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意見書会計基準注解会計基準第3号一部改正|会計基準第14号一部改正(その2)|会計基準19号一部改正(その3)適用指針第1号適用指針第1号設例適用指針第7号目次

 

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成19年5月15日に公表したものです、なお、記載を省略した部分があります。実務への適用に あたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認して下さい。

企業会計基準第14号

退職給付に係る会計基準の一部改正(その2)

平成19年5月15日

企業会計基準委員会

目次

目的

会計基準

適用時期

結論の背景

経緯

改正の考え方

参考(開示例)


目的

1. 本会計基準は、企業会計審議会が平成10年6月16日に公表した「退職給付に係る会計基準」(「退職給付に係る会計基準注解」を含む。)のうち、同注解(注12)「複数事業主制度の企業年金について」を改正することを目的とする。

当委員会は、平成17年3月16日に企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」を公表しており、本会計基準は当該会計基準に続く一部改正となる。

会計基準

2. 複数の事業主により設立された企業年金制度を採用している場合における取扱いについて、「退職給付に係る会計基準注解」(注12)の定めを次のとおり改正する。

(注12)複数事業主制度の企業年金について

複数の事業主により設立された企業年金制度を採用している場合において、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには、当該年金制度への要拠出額を退職給付費用として処理する。この場合においては、重要性が乏しいときを除き、当該年金制度全体の直近の積立状況(年金資産の額、年金財政計算上の給付債務の額及びその差引額)及び制度全体の掛金等に占める自社の割合並びにこれらに関する補足説明を注記するものとする。

適用時期

3. 本会計基準は、平成19年4月1日以後開始する事業年度から適用する。

ただし、平成19年3月31日以前に開始する事業年度から適用することができる。

議決の部分は省略

結論の背景

経緯

5. 平成10年6月16日に企業会計審議会から公表された「退職給付に係る会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)は、平成12年4月1日以後開始される事業年度から実施されている。

6. 退職給付会計基準五 では、「複数の事業主により設立された企業年金制度を採用している場合においては、退職給付債務の比率その他合理的な基準により自社の負担に属する年金資産等の計算を行うこととする。」とされている。このような方法に対して、従来の退職給付会計基準注解(注12)では、「総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには、当該年金基金への要拠出額を退職給付費用として処理する。」とされていることから、実務上、総合設立の厚生年金基金を採用している場合には、基金への要拠出額を退職給付費用に計上するのみで、当該年金基金制度に係る退職給付債務に基づく負債が計上されていないことが多い。

このため、他の確定給付年金制度への移行に伴い退職給付会計基準における原則的取扱いによる会計処理を適用したり、年金制度全体の数理債務が年金資産を上回るような不足が生じている財政状況の下で当該制度から脱退したりするときに、制度上の積立不足に対する事業主負担分が一時に費用計上されることがあり得る。また、そもそも退職給付会計基準 五 では、確定給付型の企業年金制度であれば、退職給付債務のみならず年金資産等についても合理的な基準により按分し、退職給付費用及び退職給付引当金を計上することとしているにもかかわらず、同注解(注12)がこの考え方を実質的に否定しているのではないかという見方があった。

7. 当委員会では、「国民年金法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第104号)による制度改正を踏まえて、平成17 年4 月以降、厚生年金基金に係る政府からの交付金の会計処理について検討を行ってきたが、その議論の過程で上記のような総合設立の厚生年金基金に係る論点(複数事業主制度の企業年金の取扱い)についても問題指摘がなされたことから、これも検討することとしていた。

具体的な検討は、退職給付会計基準注解(注12)に基づく会計処理を採用していた場合における制度間移行等の取扱いと、当該会計処理の適用要件の見直し(開示の拡充の検討を含む。)の2 つの論点に分けて行われた。このうち前者については、平成19年2月に改正した実務対応報告第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い」により一定の対応が図られており、本会計基準では、後者の論点に係る検討の結果を示している。

改正の考え方

8. 従来、退職給付会計基準注解(注12)では、同注解に基づく処理を適用した場合において、掛金拠出割合等により計算した年金資産の額を注記するものとされていた。

当該注記は、要拠出額を退職給付費用として処理している複数事業主制度の企業年金の場合であっても、比較的容易に算定ができる範囲で一定の情報の提供を求めていたものと考えられるが、今般の改正にあたっては、第6 項に掲げたような問題指摘に対応するため、複数事業主制度の企業年金に係る将来の負担額の見込みに関してより有用な情報を提供することを目的として、開示の拡充を図ることとした。

なお、同注解の適用範囲に関して、本会計基準では「総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように」と例示していた従前の記載を削除した。これは、もともと適用範囲にあたるか否かの判断は設立形態によらず実質によるべきものであるためであって、今般の改正によりこれまでの適用範囲の取扱いを変更するものではない。

9. 本会計基準により、退職給付会計基準注解(注12)に基づく処理を適用した企業は、掛金拠出割合等により按分して算定した年金資産の額に代えて、当該年金制度全体の直近の積立状況(年金資産の額、年金財政計算上の給付債務の額及びその差引額)と制度全体の掛金等に占める自社の割合を注記することとなる。また、制度ごと、参加企業ごとに各様である実態について適切に示すことができるように、これらに関する補足説明についても記載を求めている。

なお、開示の拡充を図る一方で、当該年金制度が自社の財務諸表に与える影響度合いには参加企業ごとに違いがあることを考慮して、重要性が乏しい場合には注記を省略できるものとしている。これには、制度全体の積立状況と自社の割合だけを記載して補足説明を省略することも含まれる。

10. 制度全体の掛金等に占める自社の割合には、掛金拠出割合のほかに、制度の加入人数又は制度の給与総額に占める自社の割合も含まれる。これらは、当該複数事業主制度に対する自社の関与度合いの推測に資する指標の一つとして開示される。

11. 本会計基準では、年金制度に係る状況は、制度ごと、参加企業ごとに各様であると考えられることから、補足説明として記載すべき具体的な事項については定めないこととしたが、実務上の便宜を考慮して、想定される開示の一例を後掲の「参考(開示例)」において示している。

12. また、今回求めることとした注記が将来の負担額の見込みに関する目安としての開示であることや、実務上の便宜を考慮して、本会計基準では、年金制度全体に係る積立状況について入手可能な直近時点(貸借対照表日以前の最新時点)の年金財政計算に基づく実際数値により開示することとしている。このため、注記される積立状況の時点が貸借対照表日よりも1 年程度前の時点になることも想定される。同様の理由により、制度全体の掛金等に占める自社の割合についても、貸借対照表日時点のみならず、期中平均や年金財政計算上の決算日時点などによる適切な割合を用いることができる。

13. このほか、複数の事業主により設立された企業年金制度がいくつかあり、これらに退職給付会計基準注解(注12)に基づく処理を適用している場合の取扱いも検討された。

このような場合には、当該企業にとって単独でも重要性がある制度については制度ごとに注記を行うが、単独で重要性がある制度以外の複数の制度に制度群として重要性があるときには、当該制度群の数値を合算(割合は加重平均)して記載し、補足説明を概括的に記載することが適当と考えられる。

14. 今般の改正にあたっては、退職給付会計基準注解(注12)に基づく処理の適用範囲や当該処理を適用している場合の積立不足に係る引当計上の要否についても検討が行われた。これらの論点は、いずれも、当該処理を適用している場合には退職給付債務に基づく負債が計上されないことを問題とする見方によるものである(第6 項参照)。特に、積立不足に係る引当計上の要否については、企業会計原則注解(注18)に示される引当金との関係をどのように考えるべきかなどの観点から議論が行われた。

企業会計原則注解(注18)では、一定の場合に当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を負債に計上することとしており、退職給付会計基準でも、このような考え方を採っている(「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」三)。自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができない複数事業主制度の企業年金において、退職給付会計基準注解(注12)では、当該年金制度への要拠出額を退職給付費用として処理するとしており、当該要拠出額には、これまで、年金財政計算上の標準掛金のみならずいわゆる特別掛金も含まれると解されていたものと考えられる。

本会計基準では、自社に関する退職給付のうち当期の負担に属する金額は何が適当かという観点や、現行の退職給付会計基準の原則的な取扱いが過去勤務債務及び数理計算上の差異について必ずしも一時の費用とはせず一定の期間にわたって費用としていることとの関係から、これまでの考え方を踏襲し、年金財政計算上の積立不足があっても、通常の場合には、そのことをもって企業会計原則注解(注18)の引当金の要件に該当し、その全額を一時に費用又は損失として処理する必要があるとは言えないと考えることとした。

なお、通常と異なる場合、例えば、企業年金制度の解散や企業年金制度からの脱退が見込まれている場合のように、状況によっては、企業会計原則注解(注18)の引当金の要件を満たすことがあり得ることに留意する必要がある。

15. 前項の引当計上の議論に関連しては、退職給付に係る債務に限らず、そもそも将来の負担となる支出の可能性が高い事象がある場合には負債を計上すべきという意見もある。しかしながら、仮にそのような事象について貸借対照表上、支払予定額や決済価額(又はその現在価値)を反映させるように負債計上するとしても、当該負債計上の相手勘定として資産や純資産(評価・換算差額等)が計上されることも考えられ、その全額が当期の費用又は損失として計上されるとは限らない。このような論点は、今日の企業会計上、広く議論されており、今後、我が国においても国際的な議論の動向に留意しつつ検討をしていくことが考えられる。

参考(開示例)

以下の開示例は、本会計基準で示された内容について理解を深めるために参考として示されたものであり、記載内容は各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。

(開示例)

・ 要拠出額を退職給付費用として処理している複数事業主制度に関する事項

(1) 制度全体の積立状況に関する事項(×年×月×日現在)

年金資産の額          ×××百万円

年金財政計算上の給付債務の額  ×××百万円

差引額            △×××百万円

(2) 制度全体に占める当社グループの掛金拠出割合[又は加入人数割合あるいは給与総額割合](自×年×月×日 至×年×月×日[又は×年×月×日現在])

                             X %

(3) 補足説明

上記(1)の差引額の主な要因は、年金財政計算上の過去勤務債務残高×××百万円[及び繰越不足金(又は別途積立金)×××百万円]である。本制度における過去勤務債務の償却方法は期間X年の元利均等償却であり、当社グループは、当期の連結財務諸表上、特別掛金XX百万円を費用処理している。[また、年金財政計算上の繰越不足金×××百万円については、財政再計算に基づき必要に応じて特別掛金率を引き上げる等の方法により処理されることとなる。]

なお、[特別掛金の額はあらかじめ定められた掛金率を掛金拠出時の標準給与の額に乗じることで算定されるため、]上記(2)の割合は当社グループの実際の負担割合

 

(注1) 上記(1)(2)については、時点が貸借対照表日と一致しないことがあるため、これを明示する必要がある(第12項参照)。

(注2) 上記(3)については、将来の負担額の見込みに関する補足説明(第11項参照)の例として、差引額として算定された額に係る今後の取扱いや、指標としての掛金拠出割合等と将来の実際の負担割合との関係を記載している。また、財務諸表上の影響を示すため、損益計算書上の費用処理額も示している。

(注3) 掛金拠出割合等が参加企業ごとの未償却過去勤務債務等の比率と明らかに乖離している場合(企業ごとに負担割合等が異なる部分がある場合)には、特別掛金に係る拠出割合を示すなど、適宜適切な補足説明を加える必要がある。

(注4) 複数の企業年金制度について注記する場合には、それぞれの重要性の程度に応じた記載をすることが考えられる(第13 項参照)。このため、例えば、定量的な情報については次のような形式によることが考えられる。

(複数の企業年金制度について注記する場合の例)

(前提) A制度、B制度はそれぞれ単独でも重要性があり、その他の制度についても複数の制度を合算すると重要性があるものとする。

(例示)

(1) 制度全体の積立状況に関する事項(×年×月×日現在)

                A制度    B制度  その他の制度

年金資産の額          ××百万円  ××百万円 ××百万円

年金財政計算上の給付債務の額  ××百万円  ××百万円 ××百万円

差引額             △××百万円 △××百万円 ××百万円

(2) 制度全体に占める当社グループの掛金拠出割合(自×年×月×日 至×年×月×日)

             A制度    B制度  その他の制度

             ×%     ×%  ×%(加重平均値)

 

【年金財政計算における貸借対照表のイメージ図】

本開示例が想定している年金財政計算における貸借対照表の構成内容は、次のとおりである。

 

 

 

 

純資産(資産)

 

 

 

純資産(負債)

本開示例における年金資産

=純資産(資産)−純資産(負債)

給付債務

 │

 ├数理債務

 │

 └最低責任準備金

  (代行部分)

 

未償却過去勤務債務残高等

基本金(不足金)

※上記は基本金が不足である場合

以上

 


INDEX

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