(注)本設例は企業会計審議会が平成23年3月25日に公表した「リース取引に関する会計基準の適用指針」から抜粋したものです。なお、一部にオリジナルの適用指針とは異なる表示をしている部分があります。
本文中( )内の参照項番号は「リース取引に関する会計基準の適用指針」の項番号です。
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前提条件
(1)
A社(借手)は、(2)に示す自己所有の工場機械設備を、新規の設備投資の資金を得る目的で、(3)に示す条件により、B社(貸手)に売却するとともに、その全部をリースバックした。
(2) 対象資産の内容
@ 取得年月日 X0年4月1日
A 取得価額 180,000千円
B 自己(A社)の固定資産の減価償却
償却方法 定額法、取得時の経済的耐用年数 6年、残存価額 10%
C X1年4月1日の簿価
180,000千円−180,000千円×0.9×1年/6年=153,000千円
(3) セール・アンド・リースバック取引の条件
@ 所有権移転条項なし。
A 割安購入選択権なし。
B 当該物件は特別仕様ではない。
C 契約日(=リース取引開始日) X1年4月1日
D 売却価額 170,000千円
固定資産売却益 170,000千円−153,000千円((2)のC)=17,000千円
E 解約不能のリース期間 X1年4月1日から5年間
F リース料は毎年1回4月1日に均等払い(X1年4月1日を初回とする。)
年額リース料 40,769千円(注)
リース料総額 203,845千円
G 貸手の計算利子率は10%であり、借手はこれを知り得る。
H リースバック時以後の経済的耐用年数は5年である。
I 借手の減価償却方法 定額法
(注)年額リース料は、期初払年金現価を求める公式で、現在価値P=170,000(売却価額)、期間n=5、貸手の計算利子率r=10%として年金額Xについて解けば求められる。
P=(1−(1/(1+r)n))/r×(1+r)× X
(1−(1/(1+0.1)5))/0.1×(1+0.1)× X =170,000千円
∴X=40,769千円
(4) 決算日はA社、B社ともに3月31日である。 |
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1 借手の会計処理
(1) ファイナンス・リース取引の判定
@ 現在価値基準による判定
貸手の計算利子率年10%を用いてリース料総額を現在価値に割り引くと、
40,769+40,769/(1+0.1)+・・・・+40,769/(1+0.1)4
=170,000千円
現在価値170,000千円/実際売却価額170,000千円=100%>90%
A 経済的耐用年数基準による判定
リース期間5年/経済的耐用年数5年=100%>75%
したがって、@(又はA)により、このリース取引はファイナンス・リース取引に該当する。
B 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またリース物件は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リース取引には該当しない。
@(又はA)及びBにより、このリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。
(2) 会計処理
A社(借手)は、資産売却の処理をした上で、実際売却価額170,000千円でリース資産及びリース債務を計上する。資産売却益17,000千円は、長期前受収益として繰延処理する。
以後は、リース資産及び長期前受収益の償却と、[表7]に示されるようにリース債務の元本の返済、支払利息の会計処理を行う。
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[表7]
(単位:千円)
回数 |
返済日 |
前回支払後
元本 |
返済合計 |
元本分 |
利息分 |
支払後
元本 |
1 |
X1.4.1 |
170,000 |
40,769 |
40,769 |
− |
129,231 |
2 |
X2.4.1 |
129,231 |
40,769 |
27,846 |
12,923 |
101,385 |
3 |
X3.4.1 |
101,385 |
40,769 |
30,630 |
10,139 |
70,755 |
4 |
X4.4.1 |
70,755 |
40,769 |
33,693 |
7,076 |
37,062 |
5 |
X5.4.1 |
37,062 |
40,769 |
37,062 |
3,707 |
− |
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合計 |
− |
203,846 |
170,000 |
33,845 |
− |
(注)適用利率年10%
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X1年4月1日(資産売却日・リース取引開始日)
借方 |
貸方 |
減価償却累計額(*1) |
27,000 |
有形固定資産 |
180,000 |
現金預金 |
170,000 |
長期前受収益 |
17,000 |
リース資産 |
170,000 |
リース債務 |
170,000 |
リース債務 |
40,769 |
現金預金 |
40,769 |
(*1)180,000千円×0.9×1年/6年=27,000千円
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X2年3月31日(決算日)
借方 |
貸方 |
支払利息 |
12,923 |
未払利息 |
12,923 |
減価償却費(*2) |
34,000 |
減価償却累計額 |
34,000 |
(*2)各年度の減価償却費の計算は、リース資産取得価額(実際売却価額)とリースバック時以後のリース期間を基準に、残存価額をゼロとして計算される。
リース資産の減価償却費:170,000千円×1年/5年=34,000千円
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借方 |
貸方 |
長期前受収益 |
3,400 |
長期前受収益償却(*3) |
3,400 |
(*3)長期前受収益の償却:17,000千円×1年/5年=3,400千円
長期前受収益は、毎期のリース資産の減価償却費の割合に応じて償却され、減価償却費から控除して表示される。この結果、減価償却費は30,600千円(=34,000千円−3,400千円
)となる。
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X2年4月1日(期首・第2回支払日)
借方 |
貸方 |
未払利息 |
12,923 |
支払利息 |
12,923 |
リース債務 |
27,846 |
現金預金 |
40,769 |
支払利息 |
12,923 |
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以後も同様な会計処理を行う。
2 貸手の会計処理
(1) ファイナンス・リース取引の判定
@ 現在価値基準による判定
貸手の計算利子率年10%を用いてリース料総額を現在価値に割り引くと、
40,769+(40,769/(1+0.1)+・・・・+40,769/(1+0.1)4
=170,000千円
現在価値170,000 千円/借手の実際売却(購入)価額170,000 千円=100%>90%
A 経済的耐用年数基準による判定
リース期間5年/経済的耐用年数5年=100%>75%
したがって、@(又はA)により、このリース取引はファイナンス・リース取引に該当する。
B 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、またリース物件は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リース取引には該当しない。
@(又はA)及びBにより、このリース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に
該当する。
(2) 会計処理
B社(貸手)にとっては、セール・アンド・リースバック取引の会計処理は、通常のリース取引と同様である。B社は実際売却(購入)価額170,000千円でリース投資資産に計上する。
INDEX
■仕訳処理目次
■リース取引
リース取引の仕訳例
■[設例 1] 所有権移転外ファイナンス・リース取引
■[設例 2] 所有権移転ファイナンス・リース取引
■[設例 3] 残価保証のある場合
■[設例 4] 維持管理費用相当額を控除する場合
■[設例 5] リース資産総額に重要性が乏しいと認められなくなった場合の取扱い
■[設例 6] 転リース取引
■[設例 7] セール・アンド・リースバック取引
■[設例 8] 貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がある場合(貸手の会計処理)
■[設例 9] 適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い
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