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意見書会計基準注解会計基準第3号一部改正会計基準第14号一部改正(その2)|会計基準19号一部改正(その3)|適用指針第1号適用指針第1号設例適用指針第7号目次

 

(注)本内容は、企業会計基準委員会が平成20年7月31日に公表したものです。なお、記載を省略した部分があります。実務への適用に あたっては念のためオリジナルの当該会計基準等を確認して下さい。

企業会計基準第19号

退職給付に係る会計基準の一部改正(その3)

平成20年7月31日

企業会計基準委員会

目次

目的

会計基準

適用時期

結論の背景

経緯

改正の考え方

適用時期等


目的

1.本会計基準は、企業会計審議会が平成10年6月16日に公表した「退職給付に係る会計基準」(「退職給付に係る会計基準注解」を含む。)のうち、同注解(注6)「安全性の高い長期の債券について」を改正することを目的とする。

当委員会は、平成17年3月16日に企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」を公表している。また、平成19年5月15日に企業会計基準第14号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その2)」を公表している。本会計基準はこれらの会計基準に続く一部改正となる。

会計基準

2.退職給付債務の計算における割引率の取扱いについて、「退職給付に係る会計基準注解」(注6)の定めを次のとおり改正する。

(注6)安全性の高い長期の債券について

割引率の基礎とする安全性の高い長期の債券の利回りとは、期末における長期の国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。

適用時期等

3.本会計基準は、平成21年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。ただし、平成21年3月31日以前に開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる。

4.本会計基準の適用初年度の年度末においては、本会計基準の適用に伴い発生する退職給付債務の差額は、当該事業年度に発生した数理計算上の差異に含めて、企業の採用する数理計算上の差異の処理年数及び処理方法に従って処理する。

なお、本会計基準の適用に伴い発生する退職給付債務の差額は、重要性が乏しい場合を除き、会計方針の変更が財務諸表に与えている影響として注記する。この場合、当該差額に関わる適用初年度の費用処理額及び未処理残高をそれぞれ注記する。

5. 本会計基準の適用にあたり、日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」のうち、本会計基準の定めと整合しない部分については、改正を検討することが適当である。

議決の部分は省略

結論の背景

経緯

7. 退職給付に関する会計基準については、平成10年6月に、企業会計審議会から「退職給付に係る会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)が公表され、平成12年4月1日以後開始する事業年度から適用されている。その後、平成17年3月に企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」が、平成19年5月に企業会計基準第14号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その2)」がそれぞれ公表され、部分的な改正が行われている。

8. 退職給付会計基準では、退職給付債務の測定に発生給付評価方式が用いられるなど、国際的な会計基準と同様の取扱いが採用されているが、いくつかの点で異なる取扱いも定められている。欧州連合(EU)における第三国会計基準の同等性評価に関連して提案された欧州証券規制当局委員会(CESR)による「技術的助言」(平成17年7月)の中でも、退職給付債務の計算における割引率の取扱いその他の点が国際財務報告基準(IFRS)と我が国の会計基準の相違点として指摘されていた。

一方、現在、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)はそれぞれの退職給付に関する会計基準を見直すプロジェクトを立ち上げており、将来的には、当該基準のコンバージェンスに向けて両者が共同して作業を行っていくことが表明されている。これに関しては、当委員会としても、IASB との間の「東京合意」(会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取組みの合意)において、退職給付に関する会計基準を含め将来的にIASB で開発される予定の会計基準については、その検討の段階から緊密に作業を行うことを表明している。

9. 当委員会は、会計基準の国際的なコンバージェンスに向けた取組みを進めるにあたり、退職給付に関する会計基準については、上記の国際的な議論と歩調を合わせて検討することが適当と考えられる中長期的な取組みと、これに先立って見直すべき短期的な取組みとに分けて取り組むこととし、短期的な取組みにおいては、退職給付債務の計算における割引率の取扱いを論点として取り上げることとした。本会計基準は、平成20年3月に公表した公開草案に対して当委員会に寄せられたコメントを検討し、公開草案を一部修正した上で公表に至ったものである。

改正の考え方

10. 退職給付会計基準 二2.(4)では、「退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い長期の債券の利回りを基礎として決定しなければならない。」とされ、一定の割引率及び予想される退職時から現在までの期間に基づき現在価値額に割り引く現価方式を採用している。この場合における割引率は、他の基礎率と同様に原則として期末におけるものと考えられているが、従来の退職給付会計基準注解(注6)では、「なお、割引率は、一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができる。」とされていた。

これは、退職給付債務の計算における割引率について、期末における利回りを基礎とすることを原則的な考え方としながらも、相当長期間にわたって割り引かれる性質を持つ退職給付債務に関して、期末一時点の市場利回りで割り引くことが必ずしも適切とはいえない場合があることが考慮されていたものと考えられる。

11.しかしながら、退職給付会計基準の適用後、同注解(注6)のなお書きの定めを利用して過去5年間の債券の利回りの平均値が割引率として広く用いられている現行の実務に対しては、その本来の趣旨に合っていないのではないかという意見があった。本会計基準では、国際的な会計基準とのコンバージェンスを推進する観点も踏まえ、一定期間の利回りの変動を考慮して決定される割引率が期末における市場利回りを基礎として決定される割引率よりも信頼性があると合理的に説明することは通常困難であると考えられることから、原則的な考え方をより重視して、退職給付会計基準注解(注6)にあったなお書きを削除し、割引率は期末における利回りを基礎とすることを明示した(第2項参照)。

なお、この改正によっても、これまでと同様に、割引率に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さないことができる(退職給付会計基準注解(注10))。

(退職給付債務の計算における合理的な補正方法の利用)

12.本会計基準の適用によって、退職給付債務の計算に用いるべき割引率は、一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することはできないこととなり、期末における市場利回りを基礎として決定することとされたため、実務上の負担が増加するのではないかとする指摘があった。

しかしながら、退職給付債務や勤務費用の計算については、従来から、割引率のみ異なる複数の結果をもとに、合理的な補正方法によって、それら以外の割引率による計算結果を求めることができるため、このような方法によることで、当該負担の一定の軽減が可能と考えられる。

(回廊アプローチ及び重要性基準との関係)

13.今般の改正にあたっては、国際的な会計基準で採用されている、数理計算上の差異について一定の範囲内は認識しない取扱い(回廊アプローチ)と、退職給付会計基準注解(注10)に定められている、計算基礎の決定にあたって合理的な範囲で重要性による判断を認める取扱い(重要性基準)に関しても、退職給付会計基準注解(注6)の改正に関する検討との関連から審議された。回廊アプローチと重要性基準は、いずれも基礎率の変動が財務諸表に与える影響を緩和するものであるが、重要性基準による場合には、一定の範囲を超える基礎率の変動から生じる数理計算上の差異の全額をその後の期間において費用処理することとなる点が回廊アプローチの場合と相違している(ただし、国際的な会計基準においても数理計算上の差異が回廊の範囲内にある場合にこれを早期に規則的な方法により処理することは認められている。)。

14.審議の過程では、退職給付会計基準注解(注6)のなお書きを削除する場合には、回廊アプローチの導入を合わせて行わないと、我が国の退職給付会計基準の取扱いが国際的な会計基準の取扱いと比較して金利の変動による影響を受けやすいものになるのではないかとの意見があった。他方、退職給付会計基準注解(注6)のなお書きを削除したとしても、重要性基準の取扱いを現行のまま残してしまうと、必ずしも退職給付債務を期末における割引率に基づき計算することにはならず国際的な会計基準と異なることとなるため、むしろこの取扱いこそ見直す必要があるとする意見もあった。

15.当委員会での審議の結果、今回の短期的な取組みの性格上、退職給付会計基準の現行の枠組みを大きく変更することとなる回廊アプローチの導入を検討することは適当でないと考えられることから、今回の検討の対象に含めないこととした。なお、これには、現在IASB で進められている退職給付に係るプロジェクトにおいて、回廊アプローチを含む遅延認識を廃止すべきかの議論がなされている途中であることも考慮された。

16.一方、重要性基準についても、これを採用することとした現行の退職給付会計基準の考え方を踏襲し、今回の検討においては見直さないこととした。

これは、今回の改正が期末における利回りを基礎とするという考え方をより重視するものであるとしても、そのことによって「退職給付債務が長期的な見積計算であることから、このような重要性による判断を認めることが適切と考えられる」(「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」四3.)として重要性基準を採用している現行の考え方が必ずしも否定されるものではないと考えられること、さらに、数理計算上の差異の取扱いの一方法として回廊アプローチとの比較において我が国の退職給付会計基準に重要性基準が採用された経緯を考慮すると、回廊アプローチの導入の議論と切り離して今回の取組みの中で重要性基準の廃止だけを議論することは適当でなく、したがって重要性基準を残すことが必要であると考えられることによる。

適用時期等

17.本会計基準の適用については、その適用初年度において、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うこととなる。したがって、本会計基準の適用によって、これまで採用してきた方法による割引率(重要性基準考慮後)と異なる割引率を用いることとなる場合には、それぞれの割引率を用いて計算した適用初年度の年度末における退職給付債務の差額が、財務諸表に与えている影響額となる。この影響額については、当該事業年度に発生した数理計算上の差異に含めて取り扱うこととし、退職給付会計基準導入時の会計基準変更時差異のように通常の会計処理と区分することはしないものとした。

18.数理計算上の差異については、当期の発生額を翌期から費用処理する方法を採用している企業が多いが、本会計基準では、当該方法を採用していることにより本会計基準の適用が適用初年度の損益計算書の金額に影響を与えない場合であっても、退職給付に係る注記事項として開示する未認識数理計算上の差異に影響を与えるときには、重要性が乏しい場合を除き、当該影響額を注記する必要があることを明らかにしている(第4項参照)。

19.なお、本会計基準の適用により割引率の決定方法を変更するものの、結果としてこれまで採用してきた方法によったときと同一の割引率を使用することとなる場合(重要性基準を考慮した結果同一となる場合を含む。)には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更に該当するものの、それによる財務諸表への影響がないものとして扱われることとなる。

以上


INDEX

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