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会計基準|結論の背景|適用指針開示例目次

 

(注)本内容は、平成20年12月26日に企業会計基準委員会が公表した「関連当事者の開示に関する会計基準」から「結論の背景」を抜粋したものです。 「目的・会計基準」は別に記載してあります。なお、実務への適用にあたつては念のためオリジナルの当該基準等を確認してください。

企業会計基準第11号

関連当事者の開示に関する会計基準

(結論の背景)

平成18年10月17日

(平成20年12月26日)

企業会計基準委員会

 

本会計基準は、平成20年12月26日までに公表された次の会計基準等による修正が反映されている。

・企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(平成20年12月26日改正)

目次

目的・会計基準は別に記載してあります。

結論の背景

経 緯

目 的

関連当事者の範囲

関連当事者の判定基準

主要株主

その他の関係会社の親会社及び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びその子会社

親会社の役員

重要な子会社の役員

主要株主及び役員の近親者

従業員のための企業年金

共同支配投資企業及び共同支配企業

その他の関連当事者

開示対象となる関連当事者との取引の範囲

連結子会社と関連当事者との取引

連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引

資本取引

無償取引及び低廉な価格での取引

形式的・名目的には第三者との取引である取引

取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引

役員報酬

連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引 34

関連当事者との取引に関する開示

取引条件

貸倒懸念債権及び破産更生債権等

関連当事者の存在に関する開示

親会社の名称等

重要な関連会社の財務情報

適用時期


結論の背景

経 緯

15. 我が国における関連当事者の開示は、これまで、特定の会計基準に基づくものではなく、証券取引法上の規則に基づき行われてきた。

平成2年以前、役員及び支配株主との取引の開示については、有価証券報告書等の「関係会社に関する事項」の中で行われていたが、平成2年6月に日米構造協議最終報告の中で、「関連当事者との取引の開示の充実」が盛り込まれ、関連当事者との取引の開示範囲を米国財務会計基準書第57号「関連当事者の開示」(以下「SFAS 第57号」という。)と同様にすることとし、関連会社、主要株主、その他重要な関連当事者との取引まで開示範囲が拡充されることとなった。これに基づき、平成2年12月に「企業内容等の開示に関する省令」の改正が行われ、有価証券報告書等の「企業集団等の状況」に「関連当事者との取引」の項が設けられた。その改正理由としては、関連当事者との取引は、一般には見ることのできない条件で行われることがあり、その状況が財務諸表から容易に識別できないため、財務諸表作成会社の財政状態や経営成績に及ぼす影響を、その利用者が適切に理解できるようにすべきであるという点が挙げられている。

その後、平成9年6月、企業会計審議会により公表された「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」において、「関連当事者との取引」を連結財務諸表の注記とする方針が示されたことを受けて、平成10年11月及び平成11年3月に連結財務諸表規則及び財務諸表等規則等が改正され、「関連当事者との取引」は、連結財務諸表又は財務諸表の注記事項となり、監査対象になった。また、監査上の実務指針として、平成11年4月に日本公認会計士協会 監査委員会報告第62号「関連当事者との取引に係る情報の開示に関する監査上の取扱い」が公表された。

このように、我が国における関連当事者の開示は、専ら、証券取引法上の規則に基づいて行われてきた。しかし、関連当事者の開示に関する規定は、米国会計基準や国際財務報告基準などの国際的な会計基準では、会計基準の1つとして位置付けられている。

また、関連当事者の定義や開示する取引範囲などについては、我が国の現行の財務諸表等規則及び連結財務諸表規則(以下「証券取引法関係規則」という。)と国際的な会計基準には差異が見られる状況にある。

こうした中、関連当事者の開示については、いわゆる「純粋持株会社」(グループ全体の経営戦略の立案及び子会社管理に専念し、株式所有を通じて、実際に製造・販売などの事業活動を行う会社を支配する会社をいう。以下同じ。)の増加を踏まえて見直すべきではないかという指摘があることに加え、平成17年3月から開始した当委員会と国際会計基準審議会(以下「IASB」という。)との会計基準のコンバージェンスに向けた共同プロジェクトでの検討項目とされ、協議を行った。当委員会は、こうした状況も踏まえ、現行の証券取引法関係規則と国際会計基準第24号「関連当事者についての開示」(以下「IAS 第24号」という。)及びSFAS 第57号との比較検討等を行った上で、会計基準として整備することとした。

目 的

16. 本会計基準の目的は、関連当事者の開示に係る内容を定めることとしている。現行の証券取引法関係規則では関連当事者との取引に関する開示を規定していることから、会計基準上の開示内容も関連当事者との取引に限定すべきという意見があった。しかし、親会社等の情報は、会社の財務諸表を理解する上で有用な情報と考えられるため、国際的な会計基準と同様に、関連当事者との取引の開示だけでなく、関連当事者の存在に関する開示として、親会社等の情報も含めることとしている(第2項及び第11項参照)。

なお、関連当事者の開示は財務諸表の注記情報であることから、コーポレート・ガバナンスに関する側面は、副次的な位置付けとしている。

関連当事者の範囲

関連当事者の判定基準

17. 関連当事者の開示について適切な開示を求める観点から、関連当事者の範囲は形式的に判定するのではなく、実質的に判定する必要がある。

主要株主

18. 主要株主とは、一般的には、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主であるが、本会計基準では、証券取引法第163条第1項(金融商品取引法施行後は同法第163条第1項)に規定する主要株主と同様、保有態様等の事情から主要株主には該当しない者を除外することとしている。この点について、SFAS第57号では、財務諸表作成会社の議決権の10%以上を保有する株主名簿上の株主又は知れたる株主を主要株主としている。一方、IAS 第24号では、重要な影響を及ぼしているか否かに基づき関連当事者かどうかを判断することとしており、関連当事者とする株主を議決権で判断することは明示していない。

検討の結果、主要株主については、米国会計基準では関連当事者としており、また、証券取引法関係規則と異なる定義を設ける必要性は乏しいと考え、本会計基準では主要株主の取扱いは、証券取引法関係規則の取扱いと同様とすることとしている(第5項(3)E及び同項(6)参照)。

その他の関係会社の親会社及び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びその子会社

19. 本会計基準は、現行の証券取引法関係規則と同様に、その他の関係会社の親会社及び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びその子会社も関連当事者として明示している(第5項(3)C及びI参照)。その理由としては、@関連当事者の範囲を可能な限り明確にすることと、Aその他の関係会社の子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びその子会社は、その他の関係会社や財務諸表作成会社の主要株主の強い意向を受けて取引を行っている場合も多いと考えられ、その他の関係会社や財務諸表作成会社の主要株主との取引として開示すべき取引をその子会社などに移管した場合も開示対象とすることが挙げられる。

親会社の役員

20. 親会社の役員の子会社に対する影響力が大きい場合もあることや、IAS 第24号においては親会社の役員が関連当事者の範囲に含まれていることを踏まえ、親会社の役員を関連当事者の範囲に含めることとしている(第5項(3)G参照)。

重要な子会社の役員

21. 子会社の役員と連結会社との取引が、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす場合もあることから、子会社の役員を関連当事者の範囲に含めるかどうかについて検討を行った。例えば、財務諸表作成会社が純粋持株会社の場合において、実質的に事業活動を行っている子会社の経営に従事している役員が当該子会社と取引を行っているケースが考えられる。

この点について、一律に子会社の役員を関連当事者の範囲に含めると、会社グループ全体の経営には必ずしも重要な影響を及ぼしていない者が含まれるだけでなく、役員の人数が非常に多くなり、過度な情報収集の負担を財務諸表作成者に強いることにもなりかねないため、財務諸表作成会社が直接議決権を有する子会社の役員に範囲を限定すべきであるという意見があった。その一方、例えば、連結財務諸表に対する影響の大きい孫会社の役員が除かれるのは適当ではないという意見があった。

検討の結果、関連当事者の開示の趣旨を踏まえ、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員にいる場合には、当該役員も関連当事者としている(第5項(3)H参照)。例えば、会社グループの中核となる事業活動を子会社に委ねている場合にあっては、当該子会社の役員のうち当該業務を指示し、統制する役員は、会社グループの事業運営に強い影響力を持つものと考えられる。

主要株主及び役員の近親者

22. 主要株主及び役員の近親者の範囲については、IAS 第24号の規定に合わせて、配偶者などを例示した上で、主要株主若しくは役員に影響を与える又は主要株主若しくは役員から影響を受けると予測される親族という形で規定すべきという意見があった。

しかし、このような方法での親族の規定では、実務に適用するにあたり、対象者の範囲の特定が難しいと考えられる。また、現行の証券取引法関係規則と異なる定義を設ける必要性も乏しいと考えられる。

検討の結果、開示対象を可能な限り明確化する観点から、現行の証券取引法関係規則と同様、役員の近親者として二親等以内の親族を明示することとしている(第5項(8)参照)。

従業員のための企業年金

23. 国際的な会計基準では、従業員のための退職給付制度(IAS 第24号)や従業員の便益のための信託財産(SFAS 第57号)を関連当事者として規定している。これらの規定は、従業員のための退職給付制度が、資金を提供している会社から強い影響を受けることを考慮したものと考えられる。米国の実際の開示例では、企業年金が会社に不動産を賃貸している取引が挙げられている。このような国際的な扱いも踏まえ、企業年金と会社の取引(掛金の拠出を除く。)が会社の財務諸表に重要な影響を及ぼす場合は、国際的な会計基準と同様に、関連当事者との取引として開示することとした(第5項(3)J参照)。

我が国における従業員のための企業年金には、確定拠出年金制度、確定給付企業年金制度(規約型及び基金型)、適格退職年金制度、厚生年金基金制度などがあるが、いずれの場合でも、掛金の拠出を除き、会社と直接取引を行わないのが通常である。また、従業員のための企業年金に対する会社からの掛金の拠出(退職給付信託の設定を含む。)は、関連当事者の開示の趣旨に鑑み、開示対象の取引には該当しないと考えられる。このため、我が国の企業年金に関しては、関連当事者との取引として開示対象となるような取引は通常生じないものと考えられる。

ただし、厚生年金基金及び基金型の確定給付企業年金が個別指図による運用を行い、会社と直接取引を行う場合や、例外として認められている厚生労働大臣の承認を受けた場合の借入を基金が会社から行う場合、これらの取引に重要性がある場合は開示対象となることも考えられる。また、退職給付信託を設定している場合でも、年金資産の入替えや返還を行うときで、これらの取引に重要性がある場合は、開示対象になるものと考えられる。

わが国の企業年金制度では、上記のとおり、関連当事者の開示の対象となる取引が生じることは限定的と考えられるが、海外子会社については、それぞれの国の企業年金制度に応じて、開示対象となる取引が存在するか否かを検討する必要がある。

共同支配投資企業及び共同支配企業

24. 「企業結合に係る会計基準」(平成15年10月31日企業会計審議会)(平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)において、新たに共同支配投資企業と共同支配企業が定められたことを踏まえ、IAS 第24号と同様に関連当事者に該当することを明記することとし、共同支配投資企業はその他の関係会社、共同支配企業は関連会社に含まれることを明らかにしている(第5項(5)参照)。

その他の関連当事者

25. 現行の証券取引法関係規則では、関連当事者を具体的に列挙して定義する方法を採用しているが、列挙した者以外に、関連当事者の開示の目的に照らして開示すべき対象者が生じる可能性を否定できないことから、包括的な規定を設けるべきであるという意見があった。例えば、創業者一族など、役員を退任してからも経営に強い影響力を持つ者が存在し得るからである。

しかし、この例の場合は、実質的な判定を行うことを明確にすることで、「役員に準ずる者」に含まれることになると考えられる。また、本会計基準で規定している関連当事者の範囲は、IAS 第24号と可能な限り合致させる方向で検討を行った結果、現行の証券取引法関係規則よりも拡大することとなる。さらに、子会社や関連会社については、国際財務報告基準と同様、支配力基準及び影響力基準も加味して定義付けられている。

これらの点を踏まえ、現行の証券取引法関係規則やIAS 第24号と同様、包括的な規定としての「その他の関連当事者」は設けないこととしている。

開示対象となる関連当事者との取引の範囲

連結子会社と関連当事者との取引

26. 連結財務諸表上、連結子会社と関連当事者との間に取引がある場合には、IAS 第24号やSFAS 第57号と同様、開示対象に含めることとしている(第6項参照)。その結果、例えば、組織再編で純粋持株会社を設立した場合、財務諸表作成会社であった事業会社が純粋持株会社の連結子会社となり、それまで開示されていた関連当事者との取引が開示されなくなるという問題は解消されると考えられる。

連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引

27. 連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引を開示することは、企業集団内の資金の流れをはじめ、各種取引の流れの全体像を把握できることとなり、経営者と同じ視点で当該企業集団の状況を把握することが可能になるという意見があった。

また、我が国では、子会社の債務を親会社が連帯して責任を負わないなど親子一体の法制になっていないことを踏まえ、親子間取引の開示のあり方を検討すべきであるという意見があった。

しかし、連結財務諸表上の関連当事者との取引の開示は、連結財務諸表にどの程度の影響を与えているかについての情報を財務諸表利用者に提供するものである。また、国際的な会計基準も連結財務諸表上では連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引を開示対象としていない。

これらの点を踏まえ、連結財務諸表上では、連結財務諸表の作成にあたって相殺消去した取引を関連当事者との取引の開示から除外することとしている(第6項参照)。

資本取引

28. 資本取引については、現行の証券取引法関係規則と同様、開示対象の取引に含めることとしている。会社と関連当事者との間での増資の引受けや自己株式の取得などは、開示対象の取引となるが、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(第9項(1)参照)に該当するため、開示対象外の取引と考えられる。なお、関連当事者との取引に関する開示項目で求めている期末残高の開示は、資本取引の場合、債権債務関係とは異なるため、求めていない。

無償取引及び低廉な価格での取引

29. 関連当事者との無償取引(無利子貸付や寄付など)や、有償取引における低利貸付などのように取引金額が時価に比して著しく低い場合には、財務諸表に重要な影響を及ぼし、投資判断情報として重要な場合がある。また、無償取引及び低廉な価格での取引については、実際の取引金額ではなく、第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で重要性の判断を行うこととしている(第7項参照)。

形式的・名目的には第三者との取引である取引

30. 現行の証券取引法関係規則上の取扱いと同様、本会計基準では、第三者との取引について、当該取引の実質的な相手先が関連当事者に該当することが明らかな場合には、関連当事者との取引とすることとしている(第8項参照)。これは、第三者との取引が形式的・名目的な場合において適用されるものである。

取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引

31. IAS 第24号のように、金融機関や政府関係機関など、取引の相手先が誰であるかによって、開示対象外の取引とするかどうかを決定することも考えられる。しかし、例えば、関連当事者の定義に該当する金融機関との取引の全てを開示対象から除いたときには、借入などの多額の相対取引が開示対象外となり、企業経営に重要な影響を及ぼす可能性のある資金貸借取引が開示されないおそれがある。また、関連当事者の定義に該当する政府関係機関や公共事業体などとの取引の全てを開示対象外とした場合には、補助金や利子補給などに関する重要な取引の開示が行われないおそれがある。

本会計基準では、このような点を踏まえ、現行の証券取引法関係規則やSFAS 第57号と同様、取引先が誰であるかではなく取引の内容に焦点を当てて、開示対象外の取引とするかどうかを定めている(第9項参照)。

32. また、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(第9項(1)参照)を除き、第三者との取引と同等な条件(以下「一般的な取引条件」という。)であっても開示は省略できないこととしてしている。これは、一般的な取引条件に該当するかどうかの判断が難しい場合もあり、恣意的な判断が介入する余地があると考えられるためである。

役員報酬

33. 役員報酬の開示については、その必要性が国内外で認識されているが、財務情報として位置付けるかどうかについての考え方は分かれている。国際的には、IAS 第24号では主要な経営陣の報酬総額とその内訳の記載を関連当事者の開示として求めているが、SFAS 第57号では求めておらず、米国では非財務情報として開示を求めている。我が国においても、例えば、現行の「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)では、非財務情報であるコーポレート・ガバナンスに関する情報の中で役員報酬の内容の開示を規定している。

検討の結果、我が国や米国での役員報酬に関する現行の開示方法を考慮して、本会計基準では開示対象外としている(第9項(2)参照)。

連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引

34. 例えば、関連会社は連結会社に該当しないが、関連会社と当該関連会社以外の関連当事者との取引でも連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるため、開示する必要があるという意見があった。

しかしながら、連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引については、正確かつ網羅的な情報の入手が困難であることや、連結財務諸表に与える影響が軽微な場合が多いと考えられることなどから、現行の証券取引法関係規則と同様、開示対象外としている。

関連当事者との取引に関する開示

取引条件

35. 会社と関連当事者との取引条件については、関連当事者との取引が会社の連結財務諸表にどの程度の影響を与えているかを理解する上で有用な情報であるため、現行の証券取引法関係規則や国際的な会計基準と同様、開示を求めることとしている(第10項(5)参照)。

36. 競争的で自由な取引市場が存在しない場合に、関連当事者との取引が独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行われた旨を記載するには、関連当事者以外の第三者との取引と比較して同等の取引条件であることを要すると考えられる。

貸倒懸念債権及び破産更生債権等

37. 関連当事者との取引による貸倒懸念債権及び破産更生債権等に関する情報は、開示することにより信用不安を発生させる可能性があるため、開示すべきではないという意見があった。しかし、投資判断情報として有用な情報であると考えられ、かつ、IAS 第24号では開示が求められている。また、我が国の現行実務においても、関連当事者との取引の中で開示されているケースがみられる。これらの点を踏まえて、本会計基準では開示を求めることとしている。なお、開示方法については、上記の指摘も考慮して、関連当事者の種類ごとに合算して記載することができることとしている(第10項(8)参照)。

関連当事者の存在に関する開示

親会社の名称等

38. 親会社の存在の有無は、投資家が投資の意思決定をするにあたって有用な情報であると考えられるため、IAS 第24号やSFAS 第57号と同様、親会社の名称等の開示を求めることとしている(第11項(1)参照)。なお、IAS 第24号では、財務諸表利用者が親会社の財務情報を把握できるようにすることも想定しているものとみられるが、我が国でも、上場会社等においては、現行の開示府令で親会社の財務情報等の開示が求められているので、親会社の財務情報を投資判断情報として利用できるものと考えられる。

重要な関連会社の財務情報

39. 連結財務諸表上、重要な関連会社への投資については、持分法で開示されており、現行の開示の枠組みの下では、これらの情報に関する追加開示を求めることは必ずしも適切ではないという意見があった。その一方、重要な関連会社の業績が悪化した場合には、その企業集団の財政状態や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があり、そうした関連会社の財務情報の開示が必要であるとする意見があった。また、共同支配企業に関しては、その形成の際に移転した資産及び負債が当該共同支配投資企業の連結財務諸表には表示されなくなることから、財務情報の開示が必要であるという意見もある。この点について、米国では会計原則審議会意見書第18号(APB 第18号)「持分法による普通株式投資の会計」において、国際財務報告基準ではIAS 第28号「関連会社に対する投資」及びIAS 第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」において、共同支配企業を含む関連会社に関する要約財務情報の注記開示を求めている。

検討の結果、国際的な会計基準の開示も参考にして、重要な関連会社については、要約財務情報の開示を求めることとした(第11項(2)参照)。

適用時期

40. 関連当事者の範囲の拡大に伴い、財務諸表作成会社における受入準備が必要であることを考慮して、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から本会計基準を適用することとしている。ただし、平成19年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用することもできることとしている。

以上


INDEX

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