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(注)本設例は企業会計審議会が平成23年3月25日に公表した「リース取引に関する会計基準の適用指針」から抜粋したものです。なお、一部にオリジナルの適用指針とは異なる表示をしている部分があります。
本文中( )内の参照項番号は「リース取引に関する会計基準の適用指針」の項番号です。
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前提条件
(1) 所有権移転条項 なし
(2) 割安購入選択権 なし
(3) リース物件は特別仕様ではない。
(4) リース契約にはリース期間終了時に借手がリース物件の処分価額を5,000千円まで保証する条項（残価保証）が付されている。
(5) 解約不能のリース期間 5年
(6) 借手の見積現金購入価額 53,000千円（貸手のリース物件の購入価額はこれと等しいが、借手において当該価額は明らかではない。）
(7) リース料 月額 1,000千円 支払は半年ごと（当半期分を期首に前払い。）
リース料総額 60,000千円
(8) リース物件の経済的耐用年数 6年
(9) リース期間終了後にリース物件は2,000千円で処分された。
(10) 借手の減価償却方法 定額法
(11) 借手の追加借入利子率 年8％（ただし、貸手の計算利子率は借手にとって知り得ない。）
(12) リース取引開始日 X1年4月1日、決算日 3月31日
(13) 中間決算及び年度決算の年２回の決算を実施している。 |
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１ 借手の会計処理
(1) ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値基準による判定
貸手の計算利子率を知り得ないので、借手の追加借入利子率である年8％を用いてリース料総額（残価保証額を含む。第15項参照）を現在価値に割り引くと、
6,000＋6,000/(1＋0.08×1/2)＋・・・・＋6,000/(1＋0.08×1/2)9＋5,000/(1＋0.08×1/2)10＝53,990千円
現在価値53,990千円／見積現金購入価額53,000千円＝102％＞90％
② 経済的耐用年数基準による判定
リース期間5年／経済的耐用年数6年＝83％＞75％
したがって、①（又は②）により、このリース取引はファイナンス・リース取引に該当する。
③ 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またリース物件は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス･リースに該当しない。
①（又は②）及び③により、このリース取引は所有権移転外ファイナンス･リース取引に該当する。
(2) 会計処理
リース料総額の現在価値より見積現金購入価額の方が低い額であるため、リース資産及びリース債務の計上価額は53,000千円となる。この場合に、利息相当額の算定に必要な利子率の計算は次のとおりである。
6,000＋6,000/(1＋ｒ×1/2)＋・・・・＋6,000/(1＋ｒ×1/2)9＋5,000/(1＋ｒ×1/2)10＝53,000千円
r＝8.853％
リース債務の返済スケジュールは、[表3]のとおりである。
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[表3]
(単位：千円)
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回数 |
返済日 |
前回支払後元本 |
返済合計 |
元本分 |
利息分 |
支払後元本 |
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1 |
X1.4.1 |
53,000 |
6,000 |
6,000 |
－ |
47,000 |
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2 |
X1.10.1 |
47,000 |
6,000 |
3,920 |
2,080 |
43,080 |
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3 |
X2.4.1 |
43,080 |
6,000 |
4,093 |
1,907 |
38,987 |
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4 |
X2.10.1 |
38,987 |
6,000 |
4,274 |
1,726 |
34,713 |
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5 |
X3.4.1 |
34,713 |
6,000 |
4,463 |
1,537 |
30,250 |
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6 |
X3.10.1 |
30,250 |
6,000 |
4,661 |
1,339 |
25,589 |
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7 |
X4.4.1 |
25,589 |
6,000 |
4,867 |
1,133 |
20,722 |
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8 |
X4.10.1 |
20,722 |
6,000 |
5,083 |
917 |
15,639 |
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9 |
X5.4.1 |
15,639 |
6,000 |
5,308 |
692 |
10,331 |
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10 |
X5.10.1 |
10,331 |
6,000 |
5,543 |
457 |
4,788 |
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X6.3.31 |
4,788 |
5,000 |
4,788 |
212 |
－ |
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合計 |
－ |
65,000 |
53,000 |
12,000 |
－ |
(注)適用利率年8.853％
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X1年4月1日（リース取引開始日･第１回支払日）
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借方 |
貸方 |
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リース資産 |
53,000 |
リース債務 |
53,000 |
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リース債務 |
6,000 |
現金預金 |
6,000 |
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X1年9月30日（中間決算日）
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借方 |
貸方 |
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支払利息 |
2,080 |
未払利息 |
2,080 |
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減価償却費(*1) |
4,800 |
減価償却累計額 |
4,800 |
(*1)(53,000千円－5,000千円)×1年／5年×6月／12月＝4,800千円（第27項参照）
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X1年10月1日（下期首・第２回支払日）
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借方 |
貸方 |
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未払利息 |
2,080 |
支払利息 |
2,080 |
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リース債務 |
3,920 |
現金預金 |
6,000 |
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支払利息 |
2,080 |
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以後も同様な会計処理を行う。
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X6年3月31日（決算日）
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借方 |
貸方 |
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支払利息 |
212 |
未払利息 |
212 |
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減価償却費 |
4,800 |
減価償却累計額 |
4,800 |
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X6年3月31日（リース物件の返却）
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借方 |
貸方 |
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減価償却累計額 |
48,000 |
リース資産 |
53,000 |
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その他の流動資産 |
5,000 |
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(注)残価保証額は、便宜的に、いったんその他の流動資産として計上する。決算時には、当該その他の流動資産はリース債務及び関連する未払利息と相殺する。
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リース期間終了後（残価保証支払額の確定時）
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借方 |
貸方 |
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リース資産売却損(*2) |
3,000 |
未払金 |
3,000 |
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リース債務 |
4,788 |
その他の流動資産 |
5,000 |
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未払利息 |
212 |
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(*2)残価保証額5,000千円－処分額2,000千円＝3,000千円（第29項参照）
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なお、残価保証支払額の確定時に一括して、次のような会計処理を行うこともできる。
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借方 |
貸方 |
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減価償却累計額 |
48,000 |
リース資産 |
53,000 |
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リース債務 |
4,788 |
未払金 |
3,000 |
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リース資産売却損 |
3,000 |
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未払利息 |
212 |
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２ 貸手の会計処理
(1) ファイナンス・リース取引の判定
① 現在価値基準による判定
貸手の計算利子率である年8.853％を用いてリース料総額（残価保証額を含む。第52項参照）を現在価値に割り引くと53,000千円となる。
現在価値53,000千円／購入価額53,000千円＝100％＞90％
② 経済的耐用年数基準による判定
リース期間5年／経済的耐用年数6年＝83％＞75％
したがって、①（又は②）により、このリース取引はファイナンス・リース取引に該当する。
③ 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またリース物件は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス･リース取引には該当しない。
①（又は②）及び③により、このリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。
(2) 会計処理
第2法（第51項(2)参照）によって、「リース取引開始日・第1回回収日」、「リース期間終了時」及び「物件処分額及び残価保証受取額の確定時」の会計処理を示すと次のとおりである。
リース投資資産の回収スケジュールは、[表3]と同じである。
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X1年4月1日（リース取引開始日･第１回回収日）
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借方 |
貸方 |
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リース投資資産 |
53,000 |
買掛金 |
53,000 |
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現金預金 |
6,000 |
売上高(*1) |
6,000 |
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売上原価(*1) |
6,000 |
リース投資資産 |
6,000 |
(*1)受取リース料6,000千円を売上高とし、利息相当額は生じていないため、同額を売上原価として計上する。
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X6年3月31日（リース期間終了時）
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借方 |
貸方 |
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貯蔵品 |
5,000 |
売上高 |
5,000 |
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売上原価 |
4,788 |
リース投資資産 |
4,788 |
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物件処分額及び残価保証受取額の確定時
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借方 |
貸方 |
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貯蔵品売却損 |
3,000 |
貯蔵品 |
5,000 |
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売掛金 |
2,000 |
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売掛金 |
3,000 |
貯蔵品売却損 |
3,000 |
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INDEX
■仕訳処理目次
■リース取引
リース取引の仕訳例
■[設例 1] 所有権移転外ファイナンス・リース取引
■[設例 2] 所有権移転ファイナンス・リース取引
■[設例 3] 残価保証のある場合
■[設例 4] 維持管理費用相当額を控除する場合
■[設例 5] リース資産総額に重要性が乏しいと認められなくなった場合の取扱い
■[設例 6] 転リース取引
■[設例 7] セール・アンド・リースバック取引
■[設例 8] 貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合(貸手の会計処理)
■[設例 9] 適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い
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