2,000 |
|
(2) 20X2年3月31日
|
設備Aの減価償却費
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*1) |
1,200 |
減価償却累計額 |
1,200 |
|
|
土地の汚染に係る支出100は設備Aの使用の都度発生するため、資産除去債務を各期において負債の増加分として区別して認識する。
借方 |
貸方 |
有形固定資産 |
100 |
資産除去債務 |
100 |
|
|
資産計上された除去費用の費用配分の合理的な方法として、資産計上された除去費用100を資産計上したのと同一の期間に、資産計上額と同一の金額を費用処理する方法によるため、費用計上額は、次のようになる。
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費) |
100 |
減価償却累計額 |
100 |
|
[設例5]資産除去債務の見積りの変更
1.前提条件
Y社は、20X1年4月1日に設備を取得し、使用を開始した。当該設備の耐用年数は5年であり、Y社には当該設備を使用後に除去する法的義務がある。Y社は、20X1年4月1日に資産除去債務として負担している金額を負債に計上し、有形固定資産の帳簿価額を同額増加させる処理を行う。Y社は将来キャッシュ・フローの見積りと割引率を用いて、資産除去債務の割引価値を算定する。資産除去債務は、取得時にのみ発生し、取得後の増減は見積りの変更によるものである。Y社は、当該設備について残存価額0で定額法により減価償却を行っている。Y社の決算日は3月31日である。
なお、本設例では理解を容易にするため、設備の取得に関連する資産除去債務の会計処理のみ示すこととする。
|
年月日 |
設備の除去に必要な将来キャッシュ・フローの見積額 |
割引率 |
@ 20X1年4月 1日 |
5年後の見積額は1,200であった。 |
3.0% |
A 20X2年3月31日 |
4年後の見積額に変更はない。 |
3.0% |
B 20X3年3月31日 |
3年後の見積額は1,500に増加した。 |
2.5% |
C 20X4年3月31日 |
2年後の見積額は1,000に減少した。 |
3.5% |
D 20X5年3月31日 |
1年後の見積額は1,000で変更はない。 |
3.2% |
E 20X6年3月31日 |
設備の使用が終了し、除去された。実際の除去費用1,000を現金で支払った。 |
− |
|
2.会計処理
(1) 20X1年4月1日
|
設備の取得と関連する資産除去債務の計上
借方 |
貸方 |
有形固定資産 |
1,035 |
資産除去債務(*1) |
1,035 |
(*1)将来キャッシュ・フロー見積額1,200/(1.03)5=1,035 |
(2) 20X2年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
31 |
資産除去債務(*2) |
31 |
(*2)20X1年4月1日における資産除去債務1,035×3.0%=31 |
|
資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*3) |
207 |
減価償却累計額 |
207 |
(*3)20X1年4月1日における除去費用資産計上額1,035/5年=207 |
(3) 20X3年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
32 |
資産除去債務(*4) |
32 |
(*4)20X2年3月31日における資産除去債務(1,035+31)×3.0%=32 |
|
資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*5) |
207 |
減価償却累計額 |
207 |
(*5)20X1年に資産計上した除去費用1,035/5年=207 |
|
将来キャッシュ・フロー見積額の増加による資産除去債務の調整
借方 |
貸方 |
有形固定資産 |
279 |
資産除去債務(*6) |
279 |
(*6)将来キャッシュ・フロー見積額の増加300/(1.025)3=279(会計基準第11項) |
(4) 20X4年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
40 |
資産除去債務(*7) |
40 |
(*7)20X3年3月31日における資産除去債務(1,035+31+32+279)×加重平均割引率2.9%*=40
*加重平均割引率2.9%=(当初予測将来キャッシュ・フロー1,200/1,500)×3.0%+(20X3年3月31日予測将来キャッシュ・フロー増加額300/1,500)×2.5%
|
|
資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*8) |
300 |
減価償却累計額 |
300 |
(*8)20X1年に資産計上した除去費用1,035/5年+20X3年に資産計上した除去費用279/3年=300
|
|
将来キャッシュ・フロー見積額の減少による資産除去債務の調整
借方 |
貸方 |
資産除去債務(*9) |
473 |
有形固定資産 |
473 |
(*9)将来キャッシュ・フロー見積額1,000/加重平均割引率(1.029)2−資産除去債務の帳簿価額(1,035+31+32+279+40)=△473
|
(5) 20X5年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
28 |
資産除去債務(*10) |
28 |
(*10)20X4年3月31日における資産除去債務(1,035+31+32+279+40−473)×加重平均割引率2.9%=28
|
|
資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*11) |
64 |
減価償却累計額 |
64 |
(*11)20X1年に資産計上した除去費用1,035/5年+20X3年に資産計上した除去費用279/3年−20X4年に資産から控除した除去費用473/2年=64 |
(6) 20X6年3月31日
|
時の経過による資産除去債務の増加
借方 |
貸方 |
費用(利息費用) |
28 |
資産除去債務(*12) |
28 |
(*12)20X5年3月31日における資産除去債務(944+28)×加重平均割引率2.9%=28
|
|
資産計上した除去費用の減価償却
借方 |
貸方 |
費用(減価償却費)(*13) |
63 |
減価償却累計額 |
63 |
(*13)20X1年に資産計上した除去費用1,035/5年+20X3年に資産計上した除去費用279/3年−20X4年に資産から控除した除去費用473/2年=63 |
|
資産除却債務の履行
借方 |
貸方 |
資産除却債務 |
1,000 |
現金預金 |
1,000 |
|
3.各期における計上額のまとめ
@ 20X1年4月1日当初見積り分
|
年月日
|
将来キャッシュ・フロー見積額
|
割引率
|
残存年数
|
資産除去債務残高
A
|
時の経過による調整額
B
|
将来キャッシュ・フロー見積額/割引率変更影響額
C
|
除去費用資産計上額
D
|
減価償却費
E
|
費用合計
B+E
|
20X1年4月 1日 |
1,200 |
3.0% |
5 |
1,035 |
|
|
1,035 |
|
|
20X2年3月31日 |
1,200 |
3.0% |
4 |
1,066 |
31 |
0 |
828 |
207 |
238 |
20X3年3月31日 |
1,200 |
3.0% |
3 |
1,098 |
32 |
0 |
621 |
207 |
239 |
20X4年3月31日 |
800 |
3.0% |
2 |
754 |
33 |
(*15)
△377 |
37 |
207 |
240 |
20X5年3月31日 |
800 |
3.0% |
1 |
777 |
23 |
0 |
18 |
19 |
42 |
20X6年3月31日 |
800 |
3.0% |
0 |
800 |
23 |
0 |
0 |
18 |
41 |
合計 |
|
|
|
|
142 |
|
|
658 |
800 |
(*15)20X4年3月31日における将来キャッシュ・フロー見積額の減少額500のうち20X1年4月1日に見積った1,200に対応する額400/(1.03)2=△377 |
A 20X3年3月31日見積り変更(増加)分
|
年月日
|
将来キャッシュ・フロー見積額
|
割引率
|
残存年数
|
資産除去債務残高
A
|
時の経過による調整額
B
|
将来キャッシュ・フロー見積額/割引率変更影響額
C
|
除去費用資産計上額
D
|
減価償却費
E
|
費用合計
B+E
|
20X3年4月 1日 |
300 |
2.5% |
3 |
279 |
|
279 |
279 |
|
|
20X4年3月31日 |
200 |
2.5% |
2 |
190 |
7 |
(*16)
△96 |
90 |
93 |
100 |
20X5年3月31日 |
200 |
2.5% |
1 |
195 |
5 |
0 |
45 |
45 |
50 |
20X6年3月31日 |
200 |
2.5% |
0 |
200 |
5 |
0 |
0 |
45 |
50 |
合計 |
|
|
|
|
17 |
|
|
183 |
200 |
(*16)20X4年3月31日における将来キャッシュ・フロー見積額の減少額500のうち20X3年3月31日の増加額300に対応する額100/(1.025)2=△96
|
B合計額
|
年月日
|
将来キャッシュ・フロー見積額
|
割引率
|
残存年数
|
資産除去債務残高
A
|
時の経過による調整額
B
|
将来キャッシュ・フロー見積額/割引率変更影響額
C
|
除去費用資産計上額
D
|
減価償却費
E
|
費用合計
B+E
|
20X1年4月 1日 |
1,200 |
3.0% |
5 |
1,035 |
|
|
1,035 |
|
|
20X2年3月31日 |
1,200 |
3.0% |
4 |
1,066 |
31 |
0 |
828 |
207 |
238 |
20X3年3月31日 |
1,500 |
2.9% |
3 |
1,377 |
32 |
279 |
900 |
207 |
239 |
20X4年3月31日 |
1,000 |
2.9% |
2 |
944 |
40 |
△473 |
127 |
300 |
340 |
20X5年3月31日 |
1,000 |
2.9% |
1 |
972 |
28 |
0 |
63 |
64 |
92 |
20X6年3月31日 |
1,000 |
2.9% |
0 |
1,000 |
28 |
0 |
0 |
63 |
91 |
合計 |
|
|
|
|
159 |
|
|
841 |
1,000 |
|
[設例6]賃借建物に係る原状回復費用の処理
1.前提条件
Z社はY社との間でC建物の賃貸借契約を締結し、20X1年4月1日から賃借している。
また、Z社は同日に1,000を、Y社に敷金として支払っている。Z社の決算日は3月31日である。Z社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間は5年と見積られている。
2.会計処理
(1) 20X1年4月1日
|
Z社はC建物の賃貸借契約に関連してY社に敷金を支払っているため、資産計上を行う。
借方 |
貸方 |
敷金 |
1,000 |
現金預金 |
1,000 |
敷金が計上されているため、ここでは、資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上を行わない方法によることとした。 |
(2) 20X2年3月31日
|
敷金のうち500について原状回復費用に充てられるため返還が見込めないと認められたことから、Z社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間(5年)で費用配分することとした。
借方 |
貸方 |
費用(敷金の償却) |
100 |
敷金 |
100 |
|
[設例7-1]資産除去債務に関する注記
1.前提条件
(1) 小売業を営むX社は、Y社との間で事業用定期借地権付の不動産賃借契約(賃借期間10年)を締結し、店舗を建設して2X00年4月1日より営業を開始した。X社は、Y社との不動産賃借契約において、賃借期間経過後原状回復の上、Y社に返還することが義務付けられている。X社は稼働開始時点において、除去費用を1,000と見積り、稼働開始時点における利付国債(残存期間10年)の流通利回りである3.0%を割引率として現在価値に割り引いた金額を資産除去債務として計上している。固定資産の減価償却方法は、残存価額を0とした定額法を採用している。X社は当該店舗を建物として有形固定資産に計上している。
(2) 2X05年3月31日に、X社は当該店舗の費用を見直し、除去時の除去費用を1,300と見積った。増額分300については、その時点における利付国債(残存期間5年)の流通利回りである2.5%を割引率として現在価値に割り引いた金額を建物及び資産除去債務に増額する処理を行った。
(3) 2X10年3月31日に、当該賃貸借契約の終了により建物を除去した。除去費用は1,250を要した。X社の決算日は3月31日である。
|
年月日 |
有形固定資産(除去費用) |
資産除去債務 |
|
資産
計上額
|
減価
償却費
|
残高
|
計上額
|
時の経過
による
調整額
|
履行による
減少額
|
残高
|
2X00年4月 1日 |
(*1)744 |
|
744 |
744 |
|
|
744 |
2X01年3月31日 |
|
(*2)(74) |
670 |
|
(*3)22 |
|
766 |
2X02年3月31日 |
|
(74) |
596 |
|
23 |
|
789 |
2X03年3月31日 |
|
(75) |
521 |
|
24 |
|
813 |
2X04年3月31日 |
|
(74) |
447 |
|
24 |
|
837 |
2X05年3月31日 |
(*4)265 |
(75) |
637 |
265 |
(*5)26 |
|
1,128 |
2X06年3月31日 |
|
(*6)(127) |
510 |
|
32 |
|
1,160 |
2X07年3月31日 |
|
(128) |
382 |
|
34 |
|
1,194 |
2X08年3月31日 |
|
(127) |
255 |
|
35 |
|
1,229 |
2X09年3月31日 |
|
(128) |
127 |
|
35 |
|
1,264 |
2X10年3月31日 |
|
(127) |
− |
|
(*7)36 |
(*8)(1,300) |
− |
合計 |
1,009 |
(1,009) |
|
1,009 |
291 |
(1,300) |
|
(*1)将来キャッシュ・フロー見積額1,000/(1.03)10=744
(*2)資産計上額744/賃借期間10年=74
(*3)資産除去債務残高744×割引率3%=22
(*4)将来キャッシュ・フロー追加見積額300/(1.025)5=265
(*5)資産除去債務残高837×割引率3%=26
(*6)当初資産計上額744/賃借期間10年+追加計上額265/残存使用期間5年=127
(*7)@当初発生分 744×割引率(1.03)9=971 971×3%=29
A追加発生分 265×割引率(1.025)4=293 293×2.5%=7
B合計額 29+7=36
(*8)資産除去債務の残高1,300がそのまま決済に充当され、超過額50は営業費用の控除として処理される。
|
2.注記事項
(1) 2X01年3月期の財務諸表における注記
|
当社は、2X00年4月1日に複合型商業施設内に建設した店舗について、事業用定期借地権(10年)付の不動産賃借契約に従い、資産除去債務を計上している。資産除去債務の見積りにあたり、使用見込期間は取得から10年間、割引率は3.0%を採用している。
当事業年度において資産除去債務に計上した金額は744である。当事業年度末における資産除去債務残高は、上記金額744と時の経過による資産除去債務の調整額22の合計766である。
|
|
(2) 2X05年3月期の財務諸表における注記
|
当社は、2X00年4月1日に複合型商業施設内に建設した店舗について、事業用定期借地権(10年)付の不動産賃借契約に従い、資産除去債務を計上している。資産除去債務の見積りにあたり、使用見込期間は取得から10年間、割引率は3.0%を採用している。当事業年度において、資産の除去時点において必要とされる除去費用が、固定資産取得時における見積額を大幅に超過する見込みであることが明らかになったことから、見積りの変更による増加額を2.5%で割り引き、変更前の資産除去債務残高に265加算している。当事業年度における資産除去債務の残高の推移は次のとおりである。
期首残高 837
時の経過による調整額 26
見積りの変更による増加額 265
期末残高 1,128
|
|
(3) 2X10年3月期の財務諸表における注記
|
当社は、2X00年4月1日に複合型商業施設内に建設した店舗について、事業用定期借地権(10年)付の不動産賃借契約に従い、資産除去債務を計上していた。資産除去債務の見積りにあたり、使用見込期間は取得から10年間、割引率は3.0%(見積りの変更による増額分は2.5%)を採用していた。当事業年度において、事業用定期借地権の契約期間が満了したため、契約の終了に合わせて店舗の除去を行った。当事業年度における資産除去債務の残高の推移は次のとおりである。
期首残高 1,264
時の経過による調整額 36
資産除去債務の履行による減少額 △265
期末残高 −
|
|
[設例7-2]資産除去債務に関する注記(多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合)
1.前提条件
石油小売業を営むY社は、関東地方を中心に当期末現在、120箇所にガソリンスタンドを設営し、ガソリン等油類の販売を行っている。ガソリンスタンドの設置に先立ち、多くの場合、土地所有者と事業用定期借地権付の不動産賃貸借契約を締結しており、当該契約において通常、賃借期間経過後原状回復の上、貸主に返還することとなっている。これまで、賃借期間10年から30年(全物件の平均:22年)に基づき、期首時点での資産除去債務1,560,000を計上している。割引率は2.0%から3.2%である。
当期に新たにガソリンスタンドを10店舗開業させたが、一方で、3店舗については、事業用定期借地権の賃借期間の満了を待たずに店舗を閉鎖し、原状回復の上貸主に土地を返還した。当期新たに発生した資産除去債務の見積りにあたっては、使用期間を平均的な賃借期間である22年と見積り、除去費用は130,000と見積った。これにより、稼働開始時点における利付国債(残存期間22年)の流通利回りである3.0%を割引率として割り引いた67,846を資産除去債務として計上している。また、当期に除去を行い貸主に返還した3店舗の除去費用は31,500であったが、除去対象資産に対応する資産除去債務の残高33,562を取り崩している。
なお、当期中の時の経過による資産除去債務の調整額は42,000であった。
2.注記事項
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当社は、ガソリンスタンドの設置にあたり、土地所有者との間で賃借期間10年から30年(平均22年)の事業用定期借地権契約を締結しており、当該不動産賃借契約における賃借期間終了時の原状回復義務に関し資産除去債務を計上している。資産除去債務の見積りにあたり、使用見込期間は22年、割引率は2.0%から3.2%を採用している。
当事業年度における資産除去債務の残高の推移は次のとおりである。
期首残高 1,560,000
有形固定資産の取得に伴う増加額 67,846
時の経過による調整額 42,000
資産除去債務の履行による減少額 △33,562
期末残高 1,636,284
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[設例8]合理的な見積りができないため資産除去債務を計上していない場合
1.前提条件
Y社は、2X00年4月1日に、Z社の有するオフィスビルに本社を移転した。Y社はZ社と不動産賃貸借契約を締結し、契約上、当該賃貸借契約終了時にY社が原状回復を行いZ社に返還する旨の条項が盛り込まれている。なお、当該賃貸借契約の期間は契約締結時から2年間であるが、契約期間満了から6か月前に契約当事者から契約を更新しない旨が相手方に通知されない限り、賃貸借契約は自動的に更新継続することとなっている。
Y社では、今後再度本社を移転する計画はなく、当該賃貸借契約を継続させることを意図している。そのため、当該賃貸借契約の継続期間を合理的に見積ることができない。Y社の決算日は3月31日である。
2.注記事項
2X01年3月期の財務諸表に関する注記
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当社は、本社オフィスの不動産賃借契約に基づき、オフィスの退去時における原状回復に係る債務を有しているが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、将来本社を移転する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積ることができない。そのため、当該債務に見合う資産除去債務を計上していない。
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以上
INDEX
■資産除去債務関する会計基準目次
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