(注)本内容は、平成17年3月16日企業会計基準が公表したものです。なお、記載を省略した部分があります。実務への適用にあたっては、念のため当該
会計基準等を確認してください。
企業会計基準第3号
「退職給付に係る会計基準」の一部改正 |
平成17年3月16日
企業会計基準委員会
目次
目的
会計基準
適用時期等
議決
結論の背景
経緯
改正の考え方
目的
1.
本会計基準は、企業会計審議会が平成10年6月16日に公表した「退職給付に係る会計基準」(「退職給付に係る会計基準注解」を含む。)の一部について、改正することを目的とする。また、平成17年3月16日に、本会計基準を適用する際の指針を定める企業会計基準適用指針第7号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正に関する適用指針」が公表されているため、本会計基準の適用にあたっては、当該適用指針も参照する必要がある。
会計基準
2.
実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合の取扱いについて、「退職給付に係る
会計基準注解」(注1)における「当該超過額を資産及び利益として認識してはならない」との定めは適用しないこととする。
3.
このため、実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合にも、当該数理計算上の差異又は過去勤務債務は、企業の採用する処理年数及び処理方法に従い、費用の減額として処理することとなる。
適用時期等
4. 本会計基準は、平成17年4月1日以降に開始する事業年度から適用する。
ただし、本会計基準は、平成16年10月1日以降平成17年4月1日前に開始する事業年度から適用することができる。
また、平成17年3月31日から平成17年9月29日までに終了する事業年度に係る財務諸表及び連結財務諸表についても適用することを妨げないものとする。
5. 本会計基準を適用する事業年度前に「退職給付に係る会計基準注解」(注1)により資産及び利益として認識していなかった超過額(企業年金制度に係る退職給付債務を超える年金資産の額。以下「未認識年金資産」という。)が生じており、本会計基準を適用する事業年度の期首(平成17年3月31日から平成17年9月29日までに終了する事業年度に係る財務諸表及び連結財務諸表から適用する場合(第4項また書き参照)には、本会計基準を適用する事業年度の期末)において未認識年金資産が存在する場合には、当該未認識年金資産を過去勤務債務又は数理計算上の差異とに合理的に区分し、本会計基準の適用により当該事業年度の期首に発生したものとみなして、企業の採用する処理年数及び処理方法に従い、費用の減額として処理する。
ただし、未認識年金資産を過去勤務債務又は数理計算上の差異とに合理的に区分することができない場合には、その金額を数理計算上の差異とすることができる。
6. 数理計算上の差異の発生額について当期の発生額を翌期から費用処理する方法を用いている場合(「退職給付に係る会計基準注解」(注9) 2
参照)でも、本会計基準を適用することにより事業年度の期首に発生したとみなした数理計算上の差異に限り、企業の採用する処理年数及び処理方法に従い、当期から費用の減額として処理する。
議決
7. 本会計基準は、第76回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
8. 第76回企業会計基準委員会に出席した委員は、以下のとおりである。
出席した委員の氏名は省略してある。
結論の背景
経緯
9. 平成10年6月16日に企業会計審議会から公表された「退職給付に係る会計基準」は、平成12年4月1日以後開始される事業年度から実施されている。
10. 「退職給付に係る会計基準」二 1 では、「退職給付債務に未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上する。」としているが、「年金資産については、その額が企業年金制度に係る退職給付債務に当該企業年金
制度に係る未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上差異を加減した額を超える場合には、当該超過額を退職給付債務から控除することはできないものとし、前払年金費用として処理するものとする。」としている。
このような原則に対して、現行の「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1
では、「実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合には、当該超過額を資産及び利益として認識してはならない。」という特別の期限を定めている。
11. このような定めは、退職給付をめぐる諸制度を前提とした以下の考え方に基づくものである(「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」四 4 参照)。
(1) 企業年金制度に基づいて積み立てられた年金資産の実際運用収益が期待運用収益を超過したときや給付水準の引き下げにより退職給付債務が減少したときに、年金資産が当該
企業年金制度に係る退職給付債務を超過した額(未認識年金資産)を退職給付債務から控除する場合には、当該超過額を実質的に資産処理することにつながることになるが、外部に積み立てられている年金資産を企業の資産として認識することは適当でない。
(2) 当該超過額(未認識年金資産)が将来退職給付費用の減少につながるとしても、一般的に年金資産の払戻しには制限があることから、企業への当該超過額の払戻しが行われない限り、これを利益として認識することは適当でない。
12. その後、退職給付を巡る環境は著しく変化し、「退職給付に係る会計基準」の設定時には予測しえなかった大幅な変化が生じた。これは主に、以下のような諸制度等の変更によるものである。
(1)
日本公認会計士協会から公表された会計制度委員会報告書13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)において示された退職給付信託を利用して、厚生年金基金の代行部分を含む積立
不足を解消するために当該信託に多額の拠出が行われたが、その後、厚生年金基金の代行返上が可能とされたこと
(2) さらに、厚生年金基金(確定給付企業年金を含む。)にお
ける掛金の減額等の制限が緩和されたこと
当委員会では、こうした状況に鑑み、平成16年11月に、積立超過(年金資産が退職給付債務を超えること)の会計処理について検討を行うこととした。
改正の考え方
13. 当委員会では、退職給付専門委員会を設置し専門委員による討議を含め、この会計処理に対する審議を行い、今般、「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1 を改正するという「退職給付に係る会計基準」の一部改正をとりまとめた。
14. この背景としては、「退職給付に係る会計基準」の設定後の環境の著しい変化(第12項参照)により、設定時には限定的に生ずると考えられていた未認識年金資産が、最近、しばしば生じていることが挙げられる
このような諸制度等の変更、すなわち、退職給付信託による拠出や厚生年金基金の代行返上、さらには企業年金制度の柔軟化により、「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1 の前提とされた制約(第11項参照)が概ね解消したことから、「退職給付に係る会計基準」の設定時には将来の退職給付費用の前払いとすることに疑義があった未認識年金資産についても、特別の制限を設ける必要がなくなったものと考えられる。
したがって、これらの諸制度等の変更を中心とする状況変化に照らし、今後は「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1 の定めを適用せいず、原則的な考え方である過去勤務債務及び数理計算上の際の規則的な費用処理が適切に行われることとなるよう取り扱うことが適当であると考えられる。
この結果、実際運用収益が期待運用収益を超過したこと等による数理計算上の差異の発生又は給付水準を引き下げたことによる過去勤務債務の発生により、年金資産が企業年金制度に係る退職給付債務を超えることとなった場合にも、本会計基準の適用により、当該数理計算上の差異又は過去勤務債務は、企業への当該超過額の払戻しの有無にかかわらず、企業の採用する処理年数及び処理方法に従い、費用の減額として処理することとなる。(第3項参照)。
15. 前述したように、本会計基準では、規則的な費用処理が適切に行われることとなるよう「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1 を見直すものであるが、この費用処理には、発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含まれる(「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」四 3 参照)ため、この場合には、必ずしも本来の規則的処理が行われているわけではないという見方がある。このような見方を踏まえ、過去勤務債務及び数理計算上の差異は、平均残存勤務期間以内の一定の年数ではなく、平均残存勤務期間により費用処理するよう変更すべきではないかという意見がある。
また、当該費用処理に関しては、海外の会計基準に鑑みて、原則として、各期の発生額についてそれぞれ毎期費用処理するという発生年度ごとに管理する方法ではなく、それらの基礎として毎期費用処理するという発生年度ごとに管理しない方法とすべきではないかという意見もある。
しかしながら、本会計基準では、緊急性の高い「退職給付に係る会計基準注解」(注1) 1 の見直しを優先させることとした。
以上
INDEX
■退職給付に係る会計基準目次
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